キス
よくわからないが、俺たちはフールと一緒に暮らすことになった。
このマンションはメイがお金を出している。メイがフールを住まわせると決めたのであれば、俺に拒否する権利はないだろう。俺たちはただの居候みたいなものだし、それに部屋もたくさん余っている。
別に、一緒に暮らす女の子が増えるというのも悪くないしな。いきなり暴れ出さないかどうかはちょっと心配だが、今のところそのような様子はない。初対面の時、いきなり窓ガラスを破って外から侵入するような子だから少し不安だが。
そんなわけで、俺たちはフールを迎えて新たな同居生活がスタートした。
翌日の事だ。疲れていたせいか、遅めに目覚めた俺はリビングに向かう。するとそこで、とんでもない光景が目に入る。俺以外の女性三人、メイとフールと、そしてメイが雇っている唯奈さんが顔を密着させ、三人で同時にキスをしていたのだ。
「んっ♡ ふうっ♡」
「ちゅっ♡ ちゅる♡」
「ふっ♡ んっ♡」
な、なにこれ!? なんで!? いつ三人はそんな関係に!?
三人はお互いの体を抱き寄せながら、長いキスをしている。妙に艶めかしく、情熱的に見える。
なんだか見てはいけない物を見てしまったような気がした俺は、気配を消して慌てて部屋に戻ろうとした。しかし――
「ぷふぁ♡ あ、おはようございますご主人様」
そこでメイが、俺に気が付いてしまった。こちらに目を合わせ、一度キスをやめて頭を下げて丁寧な朝の挨拶をする。こうなってしまってはもう見なかったことにはできそうにない。
「お、おはよう」
「ん、おおご主人様、起きたのか。おはよう。ちょうどよかった、ちょっとこっちに来てくれ」
と、メイに続いて挨拶をしたフールが俺を呼ぶ。
「ええと、なんで?」
「オレ様達、実はご主人様以外とのキスでもエネルギーがチャージできるか試してたんだ。だけど、どうもダメみたいでさ。ちょっとキスさせてくれよ。いいだろ? 減るもんじゃないしさ」
「えっと……」
「ほら早く」
俺が突然の事に戸惑っていると、フールが俺の手を引く。そしてなぜか、三人の女性の輪の中に入ってしまう。
「で、どうする? 誰からキスする?」
「では私から」
「ちっ、しょーがねえな。オレ様はまだ新参者だし、一番は譲るぜ。仕方なく、な」
「ではご主人様、失礼します」
メイはそういうと、俺の両頬を掴み唇を近づけてる。そしてゆっくりとキスをしてくる。
「んっ♡ ちゅっ♡ ちゅー♡」
「おい長いぞ。早くオレ様にもさせろ。んーっ♡」
そう言って、俺とメイのキスにフールが割り込んでくる。俺の唇を二人の美少女が取り合いだ。
二人が少し強引に俺の体を引き寄せるものだから、メイとフールの柔らかい胸が俺の体に当たりまくる。い、いいのかこれ。
「あ、あの、私もしたいんですけど」
二人にもみくちゃにされながらキスしていると、後ろから唯奈さんの声が聞こえる。
いや、唯奈さんは人間だからキスは必要ないはずだが……。
「おっと、わりぃ。ちゃんと仲良く分け合わないとな」
「ええ。さ、唯奈もどうぞ」
「ありがとう。――ちゅっ♡」
争うように俺の唇を取り合っていたフールとメイは、一度離れて唯奈に譲る。唯奈さんは少し緊張した様子でためらい、えいっと声が聞こえそうな勢いで抱き着いてきて、唇が軽く触れるキスをしてきた。
「ふふ、よかったですね唯奈」
「さて、とりあえずこれで全員キスできたわけだし、オレ様はもう一度っと。んーっ♡」
「こら、抜け駆けはなしですよ。もうっ」
こうして俺は、朝から三人の美女に唇を何度も奪われた。そしてこれが、恐ろしい事に毎朝の日課になってしまうのだった。




