呪いと救済
国を救うため、神の試練を超え、命を捧げる。
それが私の望みです。
世界中に呪いがはびこっています。呪いは世界を蝕み、土地を痩せさせ、あらゆる恵みを奪っています。
命を捧げ呪いを払い、世界に豊穣を取り戻すこと、それが巫女の役目です。
巫女としての役目を生まれた時から定められ、ひどく重い役目でしたが、私はその役目を全うしようと努力しました。
ともに旅してきた仲間たちは試練の中で倒れ、もういません。
彼らは私に思いを託してくれた。
その思いものせて、私は試練を完遂しなければならないのだ。
***
「ああ、全く持って愚かな巫女だな!」
だが目の前の神、いや神のはずの者はそんなことを言う。
ここは大樹の中だった。大樹の中を進んだ先、そこには一人の神がいた。
神は体の大部分が大樹に飲み込まれ、皺だらけの顔と痩せこけた胸が見えるだけだ。
だがその顔は私を嘲笑していた。
「私への貢ぎ物でしかないお前が世界を救う? 本当に愚かだ! 何も知らない無知な女が」
そんなことを神は言った。
「……そんな。だけど私の命を捧げれば、世界の呪いは解け、皆は救われるはずじゃ」
「ああ救われるとも! 少しの間だけはな! 今の痩せこけた土地を巫女の命を使い豊かにしてやれるだろう。そしてまた土地が痩せれば新たな巫女を貢いでこればいい。何と素晴らしい仕組みなのだろうな! お前もそう思うだろう? 愚かな巫女が!」
「そんな。それじゃ繰り返すだけじゃないですか」
「そんなもの分かってて人間達はやってるに決まってるだろう? お前もそのためにここに来たわけじゃないか。なあ?」
「でも、教皇様は心から世界を救うために私を遣わしたのです。あの人が嘘をついているなど……」
「わははは!!」
突然神が笑いだす。
「教皇だと? 世界を導いていると自惚れた無能のことか?」
「……いくら神とはいえ教皇様への侮辱は許しませんよ!」
思わず強い言葉を言ってしまう。
だが神は嘲る。
「私をここに閉じ込め、世界の仕組みを作ったのは最初の教皇なのだぞ? 今の教皇がそのことを知らぬはずがない」
「え?」
私の世界が揺れたように感じた。この神は何を言っているのでしょう。
「本当に巫女というのは愚かだよ。何度も何度も世界の為と言い命を捧げ死ぬ。それで世界は救われたと言うのだろう。いずれ同じことが繰り返させるのにな」
「……」
聞けば聞くほど吐き気がしてきた。
あの教皇様が知っていた? 私は嘘をつかれていたのですか?
ああ、信じられない。
だけど世界が救われないことだけは分かる。
ただ呪いの輪廻が続くだけだ。また土地が痩せた時に巫女をつくり、命を捧げさせる? そんなのありえない。
私たちの痛みが伸びるだけだ。
「なら私があなたを殺します」
「ほう? 殺すと? そんなことはできない。お前はもはや一人だ。そして私を殺せば、世界の恵みは二度と復活しない。食べ物はますます減り、世界中が混乱し、争いが巻き起こるだろう」
「だとしても、呪いに生かされる世界よりはましです。例え争いが起ころうとも、その後に必ず世界は平和になる。それに比べれば少しのいさかいなど何になりましょう」
「……巫女らしくもないことを言う。お前はそういうものだったか」
「ええ。さようなら。どうせあなたはおいぼれです。今までの巫女たちもその達者な口で騙してきたのでしょう」
「ははは! ならやれ! お前たち人間がどれだけ苦しむか。冥界の底から見てやろう!」
「さようなら」
私は神に剣を突き刺した。
剣は難なく神の胸に突き刺さり、神は血を吐き息絶えた。
これで呪いは消えた。
世界では争いが起こるかもしれない。
だけどこれが私の救済だ。
争いの果てに、世界は救われる。
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