表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
692/722

H-692 皆順調らしい


 3月の下旬に、ヒューストンからC-130が数度に渡り軽油を運んできた。

 20㎥のタンクを搭載したカーゴが2つも機体内に入るんだから凄い飛行機に違いない。

 ペンデルトン基地やグランドジャンクションからは食料が空輸されている。

 いよいよ新たな陸上艦隊が動き出すことになりそうだ。

 

 そんなある日の事。リンダさんが4月5日までの臨時休暇を俺達に伝えてくれた。今日は3月25日だから、10日間ということになる。

 直ぐにエディ達に知らせて、皆で山小屋に戻ることにした。


「生まれるのは今年の秋の筈だ。子供を見るのはクリスマス休暇だろうな」


「取れると良いんだけどなぁ……。色々考えているんだけど、やはりダラスは鬼門だよ。マリアンさんがどの程度で妥協するかでヒューストンへの到着が2カ月は変動するだろうからなぁ」


 ちょっと浮ついた皆の表情が、俺の言葉で急に萎んでしまった。脅かしたわけではないんだけどねぇ……。


「まぁ、その時はその時だな。となると一番の問題はやはり名前ということになりそうだ。どちらが生まれても良いように考えておかないと」


 そうなるだろうね。だけどエディの場合はクリスがきっと考えているに違いない。問題は俺とニックだ。俺は七海さんとオリーさんの2人だから、4人分の名を考えないといけないんだよなぁ。


 その夜、簡単な荷造りをして翌朝の列車に乗り込んだ。

 相変わらずデンバーからグランドジャンクションまでの区間を朝と夕方に運航しているようだ。

 乗客はそれほどいないんだろうな。客車が1両だけで、後は貨車が5両の列車だ。


 客車の乗員は殆どが山小屋の仲間だが、レーヴァさんやシグさんも一緒だ。

 最初は空港のホテルにいると言っていたんだけど、それはちょっと寂しそうだ。レディさんとの打ち合わせも必要でしょうと誘ったんだよね。


「それにしても妊婦が5人も一緒に住んでいるのか?」


「大きな山小屋ですし、住んでいる人達も皆親切ですからね。困った時は甘えさせてもらっています」


「私の住んでいたオクラホマの昔は、困った時には近所中が助けてくれたとお婆さんがいっていたなぁ。だが近所といっても2km先なんだ」


 大草原の小さな家暮らしだったのかな?

 貧しいけれど幸せな暮らしというのは、物語の中であったとしても感動してしまう。それにあの話は作者のお母さんから聞いた実話だったそうだからなぁ。

 お祖父さんの田舎もそんな近所付き合いだったようだ。とはいっても、あれは一門の付き合いなのかもしれない。

 まだまだ昔からにしきたりを護っていたからなぁ。


「農場経営をしていたんですか! それなら、俺達もそんな暮らしを将来はしようと考えているんです」


 良いことを聞いた、という顔をニックがシグさんに見せている。

 さてどこまでシグさんが手伝いをしていたのか、俺も聞かせて貰おうかな。


 笑みを浮かべたシグさんがお婆さんの家で過ごした生活を話してくれたんだけど、シグさんがジュニアハイスクール時代にお婆さんは亡くなったらしい。その後は農園を売りに出したそうだから、子供時代の思い出を懐かしむようにシグさんが話してくれた。

 さすがにアメリカだけのことはある。大型トラクターやコンバインが農業の主役のようだ。それに散水設備まで備えられているんだからねぇ……。日本の農業とは農業への取り組み方がまるで違うんだよなぁ。


「作っていたのは小麦にトウモロコシ、それと大豆だ。葉物は家の近くの畑で作っていたなぁ。イチゴは自家製ジャム作りの為だけだったようだ……」


 農業用水は地下水をくみ上げていたらしい。

 アメリカの地下水位の低下の話を聞いたことがあるけど、農業用水として利用したならそうなるだろうな。

 大きな川があるんだから、用水路を作っても良さそうに思えるんだけどねぇ……。


 シグさんの話を聞いていると、何時の間にかグランビーに到着してしまった。急いで列車を降りて駅の外に出ると、2台のピックアップトラックが停まっていた。


「待っていたよ! さぁ、乗ってくれ!!」


 テリーさんが後部座席に女性を乗せている。ちょっと寒いけど俺達は荷台だな。荷物を荷台に乗せて俺達も乗り込んだ。

 

「もう1台は、誰が運転しているんだ?」


「バリーさんの長男のアンソニーだよ。今年で18になるんじゃないか。そろそろ相手を探すんじゃないかとバリーさんが言ってたぞ」


 エディの疑問に答えてくれたのはニックだった。

 山小屋に来た時はまだジュニアスクールだったんだよなぁ。月日の流れは速いものだと感心していると、山小屋に入る分岐を通り過ぎる。

 もう少しで皆に会えるな。それにやはり荷台は寒いんだよなぁ。早くあの焚火を囲んで温まりたいところだ。……いや、サウナの方が良いかもしれない。結構冷えたからなぁ。


 山小屋のリビングにはいつもより大きな焚火が焚かれていた、

 直ぐに焚火の傍に向い、体を温める。

 そんな俺達にココアやコーヒーを運んで来たのは、七海さん達だった。

 軽くハグしてカップを受け取ったが、まだそれほどお腹は目立たないな。5か月目辺りだろうから、体を大事にしてここで暮らして貰おう。


「それで、新たな部隊は上手くいきそうなのか?」


 レーヴァさんと一緒にリビングに現れたレディさんがいきなり問い掛けてくる。

 ベンチに2人が座るまで待って、話を始める。

 俺達がちゃんと軍の仕事をしているのか心配だったのかもしれないけど、どちらかと言えば使われている気がするんだよなぁ。


「なるほど……。これからは地下のゾンビにあまり気を遣わずに済みそうだな。今度は南という話だが、シグ中尉にしっかりと頼んであるからな」


 何を頼んだのか教えて欲しいところだけど、たぶん俺達の面倒をよく見て欲しいと頼んでくれたに違いない。

 今はお腹の子供だけに気遣って欲しいところなんだけどなぁ。


「帰って来たのう。子供達はティーピーの中じゃが、エマたちが面倒をみているから安心じゃ」


 俺達に並んでライルおじいさんが腰を下ろす。

 エマちゃんは、始めてあった時は5歳だったからなぁ。今ではメイ小母さん達の手伝いも出来るんじゃないかな。案外七海さん達よりも料理が上手いかもしれない。料理は経験だと誰かが言っていたからね。


 次に現れたのはオリーさんだった。オーロラが一緒じゃないのは、エマちゃん達に混じって遊んでいるのかな?


「全く休暇に計画性が無いんだから困った話ね。今度はどれぐらいここに居られるの?」


「4月の5日までですね。次はヒューストンを目指すことになりそうです。となると、第2子を直ぐに見ることが出来ないんですよねぇ……」


 俺の言葉に悩んでいる仕草を見せたのは、まさかついて行こうなんて考えてはいないだろうな。ここで生まれた子が1歳を迎えるまでは作戦には参加しないで欲しいところだ。

 前回の七海さん達の休暇を踏襲して貰おう。


「となると一番の問題が、生まれてくる子の名前なんですけど。オーロラの次の子は、男の子であればムサシ、女の子であればオデットにしたいと思うんですが……」


「了解。ムサシとはあまり効かない名前だけど?」


「かつて日本にいたソードマスターじゃな。サミーの技を引き継がせるのか?」


 オリーさんの疑問に、ライルお爺さんが応えてくれた。剣豪はソードマスターって訳すんだ! 


「もう1人ナナの子だっているでしょう。でもどちらかが継いでくれると良いわね」


 小さい頃から鍛えないといけないだろうな。俺の場合は小遣い欲しさに頑張ったようなものだけど、果たして現在の子供はどうなんだろう? そもそもお金を使う場所がこの辺りにはないからなぁ。


「ライルお爺さん。1つお願いがあるんです。七海の子供の名前を考えてくれませんか? 俺や七海ではどうしてもこの国の名前には程遠くなってしまうんです。男の子であったならテムジンと付けようかと考えていたぐらいですからね」


「どえらい名を付けようとしたのう。それぐらいの覇気をサミーに期待したいところじゃが、今さらじゃろうな。だがテムジンに匹敵する名は中々おらんぞ。これは婆さんとじっくりと考える必要がありそうじゃ。任せられたぞ。ワシ等が良い名を付けてやるからな」


 一番の課題が何とかできそうだ。

 今度はマリー4さんが下りてきた。オリーさんの話ではユリアンさんが妊婦を1人ずつ検査していたらしい。


「毎月検査なの。でも2人目だと、少し余裕があるのよねぇ。マリーさんやレディさんは検査の度に心配そうな表情をしているのよ」


「ちゃんとマリアンさんに経過報告をしているんだろうか? ちょっと心配になってしまうんだよなぁ」


 そんな話をしたら、しっかりとレーヴァさんに報告しているとのことだ。それならレーヴァさんからマリアンさんに伝わるだろう。けどレディさん達だって悪く言えば俺達と同じ共稼ぎだからなぁ。子供は山小屋で預かって貰うことになるんだろう。

 さすがにマリアンさんでも陸上艦隊の指揮車両に子供を乗せようなんて野望は持っていない……。戻ったら確認しておいた方が良さそうだな。


「それなら今の内にサウナに入ろうぜ。早いところ戦闘服を脱ぎたいからなぁ」


「サウナなら今は誰もいないぞ。ジュディ達はシャワーを浴びると言っていたからのう」


 それならと、腰を上げて皆でサウナに向かう。

 さすがにまだ厚く氷の張った湖面に飛び込もうなんて考えはエディも持っていないだろう。

 だけどサウナから湖面に延びる板敷きから下を眺めた時に、そんな思いは消し飛んでしまった。湖面に直径2m程の穴が開いているんだよなぁ。

 さすがにあれに飛び込んだら、心筋梗塞になるんじゃないのか? ユリアンさんが来ているのも都合が良い。医者の立場からしっかりと禁止を言い渡して貰おう。


「やはり作っていたなぁ。サミー、あれに飛び込むからな!」


 俺の肩をドン! と叩いてサウナに向かったのはエディだ。危うく氷の空いた穴に落ちかけてしまった。相変わらず力があるんだよなぁ。ニックはウイル小父さんほどに筋肉は付かないけれど、エディは小父さんに近いからだになってきたからなぁ。 

 あの2人に比べられると貧相な俺だが、さすがに諦めが付いた感じだ。やはり民族性の違いなんだろう。さて、サウナに入って体を温めよう……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
良いお年をお迎えください。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ