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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-705 釣り出しの待機位置が問題だ


 ウイチタ市から伸びる州間高速道路に出たのは、13時すこし前になってしまった。

 耕作地を仕切る農道の中でも舗装されている道を選んだからだろう。西に向かうはずなのだが、北や南に何度も進路を変えたからなぁ。 

 最後尾を走るストライカーの兵士が、しっかりとペイントで道に印をつけたと言っていたけど、無線で知らせるだけなら絶対に迷ってしまうに違いない。

 シグさんが経路をしっかりとテーブルのプリントに書き込んでいたようで、到着後にはパソコンの中の地図データーに経路を落としこんでいる。レーヴァさんの報告書に添付すれば迷わずに済みそうだ。


「とりあえずは昼食だな。あの西の大きな建物はイベント会場だ。あまり近付きたくはないんだが……」


 その北にある小さな建物を指差して呟いたのは、ワイナリーとのことだ。


「狙いますか?」


「止めておくよ。勿体ない気はするが、位置が問題だ。もっと離れていれば良かったんだがなぁ」


 あえて危険を冒すことはない。俺も賛成だ。

 だけど俺達が釣り出した後なら、容易に行えそうにも思える。


「位置をマリアンさんに教えておきましょう。その建物だけは攻撃しないで欲しいと」


「それぐらいなら出来そうだな。案外軍属の小母さん達が喜びそうだ」


 コンビニなら俺達も頑張るんだけどね。残念ながら、ここまでの道筋に無かったんだよねぇ。まぁ、嗜好品には当分困らないから問題は無いんだけど……。


「昼食後に、3両を使ってこの先を確認してくる。夕暮れ前には戻るが、もう1個分隊はここに置いておく。万が一には上手く使ってくれよ」


「了解です。こっちはノイズマシンとジャックの設置だけですが、できれば ストライカーで明日の待機位置周辺を探りたいと思うのですが」


 アーカンソー川の支流であるビッグ・スラウに掛かる橋の南と北のジャンクション。可能であれば北が良いんだが、ゾンビが多そうなら南にジャンクションでの待機となる。

 北のジャンクションまでは、ここから10kmほどだ。

 素早く向かって、周囲の画像撮影とゾンビの声を確認したところで直ぐに戻るだけなんだが……。


「衛星画像では放置車両がそれなりにあるんだが……。此処までなら、放置車両もそれほどないか。了解した。情報は夕食後にでも共有しよう」


 レーヴァさんが、俺に片手をあげてストライカーに走って行った。乗り込んだと思ったら直ぐに出発したんだよな。俺もフクスに戻ろう。


 フクスのキャビンに入ると、テーブルに小さな包みがあった。どうやら皆の食事は終わったようだな。


「レーヴァ達は出掛けてしまったが、我等は計画通りで良いのだな?」


「そうです。申し訳ありませんが、シグさんが指揮してくれませんか。俺は明日の待機場所を確認してきます」


 もぐもぐとレーションのピザを食べている俺に、シグさんが大きな溜息を吐いている。

 俺と一緒の方が良かったということかな? そうなると、オルバンさんに指揮を頼まないといけないんだよなぁ。


「まさか単独ではあるまいな?」


「バイクを持ってきませんでしたからね。レーヴァさんに待機している分隊の中から1両出して貰う許可を取りました。素早く出掛けて周囲を探り戻ってきます」


「画像と音声情報を得てくるという事か……。明日は場合によっては数時間以上待機することになりそうだから、先行偵察は確かに必要だろう」


 釣り出しは、可能な限りゾンビの群れに近付いた方が効果的だからねぇ。

 ジャックの炸裂後に皆で一斉にグレネード弾を放てば、こっちに向って来るだろう。


「次もあるだろうからな。今回は単独で良いが、次は同行するぞ」


「オルバンさんを副隊長に推薦した方が良いかもしれませんね。推薦文なんて書いたことが無いんです。シグさんにお願いしてもよろしいですか?」


 再び溜息を吐いてキャビンの天井を見上げている。

 何もないと思うんだけどなぁ……。だけど勿体ないスペースでもある。アメリカの全体図を張り付けておいても良さそうだ。


「最後の署名は、サミーが行うんだぞ。次にマリアン少将に会う前には作成しておこう」


 次に会うのは、オクラホマ・シティのゾンビをダラスに誘導した後になりそうだ。

 だいぶ先になりそうな気がするなぁ。


「それじゃあ、出掛けてきます。状況を確認したなら直ぐに戻りますから!」


 そう言ってヘッドセットを帽子の上に取り付けてキャビンを出る。

 少し待っていると、ストライカーが俺の傍に移動してきて停止した。銃座に納まっている軍曹が、「乗ってください!」と声を掛けてくれた。


「ありがとう。屋根で良いかな? 適当に掴まっているけど落とさないでくれよ」


「ハハハ……。高速道路ですからねぇ。それほど揺れませんよ。でも、放置車両を避けねばなりませんからしっかりと掴まってください」


 上下には揺れないけど左右には揺れるという事かな?

 それぐらいなら、今までも散々経験したことだ。大きく足を開いてストライカーの屋根の出っ張り部分を押さえていればそれほど体が揺れることはないだろう。

 屋根に上ると、軍曹がキャビンから小さなクッションを出して渡してくれた。

 折りたたみ式のクッションだから、キャンピング用品店から頂いてきたのかな? お尻に敷くとなるほど良い感じだな。鋼板の冷たさも伝わらないから、エディ達に頼んで調達して貰おう。


 すぐ傍に鉄パイプがあるんだけど、これは屋根に荷を積むために設置したものだろう。左右にあるから掴まるにも丁度良い感じだ。

 ヘッドセットの集音装置を作動させると、ヘッドホンからノイズ交じりにゾンビの声が聞こえてくる。かなり遠くだな。


「準備完了だ。……エディ! 近くにゾンビはいないが監視は継続してくれ!」


 俺の声に手を振る2人片手を上げると、いきなりストライカーが動き出した。

 スポーツカーと間違ってるんじゃないか? かなり速度が出ている気がするんだよなぁ。


「このまま北上する! ビッグ・スラウに掛かる橋の南北にあるジャンクションでしたね?」


「明日行う誘導をどこから行うか……、という事なんだ。出来れば北側が良いんだけど、市街地に入り込むからね。地理的状況とゾンビの数と種類を粗々調査したいんだ」


「了解です。レーヴァ大尉から釣り出しの話を聞きましたよ。数万体のゾンビを300mほど離れて誘導すると言うんですからねぇ。皆が楽しみにしてます」


「近づきすぎないようにしてくれよ。戦士型は投射武器を持っているからね。それに万が一にもストライカーが故障したなら、すぐに下車して近くのストライカーに飛び乗ってくれ。ゾンビの移動速度は俺達が歩くより少し遅いぐらいだ。走れば逃げ切れる」


「了解です。ゾンビの餌役は常に2両とレーヴァ大尉にもきつく指示されました」


 それが分かっているなら問題は無いだろう。

 とはいえ数万体のゾンビだからなぁ。パニックに陥らないようにいつも自分に言い聞かせておいて欲しいところだ。


 突然ストライカーの速度が落ちる。

 放置車両が道を塞いでいるのかと前方を眺めると、1体のゾンビが立っていた。

 こっちにもいたか!

 

「1体だけですね。倒しますか?」


「監視役のゾンビだから、脅威と認定されなければ問題は無い。このまま進んでくれ」


 再びストライカーが速度を上げる。

 近くをストライカーが通っても、顔をこちらに向けることはない。全く動かないから不気味な存在なんだけど、あのゾンビを倒したなら市街の統率型が動き出さないとも限らないからなぁ。


「見えてきましたよ。あれが橋の南のジャンクションになります」


 軍曹が俺に体を向けて前方に腕を伸ばす。

 それほど大きなジャンクションではないな。ジャンクションの周りは小さな公園のように広場になっているし、植栽もある。手入れをしていないから伸び放題なんだが、ゾンビの声は聞こえない。


「周囲を撮影してくれないか?」


「出発してからずっと撮影しています。ストライカーの前方と左右です」


「ありがとう。後で画像ファイルを渡して欲しい。それと周囲のゾンビなんだが近くにはいないね。少なくとも500mほど先になるだろうな」


「戦士型がいたら問題ですよ。私はこの防護板の中にいますけど、大尉は生身のままなんですからね」


「その時は身を伏せるよ。今はまだ大丈夫だ。それでは橋を渡ろうか」


 ストライカーが動き出したけど、さすがに先ほどまでのようなスピードは出さないようだ。時速30kmほどで道路を進んでいく。

 さすがに市街地に入ってきたからだろう。放置車両があちこちにあるんだが、道を塞ぐようなことにはなっていない。

 左右に避けながら進んでいくと、放置車両近くで動くゾンビの姿を見ることが出来た。


「軍曹、邪魔になるようならゾンビを倒しても良いよ。だけどサプレッサーを付けたライフルを使ってくれよ」


「あれを撃つぐらいならば、ラッシュは起こらないという事ですか……。今のところは問題なさそうですね。とはいえ銃は用意しておきましょう」


 俺もマーリンを持ってくるべきだったな。今は装備ベルトのパイソンだけだ。これはリボルバーだからサプレッサーを付ける意味がないんだよねぇ。


「前方に見えるのが、橋の北にあるジャンクションですね。ゾンビが何体かいるようです」


「通常型だな。今倒す必要は無さそうだ。周囲も少し賑わっているね。やはり事前に確認して良かったよ。戦士型と統率型もいるが近くではない……。今夜レーヴァさん達と少し考えないといけないな」

 

 ストライカーを停車し、5分ほど周囲の状況を確認したところで引き返すことにした。

 車両が7両だからなぁ。エンジンを掛けたまま待機するとなると、周囲のゾンビが集まって来ないとも限らない。

 待機位置とスタート位置を区分しないといけなくなりそうだ。


 フクスの近くでストライカーが停車する。

 軍曹に礼を言って、屋根から降りるとフクスのキャビンに入ってテーブルに広げられた衛星画像のプリントを眺める。

 シグさんが渡してくれたカップのコーヒーを一口飲んで、ホルダーに置くとシグさんが問いかけてきた。


「やはり課題があるという事か?」


「はい。予想はしていましたが結構ゾンビの数が多そうです。釣り出しはこの橋の北にあるジャンクション付近を考えていたんですが、ここで長時間車を停めておくとエンジン音でゾンビが集まりそうです」


「となれば、橋の南という事になりそうだが……。最後のノイズマシン設置位置から離れてしまうな」


 方法は2つありそうだ。

 1つ目は橋の南で待機して、ゾンビの集団が動き出してきたところで橋の北のジャンクションに移動してゾンビを誘導する。

 2つ目は橋の北のジャンクションにジャックを仕掛けてゾンビを南へと誘導する。

 どちらにしても課題はあるんだよなぁ。

 


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