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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-697 サライナ市に向って出発だ


 レーヴァさん達との打合わせを終えた午後に、俺達の部隊を集めて報告を行う。

 特に質問は無いんだけど、直ぐにオルバンさんがエディ達を引き連れてどこかへ向かって行った。

 その光景に俺がポカンと口を空けているのを見てジュリーさんが笑い転げているんだよなぁ。


「ハハハ……、多分ジャックを更に調達するんじゃないかしら? 何時もより沢山積んでるんだけど、それでも足りないと考えたのかもね」


「はぁ…、レディが苦労するわけだ。そういう事なら場所を確保して置かねばならんが、搭載する場所があるのか?」


「案外もう1台カーゴを見付けてくるかもしれないわよ。このフクスが曳いているカーゴより大きい奴なら沢山積めるでしょう」


 それも可能だろうけど、上手く見つけられるかな?

 他の部隊でも、今回の作戦ではカーゴを曳く車が多いだろうからなぁ。


「ゾンビを集めるだけでも10個程ジャックを仕掛けることになるだろう。その後は集めたゾンビの誘導だからな。市街地にフクスを乗り入れられない可能性があるから、さらにジャックを仕掛けることになりそうだ」


「最初のウイチタで20個近いジャックがいるってこと! それでオルバンさんが慌ててたのね」


 どれだけ集められるかは帰ってこないと分からないけど、少しでも増えるなら作戦の成功率も上がるに違いない。

 オルバンさんが走って行った方角に体を向けて、改めて頭を下げる。

 

「ジュリーに頼んだ食料は確保できたのかな?」


「そっちは十分よ。要求の5日分を越える8日分を用意したわ。さらに非常食が1日に分。飲料水は水用ジェリ缶をフクスの後部に2個搭載しているわ。2号車が曳くキャンピングトレーラーには10ℓ容器入りが4個あるし、フクスのキャビンにも2ℓのペットボトルが6本あるわよ。そうそう、トレーラー内の簡易キッチン用タンクも満杯にしてあるわ。確か、30ℓ仕様の筈よ」


 それ以外にも、フクス内の小型冷蔵庫にワインやジュースが入っているだろうし、個人装備の水筒だって出発前に補給するからなぁ。実働5日程度なら追加の補給は必要なさそうだ。


「強いて言うなら、シャワー用の水ね。さすがに準備が出来ないわ」


「本隊が来たなら、優先して使わせて貰おう。それまでは我慢するしかなさそうだが、先程の量が確保できているなら、濡れたタオルで体を拭くぐらいは可能だろう」


 シグさん達はそれで満足するしかないだろうな。俺達は我慢するしかなさそうだ。

 

「弾薬類の確保は終了しているんですよね?」


「それは私が担当したぞ。全て完了だ。だがオルバンの提言で手榴弾ではなく、ダイナマイトを筒に入れた爆弾が50個だ。遅延時間が15秒だが少しは手榴弾も追加しておくか……」


 釣り出しながら少しは数を減らそうという事だろう。

 グレネード弾でも良いんだけど、もったいない気がするのかな。

 俺達のフクスにはグレネードランチャーを搭載しないがM4カービンにM203が付けてあるからね。ゾンビの集団の前方に爆弾を使い、群れの中にグレネード弾を撃ち込めそうだ。


「個人装備の嵩張るものは今日中に積みこんでおいて欲しい。明日に慌てるのは問題だからな」


 ダッフルバッグにノートパソコン類を納めたバッグだから、夕食後にでもフクスに搭載しておこう。マーリンも一緒に運んでおけば、明日は装備ベルトだけを戦闘服に着ければ良いからな。

                 ・

                 ・

                 ・

 4月11日9時過ぎに俺達は福祉に搭乗する。

 出発時刻は0930時だから、まだ15分ほど余裕がある。

 運転席に座っているのはレーヴァさんの古巣からやって来たブレダ少尉とマチルダ准尉だ。エディ達が2号車に移ってしまったから、1号車の男性は俺1人なんだよねぇ。ちょっと場違いな思いがするから、キャビンのベンチの端に腰を下ろしてテーブルの地図を眺めることにした。


「ブレンダ少尉達はレンジャー部隊出身だ。この部隊にも直ぐになじめるだろう」


「おかげで男性が俺1人になってしまいました。さすがにこのキャビンで寝ることは出来そうもありませんから、夜は外に行きますよ」


「気にしないで良いぞ。レディにもそう言われているからな。サミー大尉には2人も相手がいるんだからこれ以上増やそうとは思わいだろう?」


 テーブル越しに座ったシグさんが今にも吹き出しそうな表情で言ってるんだよなぁ。世間はそういう目で俺を見てるんだろうな。

 とりあえず苦笑いで誤魔化そうとしたら、通信機の前にいたジュリーさんがこらえきれなくなって笑い出した。

 隣に座る2人も顔を見合わせて何か話しているところを見ると、やはり俺の噂話という事になるんだろうな。

 あまり羽目を外さないように心掛けよう。


「たぶん10時間も掛からずに到着するだろうが……」


「真夜中にサライナ市へ到着したくはありませんね。レーヴァさんの事ですから、135号線に乗り換えたら野営を考えると思いますよ」


 危惧するところは同じという事か。

 どれぐらいのゾンビが未だ残っているのか分からないからなぁ。5千以上1万未満とは考えているんだけど、寝込みを5千体のゾンビに囲まれたらかなり面倒なことになることは間違いないだろう。


「燃料の補給もある。補給をしながらサライナ市にジャックを仕掛けることになるが、場所はこの辺りでどうだ?」

 

 シグさんが地図に指を乗せる。

 135号線の東、約3km。市の中心部と、そこから2kmほど南に下がった住宅街だ。


「残存するゾンビの推測ですから、そこで良いでしょう。夜間の確認用に500mほど135号線に近付いた場所にも設置してください」


 タイマーの設定を間違わないようにニックに注意しておこう。

 夜間は22時ごろが良さそうだ。


「指揮車から連絡『出発する! 指揮車が先頭、その後にジョルジュ部隊で、私達はその後よ。最後尾はワトソン部隊』とのことだから、私達は4番目ね」


「了解だ! ブレダ、聞いていたな。フクスの運転にも慣れたろうからよろしく頼むぞ。ジュリー、オルバンにも先ほどの内容を伝えてくれ!」


 シグさんが仕切ってくれたから、俺の出番がないんだよね。

 出来ればお荷物扱いで、最後までフクスに乗り込んでいたいところではあるんだが……。


 動き出したところで、搭乗口近くに席を移動する。此処なら直ぐ上に換気口があるから皆の顰蹙を浴びずにタバコを楽しめる。

 タバコに火を点けると、ゆっくりと煙りが換気口に流れていく。


「フクスにエアコンが付いていて助かりますね。乗り込んだ時には5°Cでしたけど、今は20°Cまで上がってます」


「父の時代には暖房はあったらしいが、さすがに冷房は無かったようだな。だが内外気温に大きな差があるから、防寒服を仕舞い込むことはないだろうな」


 しばらくは何もないという事で、シグさんが軍隊内での経験を色々と話してくれた。

 ちょっと驚いたのは、戦車にはエアコンが無いらしい。それぐらいの電力はあると思うんだけどなぁ。

 それに引き換え、兵員輸送車にはかなり速い段階でエアコンが装備されたらしい。暑さ寒さで弱った兵士を前線に送るわけにはいかないという事だろう。


「武装偵察兵には装備武器にかなりの裁量が与えられる。だがさすがにレバーアクションライフルを持つ兵士はいなかったぞ。どちらかと言うと7.62mm弾が使えるライフルに人気があったようだ。使う機会はあまり無いが使う時には確実にし止めるという事なんだろうな。そうそう、ナイフもバラバラだ。ある時私のところにやって来た分隊の兵士は全員が全く異なるナイフを持っていたからな……」


 まぁ、ナイフ位は本人達の好みでも良いだろうけど、銃弾はそうはいかないだろうな。

 俺の部隊でマーリンを使っているのは俺だけなんだけど、銃弾はオルバンさんやエディの持つM-29リボルバーと共通だ。いつも腰に下げているパイソンも軍属の小母さん達が持つ銃弾と同じだとオルバンさんが教えてくれた。

 

「さすがにパイソンを下げてはいませんよ。レバーアクションライフルの銃弾が357マグナムなんです。12番ゲージのショットガンを持つご婦人もいましたからね。サミー大尉の使う銃弾であればこの陸上艦隊内で十分に融通して貰えるはずです」


 そんなことを言っていたんだよなぁ。

 さすがに他の部隊から銃弾を分けて貰うのは最後の手段としたいところだ。


「艦隊編成に時間が掛っていたから、それだけ入念に準備出来てはいるのだろう。だが最初のウイチタ市はサミー大尉の推測では20万体前後という事か……」


「空爆で半減させた言ところですけど、そうもいかないでしょう。上手い具合に市の真ん中を週刊高速道路が貫通しています。この道路に誘い出して南進させれば良いんですが、レーヴァさん達がそれだけで済ませるかどうか……」


 俺のボヤキに笑みを浮かべながら、蓋付のカップにコーヒーを注いで渡してくれた。自分の分を注いで、ポットをジュリーさんに手渡している。

 すでに出発して1時間以上走っているからなぁ。走りながらのコーヒーブレイクという事かな。


「我等が持つ長距離兵器は60mm迫撃砲2門に105mm無反動砲が1門だけだ。あまり効果のある砲撃は期待できないだろう」


「汎用ドローンによる爆撃も可能ですよ。88mm迫撃砲弾をかなり正確に落とせますからね」


 とはいえ、小口径砲が更に2門増えたぐらいの効果しか期待できないだろうな。

 集中的に運用したとしても、ゾンビを千体倒すことは出来ないだろう。

 それなら大規模なゾンビラッシュを起こして、俺達を追いかけてくる中での砲撃の方が数多く倒せるに違いない。


「新たな兵器の出番は案外早いのではないか?」


「出来れば使いたくない兵器なんですけどねぇ。俺達の保険のようなものですからあまり積極的に使うのはどうかと」


 ロケット弾の予備を搭載していないからなぁ。それに釣り出し中に囲まれた時の用心に考案した兵器だから、飛距離が足りないんだよね。

 ジャックで集めた集団を一気に叩くのであれば、元ネタのハイドラが一番だろう。

 本隊が使うドローンは海軍から運び出してきた代物らしい。かなりの搭載能力があるようなことを言っていたから、案外ハイドラポットを搭載できるんじゃないか?

 もしうまく搭載出来たなら、攻撃地点に近付いたところで操縦をこちらに任せて貰うことが出来ないかなぁ?

 分隊狙撃手のジュリーさんならゾンビの群れを相手に器用にハイドラを使ってくれそうに思えるんだけどねぇ……。

 アイデアをメモしておこう。マリアンさんに会う時確認出来そうだ。


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