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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-082 2度目のクリスマス


 翌日に、オリーさんからの返信が届いた。

 研究所の人達と元気に暮らしているらしい。俺達が一番知りたいことだったから、後ろで文面を呼んでいた七海さんも胸を撫でおろしている。


『……あの問いには、直ぐに答えられないわ。密閉した標本を持ち込むことができたので、現在遺伝子の解析を行っているんだけど、少なくとも4種の生物の遺伝子を持っているみたいね。他の生物学者がサミーの問いに興味を持ってくれたから、彼らに回答を作って貰うことにしたわ。早くても年を越えそうだけど、それなりの権威を持った博士達だから答えを皆が期待しているみたい。

 そうそう、サミーを特任研究員として推薦しようとする動きがあるわよ。場合によっては有名大学の学位を得られるかもしれないから、上手く立ち回って頂戴。

 ロッキーの冬はとんでもない寒さだったわね。体には気を付けるのよ』


オリーさんの返事をプリントして焚火の傍で読んでいると、エディ達に横取りされてしまった。

エディ達にとってもお姉さん的な存在だからね。ここを離れてしまったから気になっていたんだろう。


「元気みたいだな。それにしても特任研究員か……。また肩書が増えるぞ!」


 エディが自分の事のように笑みを浮かべて、俺の肩を叩く。


「研究所では、ゾンビの動きが良く分からないんだろうね。俺達の眼を通して自分達の疑問を確認したいということなんだろうな」


「それで学位が得られるんなら頑張れよ。このままでは、俺達はハイスクール中退なんだから」


「オリーさんの事だから俺達6人を推薦してくれると思うよ。でも、生物学だからなぁ」


 機械工学や電子工学なら、ゾンビ騒動が終わった後でも引っぱりだこになるんだろうけどねぇ。生物学なんて需要があるんだろうか? ちょっと考えてしまうな。


 一仕事を終えたウイル小父さん達が帰ってきたので、オリーさんからの返信を呼んで貰った。

 しばらくライル小父さんと文面を見ていたんだが、タバコを取り出して火を点けるとゆっくりとタバコを味わっている。


「学者先生方が興味を示したということが問題だな。やはり統率するゾンビがいるということになるだろう。そうなると、そいつらをどうやって見つけるかだ。サミーはある程度推測しているんだろう?」


「推測に次ぐ推測ですから、ある意味想像の産物と言うことになってます。もしもそんな奴ならば他のゾンビと見分けが出来ませんし、集団のどの位置にいるのかさえ分からなくなります」


 話してみろ……、と言うことで俺の想像する統括型ゾンビを説明することになってしまった。

 だけど、それが存在する為にはいくつかのハードルがあるんだよなぁ。その最たるものがゾンビはどうやって他のゾンビに意思を伝えられるかということになる。


「複数のゾンビに同時に噛まれた場合は、どの幼体が生き残るのかということに端を発しているわけだな。時間差があるなら、最初に脳に達した幼体が他の幼体を駆逐するのだろうが、それが出来なかった場合は1体のゾンビに複数の幼体がそのまま生き残る場合があるという事か……」


「ゾンビは頭蓋骨の中にあのクラゲを持ってることは、あの調査で分かったはずだ。それ以外に入り込める場所なんてないんじゃないか?」


 エディがウイル小父さんの呟きに、言葉を繋げた。

 そこまでは皆も知っていることだ。ゾンビの頭部を破壊すればゾンビは動きを止めるからね。


「あるんですよ。それも2つもね。ここならクラゲが入り込めるはずです」


 立ち上がって、自分の胸を指差した。


「肺ってことか? 確かに肋骨があるから、干乾びても問題は無いだろう。だが

ゾンビの動きは制御できないと思うのだが」


「ある意味、寄生のようなものです。体の動きは頭部を乗っ取ったメデューサが行い、肺に住み着いたメデューサは補佐する形ではないかと、元々が群体生物ですから通常のゾンビの3倍は頭が働くことになるんじゃないかと思っています」


 俺の推測に、皆の言葉が出ないんだよなぁ。

 やはり突飛な考えということになるのかな?


「それなら、その話をオリーにしてあげればよかっただろうに……」


「常識を疑いかねないでしょうね。俺だって半信半疑と言うところですから、それを補完するために、あの問いをオリーさんに投げたんです」


「分かった。現状では懸念事項でしかないだろうな。だが、先程のゾンビの動きを見る限り、かなり当たっていそうにも思えるぞ。サミーの事だから、対策も考えているんだろう?」


「他のゾンビと同じですよ。結局は頭部破壊で倒せるはずです。ですが、それでも動くゾンビがいた場合は、次に胸を破壊すれば済むことです」


 ウイル小父さんは、そんな統率型のゾンビに目立つ特徴があると思っていたのかな?

 傍目では区別がつかないと思うんだけどねぇ……。


「1カ月は待つことにしよう。向こうにも生物学者がいることだからな。だが、オリーの返事が来年の中旬まで来なかったなら、私がその話を伝えるぞ」


 レディさんが締めくくってくれたけど、それほど重要な事なのかな?

 ゾンビ相手の戦いは、今まで通りに思えるんだけどね。

 とりあえず頷いておこう。それで皆が安心するなら問題ない筈だ。

               ・

               ・

               ・

 待ちに待ったクリスマス当日。

 皆がリビングに集まって、クリスマスキャロルの合唱から始まる。

 甘めのワインとバーボン、子供達はココアみたいだな。

 丸いケーキにお菓子の家とサンタクロースが乗っているケーキではなく、パウンドケーキなのが残念なところだ。

 ゲームを楽しんだり、甘味を満喫したりと楽しい1日が過ぎていく。

 いつもの固いレディさんも今日は子供に帰った感じがするな。でも俺達にキスするのは止めて欲しい。七海さんが大笑いしてるのが気になっていたんだけど、ライルお爺さんが「頬にルージュの跡がしっかり残ってる」と教えてくれたんだよなぁ。

 エディ達を見ると、なるほど頬にルージュの跡が付いている。


「まぁ。1年に1度じゃからのう。今日はそのまま残しとくんじゃな」


 そんな事を言って、バリーさん達とバーボンを酌み交わしていた。

 鹿のローストが夕食だったんだけど、食事が終わったら子供達が焚火の傍でクリスマスキャロルを合唱してくれた。

 その後は直ぐに部屋に戻ったんだけど、これは明日の朝が楽しみという事なんだろう。

 小母さん達が、子供の名前を書いたリボンのついた箱をクリスマスツリーの下に並べ始めた。

 それを見ている俺達にも、自然と笑みが浮かんでくる。

 やはり箱の中身が気になるんだよなぁ。

 何が入っているんだろう?


 酔い覚ましに少し苦いコーヒーを飲んでいるんだけど、今夜はサウナには入れそうにないな。シャワーで我慢するしかなさそうだ。


「今回で2回目だな。来年はバーボンが飲めるかと考えてしまうよ」


「なぁ~に、デンバーにはたっぷりあるに違いない。クリスマスまでには1ダースは欲しいところだな」


 そんな事で盛り上がっているウイル小父さん達は、かなり酔ってるんじゃないかな。

 メイ小母さん達が呆れた顔をしてるぐらいだからね。


「貴方達もそろそろ休んだら? ウイル達と付き合うと朝まで飲まされるわよ」


 メイ小母さんの言葉に、俺達は顔を見合わせてしまった。

 確かに去年は、何時までも飲んでいた記憶があるんだよなぁ。

 それなら早い内にと俺達はシャワーを浴びるためにリビングを後にした。この後はテリーさんと蒸気機関の運転を代わらないといけないからね。七海さんにも24時で蒸気機関の運転を代わると耳打ちするとしっかりと頷いてくれたから、蒸気機関の部屋で待っていれば良いだろう。

 クリスマスだからねぇ。早めに交代してあげよう。


シャワーで体を洗って着替えると、最後にバックスキンの上着を羽織る。

 結構暖かいから気に入ってるんだよね。蒸気機関の部屋は暑いぐらいだから、向こうに着いたらGシャツだけで過ごせるはずだ。

 バケツに水を汲んで、蒸気機関の部屋へと急いだ。


「サミーか。少し早いんじゃないか?」


「クリスマスですからね。まだ料理が残ってますよ。フルーツパウンドケーキは全て美味ししかったです」


「それは楽しみね。ジンジャーブレッドは私が作ったのよ」


「子供達が取り合っていましたよ。俺は2つしか食べられませんでした」


 デイジーさんが「来年はたくさん作ってあげるわ!」と嬉しそうに言ってくれた。思わず笑みが浮かぶ。来年が楽しみになってきたな。


 2人が部屋を出たところで、圧力計と水位計を確認する。まだ注水するには早そうだ。窯の蓋を開くと、石炭が赤々と燃えている。こっちもしばらくは持ちそうだな。

 タバコを取り出して一服していると、七海さんがバスケットを持って部屋に入ってきた。


「メイ小母さんが持たせてくれたんです。ケーキの残りとビスケット、それにオレンジジュースとコーヒーです」


 笑みを浮かべてバスケットを受け取りベンチに置いておく。

 嬉しい差し入れだな。


「七海さんは、クリスチャンになるの?」


「私には、1つの神と言うのが理解しにくいんです。正光さんもそうなんでしょう?」


「だよねぇ……。困った話だけど、やはり多神教と言うか、精霊崇拝の日本的な考えが抜けないんだろうな。クリスマスはクリスチャンだけという事ではないらしいから、同じように楽しめるんだけどね」


「それで十分だと思います。でも、私達が死んだら、きっと聖書の言葉で見送りをしてくれるんでしょうね」


 それで良いような気もするな。

 誰からも顧みられずに亡くなるのは嫌だけどね。

 そうだ! お経をローマ字で書いておこうかな。ヘボン式の発音ならニック達にも読んで声に出すことができるかもしれないぞ。


「ここでの退屈凌ぎに石碑を作っておこうかと思うんだ。俺達が亡くなったなら、その碑文を呼んで貰えば良い」


「お経を刻むと! でもお経なんて本屋にも無いと思うんですか?」


「俺が持ってるよ。般若心経だから一番短いお経だし、七海さんの宗派でも般若心経をとなえるんじゃない?」


「天台宗ですよ……。確かに唱えてますね」


「俺のところは真言宗なんだけど、同じ密教だから問題は無いと思うよ。1度護摩壇を築いてロッキーの峰に祈ってみようかな」


「レディさんがカメラを持ってくるんじゃないかしら? 皆が驚くと思いますよ」


 変化のない冬ごもりだからなぁ。

 たまにはそんな催しも良いんじゃないだろうか? 俺達の宗教がかなり変わっていることは皆が知ってることだからね。

 となると、太鼓が欲しいところだ。

 和太鼓なら申し分が無いけど、ネイティブの人達も太鼓を叩くらしいから、どこかにあるかもしれないな。


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