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フリーソウル


こんばんは、そろそろ引っ越してきて時間が経過して

同じ事の繰り返しになって、刺激を求めたくなったかな?


そんな君に今夜は、刺激を求めすぎた人々がいる

クラスタの話でもしてみようかな


”街の魂”といっても色んな魂がいて、自由である事に拘る魂ってのがいてね

住人に色んな自由がある事を望んだんだよね



たとえば、表現の自由。


他のクラスタじゃ、猥褻図画という事で駄目なエロティック・アート


気持ち悪い不快感を与えるから、けしからんと言われるような

過激で暴力的なグロテスク・アート


どれも、そのクラスタじゃ、アートの1ジャンルとしてOK



それとか、恋愛の自由


同性愛者や、男女両方とも恋愛対象なバイセクシャル


元男や元女なトランスジェンダー


どんな相手と恋愛しようが個人の自由としてOK



”街の魂”の声を聞こえる人間が政治家になって

そういった自由を認めるように条例を申請して国に認めさせたので

他の規制があるクラスタから自由を求める人々が流れ込んだ。理由は様々。


さっきあげた2つの自由に関して言えば


 過激でアバンギャルドな作品を創作したい人々


 男同士や女同士で結婚できる恋愛の自由

 一夫多妻、一妻多夫での結婚生活を求めて来た人々


でもね、そうした自由を求める人間が過半数を超えると

不思議な現象を発生させるようになったんだ


 普通の常識からしたら、変態と呼ばれる感覚なのが普通で


 普通の常識通りに男女が1対1で結婚生活を送り

 子供を育てる家庭を持つという常識的な感覚は普通じゃない


と言い出したんだよね。不思議な事にね


なんで、だろうね。



「自分と違う人間は変人と言うのが人間だからじゃないですか?


 自分と違うのは異常で、自分と同じなのが正常だ

 と、どんな人間でも言い張りたくなるもんなんでしょう。たぶん」



うーん、そうだね。そうだったのかもね


民主主義って多数決が基本だから

住人の過半数を超える人の常識が常識になるってトコあるから



「そういやあ、なんて名前のクラスタなんですか? そこ」



フリー・ソウルっていう名前のクラスタ


先進国内にだけあった頃は、それで良かったんだけど

世界的に成功するアーティストとか出現した事で


 シンガーソングライターがワールドツアーをしたり


 芸術家が国際大都市で個展を開いたり


 国際的グローバル大企業が宣伝をする広告に

 芸術家の絵やら、シンガーソングライターの音楽やらを

 利用して同じ広告を全世界展開したり


というように、このクラスタにしかなかった

色んな感覚が輸出される事になった




でも、そうすると、オマケも輸出する事になる


 面白パロディ、物まね、などの公認や許諾を出すかどうか


 盗作や海賊版とかの取り締まり、著作権、肖像権とかの保護


 エロティック・アーティストの作品のように

 国によっては所有するだけでワイセツ図画所有罪という

 犯罪になってしまう事などの調査


そういった事をする弁護士、国によって表現の自由が違えば

法律とかも違う


 国によっては一夫多妻が許されないから

 一夫多妻で大勢の妻や子供を連れて

 ワールドツアーをする天才的な音楽家が

 その国で怪我とかをした時には

 第一夫人と、その子供しか病室に入れない


とかいうように民法とか刑法とかも違うので

そういう事に対処する国際弁護士


国際世論を調整する仕事。なんて呼ばれてたかな

・・・えーと、忘れた。とにかく目立たないように

主要国際都市での評判とか、広報活動とか

ロビー活動をするロビイストへの対策とかをする

なんでも屋にアレコレをする仕事をする人


一言で言うと一人お天才の作品を

全世界で売り続けるたけに仕事が発生したんだよね



「実際には、フルーソウルクラスタでのライフスタイルじゃ

 どんな事が、あったんですか?

 どうにも自分には無い感覚なんで、ピンとこないいんで」



たとえば最初フリーソウルが出来上がった街に

レズビアンの芸術家がいた。


どうにも男という存在が汚く醜いものに見えて

嫌悪感しか感じていなかった


その嫌悪感は同居の家族として接した父親が

だらしなく汚く醜かったから、という事もあったのかもしれないが


結婚相手も当然に女


その芸術家の創る作品も女性らしい可愛らしさとか色気とか

女神信仰ってもんに近いような感覚を表現したエロティック・アート


結婚相手なシンガーソングライターが歌うのは

女同士の恋愛世界で生まれる情念


一緒に結婚生活をする内、どちらともなく自分の子供が欲しい

という願望を抱くようになり、精子バンクで理想の精子を探す事になった


子供と作るためにとはいえ、普通の男女夫婦がするような夜の営みは

二人とも受け入れられなかったから、そうなった


精子提供者は、片方は外見だけは自分にそっくりなグラムロッカー

もう片方は学歴や職歴が自分と同じグラフィックデザイナーを選んだ


結局、中性的で男らしい所なんかは一切ない

女装したら女にしか見えないほどの女顔

レズビアンの自分でも惚れてしまうような、美女みたいな男な

グラムロッカーを精子提供者に選んだ



出産してからは、ライブパフォーマンスで稼ぎがある方が仕事へ出かけ

昔の作品で多額の印税が入ってくる方が子育てに専念した


子供が成長して、自分で産んでいない方に似てくる

自分の分身とも言えるほどに娘を溺愛して同一化していく


片方が、そうなるのを見る内

もう片方の心に、ちょっとした変化が訪れ、今まで無かった欲望が生まれた


”私も自分で子供を産んでみたい ・・・ 女の子を”


そして二人目の子供を、もう一人の女も産む事になった


学歴や職歴が片方と同じような精子提供者を選び

女の子を授かるまで、何度も挑戦した


二人の娘と、二人の母親という構成の女ばかりの一家


女同志の恋愛で男役、亭主のような存在になっていた女には

自分が生活する日常に男が存在して、自分に変わって御主人様になって

自分がメイドのような存在に貶められるのは耐えられなかったから


二人の娘にも、自分達と同じ結婚生活をするように性教育をして

実の娘二人に義理の娘が二人、孫娘が二人ずつ生まれて

三世代同居の10人家族で、フリーソウルクラスタで生活している


このクラスタじゃ当たり前な、よくある光景



「うーん、それって、その先進国での話ですよね


 我が国の法律じゃ女同士で結婚できないし、精子バンクも無い


 出産前に子供の性別をチェックして

 欲しい性別の子供じゃないから中絶とか

 できたんでしたっけ?


 男尊女卑とか男性中心社会で

 女性差別主義者な男もいるくらいだから


 ちょっと考えられないですよね」



そうだね、じゃあ我が国に出来上がったフリーソウルクラスタ

での出来事を言ってみようか?



そのフリーソウルで暮らす国際的に有名な俳優はゲイだった。


女という存在には、ドロドロした情念めいた呪文と唱える

妖怪のようなものにしか見えなくて嫌悪感しか感じなかった


その嫌悪感は同居の家族として接した母親が

恨み辛みの籠った呪いの呪文のような不平不満を言うのを

小さな頃から聞かされていたから、という事もあったのかもしれないが

女と結婚する自分と同じ男が信じられなかった


だが、しかし、同じ会社に所属するグラムロッカーの恋人が

ある日、突然に自分の子供が欲しいからと結婚した


結婚相手は外見だけは自分にそっくりな女優

中性的で女らしい所なんかは一切ない男装したら男にしか見えないほどの男顔

ゲイの自分でも惚れてしまうような、ハンサムな女だった


結婚してからも、会社で同僚としてのつきあいという名目で出かけて

男同志の恋愛関係を深めていたのだが


自分の分身とも言えるほどに子供を溺愛する恋人を見る内

男の心に、ちょっとした変化が訪れ、今まで無かった欲望が生まれた


”私も自分の子供が欲しい ・・・ 同居の女房(クソババァ)は必要ないけど”


そして恋人の男に似た女優の女と結婚

恋人の男に生き写しな子供が産まれると離婚


男同志の恋愛で女役、女房のような存在になっていた男には

自分が生活する日常に女が存在して、家庭内権力を握って女主人になって

自分が働いて金を貢ぐだけな奴隷のような存在に

貶められるのは耐えられなかったからだった


そして、男女夫婦生活と、男同士の不倫関係

という三角関係を抱えてはいたが


それ以外は常識的な社会人生活を送る男二人 女一人の生活を始めて


数年後、女が男二人女一人という組み合わせでの夜の営みを受け入れて

三人だけの秘密を抱え、5人一緒に暮らすわけには、いかないので

夫婦と数人の息子、一人息子を抱える父子家庭という二つの家族が

同じ我が国版のフリーソウルクラスタで暮らした



「うわ、やっぱ違いますね。男女での夫婦だけが合法で

 不倫は相手が男でも違法なんでしたっけ?

 だから、そうなりますよね」



まあ、そうだね、だけど、これって一人だけ存在を許された奥様が

この世界を許したら成立する世界で


子供の性教育とかを、どうするべきなんだって問題があるけどね


子供が普通の男女恋愛を望んだら

拒絶反応を抱えて家から出て行ってしまう事になるからね



「いやいや、それだけじゃないでしょ問題は」



まあ、本家の国でのフリーソウルクラスタで発生した

ビート族、ヒッピー族、市民運動家、ゲイ・コミュニティとかの


保守的な価値観を破壊して新しい価値観を創造するって思想でも


我が国には、どうにも受け入れられないものだった

思想というか群衆心理もあったワケだしね


 主要年齢層が18歳から34歳の若年労働者層


 ボヘミアン的な都市内居住空間


 学生を集めるための芸術大学や音楽大学


 芸術家を育成するためのSOHO


 作家を育成するための出版社


 演劇人を集めるための劇団


 人気テレビ番組や人気雑誌のパロディ


などが設立され、ある程度の人材を都市へと集めたり


 なんとなく面白半分に見物してみようかな

 と思わせるような都市宣伝


 あの地域へ行くと何か面白い物があるんじゃない

 と思わせるような住人紹介などのイメージ操作や宣伝


ってな事をしてのイメージ戦略は真似できても、


可能な限り、個人の自由、競争の自由に至るまで

規制緩和をする度胸は、国民性レベルで無かったって事なんだよね



「既存の概念を打倒して新しい概念を創造したい

 という欲求というか願望を抱える群衆心理

 常識的じゃない常識が流行して定着した都市


 という先進国のフリーソウルクラスタと同じには

 ならなかったって事ですよね」



まあ、そういう事、その今まで通り、いつも通りを維持するため

秩序を維持するためのある古典的な常識から逸脱した


新しい常識を都市レベルで定着させるのは難しいって事だよ


逆に国の都合で常識を決められる国に出来たのは

フリーソウルクラスタじゃ無かったけどね


「そりゃそうでしょ。


 国がトップダウンで決めたら

 個人の自由でボトムアップで作り上げるフリーソウルとは

 水と油に、なるものでしょうからね」


うん、そりゃそーだ。うんうんうん。


ま、今夜は、そんだトコで、じゃ ま


「邪 魔」


なーんか、最期の別れ際の言葉に悪意を感じるんだよね


「気のせいっすよ」


そだねー おやすみ


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