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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-731 やはり進化していた


 4匹のブラックバスを結わえ付けたジャックをドローンが吊り下げて東に向って行った。

 何となくユーモラスな形になったから、ニックがしっかりとカメラで撮影していたんだよね。後で山小屋の連中に見せてあげるのだろう。


「結構大きな魚が釣れましたね」


「数年間釣りをする者がいなかったからだろう。まだ釣りをしているところをみると、次のジャックにはもっとぶら下げることが出来そうだな」


 ドローンを見送ったジュリーさんとシグさんが、テラスでタバコを吸っている俺に手を振りながら指揮所に入って行った。

 現在の時刻は14時40分だ。もう直ぐ次のドローンがジャックを吊り下げて飛んで行くだろう。

 最初に仕掛けるジャックの作動時刻が15時丁度。その後は30分毎に残り2つのジャックが作動する。作動時間は30分だから、最後のジャックが炸裂するのは16時30分になる。十分昼間のゾンビの状況と言えるだろう。

 夜間は22時に最初のジャックを作動させるべき準備が始まっている。

 その状況いかんで明日の砲撃場所を決めたいのだが、湖の3方向共に大きな住宅街だからなぁ。そんな住宅街の中にあるショッピングモールや工場にジャックを仕掛けてはいるのだが、果たしてどれほど集まるのだろう。こればっかりは予想がつかないな。


 15時を過ぎたところで指揮所に入る。大型モニターでジャックに集まるゾンビを眺めながらのコーヒータイムだ。

 今の所は通常型ばかりだな。ドローンの集音装置が捉えたゾンビの声も通常型ばかりだ。


「通常型ばかりだな。2か所目に移動させるぞ。集音装置からも変わった声は聞こえてこないのだろう?」


「そうですね。通常型ばかりです。統率型の声ぐらいは聴こえるかもしれないと思っていたんですが……」


「その方がありがたいところではあるな。だが通常型と言っても少し進化しているようだ」


 3つ目の目があって、巣こそ耳が大きいぐらいなら大きな進化とは言えないだろうな。

 だが、その姿をしたかつてのゾンビは夜間活動を活発に行っていた。

 ダラスもそうだとすれば、今夜仕掛けるジャックが楽しみだ。

                ・

                ・

                ・

 その夜。指揮所に士官達が集まる。

昼と夜に仕掛けたジャックに集まるゾンビの情報共有と明日の行動を打ち合わせるのが目的だ。

ジャックに集まるゾンビは昼よりも夜の方が多いようだな。5割増しとは言えないが3割以上は確実だろう。

 さすがに夜ともなれば通常型以外のゾンビの姿を見ることが出来た。それを見たのはダラス中心部方向の湖の西側だが、南と東についても同じ声が聞こえていたから全く存在しないということでは無いようだ。とはいえ数が少ないことは間違いない。


「大砲までは持たぬようだな。だが投射武器は持っているし、あの腕はどう見ても槍その物だ」


「口と耳が大きいゾンビもいるよ。それに通常型だと思うんだけど、第3の腕を持っている……。あれって投射武器だよね」


「その外にも統率型だからなぁ。声と容姿だけで数種類のゾンビがいるようだ。気になるのは、オクラホマの戦士型よりもダラスの戦士型の進化が進んでいないところだな」


 核の洗礼を受けていながら、他の都市のゾンビよりも進化していないはずがない。まだ見ぬゾンビがダラスのどこかにいるはずだ。それは統率型や戦士型の上位種になることは確実だろう。


「ここまでの情報を纏めておこう。テキサスⅡとオリーに送れば良いな?」


「それでお願いします。さて、そうなると明日の砲撃はこの辺りから始めますか?」


 テーブルに広げた画像のコピーを指先で示す。

 ジッと見ていたエニーさんが大きく頷いてくれた。


「大きな建物がありますね。1つずつ潰していきましょう。とりあえず線路と大きな道路は避けますけど,台船上からの砲撃ですから散布界が広がると思います。ドローンでの弾着確認をお願いします」


 最初にどれほど散布界の影響が出るかを確認するということかな? ジュリーさんに顔を向けると、大きく頷いてくれたからこれはOKで良いな。


「西から始めるのだな。それなら、夜に再度ジャックを仕掛けよう。新たな種が現れるかもしれん」


「それなら、その先にもジャックを仕掛けようよ。海軍のドローンは行動半径が20kmもあるの。十分に届くとおもうんだけど」


 ジュリーさんの考えは、早期にダラス中心部のゾンビを調べるべきだという事だろう。

 シグさんに顔を向けると、俺の視線に気づいて頷いてくれた。これはシグさん達に任せておけば十分だろう。


「兵站部隊は、有志を募って湖の東の住宅地を砲撃してくれませんか? 60mm迫撃砲ですから威力はそこそこですが、焼夷弾を使えば湖近くの住宅を焼失させられるでしょう」


「州間高速30号線の確保ということ? 了解です。2005号線も使えそうね。それも加味して砲撃するわ」


 迫撃砲は2門だからなぁ。小型ドローンを飛ばして弾着観測を行うのだろう。行動半径が2kmほどの小型ドローンを持ちこんでいるようだ。


 各部隊の役目が定まったところで解散する。砲撃は9時丁度に始めるから、朝食はゆっくり取れそうだな。


「サミーはここで寝るのか?」


「通信機の傍に誰かいないといけないでしょう。明け方までは俺が待機していますよ。朝になったらジュリーさん達の誰かが来るでしょうから、その後でベンチで横になります」


「明日は私が代わろう。当直も早々に決めておいた方が良さそうだな」


 数時間眠れるなら、俺がずっと続けても良いんだけどね。

 とりあえずは、オリーさんにメールを書いておこう。これまでの疑問点を整理しておくのは大事だろうし、それをどのように判断するかは生物学研究所の重鎮に任せられるだろう。


 窓を開けておけば、通信機の呼び出し音を聞き逃すこともないだろう。

 満天の星空の下でマグカップ飲むコーヒーは風情があるなぁ。タバコに火を点けていると、下の階から兵士達の笑い声が聞こえてきた。

 まだ寝ていなかったのかな? 時計を見ると24時を少し過ぎたところだ。

 釣果を競っていたからなぁ。明日の担当と釣果を話し合っているのかもしれないな。

 ストレス対策にもなりそうだから、皆で競って貰おう。釣果を俺達で味わうことは出来ないけど、それなりに使い道があるからね。


 1階の明かりが消えたところで、俺も指揮所に入る。

 時計を見ると、まだ2時前なんだよなぁ。この季節の夜明けは5時すこし前だから、後2時間程は星空ということになるんだろう。

 3敗目のコーヒーをマグカップに注ぐと、タッパーに入れたチョコレートを齧りながら時間を過ごす。

 そう言えば、メールを書く予定だった。

 バッグからノートパソコンを取り出して、メールを書き始める。

 オリーさんには、疑問点を取りまとめたメールを送ってあるけど、七海さんやレディさんにも書いた方が良さそうだ。それに、オットーさんにも礼を言わないといけないな。


 どうにか4通のメールを書き終えた頃には、外が白み始めていた。

 まだ朝日が昇るまでには時間が掛かるだろう。

 時間潰しに何をしようかと考えていんだが、オットーさんが送ってくれたドローンはヘリでダラスの中央部に降ろしているんだった。

 どんな状況を見ているのだろうと、ノートパソコンを使ってテキサスⅡのサーバーにアクセスし、映像記録を大型モニターで見ることにした。集音装置も付いていたから、映像記録の音声情報も併せてヘッドホンで聞くことにする。


 最初に映ったのはモノトーンの光景だった。破損した市街地にかなりのゾンビが通りを行き来している。

 8割は通常型だが、それ以外のゾンビいるし、その種類もかなりあるようだ。これはしっかりと映像を解析しておきたいところだな。サンディーに連絡して動いてもらおうかな。


 しかしモノトーンの画像は何とかならないかな。モノトーンの映像を補正してカラーに出来ないのかな?

 カラーで撮影した映像とモノトーンの画像を比較すれば、モノトーンの画像を着色することも可能に思えるんだけどなぁ。


「……ダラスはこれか。既にオクラホマの戦士型ゾンビの上を行っているなぁ」


 戦士型ゾンビが2種類の大砲を持っている。オクラホマのゾンビと似た大きさの大砲を持つ物と、その半分ほどの口径を持った大砲を持つ戦士型だ。

 小口径を持つゾンビは、戦士型を狩るために特化したようだな。


「歩兵随伴戦車ではなく、対戦車戦に特化したということかな?」


 何時の間にか指揮所にやって来たシグさんが呟いた。

 ゆっくりと休んでくれたんだろうか? 


「そういうことなんでしょうね。そうなると、戦士型の装甲がますます強化されるでしょうし、大砲の放つ砲弾も徹甲弾化していくことになるのでしょうね」


これだからなぁ。俺達人間なら技術的に発展させるのだろうが、ゾンビは体を進化させることでそれを可能にしていく。


「我等はゾンビを撲滅可能なのだろうか……」


「このまま進化をしていくなら、何時かは俺達を越える存在になってしまいます。それが地球の生物進化の歴史であるなら神の御手に全てを託すということもできそうです。でもゾンビはその体に生息しているメデューサがあのように体を動かしているだけです。そのメデューサは俺達の進化とは別物ですからねぇ。やった事の後始末も出来ないのでは地球の盟主と胸を張ることは出来ません」


「そうだな。確かにゾンビは神が作った存在ではない。サミーの言う通り、作った以上はその責任を取るのが我等の務めと言えるだろう」


 ゾンビが全て掃討されるのは何時になるのだろう。

 少なくとも、俺の生きている間に北アメリカのゾンビは相当したいところだ。

 南アメリカともなると、そう簡単ではないからなぁ。

 出来れば俺達と袂を分かつた人達に何とかしてほしいところだ。

 だけどなぁ……。俺達に協力するより、邪魔をしてきそうな気がするんだよねぇ。


「人類の生活圏を明確にして、ゾンビの棲息圏を徹底的に破壊することになりそうです。

最初は北アメリカ、次にグリーンランド、アイスランドを経てイギリス、スカンジナビア半島……」


「カナダの連中はその考えに飛びつきそうだな。だがイギリスに軍を向かわせるのは我等の孫の世代になりそうだ」


 少なくとも数百年でどうにかなるとは思えない。

 最初に遭遇したゾンビのままでいてくれたなら、それほど時間も掛からなかったかもしれないな。


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