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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-696 『オペレーション・ハスラー』と名付けよう


 会議が終わった時には、18時を過ぎていた。

 皆で食堂へと向かい、夕食を頂く。 

 今夜はシチューだな。湯気の上がるシチュー鍋から、大きなオタマで深皿に入れて貰う。

 その外には丸いパンと、リンゴが1つ。カロリー的にはこれで十分なんだろうけど、栄養学的にはどうなんだろう?


「隣を良いかしら?」


 マリアンさんがリンダさんを伴って現れたから、ちょっと驚いたけれど直ぐに頷いて答えることにした。口の中にパンが入っていたから返事が出来なかったんだよね。


「さっきの確認は、あれをやるつもりなのかしら?」


「ビリヤードのようにダラスに向わせるのが得策でしょう。そうでもしないと銃砲弾が不足しそうです」


 笑みを消していつの間にか真剣な表情で俺を見てるんだよなぁ。そんな顔をしながらも俺の話に頷いているところを見ると、マリアンさんも銃砲弾不足になりかねないことを危惧していたに違いない。


「ビッグジャックでどの程度集められるかと考えてしまうのよねぇ。やはりノイズマシンをOH-6Aで運んだ方が良さそうに思えるんだけど……」


「それも可能でしょう。でも何時もヘリが使えるとは限りません。場合によってはストライカーで釣り出しも可能です」


 軍属の小母さんに断ってカンヅメ缶を集めておこうかな。

 最初に始めたのはエディ達だったけど、案外集まるんだよね。


「でもあのロケット弾を使おうなんて考えは止めておいた方が良いわよ。あれは奥の手ということなんでしょう?」


「ランチャーを後方に向ければ、それなりに使えそうです。でも止めておきましょう。あれは緊急脱出用ですからね」


 再装填は面倒だし、予備の砲弾を搭載する場所が無いからね。予備砲弾を搭載するぐらいならジャックを1個でも多く持って行きたいところだ。


「リッツが悩んでいたわよ。彼もさすがにビリヤードのように次々とゾンビを南に向かわせることは考えていなかったみたいね。釣り出しての殲滅を繰り返して数を削減する計画だったの」


 後で怒られそうだな。

 あまり指揮車両には近づかないようにしよう。

 

「あの会議の後でサミー君にどんな暗黙の了解をしたのかとしつこく聞いてきたから、簡単に教えてあげたの。直ぐにジャック10個をサミー君のフクスに届けると言っていたわ」


「助かります。場合によっては更に追加したいところですけど、それは何とかできますか?」


「フリーダムの方が進軍を停めているから、そっちから運んで貰いましょう。大丈夫、心配しないで実行して頂戴!」


 旦那さんのところから奪い取ってくるのかな?

 良かれと思えば直ぐに実行するからなぁ。旦那さんは苦労しているに違いないけど、案外仲が良いようにも思える。

 性格が似ているよりも、性格がまるで違う夫婦の方が仲が良いという話もあるからなぁ。

 上手く譲ってもらえることを祈っておこう。


「指揮はレーヴァさんですから、出発前に釣り出す方法を考えないといけません。でも出発日時は守ります」


「結構! レーヴァ大尉が指揮車両を欲しがっていたけど、あれに無反動砲を搭載するとはねぇ……」


 無反動砲の発射手順は少し面倒らしいけど、射程が7kmほどあるんだから結構使えると思うんだよなぁ。出来ればもう1両搭載して欲しいところだ。

 明日、レーヴァさんを訪ねて火力の調整もしておこう。

                ・

                ・

                ・

 翌日。朝食を終えると、その足でシグさんと一緒にレーヴァさんを訪ねることにした。

 向かった先は、複合ビルの5階にあるラウンジだ。

 レーヴァさん達だけでなく、各1個分隊を指揮するジョイスさんとワトソンさんも副官を伴ってソファーに座っていた。


「相変わらず、準備に私達はいらないと断られたぞ。サミーが私達と打ち合わせたいというのは先行偵察の詳細についてだろう? 先に出発することは誰もが賛成だ。だが1つ分からないのは、昨日の会議でのマリアン少将とサミーの会話なんだよなぁ。あの場でお互いの頭の中にある作戦を認め合ったように思えたんだが……」


 レーヴァさんの言葉に、俺達の横位置にあるソファーに座っていたジョイスさん達も俺に視線を向けて頷いている。やはり皆が気付いているようだ。


「正攻法でダラスに向かうとなれば、銃砲弾を湯水のように消費してしまいます。それを少しでも和らげようと考えた事が、マリアンさんの思惑と一致したという事なんですが……」


 ゾンビを釣り出して殲滅するのではなく、釣り出して次の都市に向かわせゾンビ同士を戦わせ用途考えていたことを説明した。

 レーヴァさん達だけでなく、シグさんまで目を丸くしてるんだよなぁ。


「ゾンビの大群をゾンビにぶつける……。サミーが得意にしている戦法だな。だが、それを今回は続けて行おうという事か!」


 ウイチタ市とオクラホマ市共に20万体をこえるゾンビがいるとなれば、それが一番効率的に思えるんだけどなぁ。


「距離は140kmほどあります。その距離を上手く進め、かつ次の都市のゾンビにぶつけることが可能だと?」


「サミーの部隊が何度かそれを行っている。確かに大規模なゾンビのラッシュが始まった場合はひたすら同一方向に進むらしい。理屈では分るんだが、今回はノイズマシンが使えんぞ。ジャックではそれ程集まる物だろうか?」


「それを協議したくて此処に来たんです。かなりのジャックを必要とするでしょうけど、それ以外の方法も考えないといけません」


 テーブルに地図を広げて、皆で先ずは眺めることになった。

 サライナ市内には、それほどゾンビは残っていないだろう。元々5万人ほどの都市だからね。俺達で南1万体近く釣り出しているし、その後はマリアンさんがたっぷりと砲弾を放っている。


「線路を跨ぐ州間高速135号線で補給を行うでしょうから、東の市街地3か所にジャックを仕掛けてゾンビの数を推測しましょう。多いようであれば自走砲部隊に先行して貰い少し掃除をすれば十分でしょう」


「問題は俺達の補給だ。小型のタンクを曳いて行くように言われたが、車両の数は7両になる。1㎥タンクなら割り当ては約120ℓ……。これで足りるか?」


 砲弾類もたっぷりとカーゴやキャンピングトレーラーに搭載していくことになる。

 今回は、それに燃料の軽油が増えるということになるんだが……。出来れば身軽になりたいところだ。サライナ市で本隊と合流したなら、直ぐに補給部隊に引き渡した方が良さそうだ。


「十分でしょう。さすがにウイチタやオクラホマには曳いて行きたくないですね」


 2つの都市の距離を合算してもサライナ市からの距離は300km程度だ。ジェリカン2つの予備燃料で十分だろう。


「ウイチタを先ずは考えましょう。135号線を俺達は南下していくことになりますが、乗り捨ててある車の状況が分からないんですよねぇ。ある程度は偵察機が撮影した映像で確認できるんですが、果たして押して動かせるものなのか、それとも重機が必要になるのか……」


「それで、工兵部隊が重機をトレーラーに搭載していたんだな。さすがにあの重機を使って道路から撤去するとなると面倒に違いない」


「だが我等なら、ストライカーをぶつけて道路脇に移動させるぐらいは出来そうだな。我等の車両が通れる空間を作れば良いんだからな。それにしてもビリヤードとはねぇ……。『オペレーション・ハスラー』と作戦名を付けようか」


 ジョイスさんの提案に、皆が苦笑いを浮かべながら頷いているんだよなぁ。作戦名を付ける価値があるのか迷うところだけど、ハスラーってエディが詐欺師を指す言葉だと言っていたんだよなぁ。ビリヤードのプロを指す言葉だとばかり思っていたんだけどねぇ。

もう1つ、車両をぶつけて排除するのは今までにレーヴァさん達が何度も行っているからなぁ。安心して任せられそうだ。それに俺達の乗るフクスでもそれぐらいなら出来るんじゃないかな。車体重量だけで15tを越える車両だからね。自家用車なら2t程度だろうから余裕で相手を弾けるはずだ。

 

「ウイチタ市街に入る手前で車両を止め、市街の偵察をドローンで行います。135号線の東に2か所設置して、ゾンビの数と種類を確認です」


「となると、少し離れた場所にも2つ仕掛けるべきだな。昼と夜のゾンビの数の違いも確認すべきだ。それに面倒なゾンビは夜間に現れるんだろう?」


 レーヴァさんの指摘に小さく頷く。出来ればジャックをあまり使いたくないんだが、渋ったことが原因で痛い目を見たくはない。


「ですね……。そうしましょう。数の推測とゾンビの種類がある程度分かれば、次は釣り出す方法をそれに合わせて考えることができます。一番確実な方法は……」


 ウイチタ市のほぼ中心部を135号線が南北に貫いているから、ゆっくりと移動すればあまりジャックや砲弾を使わずともゾンビを釣り出すことが出来るだろう。

 ジャックの数を増すだけでなく、移動しながら周囲への攻撃を行えば更にゾンビを集めることも出来そうだ。


「でもこの方法は、135号線に放置車両が少ないことが前提なんですよねぇ」


「車両の移動に手間取ったなら、追って来るゾンビに飲み込まれてしまうということだな。あの後で偵察機が撮影した画像を見ると、かなりの放置車両があるようだ。場所によっては身動きが出来ないほどに詰まっていたぞ」


 だよなぁ……。パニックになって一斉に車を動かしたなら、それこそ大規模な交通渋滞になるだろう。その時の混乱はパニック映画そのものだったに違いない。


「となると、ウイチタ市を大きく迂回してウイチタ市の南方で135号線に乗り、可能な限りウイチタ市に迫ってジャックを広範囲に使うことでゾンビを集めることになりますね」


 最初に遭遇するゾンビの群れはどの辺りになるんだろう。

 出来ればウイチタ市の南を流れるアーカンソー川を越えたいところだけどなぁ。


「アーカンソーを越えて州間高速35号線のジャンクション付近にまでは進みたいということだな。その位置でならウイチタ市街の南半分以上にジャックを仕掛けられそうだ。となると北側のゾンビをどうするかだが……」


「自走砲で攻撃したいところですが、下手に攻撃したなら南進ではなく北進しそうです」


「最大射程は14kmほどだ。RAP弾なら19kmに延びるとはいえ、やはり市街地に近付くことになるな」


 ここはデンバー空港からの支援を受けるしかなさそうだな。

 なるべき小さな爆弾を沢山落として貰い、その爆撃後にジャックを作動させれば中心部より南にゾンビを集められるだろう。


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