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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-718 ダラスへ誘導する準備が出来た


 レイ・ロバート湖を一周して35号線に戻ると、レーヴァさん達と合流する。

 車を止めてコーヒーを頂きながら、タバコに火を点ける。

 一心地付いたところで簡単な状況説明をシグさんが行ってくれた。


「そうか。車の通行は可能なんだな?」


「さすがに377号線には放置車両があったが、ストライカーでぶつければ直ぐに道路脇に退かせるような代物ばかりだった。それに本隊が377号線を南下してくるとは思えん。心配するなら35号線から東に向かうイースト・オパッチ通りだ。2車線の舗装通りだが377号線に至るまで橋が5か所もあるぞ。頑丈そうに見えたが、本隊の工兵に確認させる必要があるだろう。画像は十分に撮ってきたつもりだから本隊に送ろうと思う」


「そうしてくれ。そうなると、私達の退避はサミー達が進んだ道で問題はないだろう。だがサミー達はどうするんだ? さすがに同じ道を進むのは難しいと思うが」


「デントン地区の北にあるジャンクションまで進もうかと……。288号線を東に2kmほど進み、湖に向かう道路に入ればレーヴァさん達と合流出来ます。それにこのジャンクションの前後にジャックを仕掛けましたから、デントン地区のゾンビが動いてくれるかもしれません。オクラホマ・シティよりゾンビ同士の争いが早まる可能性があります」


 これも1つの確認事項になるだろう。デントン地区のゾンビの動員が早まれば、ダラス全体のゾンビの動きも早まるに違いない。戦力の順次投入となるか、それとも大集団を作って戦うのか……。やってみる価値はありそうだ。


「ところで偵察ゾンビは?」


「やはり小競り合いをしたようですね。此処と此処です。2重に敷いていますが俺達が通るぐらいでは変化はないようです」


「他のゾンビの大集団を早期に確認するという事なんだろう。オクラホマでは私達が倒してしまったが、倒さない方が良かったかもしれんな」


 何かあったと知ることは出来ても、それが脅威とは直ぐに認識できないということかな? 市街地まで3kmと5kmの距離にいたからなぁ。1時間程の時間があるなら、ある程度集団を作るのは容易なんだろう。


「やはり俺達で倒した方が良いと思いますよ。統率型ゾンビは信号途絶の原因を理解できないでしょうからね。2度目の信号途絶で何らかの脅威が迫っていると理解できたとしても脅威の大きさが分かりませんからね」


「オクラホマのように戦力の順次投入になる可能性が高いということだな。了解だ。その話も本体に伝えよう。さて戻るか。あまり長居すると部下達が心配するだろうからなぁ」


 そう言って笑い声を上げるレーヴァさんにシグさんが苦笑いを浮かべながら首を振っている。

 レディさんと同類だと思っているんだろう。似た者同士だからね。でも規律は案外しっかりしているんだよなぁ。見習いところが多いんだよね。


 脇道に逸れて、俺達の部隊が待機している場所に到着したのは16時を過ぎていた。

 まだ日が高いから夕食には早いけど、車両内待機を解除して、道路脇の空き地に焚火を作ると皆が集まってくる。

 何時も思うんだけど、夏でも焚火を作ると人が集まるんだよなぁ。

 昆虫の本能と人間の本能は遠い部分で交わっているのかと考えてしまう。こんな話をオリーさんに話したら大笑いされそうだけどね。


「……すると、明日の誘導時には大きな道路の障害は無いということですね?」


「あの無反動砲は役だったよ。各分隊にも1門ずつ搭載した方が良いかもしれん。本隊の連中が笑っていたが砲弾の威力は榴弾砲の砲弾よりありそうだ」


 1発で3台が吹き飛んでいたからなぁ。普通車の重量は精々2t程だろうし、車両火災で残ったのは金属部分だけだろうからかなり重さも軽減されていたんだろう。


 レーヴァさんの言葉にジョイスさんとワトソンさんが目を輝かせている。

 だいぶレーヴァさんに感化されているようだな。副官のバルマンさんが溜息を吐いているぞ。


「既に本隊には状況を報告しているが、レイ・ロバーツ湖の北を35号線と377号線を繋ぐ道路には橋が多いんだ。それだけゾンビの襲撃方向を制限できるということだな。この湖の北岸にダラス攻撃の拠点を作ることは間違いない」


「東西の道路を使うことで自走砲の迅速な展開も可能ですね。それに、ここなら水上機の離発着も出来そうです」


「それだけではない。湖に補給物資を落として貰うことで長期戦が可能だ。補給はヒューストンからになる。補給の際に少しはダラスに爆弾を投下してくれるだろう」


 さすがにダラスのゾンビを全て刈り取るようなことにはならないだろう。

 その終点をどのように決めるのかは、マリアンさんの頭の中には既に出来ている筈だ。

 そう言えば、ダラスのゾンビをヒューストンのゾンビと戦わせたいような事を言ってたなぁ。

 ダラスの攻略の前にヒューストンを攻略したいのかな?

 散々ロバートさんが砲弾を撃ち込んでいるはずだし、一部のゾンビは南進しているからね。あの大きさの都市で数万体程のゾンビが残っているだけなら、ダラスから数万体のゾンビを誘導すれば共倒れを起こしてくれそうだ。少しは残ったゾンビがいるかもしれないけど1万体には届かないだろう。

 なら、ヒューストンからゾンビを駆逐できるかもしれない。

 可能性としてはあるんだが、それを維持できるかと言うと少し問題があるんだよなぁ。近くにも大都市はあるからねぇ。「

「此処には既にゾンビはいない、これからもゾンビが来ることはない!」と宣言出来ないところがあるんだよなぁ。


「明日やることはウイチタの誘導時と全く同じだ。途中まで我等が誘導し、最後はサミー達に任せる。サミー達がデントン地区の市街地すれすれにジャックを仕掛けたそうだ。サミー達の逃走路はデントンの市街地北部を通るからな。場合によっては湖越しにドローンでサミー達の援護を頼むぞ」


 レーヴァさんの言葉にオルバンさんがしっかりと頷き、ジュリーさんと顔を見合わせて小さく再度頷いた。

 助けがいるとは思わないけど、上空からドローンで周囲の状況を探ってくれるだけでも大助かりだ。


 夕暮れが近付くと、焚火にポットを乗せてレーションを温める。ずっとレーションが続いているけど、もうしばらくの辛抱だ。

 手の平程のビスケットを肉団子が入ったシチューに付けて食べる。飲み物は紅茶だった。お湯にスティックに入った紅茶の粉末を入れるだけなんだよなぁ。味は確かに紅茶なんだけど、コーヒーの方が良かったな。

 紅茶を飲み終えたシェラカップにレーヴァさんがワインを注いでくれた。

 飲めないのを知っているからだろう。半分ほど注いで微笑んでいるんだよなぁ。

ありがたくカップを捧げて礼を言う。


「レディにあまり飲ませるなと言われているんだ。もっと飲むなら、キャビン内でこっそり飲んでくれよ」


「これで十分ですよ。それとカップ1杯だけにしてくださいね。明日は本番ですから」


「だから前祝いだ。なぁに、明日も上手く行くさ。想定される事態は全て対応可能だぞ」


 そんな人程、いざとなったら『これは想定外だ!』なんて言うんだろうな。

 事前の準備は必要だし、その準備品はどのような状況想定を行ったかで決まる。

 だけど俺達は神ではないからね。それに想定事象とは人によって変わるからなぁ。だから作戦立案時には参謀が沢山いるのだろう。想定される状況は多種にわたるだろうから、その中で影響の大きな物から順次対応を図るに違いない。資源が有限である以上、それは仕方のないことだろうし、その判断が出来る人物が将官ということになるんだろうな。

 地位は大尉にまで上がったけど、そんな判断は出来ないんだよね。これ以上上がることはなさそうだし、常に優秀な佐官、将官が上にいてくれるか俺には今の状況が一番だな。


「レーヴァさん。東洋の諺を1つ教えます。『完璧は終わった後で言う言葉』なんですよ」


 俺の忠告に、『完璧って何のことだ?』と問い掛けられた。

 壁は何のことだか分からないってことなんだろうな。そんな事から言葉の意味を教えることになったのだがちゃんと理解してくれただろうか。

「Perfect is the enemy of good」です! と言ってはみたものの、同じ意味になるのかちょっと心配だ。


「そういう事か! やってみないと結果はでないと言うことだな」


 シグさんの理解は少し違っているように思えてならない。だけど万が一、万万が一ということもあるからなぁ。


「サミーは慎重だからなぁ。『石橋を叩いて叩いて渡らない』という言葉を日本人に教えて貰ったぞ。その上を行くのが『石橋を叩き壊して、橋を架ける』という言葉もあるらしい。何となくそんな人物に心辺りがあるのが面白かったな」


 叩き壊す直前に止めることが出来る人間がいれば最良なんだけどね。それでも行動開始前に『完璧な作戦』とは言わないだろうな。


 そうなると、マリアンさんの作戦は最良ではないが、その場で状況に合わせることが出来る作戦になるのだろう。『臨機応変』は指揮官の裁量でもあるけど、それを力任せに行うところがあるからなぁ。

 『その軍が通った後には草も生えない』という言葉もあるけど、マリアンさんの場合は『その軍が通った後は瓦礫の山になる』と後世言われるような気がする。

 ゾンビを相手とするならそれが一番だとは思うけど、果たして後世の人達がしっかりとその事を認識して貰えるよう記録を残しておかねばなるまい。


「次の作戦が終われば湖畔で休暇を過ごせそうだ」


「そう上手くはいかないと思いますよ。でも、空爆や砲撃はオクラホマの比ではないでしょうから、数日は休養できそうですね」


 一番の懸念材料はゾンビの推定数だ。

 市街地だけで150万人、都市圏内の総人口は700万人を超える。

 核を2発落としているらしいけど、推定で100万体を超えるゾンビがいるはずだ。

 爆撃と砲撃だけで半減させたとしても50万体が残ってしまう。その状態でヒューストンにゾンビを誘導したなら本隊がダラスの残存ゾンビに挟撃されかねない。

 ヒューストンへの誘導のタイミングを、しっかりと見定めないといけないんだよなぁ。

 


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