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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-071 全員が山小屋で暮らすためには


 作業を終えたところで昼食を取り、のんびりと食後のコーヒーを楽しんでいたら数体のゾンビを発見したとの連絡が入ってきた。


「どうする? もう1体程サンプルを増やすか?」


「サンプル数は多いほど説得力が増します。でも今度は屋内ではないんですよね」


 どうやら、行き止まりの道の奥で方向を失ったように動いているらしい。

 結構厄介だな。


「出来るか?」


「さすがに複数の確保は難しいかと。1体なら何とかなります。エディ達に手伝ってもらいますよ」


 俺の言葉に、エディとニックがうんうんと頷いている。

 そんな俺達を見て、笑みを浮かべたレディさんがトランシーバーで案内人の派遣を依頼してくれた。


「住宅街の中らしい。ここから500mほど西になるようだが、周囲の状況を考えるとあまり銃は使いたくないところだ」


「最初から、これで行きます。とは言っても、数が多い場合は援護を頼みますよ」


「もちろんだ。2、3発ならサプレッサーを使えばそれほど心配する必要はないだろうが……。パット達も今度はしっかりと見張っていてくれよ」


 急いでコーヒーを飲み終えると、片付けを始める。

 案内人がこっちに向かっているらしいからね。タバコでも吹かして待っていよう。


「あれだな? 2人1組で動いているとなれば、見つけた場所はまだ掃討があまり進んでいないようだな」


「ワインズ達だ。まだひよっこだけど、頑張り屋だよ」


 マリアンさんの知り合いってことかな?

 まだ配属されて間もないのだろうが、一生懸命に任務をこなす姿をマリアンさん達は評価しているみたいだ。


「空回りするときもあるのよね。だから目が離せないとレミントンが言ってたわよ」


「そこが初々しいじゃないか! 私達にもあんな時があったんだとたまに思う時があるよ」


 マリアンさんには、歳の離れた弟がいるのかもしれないな。

 ワインズさんの仕草に、弟を思い出すのかもしれない。

 やがて俺達の前にやってくると、俺達をキョロキョロを見渡している。

 マリアンさんが目線でレディさんを知らせると、嬉しそうに頷いてレディさんの前に向かった。


「ワインズ上等兵です。少数で動いているゾンビを探していると聞き、案内に参りました」


「ありがとう。ところでゾンビは何体になるのだ?」


 確かにそれが一番知りたいところだ。


「道の奥で動いているのは4体です。それで十分でしょうか?」


「もちろんだ。出来れば1体が良かったが、贅沢も言えぬ。案内してくれ」


「了解です。私の後に付いて来て下さい」


 4体ねぇ……。ニックの隣を歩きながらどうやって倒すかを考える。

 3体なら良かったんだが、やはり俺が2体相手にしないといけないだろうな。しかも1体を無効化してオリーさんの確認に供しないといけないんだよなぁ……。

 場所が広ければ何とかなりそうにも思えるけど、道の突き辺りらしいから、袋小路だろう。道幅が数mだから、距離を取ることも難しそうだ。


 20分ほど歩いて到着した場所は、思った通りの袋小路だった。周囲を柵で囲んであるから奥でゾンビが動いている。


「案内感謝する。後は我等に任せてくれ」


「少年もいるようですが、かられはライフルを装備していません。レディ殿達だけで大丈夫ですか? 軍曹殿から場合によっては手助けするように指示を受けています」


「それなら、後ろのお嬢さん達と一緒に周辺の監視を頼む。お嬢さん達だから、ゾンビに躊躇して銃を撃てないという場合もあるだろう」


「了解です!」


 パット達の安全が確保できるならありがたい話だ。

 さて、……やはり1体余分なんだよなぁ。ここはレディさんにお願いするか。


「エディとニックで左右のゾンビを倒してくれ」


「ああ、これで殴るだけだからな。サミーは無効化するってことだな?」


「前と同じだ。だけど、エディの方が片付いたら抑えているゾンビの両腕両足の破壊はと飲んだよ」


「それぐらいは簡単だが、それまで絶対に噛まれるなよ」


「もちろんだ。……レディさん、ちょっと良いですか?」


 俺達の相談が纏まったところで、レディさんを呼ぶ。

 奥の1体を狙撃して欲しいと頼んだら、笑みを浮かべて俺の頭をポンと軽く叩くんだよなぁ。


「無茶をするのかと思ったら、案外慎重なんだな。安心したぞ。それならジュリーに任せよう。あんな容姿だが、銃の腕は確かだからな。……ジュリー、ちょっと来てくれないか!」


 トコトコとやって来たジュリーさんに、レディさんが奥の1体を狙撃するよう指示を出してくれた。

 ポヤっとした感じのジュリーさんだったけど、指示を受けて袋小路の奥を見る表情はここにやって来た時とはまるで別人だ。


「あの上着を着ているゾンビね。ネクタイまで結んでいるんだからおかしいよね。この距離なら外すことは無いよ」


「奥のゾンビが倒れたところで、俺達が動きます。この状況では無効化できるゾンビは、やはり1体になりますね」


「十分だ。全て倒すなら我等でも十分なんだがな。任せたぞ」


 俺達が頷くとレディさんが手を振って皆を集め、簡単なブリーフィングを行う・


「……と言う形で、あのゾンビの措置を行う。後方警戒は、マリアンが士気を取ってくれ。オリーとナナは何時でも作業ができるよう私と一緒に、サミー達の状況を見ることになる」


 質問は無いようだな。マリアンさんがジュリーさんに笑みを浮かべて肩を叩いている。見せ場が出来て良かったなというかんじだ。


 ジュリーさんがM4カービンを両手に持ち、俺達の2歩前をゆっくりと袋小路に向かって進んでいく。

 レディさんの持つM4カービンと違って、サイトが工学照準器なんだよなぁ。小型だから遠距離狙撃は出来ないだろうけど、ドットサイトよりは遥かに良いはずだ。


 30mほど手前でゆっくりと片膝を付いて狙撃の姿勢を取り始めた。

 左右に分かれたエディ達がホッケーのスティックを担ぐようにして突進する姿勢を取る。

 ジュリーさんの射撃の邪魔にならぬよう2歩後方に立つ。L字金具の付いたスコップの柄の真ん中付近を、肩幅ほどの間を開けて両手で持った。


 バシュ!


 くぐもった発砲音が聞こえたと同時に、奥のゾンビの額に穴が開いたのが見えた。

 俺達3人が飛び出してゾンビに向かう。

 真ん中のゾンビが少し右手に動いているが、俺にとっては嬉しい動きだ。

 左効きだからねぇ。右側なら足を払うのが楽なんだよね。


 俺が足を払っていると、ボグッ! と言う音が両側から聞こえてきた。

 うつぶせに倒れたゾンビの肋骨を折るように力強く足で踏みつけて動きを封じる。

 直ぐに、エディ達が駆けつけてゾンビの腕と足を折ってくれた。これで少しは安心できるな。L字金具で頭を押さえると、大声でオリーさんを呼ぶ。


「後は任せて!」


 再びオリーさんがハーケンを振るう。

 オリーさんが検体を取り出すまでしっかりと頭を押さえなければならない。作業を終えたとオリーさんが俺に報告してくれたところで、ワルサーを引きぬいてゾンビの頭に銃弾で穴をあける。


「レディさん、始末を終えました!」


「ご苦労。これで終了しても良いのでは?」


「そうね……。3体ともに大きな変化は無かったから、他のゾンビについても同じことが言えそうね。私の調査はここで終了よ」


 オリーさんの言葉に、ニック達と肩を叩き合う。

 これで今年は終わりになるんじゃないかな? 冬の間に皆で色々と考えることができたけど、それは長い冬を過ごす話題にもなりそうだ。


「さて引き上げるか。トロッコがあれば、直ぐに戻れそうだ」


 トロッコを停めた陸橋に向かって歩き出す。

 レディさんはトロッコの運行を管理している中隊本部にトランシーバーで確認していたが、途中から笑みを浮かべていた。どうやら俺達を字運んでくれたトロッコが、そのまま待機してくれていたらしい。

                ・

                ・

                ・

 山小屋に戻ってきたのは16時過ぎだった。

 端に寄せたテーブルにオリーさんと七海さんが座って、生きの良いゾンビの脳内物質を観察した結果を纏めている。

 夕食後には教えて貰えそうだな。オリーさんが20時に中隊長を呼んで欲しいとレディさんにお願いしていたからね。


「3体の検査であれば十分じゃろう。1体だけでは、偶々と言われかねないからのう」


「偶然は3度続かないと言う奴ですか」


「一般にはそう言えるじゃろうな。だが万が一、万万が一と言う言葉もあるぐらいじゃ。世の中に絶対という言葉を使えるのは神だけなんじゃろうな」


「雪が降る前にもう1度デンバーに向かいたかったが、止めておこう。お前達も冬ごもりの準備を手伝ってくれよ」


 そう言って、ウイル小父さんが説明してくれたのは、外のキャンピングトレーラーで暮らしているバリ―さん達を、山小屋に迎える為に部屋の増築を行うという事らしい。


「2階の6部屋の内、4部屋を現在使っている。奥の倉庫を片付ければ、更に2つ部屋が出来る。バリー達は6家族だからな。それにオリーとレディ、ナンシー親子を1部屋に纏めれば、外の連中を山小屋に入れることができる」


 ウイル小父さんの話を聞いて納得はしたいけど……、俺達6人はどうなるんだろう?


「そうなると……。父さん、俺達は屋根裏部屋ってこと?」


「まぁ、そうくさるな。あれは屋根裏部屋ではなく大部屋だ。さすがに雑魚寝をさせるのも気の毒だから、3部屋を作ってやるぞ。この際だから同棲してしまえ。結婚は子供でも生まれたなら皆で祝ってやろう」


 ウイル小父さんが大声で笑い声をあげる。

 一緒に聞いていたライル小父さんも俺達の肩を叩いて、笑い出す始末だ。


「公認の同棲よ。こっちが見ていてイライラすることもあるんだから、この際一緒に暮らしなさいな」


 メイ小母さんは反対するかと思ってたんだけどなぁ……。


「パット達にはずっと前に伝えたんだけど、貴方達には伝わってなかったのかしら?」


 メイ小母さんの言葉に、思わず俺達は顔を見合わせる。

 すでに堀は埋められていたようだ。


「まぁ、パットは俺にはもったいないくらいな女性だけど……、エディやサミーもそうなんだろうな」


「結婚前提の同棲なら問題は無いんじゃないかな? いずれは一緒になりたいと思ってたいたからなぁ」


「七海さんはどうなんだろう? 俺達はまだ友人付き合いなんだよなぁ」


「私にはもったいないほどの人だと言ってたわよ。この話にちゃんと頷いてくれたし、オリーも賛成していたわ」


 そうだ。オリーさんの問題もあるんだよなぁ。

 今度2人の時にどのように折り合いをつけるか相談しないと……。


「今の部屋と同じぐらいの部屋になるだろう。2人で暮らすなら十分だ。家族が増えても問題は無いだろう。ゾンビ騒動がいつまで続くか分からんが、アメリカの人口を増やすことにも繋がりそうだな」


 ウイル小父さんが再び笑い声をあげる。

 こうなったら、覚悟を決めるしかなさそうだ。

 決して悪い相手ではないんだけどね。七海さんは俺にとってもったいない女性だからなぁ。


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― 新着の感想 ―
[一言] 人口がかなり減っているので、一夫多妻、一妻多夫もあり。
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