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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-701 ウイチタ市へ向かおう


 デンバーからサライナ市まではおよそ600km。俺達は出発した夜には到着したけれど、さすがに本隊ともなるとそうはいかないようだ。

 デンバー空港を出発した翌日の昼過ぎすでに日は傾きかけている頃にマリアンさん達が補給地点へと到着した。

 補給地点は習慣高速道路70号線とデンバーから伸びる鉄道線路が近接した場所であって、サライナ市はこの先のジャンクションを南に向かう135号線上にある。厳密にはサライナ市には入っていないと思うんだけど、皆がサライナ市の補給地点と言ってるんだよなぁ。


「先行しての状況確認、ご苦労様。面白い状況ではあるけど、素通りするなら問題なさそうね」


「先行部隊がサライナ市の郊外まで放置車両の撤去を済ませているようですから、補給を済ませれば直ぐに出発できます」


 リッツ中佐の言葉にうんうんとマリアンさんが頷いている。

 とは言ってもなぁ、リッツさんによるとコンボイの長さが3kmを越えているらしい。もっと先まで放置車両の撤去を済ませた方が良さそうだ。


「計画通りに先行部隊は補給を済ませて次のウイチタに向かって頂戴。ウイチタには核を落としていないからかなりのゾンビがいるでしょうけど、上手く誘導して頂戴」


「さすがに我等だけで誘導できるものではありません。支援の方は問題ないんでしょうね?」


 レーヴァさんの言葉に、リッツさんがモニターに支援体制を映し出した。

 デンバー空港から発信する戦闘機による爆撃は確定ということか。それに海軍仕様のドローンを貸与してくれるとのことだけど、それで小型ノイズマシンを設置することになりそうだな。だけど、都合10程の小型ノイズマシンを設置することになるんだが、さすがにそんな数を運ぶことは出来ないぞ。

 恐る恐る確認してみると、6個は本隊が運んできたヘリで設置してくれるらしい。俺達が設置するのは2個で済むようだな。


「さらに支援が必要であるなら、ヒューストンからのトマホークによる攻撃。105mm自走砲による砲撃支援が可能です。それに海軍仕様のドローンはユニット交換でハンタードローンを越える爆撃が出来ます」


 80mm迫撃砲弾を4発搭載できるらしい。さらに試作狙撃銃までユニットに組み込んだとのことだ。

 

「狙撃銃と言っていますけど、厳密にはロケットランチャーです。弾頭は多目的グレネード弾ですが有効射程は200mほどありますよ」


「出来れば50口径銃弾が使えるバレットを搭載したかったんだけど、反動がねぇ……」


 発案者はマリアンさんだったにかな? そんな無茶ぶりをされたのは誰だったんだろう。

 さすがに出来ませんでしたとは言えなかったんだろうな。代替手段で機嫌を取ったということなんだろう。


「銃弾が1発だけ、という事はありませんよね?」


「一応2連装よ。銃弾は20発程受け取ったけど、使えそうなら直ぐに量産できると言っていたわ」


 面白い武器を手に入れた感じだな。

 思わずレーヴァさんと顔を見合わせて小さく頷いた。顔を戻すと困った奴らだという目でシグさんが見てるんだよなぁ。


「それでは補給完了次第出発します。状況報告は定時でよろしいですね?」


「8時と22時にリッツに報告して頂戴。不定時の連絡は今まで通りで良いわ」


 さて、そろそろ失礼しよう。

 時刻は20時過ぎだからね。部隊に戻って補給の調整をしないといけない。

 フクスの停車位置に向かって歩いて行くと、他の車両の陰に隠れてしまっているようだ。だいぶ車両が増えたからなぁ。

 辺りをキョロキョロしながら道路を歩いて行くと、遠くに車列の最後尾が見えてきた。

 さすがにこの辺りに停めたとは思えない。

 途中で見逃したんだろうか? ストライカーから比べれば車高はあるんだが、輸送部隊のトラックはそれ以上に車高があるからなぁ。


 何度か道路を往復しても、見つからないんだよなぁ。

 シグさんと一緒に指揮車両を出た時一緒にいれば良かったと反省していると、ポケットのトランシーバーに着信があった。

相手はシグさんだった。 応答ボタンを押して話を始める。


「申し訳ありません……。どこにもフクスが無いんですよ!」


『道路から移動して燃料補給を終えたところだ。道路の車列にいるのなら、指揮車両に戻るんだ。ジュリーを迎えに出す!』


 迷子じゃないんだから、現在位置を教えてくれれば俺の方から移動するんだけどなぁ。説明し辛い場所にいるのかな? 燃料補給と言っていたから順番待ちの車列で位置が移動してしまうからかもしれないな。


 指揮車両に戻って後ろのバンパーに腰を下ろしていると、ジュリーさんが手を振って俺に近付いてきた。


「全く迷子になるなんて……。車が多いんだから、状況を見ていないと置いて行かれるわよ」


「これほど車両が多いとは思いませんでした。ところで補給の方は?」


「私達が最初だったから、今はストライカーの燃料補給をしているところ。身軽にしようと、オルバン達がキャンピングカーゴから荷を積みかえているわ」


 次はゾンビの誘導だからなぁ。確かに身軽にしておいた方が良いんだが、そうなると装備を全て搭載できなくなりそうだ。

 その辺りはオルバンさんも考えてはいるんだろうが、早めに行って状況を見ておいた方が良さそうだな。


 フクスが停車していたのは、70号線の東端だった。

 対向車線に車を置いて、他のストライカーと一緒に荷物の整理を行っている。

 俺に気付いたレーヴァさんが近付いて苦笑いを浮かべる。


「さすがに全て置いて行くわけにもいかないようだ。モハベ砂漠のように道路を逸脱して荒野を進むようなことになればと思っての措置なんだが、少し荷が多すぎるな」


「となると、残すカーゴは?」


「サミーの所のキャンピングカーゴと私の所の大型カーゴで良いだろう。それでどうにか積みこめるはずだ。だが緊急時にはそれらも投棄するぞ」


 どちらかと言うとどんどん荷物が減る方向だろうから、投棄しても問題はないだろう。

 

「もう少し掛かりそうですね」


「まだストライカーが2両燃料補給中だ。そいつらが帰って来た1時間後に出発したい。ウイチタ市まで3時間で向かうぞ」


 現在時刻が11時を過ぎているから、早ければ13時には出発ということかな。

 到着が16時ならばジャックを2個仕掛けるぐらいは可能だろう。

 先ずは状況確認が第一だ。


「到着と同時にジャックを仕掛けたいですね。先ずは様子見ということで、2個をこの辺りに……」


ストライカーのキャビン床に広げていた地図に、指で位置を示した。


「北部の住宅街か。その辺りで50体を超えるようなら、かなり面倒になりそうだ。夜間の状況を確認した上で、ウイチタ市内を強行突破できるか判断したい」


「了解です。迂回路はレーヴァさんに任せますよ。出来ればウイチタ市の南の135号線と35号線のジャンクション付近に進出したいところなんですが……」


「そのまま35号線を南に釣り出せるという事か……。となると、確かに大きく迂回することになりそうだな。ウイチタ市からゾンビをどれほど釣り出せるかやってみないと分からんが5万体には届かないだろう。北部を爆撃すると言っても爆撃の効果は案外少ない。我等が釣り出した後でもウイチタ市内には、5万体を遥かに超えるゾンビが依然として棲息していることになるだろう。迂回路はコンボイの通行も視野に入れないとダメかもしれないぞ」


 工兵部隊なら容易に放置車両を撤去してくれるだろうけど、放置車両はかなりの数に上るだろう。コンボイを停止したならゾンビが黒山のようになって車両を覆い尽くさないとも限らない。

 やはり迂回するしかないだろうな。

 だけどあまり大きく迂回したなら、今度は燃料不足が起こりかねない。ウイチタの次はオクラホマ市だからね。オクラホマのゾンビを釣り出してダラス北部でヒューストンからの補給を受けようという計画だからなぁ。あまり無理が出来ないんだよねぇ。


 レーヴァさんと別れると、俺達のフクスに向かう。

 なるほど、道路の一番先に並んでるな。既に補給は終わっているだろうから、後は荷の確認をしてるんだろう。


「遅かったな。レーヴァ大尉と打ち合わせという事だろうが、出発は?」


「後2両のストライカーに補給すれば完了のようですね。今度は余分な荷物は置いて行くとのことでしたが?」


「キャンピングカーゴを外そうとしたら、女性兵士達の大反対に合いまして残すことになりました。部隊の食料輸送には丁度良かったんですけどね」


 オルバンさんが残念そうな顔をしているんだよなぁ。やはりフクスで荒野を走りたかったのかな?


「ドローン1機を本隊に預けて、代わりに海軍仕様のドローンを受け取りました。かなり大きいんで、屋根の上に置いてあります.固縛はしっかりと行ない真下から落ちることはありませんよ」


「ユニットも大型らしいけど?」


「80mm迫撃砲弾4発に40mm2連装ロケットランチャーですからねぇ。運ばれてきたドローンを見てジュリーが撫でてましたよ」


 何となく明日の光景が目に浮かんでくるんだよなぁ。

 順序を守ってくれるなら、積極的な攻撃には目を瞑るしかなさそうだ。


「それで、直ぐに出発できるのかな?」


「荷の積み込みは終わってますから大丈夫です。エディ達が見えないのは昼食を取りに向かったからです。サンドイッチだと聞きました。ウイチタまでの車内で食べることになりますね」


「それなら彼らが戻り次第、乗車してくれ。出発予定時刻は13時だが、ストライカーの給油次第では早まるかもしれない」


「了解!」と短く答えた彼らが散っていく。

 咥えタバコで2号車に向かうと、屋根の上の荷物を眺める。

 確かに大きいなぁ。2倍近くありそうだ。シートが2つ膨らんでいるのは、今まで使っていたドローンも屋根に乗せているのかもしれないな。

 あれで上手く運用できるのだろうか? 今までのような動きが出来ない時には、上空偵察に特化するしかなさそうだな。


「サミー! 乗車してくれ」


 1号車の方からシグさんが俺を呼んでいる。

 出発の連絡があったのかな?

 駆け足で後部からフクスに乗り込むと、シグさんがハッチを閉じる。


「これで全員だ。少し早めて1240時に出発するそうだ。隊列はこのままで、レーヴァ隊の後方に付く」


「了解です。俺達だけなら都市の通過も容易なんですけどねぇ」


「それはマリアン少将達が考えれば良い。先ずはウイチタの状況を確認しなければ次に進まんぞ」


 テーブルに地図を乗せておこう。

 その上にビニルシートを乗せれば、マーカーで情報を書き込める。

 それにこれから昼食だからね。地図の上に食べかすを散らかしたら、シグさんにきつい目で睨まれかねない。


「出発します!」


 操縦席から声が聞こえてきた。女性の声は明確に聞こえるんだよなぁ。

 ゆっくりとフクスが動き出し、135号線のジャックションに向かって対向車線を走りだす。高速道路を逆走するなんて自殺行為だけど、この道路を走るのは俺達だけだからなぁ。これなら俺の華麗な運転を見せてあげても良いように思えるんだよね。

 


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