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マッピー


今、学生さんの人気ナンバーワンなマッピークラスタ

名前を聴いた事くらいあるよね。

将来の事なんか、就職の事なんか何も考えてない君でも



「いや、考えてるし。そりゃ就職希望者が殺到する

 人気のグラーバル大企業が並ぶ企業城下町クラスタに

 隣接する上昇志向の高い有能な正社員様が暮らす


 マッピークラスタは誰もが知ってますよ


 マッピークラスタ住人になれた大学サークルのOBが

 いかす俺様自慢をしに、週末の飲み会とかに乱入してくる」



いやー、そういうのがいるのか、でも、そのOBが知っている世界が

マッピークラスタの全てじゃないと想うぞ


今夜は、マッピーワールドを語ってやろうじゃないか


「ふーん、マッピークラスタの街の魂と仲いいんですね」


そりゃそうよ。いわゆるソウル・ブラザーというやつだ

魂の絆で結ばれているとも言う



・・・・



大都市に本社があるグローバル大企業に入社して

仕事をしながら仕事を覚える体験をさせてやるって言われて

大学を卒業した人間が行くのがマッピークラスタ


マッピークラスタが出来上がった頃は

超個人主義ミーイズムだかってのが発生していたから

最初のクラスタ住人も、そのミーイズムに染まってた。


自分個人の個性、才能がどうかを語りたがる人間だらけで



街の魂も、何かにつけて


 この有能な私を、無能な人間と一緒にしないでくれ

 そのような人間と一緒にされるなど私のプライドが許さない


だの


 同じ地域に住んでいるのが同じなだけの恥知らずと関わるなんて嫌だ


だのと言って、共同作業のための作業分担には応じるけど

人間関係とかを維持するための集団行動には応じないのばっかだったなあ



「過去形、じゃ今は街の魂も、そういう個人主義者じゃないんですか?」



途中でというか、街の魂が色んな学園都市からやってきた

色んな魂と溶け合って変化したからね。今は違うよ


でも、当時は個人主義というか


 まずは自己主張、俺は有能と主張して実力が追いついて

 有能と評価されるために努力する事が素晴らしい

 無能という評価をされたら、このクラスタから追い出されてしまうから


という若い向上心あふれる若い労働者の集合体だったし


街の魂も、素晴らしいクラスタにレベルアップするぞお。

と魂の格を自分のいるクラスタを素晴らしい街にするぞと熱くなってたからね


でも、魂に個人とか団体とか関係無いんだよね

クラスタの名前が、街の魂の名前みたいになってはいるけど

人間でいう個人って言う単位は、魂には無いからね



「ワケ、わかんないっす」



そうだなー、そうだ。親戚の高齢夫婦で、長い共同生活で

どっちが旦那で、どっちが奥様だっけってくらいに

同じような外見になって同じような事を言うって感じの

どっちが、どっちだかって夫婦いない?


あれって長期間、色んな経験を共有する内に一体感が形成されて

会話しなくても互いの事が理解できるって事なんだよね

共有一体意識ってのが当たり前になっているってね


若いから理解できないかもだけど、人間でも長く一緒にいるとそうなる

ましてや、長い長い時間を一緒に過ごす魂は

共有一体感も人間なんかと比べ物にならないほどに強いわけなんだよね



「いわゆる群衆心理ってヤツが作られてるって事すか?」

 


いや違う。群衆心理ってワケでもないな。


言葉で上手に表現できないんで、君が、”街の魂”の言葉を聴く内に

こういうもんなんだと、理解してくれりゃいいかな


とにかく、街の魂に個人も集団も無いよ



「じゃ、ミーイズムが理解できなかったんじゃないですか?」



いやいやいやいや、魂も昔は肉体を持つ人間だったんだわけだから

人間レベルの発想を理解しようと思えば、理解できるんだよ

ただ存在が違うから同じ事はしないってわけだよ。



「ちょっと、ネット検索したら、こんなん出てきましたけど、これの事ですか?」


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マッピークラスタに集結しているのは上昇指向の高いシングルや、

DINKS (Doble Income No KidS)などと呼ばれる子供のいない共働き夫婦


富裕インテリ地区に住む一族出身が一時的にファミリーから離れていたり

逆に子供が出来て一族のいる富裕インテリ地区に戻ったりするので

富裕インテリクラスタからの影響は結構あった


このクラスタが発生した頃、18歳くらいのシングルだった大学生が

30歳を超えて若年労働者層では無くなり子育てを開始する頃には

このクラスタはニュー富裕インテリ層になるのではないか

というようなクラスタの住人がクラスタの未来を語る事もあった



大都市郊外に多数発生した、このクラスタは隆盛を誇り

マッピースタイルの都市開発方式が輸出された


高級マンション、タウンハウス、それより少し安い家賃で住める中層アパート


その室内には洒落た室内装飾。

プロイアー家具、ブッチャーブロック寄せ木、バルセロナ椅子などが、ほどこされている

といったのが内装パターンだった


中には出身の富裕インテリ地区から持ち込んだアーサー王朝風のインテリアを

そのまま、タウンハウスで使うシングルもいたが

建築に関して拘るのは少数派で同じような室内装飾をする人が多かった


マッピークラスタの最初の住人はパソコンが一般消費者向けに発売された頃

ハイテク産業へと所属していたホワイトカラー

40%ほどが年収35000ドル以上を稼いでいた


マッピー地区においては、人生はゲーム、競争というゲームと誰かが語った。


マッピーは、有能さを発揮して自分が勝利する事、勝利への執着が強かった



主要構成層:18-34歳 大卒シングル・子なしカップル ホワイトカラー

家計所得中央値:30398ドル

住宅価格中央値:106332ドル

人気TV番組:60ミニッツ、チアーズ

人気雑誌新聞:ラダー、サンセット、バロンズ

高利用自動車:VWカプリオーレ、ポルシェ911、BMW5


テキサコ州  ピューストン市 イーストハイマー

コリフォルニア州 サンゼルス市  レードン・ビーチ

ピョージア州  アトラント市  サウスサイド


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うん、そう、これこれ、そうそうそう


んで2年くらいで帰国させられて、たまたま海外からの投資が集中して

バブルが発生していた我が国で

このマッピー地区を丸真似したような地区を作る

都市計画が立案されたワケなのだけれども



それまで農業が中心産業だった頃の名残りで


 同じ農村で村長様と村の上役の言う事を聞いて

 地道に同じ事の繰り返しだけが素晴らしいと信じて


 家も村の一部、村人は家の一部、みんなで集団行動、一緒に野良作業をして

 秋には収穫祭で今年の収穫を一緒に祝おう


という農村文化が大都市から地方都市まで浸透していた国に


先進国ミーイズム。超個人主義を導入するために色んな試行錯誤をしたわけだ



 テレビで国内版マッピーの生活スタイルをする主人公なドラマを放送したり


 雑誌でマッピーのライフスタイルや消費行動を特集したり


 マッピークラスタを丸ごとコピーしたような分譲住宅地や

 関係会社の独身寮や、子供のいない夫婦向け社宅を建設したり


と、グローバル大企業だった我社が関連企業や協力会社に


上昇指向の強いマッピーのイメージを国内向けに宣伝して

有能な働き者を増やそうじゃありませんかってね



”自立する働く女” ”目指せハイキャリア、レベルアップする女”


というような一生、独身女性労働者として生きる事をキャッチフレーズとする

御嬢様から長老まで、ほぼ女性だけで構成されている同業者団体に所属する会社


”明るく元気に大勢の人と交流する王様や貴族のように遊ぶ週末”


というような流行を創る飲食、外食業界チェーンとか向けに

少しだけ特異な宣伝もしたけれども



「え? それって少子高齢化を招いたのでは」



へ? 笑止恒例家? なんじゃそれ?

今って、そんな落語家でもいあるのか? 知らんよ


バブルの中、社会人になったのが最初に見るのは、そんな感覚だったから


同期とか直後に入った後輩とか

ウィンタースポーツにスキーへと出かける感覚から

海外旅行へと出かけて、国外から自分の国を見る感覚

果ては環境について考えるボランティア感覚まで


マッピークラスタ住人が作り出した感覚に染まった


特に先進国のオリジナルな、マッピークラスタを知らないで

プロジェクトで開発した我が国版マッピークラスタの住人になったのは


意識だけ、教育の甲斐あって先進国マッピーと同じになったけど。

少しだけ問題を発生させたっていえば、問題を発生させたな


同じハイテク企業でハードウエア担当が中流国民感覚で

ソフトウエア担当がマッピー感覚になるケースが結構あって


組み合わせの妙で補い合って、うまくいった場合は良かったが失敗した場合


 御前等のせいだ。以前うまくいったのも我々のおかげだ


という言葉の暴力が飛び交う責任の押し付け合いになって

毎回、激しいものとなって過激にエスカレートしてしまう事が多かった。



「自己主張の強い個人プレイをする人間が多数派になったら・・・

 そりゃ、そうなりますよねー」



まあ、結局。時は流れ、先進国で株の大暴落や不動産暴落などが発生して

先進国では少しだけ調整相場になる程度の暴落だったけど


先進国がクシャミをしたら、我が国は肺炎になるってな

株やら不動産やらの大暴落に見舞われて

バブリーな時代は終わりバブルは吹っ飛んだ


んで、マッピータウン都市開発プロジェクトは

第一弾が終了した所までで、第二次や第三次は中止


というか第三次じゃなくて大惨事になったんだろうけどな

プロジェクトを続行しても


あ、書き文字だとわかるけど語り文字だと

なんのコッチャになってしまうな


ま、とにかくマッピーていう流行が一旦、廃れて忘れさられた

感覚の下敷きとなっていたミーイズムも時代遅れになって

我が国で無理やり創りあげたマッピータウンは放置された。


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