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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
745/753

H-745 報告のお土産はRAP弾だった


 35号線を降りたのは、アルバラードから北に2kmほどの所だ。

 俺達を追い掛けるゾンビが視認できない位置まで離れたが、シグさんがジャックを作動させてくれたからそのまま北上してくれるに違いない。

 西に向かって進む。俺達の回収地点は小さな雑貨店らしい。小さいと言ってもアメリカだからねぇ。駐車場がやたらと大きいんだよなぁ。

 ブラックホークが3機着陸できるとのことだ。


「計画では2機だったはずですが?」


「1号車とロケットランチャーを回収するとのことだ。次に使えると考えたのだろう。私とサミーはワトソン中尉達と一緒に本隊に向かうぞ。マリアン殿に報告せねばならん」


 メールで済ませたいけどなぁ。

 作戦報告だけで終わるとは思えないからねぇ。たぶん、自爆ゾンビの対策という事になるんだろうな。

 シグさんがオリーさん宛てにメールを出してはいるんだが、研究所だって直ぐに対策まで考えることは出来ないだろう。

 

 エディ達を乗せたブラックホークが東へと飛び立つ。

 俺達を乗せたヘリは、懸架ワイヤーに1号車とロケットランチャーを取り着けるため少し飛び立つのが遅くなりそうだ。

 キャビンのガンナーに本隊に向かう際にダラスの中心部を見せて欲しいと頼むと、すぐにパイロットと調整してくれた。


「中心部と言っても、今は瓦礫だけですよ。300m程の高度で通過する予定です」


「ありがとう。変わったドローンが状況監視を続けているんだけど、やはり一度見ておきたいんだ」


 俺の言葉に、肩をポンと叩いて全員が席に着いたのを確認している。俺はいつもの通りキャビンの床に座って足を外に投げ出している。ベルトのカラビナにしっかりとハーネスロープを取り着けているからキャビンから滑り落ちたとしてもぶら下がって本隊の駐屯地に帰ることは出来るだろう。

 シグさんが困った奴という目で俺を見てるんだよなぁ。

 まぁ、いつものことだから慣れて貰うしかないんだよね。


 本隊への帰還時間は30分も掛からない。途中寄り道してもそれほどコースは変わらないだろうから、マリアンさんに起こられることは無いはずだ。

 ヘリが飛び立った。直ぐにガクンとショックが伝わったのは懸架したロケットランチャーが地上を離れたからだろう。

 北上しながら高度を上げる。とは言っても、地上300mほどの高さをキープしているのは、俺のダラス中心部を見たいという要望に応えるためかもしれない。

 速度はそれほど出していないようだから、地上を良く眺められる。

 住宅街が過ぎてビルの残骸が姿を現す。やがて押しつぶされたようなビルの残骸が姿を現した。


「かつての高層ビル街だ。この辺りで爆発させたのだろう」


 シグさんが耳元で教えてくれた。

 確かに凄惨な眺めだな。クレーターが出来ていないから空中爆発という事なのだろうが、高層ビルの残骸の高さが50mにも満たない。高度200m付近で炸裂した時の衝撃波でこうなったのだろう。高熱で焼けたコンクリートの残骸や溶けて曲った鉄骨も見えるんだが、その奥で蠢く姿がしっかりと確認できた。

 やはりゾンビを全て始末することは出来なかったようだな。

 人間と違って放射線への耐性が極めて高いらしいし、その上に進化の引き金になるんだから困った存在だ。

 核を使うなら戦術核ではなく戦略核、それもダラス程の都市であるなら数発使えば少しは違ったかもしれないが……。

 だが、大統領はこれ以上の核の使用には慎重だからなぁ。これからはABC兵器以外の大量破壊兵器を使うことになるのだろうが、それだって数に制限はあるだろう。

 簡単で極めてゾンビに効果のある兵器となると、ナパーム弾ぐらいしか思いつかない。だが、ナパーム弾でゾンビを焼殺するとなれば、瓦礫の中から外に出さないといけなくなる。

 事前に更地に近い状態まで砲爆撃を繰り返してのナパーム弾攻撃となると、やはり実行するまでにかなりの時間が掛るだろう。


 ダラス中心部を通り過ぎると、ヘリが高度と速度を上げて北上する。

 遠くに湖が見えてきた。

 本隊の駐屯地までもうすぐだな。


 牧場後の荒れ地にブラックホークが着陸すると、俺達を待っていたハンヴィーに乗り込んでテキサスⅡへと向かう。

 テキサスⅡの指揮所では、俺達が来るのをマリアンさん達が待っていたようだ。

 入って来た俺達2人に笑みを浮かべて答礼すると、窓際のソファーに案内してくれた。


「ご苦労様。誘導は上手く行ったわね。既に小競り合いが始まったわよ。戦力比が大きいから明日の朝までには決着すると思うけど、色々と情報を得ることが出来そうね」


「ダラスとウエーコの自爆ゾンビの違いが大きいです。俺の推測ですが性能はウエーコ側の方が上に思えます。ダラス側はウエーコの自爆ゾンビの存在を知っての進化と推測しているんですが……」


「それも明日には分かるわね。私としては、そんな存在に対する事前措置と現場の対応になるんだけど……」


 やはり労いという事は無かったな。

 少し考えておいて良かったと自分を褒めたところで、これまでの事例を踏まえて説明を始めた。

 話の途中で従兵のナタリーが俺達にコーヒーを運んできてくれた。

 笑みを浮かべて、小さく頷くと頬を赤らめている。

 山小屋に帰ったらエンリケさんに娘さんがしっかり働いていることを教えてあげよう。


「……なるほどね。スナイパーユニットは効果があるという事ね。でもそれはダラスの自爆ゾンビ限定になりそうだと。銃弾が狩猟用の450マーリンではねぇ。焼夷弾としての性能も今一という事なんでしょうね」


「50口径NATO弾なら徹甲焼夷弾が使えると思いますが?」


 リッツさんの言葉にマリアンさんが首を振る。


「たぶんドローンで発射時の反動を吸収しきれないんでしょうね。オットー大尉ならそれぐらいは試したはずよ。450マーリン弾は、ドローンの性能で対応できるギリギリだったに違いないわ」


「俺も同意見です。とはいえ、反動を吸収出来れば最適な弾丸に思えます。それが不可能であるなら、少し牛刀ではありますがハイドラを使うことで対処が可能に思えます」


「ロケット弾なら反動はそれほど無いわね。でも当たるかしら?」


「1発では無理でしょうね。3発程まとめて発射するなら1発ぐらいは当たるかと」


 俺の言葉に笑みを浮かべる。

 直ぐにリッツさんに指示を出したから、さっそく作ってみるのかな?


「自爆ゾンビについて少し分かったことがあるわよ。やはりニトロ系の爆発物を体にため込んでいることは間違いないんだけど、面白いのはその信管なの……」


 専門用語がどんどん飛び出すから、俺には全く理解できないんだよなぁ。


「すると水素爆発を信管として使っているという事ですか?」


 シグさんの言葉で俺にも少し理解できた。


「そうなるわ。ニトロは衝撃で爆発することもあるんだけど、それは純粋なニトロだけよ。ゾンビが自らの体脂肪をニトロ化したようだけど、それほど高純度にまでは精製出来ていないみたい。もっともそこまで精製出来たならゾンビの方も移動するのが難しくなるでしょうね」


 マリアンさんは自爆ゾンビの高度化はそれほど心配していないようだな。現状での爆発性能の利用方向に進化すると考えているみたいだ。

 

「となると、ウエーコの自爆ゾンビのような方向に進化する可能性が出てきますね。炸裂時の破片による被害の拡大、移動速度の向上、敵陣内への突入容易性……」


「そうなるんじゃないかしら。となると、もう1つ疑問が出てくるんだけど……」


 マリアンさんも気付いたみたいだな。いつの間にか戻って来たリッツさんが首を捻っている。


「ウエーコの自爆ゾンビが、最初からあの姿であったとは考えにくいという事ですね?」


俺の言葉にマリアンさんが目を細める。どうやら当たっていたらしい。

 

「やはりヒューストンかしら?」


「それも考えられますけど、サン・アントニオも怪しいですよ。かなり離れていますが、アメリカ東部への出口にありますからね」


「フェニックスという事かしら? ペンデルトンの連中がゾンビをかなり東進させたと言っていたけど……」


 かなりという数ではないんだよなぁ。それに俺も絡んでいるからね。

 フェニックスにもペガサス型ドローンを送り込んでいる筈だ。その後の状況監視は継続しているだろうから、情報を一元管理しているペンデルトンに確認した方が良いかもしれない。


「将来的には西からゾンビを駆逐するための通り道になります。フェニックスにドローンを送りこんでいるペンデルトンに確認してみます」


「サミー君達の古巣になるんでしょうから、遠慮はいらないわね。任せたわ。それでリッツの方の対策は何とかなりそうなの?」


 タバコに火を点けながらリッツさんに視線を向けると、笑みを浮かべている。

 ドローンの改造に目途が立ったという事だろう。


「大型ドローンに取り付けるハンターユニットにハイドラロケットランチャーを取り付けるなら造作もないとの事でした。制約はハイドラの弾数が4発という事と何度か発射試験をしてターゲット調整を行わねばならないとの事でしたが、3日あれば可能という事でしたので2ユニットの改造を指示してあります」


「4日後には実戦で使えるという事ね。サミー君の伝手でオットー大尉にも話が行っているから、当座はそれを使うということで対処できそうね」


「これで35号線の西と東に軍を進められます。デントン地区のゾンビが大人しくなりましたから」


 それでも安心はできないだろうと進言したら、ナパーム弾攻撃を南進前に2度程行うそうだ。

 それぐらいしておくなら後方からのラッシュは起こりそうもないだろうが、たまにジャックを仕掛けて様子を見るぐらいは必要かもしれないな。

 でもそれぐらいの用心は慎重派のリッツさんのことだから既に実行計画が出来ているに違いない。


「それではそろそろ部隊に戻ろうと思うのですが?」


「助かったわ。ありがとう。場合によっては次もよろしくね。それとお土産を持って行って頂戴。105mmのRAP弾よ」


 RAP弾と聞いて、シグさんが驚いているんだよなぁ。

 変わった砲弾なんだろうけど、できれば焼夷弾に変えて欲しいところだ。


「見つけたという事でしょうか?」


「陸軍基地で見つけたみたい。かなりヒューストンに集めたみたいだから、陽動部隊に焼夷弾と合わせて送るわ」


 焼夷弾も貰えるなら、ありがたい話だ。何といっても建物を焼失させた方が安心できるからなぁ。

 席を立って、マリアンさんと敬礼を交わして指揮所を出る。

 台船に向かうヘリの中で、シグさんにRAP弾について聞いてみたら、俺が知らないことに驚いていたようだ。

 呆れ顔で説明してくれた話ではロケットアシストの砲弾とのことだ。


「ロケットモーターを内蔵した砲弾だから、通常の砲弾よりも炸薬量が少なくなってしまう。だが有効射程は2倍近くにも伸びるんだ」


 有効射程が20kmということになるってことか!

 台船を湖の西に移動したなら、ダラス中心部が射程に入ることになるぞ。

 懸架している砲弾の内、何発がRAP弾なのか分からないけど、ダラス中心部でゾンビを監視割いているペガサス型ドローンと組み合わせて運用したなら、新たなゾンビの種を見付けることが出来そうだな。


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