表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/12

序章


高校を卒業して大学に入学して

大学がある学園都市に引っ越して

学生用アパートで独り暮らしを始めた頃


アパートの部屋に、”街の魂”と名乗る幽霊が現れて

話を聴けと煩く言うので仕方なく聞いていた。


嘘なのか、実際にあった事なのかは知らないが

幽霊は言いたい事を言うだけ言うと

スッキリした顔をした後、霧のように消え

そして気が向いた時に再び現れていた。


それを誰かに言えば、「何を言っているんだ」と

宇宙人を見るような眼で見られてしまうので誰にも言わなかったが


大学を卒業して学園都市を離れてから時は過ぎた

学園都市で過ごした時間についての記憶も薄れている


 どんなに毎日のように一緒に過ごした昔の恋人でも

 3年が経過すれば、どんな声だったかを忘れ

 5年が経過すれば、どんな表情をしていたかが薄れ

 10年が経過すれば、かろうじて名前だけは覚えているだけになる

 そんなものだ。


誰かが語った言葉が、ふと思い起こされる

誰の言葉だったろうか、読んだ何かに書いてあった言葉だったろうか

当時は、そんな馬鹿な一生、忘れられない人はいるものだ

と思ったけれども、人間は忘れる生き物なのだろう。


”街の魂”が語っていた事を思い出して言葉にして書いてみた

ノートに書き込んだ文字の羅列を見てみると

ずいぶんと乱雑な言葉が並べられたものだと想う


言葉自体を思い出せても、どんな事を感じたか

その瞬間に考えた事は結構、忘れている


聴かされた時は、なんの事だか、何を言っているのか理解できなかったが

数年が経過したら、なんの事を言っているのか理解できる言葉もあった


学園都市を離れてから数年後に

書いたのだろう手書きのノートを押し入れの奥から引っ張り出した

手書きで書きなぐられていて

誰かに読んで貰おうと思って書いていなかったからか

突飛で乱雑で文章になっていない


いくら文系じゃないから論理的でなくてもいいとはいえ

論文も、こんな感じで書いていたのだろうか


あまり優秀な学生じゃなかったんだよな、とも思える


書いてある言葉の中の数ページには

マンガか何かに書かれたような独身一人くらし男女の恋愛物語とかが

流行していた頃に、なんとなく自分でも、そんな物語の登場人物になれるかな

とか、わけのわからない事を考えていたようなページすらある


子供の頃の根拠の無い自信と思い込みというのは凄いものだ

客観的に読んでいる数年後の自分からすると

なんで、こんな馬鹿げた事を思い込んで

たいして話しをしたわけでもない相手に

感情移入していたのかが、今や理解できない。


現実にはアパートに荷物を運びこんで、前期に受講する講義に必要な資料を買って

毎日、大学で講義を受けて、生活費のためにアルバイトをして一人暮らしの部屋で眠る

たまに思い付きで入ったサークルでの飲み会がある夜くらいが多少、違うくらいで

淡々とした同じ事の繰り返しな生活があるだけだったのを思い出す


そんな何も無い日々を過ごしていた、ある夜

”街の魂”と名乗る存在が突然に話しかけてきたのだった。



・・・


やあ、こんばんは


「だ、誰ですか?」


私、いや我等は ”街の魂”君等のように肉体は所有していない魂だけの存在


「て、幽霊なんすか?」


いや、違う。街の魂。呼びづらければ


”たまさん”とでも、”たまどん”とでも好きに呼んでくれ


「いや、呼びませんよ」


こうして、たまたま、我等の声を聴くことができるようになった名誉を

有りがたく受け入れて、いいから、聞いてくれたまえ。我等の声を

その頭の中に置いてくれ、我等の語る言葉を


街と言っても色んな街がある。我等はクラスタと呼んでいる

この国は40ほどのクラスタに分割されている


ちなみに私は、この大学のある学園都市クラスタの ”街の魂”



”街の魂”の中でも神とか呼ばれて讃えられている存在は

君等の知っているはずだ


名門富豪クラスタ、富裕インテリクラスタ


と呼ばれている保守的な富裕層が居住している

上流階級とか保守支配階級とかいう住人がいる高級住宅街

そんなクラスタにいる ”街の魂”だ


権力、財産、賛美する後援者、などを持っている

現人神とか生神とか呼ばれ尊敬されている住人が住んでいる


この学園都市クラスタにいる多くの学生は

あのクラスタの住人になろうとして努力しているのだろう


住人が生きている人間の何かの内輪で神のような存在なのだから

街の魂も、崇高な神と呼ばれる存在に近くなっていて


たまに街の魂の声が聴ける人に語る道徳観とか倫理観も

色んな意味で深く心に染みいるような言葉に富んでいる。



でも、まあ、この学園都市クラスタを良い成績で卒業した

多数の人間が、どこのクラスタに行くかと言ったら


マッピー・クラスタ、ニューフロンティア・クラスタ


たまに突然変異が出て、フリー・ソウル・クラスタって

芸術家や、その卵みたいな人々の集まるクラスタ


あそこらへんのクラスタは

若い向上心の高い大都市で暮らす独身労働者が集まるとこだからね


街の魂も、まだ魂になってから年数が経過してない

魂の格が低いのが、そこらへんのクラスタの魂になる。


とても神とか呼ばれるような存在じゃない


可愛い外見で無邪気な言葉を言うから妖精とか呼ばれているのかな

たまたま魂を見る事が出来たり、言葉を聞けたりしたのが姿を連想して

こんな外見だったなと絵画にしたのが記録に残っている妖精なワケだしね


まあ、言っている事も若い可愛い感覚というシロモンだからだろうな


とはいえ学園都市で街の魂をやっている俺等より

魂としての経験年数が長いし魂の格が上なんだけどね



そういえば、ここに来る前、どんなクラスタにいたのかな?

というか、どんなクラスタを知っている?


「え、この学園都市クラスタ以外に?


 都心豪華マンション 都市シングル 都市下層シングル


 のような独身生活をする人々が住むクラスタ


 郊外ニューリッチ地区 郊外ヤングファミリー地区 子育てワーカー地区


 のような子育て夫婦が住むクラスタ


 企業城下町、リッチ・ワーカー、中流国民

 ダーティ・オールド・ワーカー、ヘヴィ・ブルー・ワーカー


 のような労働者が住むクラスタ


 山間農村、農業スモールタウン、穀物ベルト、辺境貧農


 などの農業従事者が住んでいるクラスタ


 サクセス・シルバー、リッチ・シルバー

 トワイライト・リゾート

 ディキシースタイル・テネメンツ


 などのような隠遁者や引退した人が

 余生を過ごすクラスタがあるんでしたっけ?

 親戚で、そんなクラスタで過ごす人がいると

 聴いた事がある程度にしか知りませんが


 ちなみに高校までいたのは中流国民クラスタですよ

 平凡で平均的な住民しかいないクラスタ」



うん うん、そうか そうか。


今まで君の視界に入ったのは、そういうクラスタなんだね。


わかった。


大勢の人に知られているのは、そこらへんのクラスタだよね



ちなみに消えてしまったクラスタがあるのを知っているかな?


消えると今までクラスタにいた街の魂がこんな感じの本を作るんだ

”街の魂”の全員が読める本になるんだよね

今までの、”街の記憶”と言えるような内容が書かれた本に



「え、そんな本に全部? 書けるもんなんですか」



あー、これは一応、本の形態をとっているけど

手にした ”街の魂”が知りたいと望んだ事だけが

ページの中に出てくるんだ


ま、ネット検索で特定のキーワードを入れると

いろんな情報が出てくるのと同じようなものだな、


たとえば、オールド・ブリック・ファクトリーズっていう

今は無いクラスタの本を呼び出して


こうして、その名前の意味を知りたいと思うと


 昔、古いレンガで造られた工場が並ぶ街だった頃に誰とも無く呼び出して、

 古いレンガの工場が無くなってもクラスタ消滅まで、その名で呼ばれた


ページに、こんな文字が浮かび上がる



「ところで、そんな消えたクラスタの話? 聴かないといけませんか?」



まあ、いいから いいから 聞いて、聞いてくれ。な。


いいじゃないか、まだ長い人生を過ごす未来ある若者


学校で勉強する学術理論も過去の優秀な人々が記録して伝えてきた

いまは無い過去の遺物についても書かれているのだし


ここで暮らすなら、”街の魂”の言葉に馴染んでも バチは当たらないぞ?

生きていく上での何かの参考になるかもしれないし反面教師かもしれない。


君が、どんな街の魂と長く過ごす人生になるか知らないが

知っていて損は無いと思うよ


この大学を四年で卒業するのしろ

大学院まで行って、もう数年、大学にいてから卒業するにしろ


大学院を出た後、研究室に残って教授様を目指したり

大学事務職や大学付属図書館の司書になって就職したりして

一生を、この学園都市クラスタで過ごすコースを選択しなければ


この学園都市クラスタから、いずれは別のクラスタへ移り住んで

そこで過ごす事になるんだから、その参考にでも聞いてくれよ

色んなクラスタがあるって事を語る言葉を


世の中、こういう世界もあるって知っていて自分から赴くのと

全く知らないで、何も考えていなくて

ある日、突然に何かに巻き込まれて

そういった世界に迷いこんでしまうのとじゃ違うし


知っておけば、おかしな世界に引き釣り込まれなくてすむかもしれないだろ?


でも、君が本当に何も興味が無ければ二度と現れない


神って信ずるものがいるから存在するのと同じで

”街の魂”も、その声を聴きたいと思わない人間には

何も聞こえないものなんだ


まあ、今夜は、こんなトコで


では、君が ”街の魂”の声を聞いてみたいと少しは感じた夜に


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ