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第三十四章 再浮上  

溶岩ドームを出て、通路を戻る。

 来た道を逆に辿り、分岐点を過ぎ、縦穴の下に着いた。

 直人が最初にロープを登る。ハーネスに体重を預け、溶岩の壁面に足をかけ、一歩ずつ上がっていく。

 穴の上から光が差し込んでいた。朝の光。洞窟に入ったのは早朝だったが、すでに数時間が経過している。

 地上に出た瞬間、朝日が目を射った。

 樹海の木々の間から、富士山が見えた。雪はまだない。十月初旬の富士山は、黒い溶岩肌をさらしている。山頂付近にだけ、うっすらと白い筋が見える。初冠雪が近い。

 真琴が続いて地上に出た。早川が最後に、「もう二度とやらない」と呟きながら這い上がった。

 三人は陥没孔の縁に座り、水を飲んだ。

 誰も、すぐには言葉を発しなかった。

 地下で見たもの——石板の歌、設計者の最後のメッセージ——が、まだ消化しきれていない。

 早川が最初に口を開いた。

「先輩。俺、正直に言うと、この調査を始めたとき、面白半分だったっす。AIで古い暗号を解読するなんて、研究者冥利に尽きるネタだと思ってた。でも——」

 早川は富士山を見上げた。

「あの歌を読んで、分かりました。この暗号は——ネタなんかじゃない。百五十年前の人間が、命がけで未来に残したものだ。俺たちが受け取ったのは、データじゃなくて——遺書みたいなものだ」

「遺書とは違う」直人が言った。「遺書は過去に向けて書かれる。あの歌は未来に向けて書かれている。遺書ではなく——」

「手紙」真琴が言った。

「そう。百五十年後への手紙だ」

 風が吹いた。樹海の木々がざわめく。

 直人は立ち上がった。

「封印の構造は判明した。だが、核心は俺たちの中にある——という設計者のメッセージは、具体的に何を意味するのか。まだ分からない。分かるためには——時間が必要だ」

「十月二十三日まで、十九日」

「ああ。それまでに——」

 直人の言葉が途切れた。

 樹海の中から、足音が近づいてきた。

 一人の男が、木々の間から姿を現した。

 真壁透だった。

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