野良魂 群生クラスタ
世の中、変わり者がいるもので、わざわざ辺境の山奥に住む人間がいる
人間より熊や鹿や猪みたいな野生動物の方が多い地域に
そういった地域に住んでいると、人間を怖がらない野生の熊とかの対策が必要
なんで、月刊ハンターとかいう狩猟雑誌を購読する人が多いくらいだ
狩猟免許に関する制度
狩猟免許所有者に支払義務が発生する税金
農林水産業等への害性で狩猟対象な鳥獣に指定された鳥獣類
鳥獣保護管理法で指定された狩猟期間
狩猟が禁止又は制限されている区域
危険猟法、銃猟制限、禁止猟法
法律でアレコレと決まっていて、守らないと狩猟免許取り消し
面倒だけど法律だから守らないと駄目だし、税金は払わないと駄目
農作物を食べてしまう害獣は農家からしたら駆除したい存在だけど
動物保護団体に言わせると、自然破壊や環境破壊で
従来の生息地域だった山奥での木の実などが不作になっているんだから
生きるために仕方ないんじゃないでしょう。という言い分になる。
不動産の値段が安いし大都市での生活も嫌になったから
安く家が手に入る山間地域で家や別荘を買った後で
実は動物愛護団体が野生動物の保護活動をしている上に
猟銃で撃ち殺したり、罠を仕掛けて薬殺したり
駆除した後の解体作業をしたりするのに金がかかる。
金が無いからで放置していて、熊に襲われて怪我したりする
住民が出てから気づくとかね
でも世の中、住民からすると理不尽な事を言う人はいるんだよね
それが、この野生動物が暮らす山間地区じゃ動物保護団体ってワケだ
動物愛護がすぎて、罠にかかっても山へと戻すだけどかしてたら
熊が人間を怖がらなくなって人の住んでいる所まで来て
食えそうなものを片っ端から食っていく
でも鳥獣保護区だから死人が出ようが怪我人がでようが駆除できない
人間の命より、野生動物の命の方が大事とか主張する人すらいる
こうした地域にも金持ちってモンはいるもんでね。
自分の別荘敷地に入ってきたりして危険だからって事で
金に物を言わせてハンターを雇って完全駆除したんだよね。
なんとか動物保護団体にバレナイように駆除したつもりだったんだけど
どこから情報漏洩したのか、動物保護団体に知られた、そこからが大変。
違法な動物駆除 と言い張り保護区から出ていけと主張する動物保護団体と
人命保護のための必要な対処 と言い張って保護法律違反を認めない金持ち住人
ずーっと相手の言い分を聞くつもりのない裁判が延々と
儲かるのは弁護士や法律事務所だけなのに
結局、どうなったかって? 金持ち住人が死ぬまで裁判が続いて
遺族は、そんな人間より野生動物が多い土地なんかいらんと言って
動物保護団体へと土地建物を売り払って
今は動物保護団体が野生動物の生態を調査するために利用している
結局は、金持ち住人は個人だけど、動物保護団体は人間が入れ替わっても
ずーっと継続維持していく団体だから、団体の方が勝つって例
どっちに感情移入する? というか、どっちの言い分が理解できる?
「そりゃあ、金持ち住人の言い分の方が理解できますかね
自分の所有地の近くに危険動物が住みついて
いつ襲撃されて怪我したり殺されたりするか、わからないって状態になったら
いくら命を大事にしましょう。野生動物の命も命、命は大切に
と言われても、自分が死にたくないから駆除活動に賛成するんじゃないかと
でも、まあ、そんな人間より野生動物が多い所になんか住まないでしょうけどね」
そっか、そうだよねー。ところで話は走り幅跳びするんだけど
”街の魂”と呼ばれている俺らの中に、野生動物みたいな魂も存在しててね
それの吹き溜まりで生きている人間より
野生の野良魂の方が多いクラスタってのが実は存在しているんだ。
すでに凶暴化して生きている人からすると
悪魔とか悪霊とか怨霊とか呼ばれるような存在になった魂だらけなんで
もう、全面駆除する作業をするか、放置して類が友を呼んで
そいつらの、悪魔のささやき とか 悪霊の呪いを聞きながら
生きていける人間くらいしか住んでいないクラスタが
「何か言いたそうにしてますが、まさか、その駆除作業に協力しろとでも」
うん、実はね。なかなか俺らの存在を見れて、言っている言葉を聞き取れる
生きている人間って少なくてね。
俺らも生きていて肉体があった頃の事なんか忘れているんで
そこにいるのが悪魔とか悪霊とか呼ばれる悪い存在
駆除されるべき害悪な存在なのかどうかってのが判定できないんだよね
善悪ってさ、時代によって変化するっていうだろ?
悪霊とか呼ばれるようになってしまった魂の言い分と
住民の言い分を両方聞ける君に、両者の言い分を聞いてきて欲しいんだけど?
「嫌です。お断りです。そんな事やって何かメリットがあるとでも」
えー、メリットが無いと言う事を聞いてくれないのか?
しょうがないな、だから最近の若い者は
損得ばかりで判断しやがってとか言われるんだよ。
じゃ、こうしよう。もし両者の言い分を聞き出して、とりまとめてくれたら
君との相性のいい。君が一緒に過ごして楽しい人生が送れる魂を持つ誰かと
関わらせてあげようじゃないか。楽しい人生のために、どうかな?
やっぱ生きている内に楽しく過ごさないと一度きりの人生だ
「えーっと、本当に。聞き出すだけでいいんですね」
うん、聞き出すだけでいいよ。説得しようとしても変わらないから
「その悪霊とか悪魔とか呼ばれる魂に攻撃される事って無いですよね」
うん、一緒に俺も行くから、攻撃されそうになったら防御するし
危害を加えそうなほど凶暴化してんのとかとは関わらないでいいから
言い分を聞いても、もうワケの、わからない事を言い張るだけだろうし
まだ穏健派って感じのから、聞き出すだけでいいから
・・・・
そういうワケで、野生動物保護クラスタ ならぬ
野良魂 群生クラスタへと、夏休みに行く羽目になった
野良魂の言い分は誰も同じような内容
昔は神候補として妖精だった自分が、魂の格が堕ちて
こんな吹き溜まりにしか存在できなくて虚しいし悔しい
なんとか野良魂から脱して、どこかのクラスタの、”街の魂”に
返り咲きたい。ただ、それには、ここの住民が誰かに憑いて
そこのクラスタへと行かないと駄目なんだけど
一旦、このクラスタに染まって
どっちが悪霊で悪魔だかって状態になった
悪魔のような人間が移り住めるようなクラスタも無く
しょうがなく、ここで燻っているのだ
「あれ? 街の魂って、個人と団体って概念あるの?」
んー、あると言えば、あるし、無いといえば無いね
同じような街の魂が混ざって集合体になって
どれが誰だかって感じに巨大化する事もあれば
混ざってゴッチャになってたのから抜け出して分裂する事もあるかな
「じゃあ、ここまで集合体化が進んで悪魔と呼ばれるような意識を持った
街の魂の集合体から、分裂してマシなクラスタの街の魂にってのは・・」
まあ、無理かな。
実際の所、もう後戻りできないくらいに魂が濁って汚れてるから
混ざろうとしても拒絶されるだろうね
ここより、もっと濁って汚れた魂の集合体には行けるかもしれないけど
神と呼ばれるようなほどに高貴な、”街の魂”には相手にされないし
ここより、もっと清らかで澄んだ魂の集合体には拒絶されるだろうね
だから、ヤツラの望みが叶う可能性は低い。
「低いって事は、可能性はあるんですか」
ん、あるよ。ただ、それには凄い無理難題をクリアしないと駄目だけどね
「そうですかー、まあ、いいや、というワケで聞き出したから、これでいいですね」
いや、ちょっと待て、生きている人の側の諸々も聞き出せないかな?
「んなのは、聞き出さなくても、わかりますよ ネット検索すりゃ」
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野生動物保護クラスタ
農業くらいしか出来ないが金になる作物が育たないので辺境貧農クラスタとも言う
野生動物を見物にくる観光客による観光収入による消費税と
スポーツハンティングなどで狩猟に来るハンターによる狩猟税が、主な地域収入源
主要定住者、平均年齢55歳以上の農家
高視聴率テレビ番組、昔ながらの伝統演劇番組
高購読雑誌、月刊 ハンター
たまに悪魔崇拝などのカルト宗教が流行するが
すぐに教祖が馬鹿な真似をしてカルト宗教が解散する
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「だそうですよ、聞き出そうとしても
おのれ邪教徒、我等の神聖なる土地から去れ、出ていけ
とか言われるだけっす。群生する魂が教祖を育てて
その教祖を中心にカルト宗教が出来て善悪や道徳観や価値観を決めて
この土地でも、やっていける世界を作って、結局は破綻するってのを
繰り返してるんでしょ? いいんじゃないんですか」
いいのか? 本当に、そう想う?
「じゃあ、どうしろと」
正義の味方として根本的な解決策ってものをさ・・
「馬鹿な事を言わないで下さいね。無理ッス。
自分みたいなヨソモノ部外者な学生が何か言ったって
何も変わるわけないですよ
変えたけりゃ、悪意を利用して面白がっている
悪魔にしか見えない ”街の魂”を改心させて
善意に溢れる想いやりのある地域に
変えればいいじゃないですかぁ」
それは、そうなんだけどね。
ここまで色んな悪意が悪意を呼んで憎悪や憤怒が渦巻いているのが
当たり前になって、それに慣れた住人だけが住んでいて
”街の魂”も、それに馴染んでしまっているからねー
確かに仕方ないかぁ、まあ、いいのかな。これは、これで
「というわけで、約束は守って下さいね」
もちろんだとも、夏休み明けを楽しみにしていてくれたまえ。
君の今の魂と相性のいい魂を持った人間と関われるよ。ふふ。