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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
702/715

H-702 フクス2両でウイチタに先行する


 サライナ市の補給地点を出て、州間高速道路135号線をひたすら南下する。

 速度を上げるとレーヴァさんが言っていたけど、それほど上げてはいないようだ。ストライカーの最高速度は時速100kmだとエディが言っていたんだが、現在は時速80kmほどで走っている。


「最高速度で長時間走ることは故障に繋がると考えての事だろう。それに、この2つの町もあるからな。案外車内で副官と悩んでいるんじゃないか」


 シグさんが指さした地図には小さな町が2つあった。マクファーソンにニュートンだな。どちらも人の名前だ。初代町長の名前かもしれない。ライルお爺さんが町の名前はかなり適当だと言っていたからなぁ。かつて住んでいた町の名前の前に『ニュー』を付けたり、キリスト教の聖人の名やネイティブの人達が使っていた名前、中にはペットの名前さえあると言っていた。さすがにペットは無いと思うんだよなぁ。アメリカ人の感性を疑いたくなってしまう話だ。


「どちらも、町のど真ん中を通っていますね。西か東に避ければ良いと思うんですが」


「町の発展につなげたかったのかもしれないな。だがおかげで良いこともあるぞ」


 シグさんがタブレットを取り出して衛星画像を書き題して見せてくれた。

 思わず笑みが浮かんでくる。

 町のど真ん中を高速道路が通っても住民の暮らしに影響を与えない方法は、案外簡単なんだな。

 盛土で嵩上げした上に高速道路を作り、町の住民の東西の交通路を嵩上げした土台にトンネルを作って確保している。


「両方の町とも、同じように町を縦断している。坂を上るのをゾンビは苦手としているのも都合が良い。問題があるとすれば、このジャンクション近辺だろうな」


 ジャンクションだからだろうな。車が押し寄せてきたから動けなくなってしまったんだろう。これは撤去に時間が掛りそうだが、考えようによってはゾンビの対する柵としても使えそうに思える。

 一般道路は放置車両で埋まっているけど、高速道路側はあまりないんだよなぁ。これなら、あのバンパーで路肩に移動できそうだ。


「少し時間が掛りそうですが、135号線側なら撤去作業が出来そうですね。上空の監視は必要かもしれません」


「サミーとドローンで十分という事か。オルバンに今の話を伝えておくぞ。放置車両の数は20台ほどだ。1時間も掛からずに抜けられるだろう」


 とはいえ、ロス時間になってしまいそうだ。

 レーヴァさん達はどんなことを考えているんだろう? レーヴァさんは案外正攻法だからなぁ。

 オルバンさんにシグさんが状況を伝え、コーヒーカップを両手に持って戻って来た。1つを受け取って角砂糖を入れカップホルダーに置いておく。車体の揺れで直ぐに溶けてくれるだろう。

 キャビン後方に移動してタバコに火を点ける。

 吸い終わるころには飲み頃になっているはずだ。


「シグ! 通信が入ってるよ」


 ジュリーさんの声に、シグさんが通信機に向かう。

 どうやら町の突破方法を決めたようだ。


「了解……。私も可能に思えるが、レーヴァ大尉の方はそれで対応できるのか? ……了解。伝えておく」


 なんか不穏な感じがするんだけどなあ。タバコを携帯灰皿に押し込んで元の位置に戻ると、シグさんが俺にジッと視線を向けている。


「慎重な人物だと思っていたが、少しサミーに感化されたのかもしれん。部隊を2つに分けるそうだ。我々は一気にウイチタに向かう。ウイチタの手前3kmで一旦停止。そこからドローンでウイチタ市にジャックを仕掛けるぞ」


「確かに可能でしょうね。2両だけなら放置車両の間を縫って走行も可能でしょう。フクスのバンパーも頑丈そうですよ」


「バンパーというより装甲板そのものだ。横に弾くことは可能だろう。問題はどちらがその役目を負うかという事だな。オルバンと相談するぞ」


 相談しなくても、結果は見えているんだよなぁ。絶対にエディ達がこんなチャンスを見逃すはずはないからね。

 それをどんな風に言ってくるかだけど、オルバンさんだからねぇ……、しっかりと理由付けしてくる気がするんだよなぁ。

 シグさんとオルバンさんの交信が始まった。隣でジュリーさんが色々言っているのも面白いな。あれでは相手に聞こえるだろうからね。

 10分も掛からずに調整が出来たようだ。

 やはり最初は2号車に乗るオルバンさん達が先導するとのことだった。


「『女性に前の車に衝突しろ!』というのは男としての矜持が保てんと言っていたぞ。そちらはキャンピングカーゴを曳いているだろうと言い返したんだが、オルバンは案外頑固者だな」


 オルバンさんが頑固ではないと思うんだよなぁ。あの車に乗っている連中に問題があるように思えてならない。オルバンさんは今回の代弁者だったに違いない。


「作業が難しい場合は直ぐに、連絡すると言っていた。その時はこの車が役を担うことになる」

 

 ジュリーさんが通信機の前で満身の笑みを浮かべながらうんうんと頷いている。

 俺達の部隊の女性は皆『狼派』に違いない。お淑やかな感じの七海さんも蓋を開けるとかなりのお転婆だからなぁ。その最高峰はオリーさんなんだけどね。


「調整が出来たなら、レーヴァさんに伝えて先行しましょう」


「了解だ。だんだん面白くなってきたな」


 面白いのは良いんだけど、危険度も上がって来たと思わねばなるまい。

 ブレーキ役を引き受けるしかなさそうだな。

 通信を終えたシグさんがベンチに戻ると、フクスが速度を上げたのが分かった。今までだって時速80kmで走っていたんだけどなぁ。さらに上げて大丈夫なんだろうか?


「フクスの方が速いというのも面白いものだな。8輪走行と6輪走行の差があるのかもしれん。それともエンジンか?」


 それをニックに尋ねたら詳しく説明してくれるんじゃないかな。

 俺にはフクスの方がストライカーより速いという事で十分だ。後部ハッチの監視窓から見ると、屋根に105mm無反動砲を乗せたストライカーがゆっくりと離れていくように見える。

 速度を上げたと言っても時速90kmほどじゃないかな。


 ストライカーが完全に見えなくなる。

 側面の監視窓から見える周囲の光景は、どこまでも続く荒れ地だ。たまに人家が見えそうだけど、アメリカの農地は広大だからなぁ。全く見えないんだよね。

 この荒れ地を再び耕すのは何時のなるのだろう。


「このままの速度で向かうなら1時間も掛からずに目的地だ。さすがに20万体のゾンビはいないと思うのだが……」


「その都市と均衡を含めた人口の三分の一が残っていると推測します。そうなると20万体前後という事になります。作戦自体はすでに出来上がっていますから、それに沿って行動するだけですよ」


「ウイチタを開放するというわけではないという事だが……」


「それができれば最上なんですけどね。開放したとしても、他の土地からゾンビが進出してこないとも限りません。可能な限り削減するのが今回の目的でもあります」


 先ずは大都市のゾンビの数を削減することに重点を置いているように思えるんだよなぁ。

 その上で、現在訓練中の戦力を投入したローラー作戦を行うというのだろうか?

 日本ならともかく、アメリカの国土は比べものにならない位大きいからねぇ。ローラー作戦はかなりの戦力が必要だろう。もう少し規模に小さな陸上艦隊と駆動力のある陸戦部隊が沢山必要になりそうだ。

 だけど、その方向に少しずつ動いているようにも思える。

 ウイル小父さん達もあの大型陸上艦を率いているし、ペンデルトンの海兵隊もロサンゼルスから南にゾンビを追い遣るには陸上艦隊に似たような部隊を考えているはずだ。

 さすがにフリーダム部隊となればそのような部隊構築は難しいかもしれないけど、元々がローラー作戦を行っているようにも思えるからなぁ。フリーダム作戦の過程で解放された地域にはすでに入植者が入っているようだ。


「どうした? 考え込んで……」


「この地に入植者が入るのは、まだまだ先になりそうだと考えていました。でも、ゾンビの脅威を無くさねば入植どころではありませんからね。先ずは数を減らしましょう」


「その通りではあるのだが、確かにだいぶ先になりそうだ。一旦荒れ地になった農地を再び元の農地にするだけでも時間が掛ると聞いたことがある」


 シグさんが腕組みしながら目を閉じている。

 再びこの荒れ地が豊かな農地になった光景を思い浮かべているのだろうか?

 ゾンビ騒動が起こる前に俺が見たアメリカは限られた地域だけだからなぁ。アメリカと聞いて、直ぐに思い浮かぶのがロッキー山脈だからねぇ。


 ジュリーさんがシグさんを呼んでいる。

 直ぐに通信機に向かったけど、どうやら用があったのは運転席に2人のようだ。

 聞こえてくる話では、そろそろウイチタ市という事だ。

 シグさんが5km手前で停止を告げながら、ナビ画面の地図で位置を教えている。


「ジュリー、オルバンにも連絡だ。停止したなら直ぐにジャックを仕掛けるぞ」


「了解。場所は、此処と此処だよね。距離が少し遠いから大型のドローンを使うよ」


「ジュリーさん。大型のドローンにも集音装置はあるんですよね?」


「もちろん! サミーもしっかりと聞いてね」


 ジュリーさんに苦笑いを浮かべて了解を伝える。

 やがてフクスの速度が落ちて停車すると、途端にジュリーさんと2号車の通信頻度が上がる。

 ヘッドセットを付けて、ドローン操縦者とエディ達への指示もこなすんだからなぁ。ジュリーさんは分隊狙撃兵よりも、管制官の方が向いているのかもしれない。


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