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ディキシースタイル・テネメンツ


まだ、生きていた頃の話なんだけど


昔、都市計画が成功して不動産バブルが発生して

独身若年労働者向けのワンルーム・マンションですら

若年労働者平均年収の3倍を超える値段になって


平均的な住人は持家なんか諦めたクラスタがあってね


ディキシースタイル・テネメンツ


テネメンツが東洋の国で中世に庶民が暮らした長屋


ディキシースタイルってのは、西部劇って映画に出てくるような街並み


そう呼ばれるほどに色んな人の懐古趣味を凝縮して作ったはいいけど


あっという間に懐古趣味の高齢者だけがクラスタに住み着いて

衰退都市となっていった


そうなると、インフラも賃貸物件も手入れがいきとどかなくてボロボロ



長年、賃貸物件で生活してきて

年金生活者になるまで長生きできた人々が増えて


年金原資として積み立てた資金が数回の経済危機や

少子高齢化で年金保険料を払う側の人間が減少

年金を受け取る側の人間が増加した事による財源不足で年金基本額削減


親戚づきあいなど血縁より、同じ仕事をする人々により生成される集団縁や

同じ地域に住む人々により生成される地縁などを重視する人が増えた事で

どれだけの人づきあいを抱える事ができるかにも格差が発生


人的資源会計という物差しで破産状態

マイナスな人間関係や、有効な人間関係ゼロな人間が増え

孤独死、孤独な事が原因での認知症などによるトラブルなどが発生


そういった事もあって、高齢者に賃貸物件を貸す賃貸物件オーナーや

賃貸仲介をする不動産会社が減り


ある年齢以上な事を言うと賃貸アパートを借りれない人が発生

住所不定、無職の低年金高齢者が増えた。



最初は、今まで通り、いつも通りに、なんとかなると見積もって


”国に甘えるな、死ぬまで働け

 そして国のため地域のために納税しろ

 年金を働けなくなるまで受け取らなくて済むように

 高齢になっても、できる仕事を探して

 年金受給生活への突入時期を遅らせろ”


と高齢労働者へと言って

年金財源減少に歯止めをかけようとしてきた役所も


 低年金生活者ホームレスという人種が発生


 ホームレス平均年齢が63歳を超過


 路上生活と刑務所を往復する高齢ホームレス増加


 働こうにも働けなくなった高齢労働者による犯罪事件


 無理やり働かそうとして作業中に事故が発生する会社の増加


 どうにも、ならなくなった高齢者が多くの人を巻き込んで自殺


などなどの社会問題が発生したため、仕方なく対策をうちだした。


”アパートを借りれなくなった大都市生活の独身単身高齢者”


という人々が多く発生したってんで


それらの人々を収容する高齢者向けシェアハウス団地と

団地内の医療看護施設、買い物が可能な店などの

最低限、必要な小さな居住区画を運営する事になり


役所が居住支援NPO法人を設立して

その小さな街の運営を委託する事となったんだ


なんで、知っているのかって、ほら、生きている時

マッピークラスタで都市計画とか都市開発してたって話したろ


その時に関わった産業振興とか都市計画とかやってた

役人さんが左遷・・・いや違うな


”栄誉ある我々の職務である高齢者福祉業務”


を担当する部署に異動になった役人さんがいてな


その役人さんが酒の席で語ってたんだ

高齢者向けシェアハウスで過ごす人々の日常を


君等は若いから、なんのこっちゃ、だろうけど

親戚でも、いるだろ?


旦那が亡くなって、子供が親離れしてる一人暮らしの御老人


たまには、そういった人の事を考えてみても、いいんじゃないのか?



「・・・つまんねっす。なんで、また、そんな世界の事を?」



若い人間の内輪で、内輪の婆や・爺やになってしまった奴が

同じような堂々巡りにハマってんじゃない?


俺は、そんな堂々巡りにハマらないように気をつけよーっ


とていう教訓になるよ。

独身単身者生活って意味じゃ同じなんだからさ

嫌だろ、若い者の内輪の婆や・爺やになるのはさ?



「まあ、そうですけど、普通にしていれば

 そんな事には、ならないのでは?」



わかんないよー、

自分がハマった沼には関わった誰かもハメてやりたいっていう

悪意を抱える人間って何人かに一人の割合でいるみたいだから

そういう悪意の判別が見切れるようになるかもしれないよ



「悪意の見切りねえ・・・」



そう、女に縁が無いからって、ずーっと男とだけ関わっていたら


”女は女でも、よりによって、その女と?”


って言いたくなるような女と結婚してしまうアホっているだろ

あれって少しは、どんな女が世の中にいるのか知っていれば

見分けついたはずだよね。それと同じ


 子供が集まったら、”御前の母ちゃんデベソ”という悪口で


 独身男が集まったら、”御前の彼女 キモイ ブス”という悪口


って、ある意味、逆な世界があるのも知っておいて損は無いと思うよ


 高齢者が集まって、”御前のクソガキ 間抜け”という悪口


 独身女が集まって、”御前の彼氏 脳無し キモオタ”という悪口


という感じで逆な世界



「わかりましたよ。聴きゃいいんでしょ。」



我が国じゃ、底辺労働者は現役時代に払う年金保険料が少なかったんだから

払った年金保険料の総額を、年金支給開始年齢から平均寿命までの年数で

割った金額を毎年支給すればいいよねって制度なのは知っているよね。



「今の所は、そうみたいですね。


 将来は年金原資全体が減って

 年金支給開始年齢が、もっと高齢な年齢にズレて

 計算基準の平均寿命が払わないで済む方向に変わるんじゃないか


 とか言われてますけどね


 昔は、払った額の何倍も貰えている人がいるほどに

 年金原資を増やせてたのにとかも」



ま、そんなワケで現役時代の収入が少ないから

低年金で貰える年金も少ないから、一生、働かないといけない人が

健康状態が良くなくなって働けなくなると


独身単身者の御老人に賃貸アパートのオーナーから書面が送付されるんだ

何がか? 立ち退きを要求する内容の手紙だ。


 アパートも居住者も高齢化して家賃相場が騰がっているのに

 老朽化していて普通の相場くらいの家賃に出来ない


 居住者負担じゃなく、アパート所有者の負担になっている

 上下水道費や火災保険なども考えると採算が取れなくなりました


 この状態ではアパート経営が無理になった前オーナーから

 所有権を買って新しくオーナーとなった我社の会議で


 このアパートを取り壊して大都市の中所得者向けアパートを

 建設する事が決定いたしました


 大都市の中所得者が普通に払える家賃となりますので

 その家賃が払える居住者の皆様は引き続きに居住していただけます

 仮住まいとして我社の物件を現在の契約内容で提供します


 収入的に無理という方に無理に住み続けて下さいとは申しません

 そこは居住者の皆様の自由ですし

 他の賃貸アパートを探していただいて構いません・・・(以下略)


書いてあるのは、そんな内容。言い方は丁寧だが、


 低所得者層で年金生活者だから、この家賃は無理だろ

 それと水道光熱費。火災保険などは全額、居住者負担だからな、嫌なら出てけ


 いつ、家賃が払えなくなるか、わからない無職の低年金生活者には貸せない

 信用が無くなった。いわば信用破産したんですから、しょうがないですよね


という本音が丸出しだ。


強制退去で叩き出される前に新しくアパートを探さないと、ならなくなる。


長年、同じアパートで暮らしてきたので数十年ぶりの賃貸アパート探し

何件も不動産屋に行ってみるが年齢を言った途端、断られ相手にされない


たまに相手にしてくれても、親も死んでいて兄弟もいないから

保証人になってくれる人間がいない事を言うと断られる。


50件以上の不動産屋に断られ、疲れ果てて役所に相談へ行って

自治体が運営する”共生ハウス”と呼ばれる

高齢者シェアハウスに入居できると説明され

そこに入居する事になる人々がいたワケなんだよな。



「まさか、この学生寮が同じようなもんだとでも」



いや、そうは言っていないよ、数年で卒業して出ていくだろココは


そこは、一旦、入居したら死ぬまで出て行かない人が多かったからね

人によっては20年30年と住んでいたから、居住年数からして違うね



「なんで、そんな高齢者だらけのクラスタの話をするんですか?

 20歳くらいで、そんな事を言われても理解できない自分に」



んだから、そういうディキシースタイル・テネメンツ

ってクラスタがあるって事を覚えておいて

自分が、そんな所へと行かないですむには

どうしたらいいかを考えてみてもいいんじゃないかなって事さ


「豊かな老後を送れるように頑張ろうとでも?」


そうなんだけど、ははは、君は18歳だから

年金生活なんか遠い未来だから、まだ、どうでもいいよね。


「実際のトコは、そうっす どうでもいいっす」


健康だから、働けないほどに健康状態がガタガタになるなんて

想いもした事ないだろうからね


「そりゃ健康なんで、働けなくなるほどの病気になるなんて

 思いもした事ないっすね」


だよねー、ま、近くのディキシースタイル・テネメンツっぽい

懐古趣味な街並みで、住人の高齢化率が高くって

役所の老人福祉コーナーが巨大な近所の地域でも

今度、時間がある時にでも、見て来てみてよ


あー、近くにあったんだなーって知る意味でも

何かが理解できるようになるかもって意味でも



「そうですねー、どんな懐古趣味

 レトロ景色が出来上がってんのか見てきますよ」



30歳を過ぎて50歳を過ぎて60歳を過ぎてって

自分より若い人間に年寄りと言われるようになったら


自分が、どんな年寄りになりたいか考えてみるのも

たまには、いいんじゃないかな。まだ必要ないとしても


学園都市から出た後、企業城下町とかに行ったら


仕事に必要な事以外が全部どうでもよくなるし

会社で自分が必要とされるには、どうしたらいいか

というような事以外、何も考えなくなるから


もし、ヘヴィ・ブルーの世界とかに行ったら

日々の憎悪と憤怒と不満の爆発に埋もれて

人間関係というか怨恨関係の対処に追われて

何も考えられないかもしれないしね


そんな世界の話を聞く気は無くなって

見てみようなんて気も無くなるもんだから


違う世界を見たり聞いたりする気力があるのは

今の内くらいだよ。今の内、今の内



「といった事で、気力がわいて気がむいた夜にでも、また。」



そっだね、もう真夜中になった事だし、また、気がむいた夜に


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