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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-732 お土産は大きい魚ということらしい


 朝食を取って、キャビンで横になる。

 砲撃の音が結構響くのだが、睡魔には勝てなかったようで何時の間にか寝入っていたらしい。

 仮眠のつもりで寝たのだが、シグさんに体を揺すられて起きた時は15時を過ぎていた。

 6時間以上眠っていたようだから、今夜も眠れなくなりそうだ。


「2時で当直を交代しよう。夕食が済んだら仮眠させて貰うよ」


「済みませんがよろしくお願いします。ところで砲撃の方は?」


 俺の質問にシグさんがテーブルの上に広げたプリントと画像ファイルの中の映像をモニターに移して説明してくれた。


「榴弾砲の方は最大射程での散布界を確認したかったらしい。目標はこの倉庫なのだが、3発同時に放って当たったのが4回目だからなぁ。発射時に台船が揺らいでしまうのが原因ではあるのだが、これはどうしようもないな。これぐらいの散布界を持つ砲撃ということで納得するしかないだろう」


 目標から50m以上の範囲で着弾している。榴弾砲とはいえ、これほどまでに着弾位置がズレてしまうとは思わなかった。

 河川艦隊も台船に大砲を乗せているんだが、やはりこれぐらいの散布界で砲撃をしていたのかな。


「短時間の継続射撃をすれば面制圧が出来そうですね。ゾディアックボートの方は?」


「60mm迫撃砲が2門だからなぁ。ある意味、兵站部隊のストレス対策でもあるのだが、こっちは予想とそれほど変わらんな。射程が短いせいもあるのだろう」


 なるほど、それなりに使えるということだな。

 夕食後に士官達がやってきたら彼らの感想も聞いておこう。

 

「ダラスの戦士型ゾンビに、統合作戦本部がかなり興味を持ったようだぞ。大砲を持つゾンビが2種類だからなぁ。生物学研究所の博士達と何度も協議をしているらしい」


「まだニューヨークでは確認できませんでしたからねぇ。でも時間の問題だと認識したのでしょう。出来ればサンプルを送ってあげたいところですけど、ダラスの中心部近くでは手が出ませんね」


「全くだ」と言いながら、タバコに火を点けている。

 夕食にはまだ間があるからなぁ。俺はジュリーさんが渡してくれたコーヒーを飲みながら、カロリーバーを齧ることにした。


 今日も3か所にジャックを仕掛けたらしい。夜も3か所に仕掛けて昨日の状況との比較調査を行うとのことだ。

 

「今日は朝からオルバンが釣竿を振っていたぞ。エディ達に毒されたに違いない」


「趣味が出来たと喜ぶべきでしょう。山小屋で狩りだけではねぇ」


 1つの趣味にのめり込むのも良いかもしれないけど、できれば多趣味な方が面白いんじゃないかな。

 下手の横好きを呆れる人はいるだろうけど、悪く思う人はいないんじゃないかな。


「サミーも釣りはするんだったな?」


「結構好きですよ。山小屋ではライルお爺さんにフライフィッシングを教えて貰いました」


 出来れば海で釣りがしたいところだ。

 湖や川ではねぇ……。お刺身を作るのが憚れるからなぁ。


「それなら次の休暇には釣竿を用意するのだな。台船の釣りは、釣竿を使う順番がずっと決まっているらしいぞ」


「それなら、デンバーからの定期便に何本か搭載して貰いましょう。順番待ちでイライラするようでは作戦に支障が出かねません」


 俺の言葉に、ジュリーさん達まで笑い出すんだからなぁ。

 そんなに変な依頼ではないと思うんだけどねぇ。


「余暇はそれで過ごせそうだな。作戦の方だが、ゾンビの行動で分かったことがあるぞ。ジャックに結んでおいた魚をその場で食べてはいたのだが、何体かのゾンビは魚を掴んでその場を去って行った。まだジャックのブザーが鳴り続けているにも関わらずに……」


 まだシグさんの話は続いているが、それよりも今の話が重要に思えてきた。

 ゾンビは音に反応する。今では俺達と違った視覚を持つまでに進化しているけど、音に敏感であることに変化はない。音で集めたところを狩るというのが俺達の基本作戦になっているぐらいだからな。

 ブザーが吹鳴しているにも関わらずにその場を去るということは、音への反応以上に優先することがあるという事に違いない。しかも話を聞く限り、特定のゾンビでは無く通常型だということだからなぁ。


「昼のジャックでも同じことが起こっていましたか?」


「そうだ。持ち帰るゾンビの数は西に仕掛けたジャックの方が多いように思える。それで今夜はたっぷりと搭載できるようにオルバン達が頑張っているところだ」


 そこに帰ってくるのか。オルバンさん達には感謝するしかないな。


「やはりコクーンを疑うのか?」


 考えこんだ俺にシグさんが問い掛けてきた。


「それだけでは無さそうです。これは陽動作戦に含めて調査する必要がありそうですね。やはりデンバーから釣竿を送って貰いましょう。釣り手が多ければそれだけ餌を確保できます」


 釣竿が倍になれば獲物も倍になるとは思えないが、増えることは間違いないだろう。兵站部隊の連中が湖の周辺に迫撃砲弾を放っているから、その合間に釣りの腕を振るって貰おう。


 2杯目のコーヒーを飲み終えたところで、テラスに出て一服を楽しむ。テラスの右手からは榴弾砲の発射音が聞こえてくるし、左手からは賑やかな声が聞こえてくる。さすがに大砲を乗せた台船で釣りはしないようだ。

 ドローンの離発着台の周辺で数人が釣竿を振っている。

 釣り手をよく見ると、どうやらルアー釣りという事らしい。

 釣り手の倍以上の兵士が片隅にある倉庫の前にベンチを並べて、釣り手を囃しているんだよなぁ。釣り手はかなりのプレッシャーになりそうに思えるぞ。ストレス解消の策が、かえってストレスを与えかねないな。

 そんな中、1人の釣り手の竿が大きくしなる。

 途端に観客がどよめいたと思ったら、急に静かになった。皆が満月になった竿を持つ兵士に固唾を飲んで見守っているようだ。

兵士が1分ほどの格闘で釣り上げると、後ろの観客にぐっと腕を伸ばして魚を見せびらかしている。

 大人げない仕草だけど、見物している連中が再び騒がしくなった。


「あの通りだ。1匹釣り上げる度に大騒ぎなのだからなぁ」


「良いじゃないですか。それだけ現実世界を少し忘れることが出来るのですから。とはいえ、あれを見たら幾つになっても男は子供のままだとレディさんに小言を言われそうです」


「私もそう思うぞ。サミーもそれが分かるなら、あの中に入ろうとは思わないことだな」


 一言多かった……。

 でも、結構楽しそうだよねぇ。あの中に入るのは仲間として当然にも思えるんだけどなぁ。


 夕暮れが始まる前に砲撃が終わる。

 西の住宅街を砲撃していると聞いたが、着弾地点はここからでは見えないからなぁ。

 遠くに煙が上がっているからあの辺りに違いないのだろうが、後でドローンの画像を見ないといけないな。

 北からエンジン音が聞こえて来た。ゾディアックボートが帰って来たみたいだ。

 1艘でも良いと思うのだが、2艘で出掛けたのはもう片方のボートでドローンを使うとのことだろうけど、案外釣りが本命じゃないのかな。


 さて、台船とゾディアックボートではどれほどの釣果の違いが出るんだろう。

 夕食時にはその話題で盛り上がりそうだ。

 それまでは指揮所で砲撃の成果を確認しておこう。詳しくは夕食後に報告してくれるだろうけど、客観的な目で確認しておいた方が間違いは無さそうだ。

 俺がドローンの画像を眺めるのを見て、シグさんがコーヒーカップを片手に何度も頷いているからなぁ。この姿勢で間違いは無いという事だろう。

                 ・

                 ・

                 ・

 レイ・ハバード湖にやってきて4日目。繋いでいた台船を切り離して南の堰堤近くに移動した。俺達だけで出来るのかと首を傾げて見ていたけど、整備兵の小父さん達が巧みなボートさばきで台船を移動して再び繋直してくれた。

しっかりとアンカーを降ろしているから、風邪で堰堤に乗り上げることはないだろう。一応50m程の距離を取っているから、動き出したら直ぐに対応すれば何とかなりそうに思える。


 早速エディ達が新たな釣り場に竿を出しているけど、今度はどうなんだろう?

 昨日釣竿が5本新たに届いたから、今度は俺も竿出すことが出来そうだ。


「釣り好きがこれほど多いとは思わなかったな。相変わらずジャックに吊り下げた魚を持ち去るゾンビがいるのだが、どこに持って行くのか追跡するのが結構難しい」


 群れの中に紛れてしまうと難しいんだろうな。通常型ゾンビが持ち去ることは分かっているらしいのだが、ジャックに集まるゾンビは通常型が殆どだからなぁ。


「それを確かめる手段をオットーさんに頼んであります。もうそろそろ届くかもしれませんよ。それで、ゾンビが持ち帰る魚に特徴はあるのでしょうか?」


 俺の言葉にシグさんがジュリーさんと顔を見合わせて首を傾げている。

 隣のドローン操縦を行う女性兵士も一緒になって首を傾げていたけど、何か気付いたのかな? ジュリーさんに耳打ちしているんだよね。


「そうなの? それならちょっと確認してみようかしら」


 ジュリーさんが手元のノートパソコンを使って、撮影した画像を確認し始めた。

 直ぐに分かるようなことでもないようだな。俺達はタバコに火を点けてシンキングタイムに入る。


「なるほどね! サミー、おもしろい特徴があるよ。大きな獲物を持ちかえっているみたいなの。ジャックに括り付けた獲物魚の大きい方から2、3匹を持ち帰っているよ」


 お土産は大きい方が良いという事か。

 それなら簡単に思えて来たな。

 オットーさんに頼んだのは小型発信機だからね。魚のお腹に飲み込ませておけば、ゾンビが持ち帰っても上空からドローンで追跡するのが容易なはずだ。


「発信機を付けた魚をゾンビに運ばせるという事か! それなら確実だな。だが場所が特定できたなら次はどうするのだ?」


「ペガサスタイプのドローンを向かわせます。さすがに建物内に入ったなら破壊されかねませんから近くで状況を見るだけでも色々と分かってくるかと……」


「最後はマリアン殿に任せるのだな。たぶんA-10でMk82を落とすに違いない」


 出来れば運び込む先を調べたいところだけど、この状況だからなぁ。

 ある程度状況が分ればオリーさん達も納得してくれるだろう。


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