表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
713/713

H-713 両軍共に別動隊が動き出した


 バイクの速度を上げて、州間高速道路35号線を南に走る。後方にゾンビの群れが見えなってきた頃、前方に小さなジャンクションが見えてきた。ジャンクションに到達したところで速度を緩め、前方と後方にシグさんがグレネード弾を放つ。小さな炸裂音が直ぐに聞こえて来たけど、これで群れがこのまま南進してくれるだろうか? ちょっと心配になって来たけど、今更作戦変更は出来ないからなぁ。ジャンクションを降りて今度は東に向かってバイクを走らせる。

 真ん中に白線があるコンクリート舗装の道路だ。これも農道というよりは郊外の住宅地と市内を結ぶ道路なんだろう。月明かりで道路だけでなく周辺も少しは見えるんだけど、道路際まで雑草が生えているなぁ。夏には見通しが悪くなるほど茂るだろうけど、今は道路から奥まった住宅をたまに見ることが出来る。

 集音装置はバイクの騒音にも関わらず結構ゾンビの声を聞くことが出来る。

 近くで急に声がするから驚くときもあるんだが、姿を見ることはない。きっと道路から少し離れた住宅の中に潜んでいるのだろう。

 たまに道路をうろついているゾンビに遭遇すると、俺とシグさんが交互に銃撃で倒すことになる。

 シグさんはちょっと変わったオートマチックなんだけど、俺はマーリンでの射撃だ。

 拳銃がリボルバーだからなぁ。これは我慢するしかないな。


『次の十字路を左折するぞ! 現在地はレーヴァ達の待機場所より東になる。東から待機場所に向かうが、銃撃されることはないだろう』


「しっかり連絡してくださいよ。こんな場所で銃弾を浴びたくないですからね。それで、ゾンビの状況は?」


『我等が左折したジャンクションを通り過ぎて南に向かっているそうだ。それと動き出したぞ!』


 動き出したのはオクラホマ・シティのゾンビという事だろう。どのぐらいの集団を作ったのか、ジュリーさんに確認して貰うことにした。

 

 十字路を左折すると、前方左手に明りが見える。たぶんあれが先遣部隊が待機している場所に違いない。

 明りがかなり遠くに思えるんだよなぁ。それほど東に進んだとは思えないんだが……。

 トラックではすれ違いが出来ないような道路を北に進み、2つ目の十字路を左折する。

 今度の道は舗装されているし、トラックだって速度を緩めずにすれ違えるだけの道幅を持っている。この道路をレーヴァさん達は東に進んだに違いない。

 10分も走らずに前方に2つのライトが見えてきた。ストライカーのヘッドライトに違いない。

 シグさんがライトをパッシングすると、前方のライトもパッシングを返してくれた。


『銃撃されることは無いようだぞ。どうにか役割を終えたな』


「大変なのはこれからですよ。先ずは誘導の1つ目が終わったと考えるべきです」


『そうだな。次はオクラホマのゾンビをダラスに誘導するんだったな……』


 1つずつ確実に作戦を進めて行こう。

 それにオクラホマ・シティのゾンビ対応はこれだけではないからな。

 先ずはウイチタのゾンビをぶつけてウイチタのゾンビが殲滅させる。その次はオクラホマ・シティのゾンビの数を減らさないといけない。核を使ったという事だが20万体はいるだろうからねぇ。ウイチタから誘導してきた7万体のゾンビをぶつけたとしても、3万体減るかどうかだ。

 残ったゾンビを全てダラスに誘導出来れば最良だが、10万体に届くことはないだろう。そうなると残ったオクラホマ・シティのゾンビの数を減らす必要があるんだよなぁ。

 さすがに砲撃だけでは無理だろうから、マリアンさんは航空支援を依頼するだろう。それでやってくる爆撃機での戦果をどれほど期待できるかなんだけどねぇ……。


 運送カーゴ傍にバイクを停めると、すぐに指揮車両に向かう。

 後部ハッチを叩くと、すぐにハッチを開けてくれた。俺達がキャビンに乗り込んでベンチに腰を下ろすのを待っていたかのように、レーヴァさんが現状を伝えてくれる。


「誘導は上手くいった。ウイチタの群れに対し、オクラホマのゾンビ達は2つの群れを作って相手をするようだな。35号線の南に約3万体、西に2万体だ。それ以外に市の中心部にゾンビが集結している。このまま推移すれば5万体規模になるかもしれん……」


 2つの群れの距離は3kmにも満たない。ゾンビの移動距離を考えたなら1時間後には衝突しそうだ。


「俺達に出来ることはここまでですから、後は状況を見守りだけになります。俺達が退避してきた道路にはたまにゾンビがいたんですが、こっちはどうでした?」


「ここまで来る間に、数体倒している。郊外だとは言え住宅地でもあるからな。ドローンを使って周辺監視は継続しているぞ。サミーが戻ったなら、サミーにも監視を頼みたい。必要時以外に車を降りないよう注意してくれ」


「なら、フクスに戻ります。あっちの集音装置は性能が良いですからね。キャビンからでも周辺のゾンビを確認できます」


 ドローンからの情報共有は出来ているから、俺の確認状況を定期的にレーヴァさんに伝えれば良いだろう。

 しばらく考え込んでいたレーヴァさんが副官と顔を見合わせて頷くと、俺達がフクスに戻ることを許可してくれた。

 あまり堅苦しいところには居たくないからなぁ。

 直ぐにフクスに戻り、集音装置を動かして周辺を探ることにした。


「どうだ?」


 シグさんがコーヒーカップを俺の前に置きながら問いかけてきた。

 ありがたく受け取って一口飲むと、シグさんに顔を向ける。ジュリーさんも気になるのか俺に顔を向けているようだ。


「西は声というより騒音ですね。どうやら始まったみたいです。まだ本隊という事ではないようですけど、それは時間の問題に思えます。東と南北は聞こえることは聞こえますがかなり距離が離れていますね。通常型ですから近づいたなら屋根にいる連中が始末してくれるでしょう。200mほどに近付いたなら連絡をお願いします」


「始まったというのは……、これか! 100体程の集団だな。先ずは敵対か否かを確認するという事か」


「全く異なる進化をしている集団ですからね。声は同じでも言葉は異なるでしょう。互いに意思を伝えあうことが出来れば合流する可能性もありますけど、そうなることはないでしょうね」


「我々なら言葉が通じないなら、通じるよう努力することになるだろうが……」


「過去の歴史を見れば、いきなり戦争という事は無かったでしょうね。どんなに国力に差があったとしてもいきなり戦争になることは無かったでしょう。その前に交渉があったはずです」

 

 相手が飲めないような条件を提示したとしても、交渉であることは間違いない。その交渉で互いに合意できなかったから戦争による決着という事になるはずだ。

 だが2つの集団が互いに意思を通じることが出来ない場合はどうなるのだろう。条件を伝えることが出来ないから、力づくで服従させることになるのだろうな。


 集音装置をゆっくりと自動回転させながら、ヘッドホンでゾンビの声を聴く。

 目は手元のノートパソコンで、ゾンビの声を低周波、可聴周波、可聴周波を越える超音波の3つの領域でそのスペクトルを確認する。

 その上で一服しながらコーヒーを飲んでいるから、シグさん達が呆れた顔をしているんだよなぁ。


「此処に近付くゾンビの存在を見逃すわけにはいきませんからね。ウイチタとオクラホマの争いも気になるところですが、35号線から東にあまり大きくはみ出さないで欲しいと頃です」


「こちらに来ないとも限らないと?」


 驚いた声でシグさんが問い掛けてきた。


「正面衝突すると思いますが、すでにオクラホマのゾンビは側面攻撃を考えていますよ。ウイチタのゾンビが別動隊を作るのは時間の問題だと思います」


「もう1機飛ばすよ! 大型の方だから広く偵察できるし、飛行時間も長いから」


「お願いします。もう1機は、ハンター仕様で周辺偵察を継続してください」


 これまでは西に偵察範囲を伸ばしての周辺監視だったけど、これからは西を大型に任せておこう。

 キャビンの側面に取り付けたモニターでゾンビ同士の闘争状況は3人で眺められるし、周辺のゾンビの状況はシグさんが手元のタブレットで確認している。

 俺はモニターとノートパソコン画面に踊る音声スペクトルを眺めることにした。


「んっ! マリアン殿から連絡だ……。現在35号線の東3km付近に待機中です。詳細な位置は後程レーヴァ大尉が報告するでしょう……。了解しました。このまま現状位置で待機を継続します」


 通信が終わったのだろう。今度は指揮車のストライカーへ通信内容を知らせている。

 どうやらゾンビの群れが歩みを止めたらしい。ウイチタの統率型ゾンビが今頃かなり焦っているに違いないな。さてそのままぶつかるか、それとも別動隊を迂回させて正面音敵を側面方突くのか……。行動が遅ければ、西に集結しているオクラホマ・シティの一団に側面を突かれると思うんだがなぁ。周辺に偵察ゾンビを派遣してはいるんだろうが、全体の状況を掴み切れないようだ。


「ウイチタから誘導してきたゾンビの群れは、44号線とのインターチェンジ付近で動きを止めたそうだ。群れの最後尾は66号線のジャックションを抜けた位置らしいぞ。陸上部隊の本隊は、シマロン川の橋の手前で停止して状況を見守るとのことだ」


 オクラホマ市から北に30kmの位置という事か。大きく状況が変化しそうだからなぁ。直ぐに攻撃を始めることはないだろうから、その位置で問題はないだろう。ウイチタ方向にもドローンを飛ばしているだろうから挟撃されることも無さそうだ。


「動いたよ! 同時ってことかな?」


ジュリーさんの声に、慌ててシグさんがモニターとタブレットを交互に確認している。俺はモニターを眺めたんだが、直ぐには状況が分からなかった。俺が首を傾げているのを見てジュリーさんが教えてくれたことによると、35号線状の2つのゾンビの集団は睨み合いが続いているそうだ。動いたのはウイチタから東に飛び出したゾンビの集団を確認できた事と、西に集まっていたゾンビの集団が35号線に向って動き出したという事らしい。


「ウイチタの別動隊は、少数ですけど全て戦士型ですね。西の集団は通常型が殆どのようです」


「どう見ても1千体近くに思えるのだが……。サミーにとっては、少数ということになるのか」


「母数を比べれば、少数ですよ。でも戦士型が1千体ということは通常型の10倍ぐらいの戦力になるかもしれません。側面攻撃はかなり有効に思えますね」


 どちらの主力集団も側面を突かれることになる。群れの本隊も動くだろうから、ウイチタのゾンビが殲滅されるのは時間の問題に思えてきた。現在の時刻は22時を過ぎたところだけど、今日中に両者の本隊が衝突したなら、明日の日の出をウイチタのゾンビは目にすることが出来ないかもしれないな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
横槍を入れることになるから大混乱…するんだろうか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ