その後の事は・・・
その後の事は・・
僕は光琳。親が尾形光琳のファンで付けたらしいがなんとも大層な名前を
付けてくれたものだ。 高校までは面倒なので「ヒカル」と呼ばれていた。
さて、そんな僕も晴れて大学生。地元を離れて一人暮らし。そうなると
自由も効いて今まではなかなか出来なかった事、そう「女装」なんかも
ちょっと大っぴらに。
前までは女性物の下着や服を着て自宅内だったがこの頃は夜間なら出歩く
までになっていた。
その夜もウィッグに軽いメイク、女性の服に着替えてマスクして、そーっと
外へ出たら・・なんと隣の女子大生「薫」の帰宅にばったり。
薫は1学年上で部は違うけど同じ学校という事でいろいろ面倒をみてもらう
かっこうにはなっていた。
変にキョドると怪しまれるから極めて平静を装ってすれ違うけれど、
バレやしないかと心臓はバクバク !
それでも気にせず歩いて数分のいつもの「ハッテン場」へ。
ここには女装さんが集まり色々話も聞けるし、その気になれば・・・
その夜も止め処無い話をして帰宅。
部屋に入るとすぐにLINEが着信。さっきの女装仲間さんかな? と見るとなんと
隣の薫から。
「ちょっと前に女の人が部屋から出て行ったけど?」
「ああ、友達」
「部屋の合鍵渡して?」
「ちょっと忘れ物取りに行ってもらったから」
「ふーん・・」
それきりその夜のLINEは切れた。
またしばらくしての週末。夜に僕は着替えて部屋を出た。するといきなり隣から
薫が出てきてこちらを見ている。 僕はちょっとだけ頭を下げてすれ違ったら
「あの・・・お友達ですか?」と声を掛けてきた!
( ヤバ・・このまま声を出したらバレる・・) と、ちょっとだけ頭を下げて
行こうとした。
すると「もしかして・・彼女さんですか?」とまで聞いてきた!
僕は悟られぬようにまたちょっとだけ頭を下げて出て行った。
そうしてその夜はまた女装さん達と楽しい夜をすごし明け方近くに帰宅した。
次の日曜の夜・・・僕は高熱を出した。夜に騒いだ時に夜風が冷たいかな・・とは
思っていたけど風邪をひいたかな・・ぐらいに。
けれど月曜の朝になっても熱は下がらすむしろ上がってた。40℃近く・・。
さすがにヤバイと感じ始めた夕方、ガチャリとドアが開いて薫が入ってきた。
「ヒカル、大丈夫?」その声を聞きながら僕の意識は落ちた。
その二日後、気付いた僕は病室にいた。看護師さんの話ではあの後救急搬送されて「肺炎」の
診断で入院したらしい。
その日の夕方、薫が来てくれて説明してくれた。学校に来ないしLINEも出ないので
級友が心配して薫に連絡。一階に住む大家を説得してカギを開けてもらい救急車を
呼んで搬送した・・・らしい。
「んもー、心配したんだから・・朝方までふらふら遊んでるからよ」
「・・ごめん・・」
「それで大家さんに事情話してスペアキー借りてるから下着の替えとか洗面道具とか
一式持ってきてるから心配しないで。」
「・・・・え? ・・・・」
「まぁ、いろいろ話はあるでしょうけどそれは退院してからね」
これはバレたな・・と観念する僕。
それから毎日点滴したり薬のんだりして退院を迎えた日。病院の会計で凄い請求を知る。
(入院ってこんなにお金が掛かるんだ・・・) とりあえずカードで支払ってアパートに戻った。
お金は入ってた保険でほぼなんとかなるらしい。
それからすぐに菓子折りを買って大家さんに顔出し。それから薫のとこにも。
「あ、退院したんだ。おめでと」
「お陰様で・・それでさ・・」
「・・うん、ちょっと入りなよ」
部屋に入り座るとしばし沈黙・・の後
「あの・・いろいろありがと」
「どういたしまして」
「それで・・・・・・・・・・・」
「まぁね、趣味はいろいろだからね、私がどうこう・・」
「やっぱ、見た?」
「だって下着とか出さなきゃじゃない? でもビックリしたわよ。何あの衣装ケースの
中のお花畑。私だってあんなの持ってないわよww」
「・・・・・・・・」
「ま、私が黙ってればいいだけの話だし」
「うん、そうしてもらうと助かる・・・」
「で、やっぱりあの時すれ違ったのは・・」
「うん、僕・・」
「だよねぇ、すぐ判ったわよw」
「え?」
「だって女なら絶対しないような化粧してるんだものw マスクしててもバレバレよw」
(ああ、そんなもんなのか )
「・・そしたらさ、私がお化粧教えてあげてもいいけど? ほら、ちょっと来てみ?」
僕は促されて鏡台の前のスツールに座らされて手際よく化粧が始まる。彼女が持ってた
ウイッグも被せられて鏡を覗くと・・
「はい出来た。うん、上出来w ヒカルは線が細いからこれぐらいでも十分女性に視えるっしょw」
確かに鏡の中には別人がいた。
「じゃあ部屋に行って着替えてきてみ?」
そう言われてブラセットにストッキング。花柄ブラウスにマキシのスカートに着替えた僕。 また彼女の前に立つと
「ほら、ブラの位置はこれぐらいで。肩紐はこれぐらいにして・・よし、じゃこれから時間ある?」
「はい?」
「退院祝いになにか買ってあげるわよw このままショッピング行かない? 」
そう半ば強制で街のイ◯ンモールへ連れて行かれた。さすがに恥ずかしいのでマスクで出たけど、
明るいところに出るのは初めて。
そこのランジェリーショップへ入っていろいろ見て回る。通常は通販を使ってたので楽しくて
しょうがない。そして二人で決めたセット物を持って帰宅。
「さすがに試着出来なかったからちょっと着てみせて。ダメなら私、交換に行ってくるから」
「ここで? 」
「隣の部屋使えばいいっしょ。さ、着替えて。」
===============================================
「うん、サイズはピッタリじゃん、ここにパット入れればホラ、ちょうどいい。ショーツも・・
サイズ合ってるわね。」
「・・・・・」
「いゃね、私、男兄弟ばっかりだったからこんな妹が欲しかったのよ。で二人で着せ替えとかしたら
楽しいだろうなーなんてずっと前から思ってたの」
「はぁ・・・」
「嫌なんて言ったらこの事、みんなにバラすわよww」
僕は女郎蜘蛛に絡め取られた哀れな虫の気分になっていた。でもその後にあった事は・・皆さんの想像に
おまかせします。
おしまい。