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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-709 都市と偵察ゾンとの距離が長すぎる


 朝食を済ませると、再び車列が動き出す。

 ベンチに座って、汎用ドローンが捉えたゾンビの群れをしばらく眺めていた。

 汎用ドローンの運用半径が5km程度だからなぁ。高度を千メートルにまで上げることで群れの全容がわかるんだよね。群れの上空300mほどをゆっくりと飛行して詳細を見ることは現状では不可能だ。

 それでも、群れの中にかなりの戦士型や統率型が何か所かに偏在しているのが分かるから、ジュリーさん達が群れの先頭近くにいる戦士型や統率型をたまに刈り取っているようだ。


「迫撃砲弾の数が限られていますから、積極的に統率狩りを行うのは難しいようですね」


「大型の方なら、群れの後方まで偵察が出来るし爆撃も可能なんだが……。さすがに帰りの着陸が走行中では自動で行えないらしい。無理は禁物だ」


 誘導の最中だから、群れへの攻撃よりも状況観察を優先するという事なんだろう。現時点ではそれで十分に思えるな。

 

「進化種はやはりいないようですね。少しは安心できますが、群れの左右に別動隊を展開するようなら、優先的に攻撃してください」


「了解だ。ジュリー、可能だろうな?」


「全く問題ないよ。別動隊なら足の速い戦士型でしょう? 声が違うからすぐに教えて貰えるもの」


 ドローンの操縦士が日本人だからねぇ。

 まだ詳細な判別までは出来ないようだけど、戦士型と統率型の区別が出来るだけでも助かる話だ。


「次の停車時に、動くことになるぞ。準備は良いのか?」


「集音装置の付いたヘルメットを貰いましたから、それで十分です。シグさんこそサングラスは必携ですよ」


 俺の注意に、笑みを浮かべてサングラスをポケットから取り出して見せてくれた。レイバンのミラータイプじゃないか! 

 俺も空港の売店から見つけてきたレイバンなんだけど、やはりバイクと言ったらレイバンなのかな?


 モニターを眺めながら一服していると、車列が止まった。

 いよいよ出番だな。

 装備を整え、マーリンを背中に担ぐ。さすがに棒はいらないだろう。積極的にゾンビを狩るわけではないからね。

 ジュリーさんに後を頼んで、キャビンを出ると指揮車へと向かう。

 俺達のバイクがカーゴから下ろしている途中だった。

 下ろして貰ったバイクのエンジンを掛けてアイドリングをしながらタバコに火を点ける。

 ヘルメットにサングラス。咥えタバコなら少しは絵になるかな?

 同じようにタバコを咥えたシグさんはまるで映画の1シーンを見るような感じなんだけどねぇ……。

 シグさんのヘルメットにも何か付いているな。

 聞いてみたら、GPS機能を持ったカメラとのことだった。


「何かあれば、その位置と画像を記録できる。動画も映せるし、画像伝送も可能だ」


 さらにトランシーバーのハンドセットだからなぁ。まるで飛行機のパイロットに見えてしまう。


「さて、この先は調査対象外だ。50km先まで調査してくれ」


「了解です。それでは行ってきます!」


 バイクにまたがり、ギヤを入れアクセルを回す。

 途端にバイクのエンジン音が高鳴る。クラッチを静かに接続したつもりなんだが、馬力があるんだろう。少し前輪を浮かすような形でバイクが走り出した。

 2速、3速とギヤを4速まで上げる。もう1つ挙げられるんだが、それは高速領域だからなぁ。高速道路ではあるけど、放置車両があちこちにあるだろうから、市街地走行に適した4速で十分だろう。

 時速60kmに達したところで、後方を見るとシグさんが速度を上げて右隣に位置してくる。

 この状態で進むとトランシーバーで伝えると、『了解!』と明瞭な音声が返って来た。相互通信に問題は無さそうだ。指揮車との通信状況を確認するよう伝えると、しばらくして『画像、音声、位置情報共に問題なし』と通信が送られてきた。


 しばらくはこのバイクを楽しもう。

 ツーリングバイクではないからシートが固いけど、これは我慢するしかないだろうな。

 狩りに使っているバイクよりも排気量、重量共に2倍以上だから走行は安定している。直ぐに荒れ地を走ってみたくなるけど、さすがに狩りは無理だろうな。このバイクは走破性よりも安定性を重視しているのかもしれない。荒れ地をハーレーは走れないから、荒れ地を走れるバイクを選ぶ際に排気量の大きな順で選んだに違いない。

 軍の偵察部隊が使うなら、250ccで十分なんだけど、これは600ccもあるんだよなぁ。


 それにしても真直ぐな道だなぁ。州を結ぶ高速道路だからなのかもしれないけど、日本の高速道路とはかなり違う。

 ハンドルが無くても、このままオクラホマ・シティに行けるんじゃないか?

 とはいえ、たまに放置車両があるんだよねぇ。路肩に停めてくれれば良いものを、堂々と道の真ん中に停める奴がいるんだからなぁ。

 常識外れの人間は何処にでもいるのだろうけど、そんな車をたまに避けることで緊張感を維持できるんだから世の中は不思議で満ちている。


 橋を1つ渡った時だった。

 ゾンビの声が聞こえてくる。それも道の南方からだ。シグさんに停車を指示すると、ゆっくりとバイクを停めた。


「何か見つけたのか?」


 俺に体を向けてシグさんが問い掛けてくる。エンジンはこのままにして、バイクを降りてマーリンを肩から外して両腕に持つ。

 脅威とも思えないけど、何があるか分からない土地だ。


「この先に通常型ゾンビがいます。場所的には偵察ゾンビになるんでしょうが、まだオクラホマ・シティまで距離がありますよね」


「市の中心部までなら30kmというところだな。偵察ゾンビはもっと近くにいるという事なのか?」


「ケースバイケースなんでしょうけど、今までで一番離れています。たぶん紐付きだと思いますが確認してきます」


 かなり声が明確だから、それほど距離はない筈だ。この先にある大きな橋の向かい側にいるんじゃないかな。


「後ろを付いて行くぞ。いざとなったら、私のバイクに飛び乗れば逃げ出せるだろう」


「お願いします。それでは……」


 橋に向って35号線を歩く。100m程歩けば、問題の橋だ。シグさんがシマロン川というアーカンソー川の支流のようだ。支流といっても、結構川幅があるんだよなぁ。


「橋を渡って5kmほど先にガスリーという町がある。さほど大きくないし、道路は町の東を通っているからなぁ。ゾンビの脅威は少ないだろう」


「確か人口5千にも満たない町でしたよね。俺もさほど脅威ではないと思ってはいるんですが……。いましたよ。橋向こうの右手です!」


 マーリンを担いで、双眼鏡を取り出す。焦点をしっかりと合わせると……、やはり紐付きのようだな。3体いるゾンビの1体から細く赤い紐が垂れているのが見えた。

 その隣のゾンビも少し変わっているな。耳が後ろに長く伸びている。エルフ耳ということかな? それなら容姿もそれらしくして欲しいところだ。


「シグさんのカメラで、あの3体の拡大映像を撮ることができますか?」


「出来そうだ。最大まで拡大して撮っておくぞ」


 撮影が終わったところで俺のバイクの床に戻り、コーヒーを飲みながら次の行動を話し合う。とりあえず偵察は完了したと言って良いだろう。

 邪魔になりそうな放置車両の画像と位置はシグさんがカメラで記録しているからね。


「この地図で見ると、東にスティルウオーターという町がありますね。ガスリーと交戦したのかもしれませんよ。でもこれだけオクラホマ・シティの近くで交戦したなら、最後はオクラホマ・シティのゾンビに殲滅された可能性がありそうです」


「ゾンビ同士の交戦か……。大都市だけではないということだな。それなら、33号線に付いても調べておいた方が良いかもしれん。少し戻って農道を東に入り、シマロン川に架かる33号線の橋の袂に行ってみるか?」


「行ってみましょう! 誘導はレーヴァさんに任せてますからね。これも先行偵察の範囲になるはずです」


 それ程距離は無いようだ。農道に入って1度右折して真っ直ぐ南に進むと33号線の橋の袂に出るのだが……。


「いましたね。こちらは2体のようです。エルフ耳が一緒ですけど、声は通常型と変わりませんね」


「1つ質問だ。あのゾンビの先には2番手になる偵察型ゾンビがいることは無かったのか?」


「未だに遭遇したことはありませんが、これから先に出てこないとは言えませんね」


 シグさんが疑問を持つのも理解できる。さっきの橋もそうだったけど、此処の橋だってオクラホマ・シティから少し距離があり過ぎる。第2線の警戒網をゾンビが構築するような事態はあまり考えたくはないんだが、もしそうならばかなり面倒な事になりそうだ。


「今日は、此処までにしましょう。明日は俺達の部隊の退避路を見付けないといけませんから、その時に見つかるかもしれませんね」


「そうだな……。だが、もし在ったならどうするのだ?」


「即倒します。俺達の存在を統率型に知られる前に倒せば、作戦の成功率が上がると思いますよ」


 急に連絡が途絶えたなら、何かあると思うだろうからなぁ。市内のゾンビを集めて行動に移すまでにはそれなりに時間が掛かるだろうし、何といってもゾンビの進行速度が歩く速さだからなぁ。その間に退避路へ避難できれば、誘導したウイチタ市のゾンビと衝突する事間違いなしだ。


 さて、帰投するか。でもその前に、35号線に戻ったところで、周辺が一望できる場所にバイクを停める。

 持ってきた保温水筒からシェラカップにコーヒーを注いで、カロリーバーの昼食を取ることにした。

 だいぶ暖かくなってきたなぁ。

 バイクに乗るから少し厚着をしてきたんだけど、それほど寒さは感じないからね。


「やはりツーリングバイクの方が良かったように思えるぞ。このバイクはクッションが硬すぎる」


「排気量は大きいんですけど、これは荒地走行用ですからねぇ。荒地走行ではシートに腰を下ろさないんですよ。でも、このバイクは少し中途半端に思えますね。モトクロスバイクとツーリングバイクのどちらにも使えるようにとしたんでしょうけど、荒地走行ならこれほど大型でない方が良いですし、ツーリング用としては使用者にゆとりが無さすぎますね」


 二兎を追うもの一兎も得られずの典型かもしれないな。

 だけどこれが陸軍のオートバイ部隊用らしいんだよねぇ。使い難いと文句を言う兵士はいなかったんだろうか? それとも、このバイクを自在に操つることが兵士達の自慢なんだろうか? 


 昼食を終えたところで、35号線を北上する。

 1時間もすればレーヴァさん達と合流できるだろう。


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