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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-690 フクスにロケットランチャーが付いたらしい


 ホンダジェットがデンバー空港に到着したのは、時刻は16時10分前だった。連絡を受けていたんだろう。格納庫手前で止まったジェット機まで、ピックアップトラックが迎えに来てくれた。

 パイロット達に「ご苦労様でした」と挨拶をして、飛行機を後にするとピックアップトラックの後部座席にバッグを押し込み、助手席に乗り込んだ。


「ご苦労だったな。皆が待っているぞ」


 運転席にいたのはシグさんだった。部隊を任せていたからなぁ。先ずは労いの言葉をかけておこう。


「あれから、デンバーへの移動だったからなぁ。途中の町を砲撃したぐらいなものだ。あの大型ダンプを部隊から離すのはもったいない気持ちだが、橋を渡れないというのが問題だな」


「指揮車を改めて作るという話でした。それは形になりつつあると?」


「指揮車だけでなく、部隊全体の車両を再度調整するそうだ。だが我等の車両はフクス22両で変わらんぞ」


 レーヴァさん達の車両もストライカーで変わらないだろう。変るとなると……、自走砲部隊辺りだろうか? それとも工兵部隊や兵站を支えてくれる輸送部隊かな?


デンバー空港の複合ビルに到着すると、併設されたホテルにチェックインする。

 ホテルの運営は軍属の小母さん達が食堂運営の傍らに行っているらしい。客は少ないからねぇ。他所の基地から大勢の来客が来る場合でも100人を越えることはないようだ。

 だが今は、陸上艦隊が駐屯しているんだよなぁ。


「現在部屋が殆ど満室なんです。陸上艦隊が無事に帰ってきましたから」


 カウンターの若い小母さんが、部屋の鍵を渡してくれた。

 どうやら数室を空けてあるらしい。急な来客の対応だろうけど、結構大変そうだな。


「夕食が済んだら2階の会議室だ。扉の銘板に『M201』と表示があるぞ。開催時刻は1930時だ」


「了解です。それで、ニック達は?」


「あいつ等は、オルバン達とフクスで油を売っているようだ。改良を施すという事らしいが、私にはどう改良しているのか理解できん」


 機械いじりが好きな国民性もあるだろうからなぁ。さすがに分解整備はしてないだろうけど、次の作戦前には確実に動くことを確認した方が良さそうだ。


 シグさんと別れて、部屋に向う。

 バッグから衣類を一式取り出すと、軽くシャワーを浴びて着替えを行った。

 会議ということだから、次の作戦計画を披露してくれるのかな?

 となれば、マリアンさんがあのテキサスとラングレーを代替するために何台の大型トレラーを使うのか興味が湧いてくる。

 滑走路から飛び立つコイン機を眺めていると、トランシーバーに着信があった。

 応答モードに変えると、エディの声が聞こえてくる。

 どうやら、シグさんから俺が到着した事を教えて貰ったようだ。

 

「色々とあるんだが、それは後でも良いだろう。夕食を一緒に取ろうぜ。1830時に食堂前で待っているからな」


「了解! ……そうなると、あまり時間が無いな。直ぐに向かうよ」


 デンバー攻略部隊の指揮官はウイル小父さんだから、結構狩りの獲物が運ばれて来る。

 季節的には鹿かな? さすがに野ウサギは近隣までしか回らないんだよなぁ。

 エディ達は山小屋にいるのかと思っていたんだが、こっちに来ているってことは次の作戦が始まるという事かもしれない。

 現状はマリアンさんの部隊に所属してはいるんだが、ウイル小父さん指揮下の部隊でもあるからなぁ。


 考え事をしながら歩いていたから、食堂を通り過ぎるところだった。

 ニックが俺の肩を捕まえてくれたからなぁ。やはり友人という存在は人生に必要だと感じてしまった。


「全く……。サミーぐらいだぞ。食堂を通り過ぎるのは」


「申し訳ない。ちょっと考え込んでしまって……」


 そんな俺に肩をポンと叩いて、エディが笑みを浮かべる。やはりありがたい存在だな。

 食堂に入ると、先ずは空いているテーブルに防寒服を置いて確保する。カウンターにはその後で並ぶのが一番効率的だ。

 トレイに次々と料理が乗せられる。最後に分厚いパンを2つ確保してテーブルに向かう。

 トレイを置いたら次はコーヒーだな。

 取りに行こうとしたらワインズさんが俺達に手を振ってコーヒーコーナーへと歩いて行った。


「北の航空基地ではレーションが多かったな。ここは小母さん達が腕を振るってくれるからね」


「小規模だけど農場が出来たからだろうね。肉は相変わらず鹿肉ばかりだけど、これは我慢だね。肉牛飼育もおこなってはいるんだろうが、流通網がズタズタだからなぁ」


「陸上艦隊の目的は兵站網の確保だから、俺達が頑張れば牛肉が食べられそうだ」


 エディらしい言葉だけど、オルバンさん達も頷いているんだよなぁ。

 次はデンバーからヒューストンだからね。テキサスと言えばカウボーイの活躍する世界の筈だ。ゾンビ騒動の前には大きな牧場が沢山あったに違いない。


「牧場ならテキサスが良いらしいぞ。乾燥しているように思えるけど、案外クリークや湖だってあるみたいだ」

 

 州の大きさが想像以上に大きいからだろう。テキサス州だけで日本の面積よりも大きいと聞いたことがある。そうなるとダラスとヒューストンでは全く気候が異なるんじゃないかな。


「ところで学士の資格を得られたんだろう? これでハイスクール中退の汚名が残らないね」


「あぁ、サミーに感謝しかないよ。俺だけでなくパット達も含めてだからなぁ。エディが機械工学を持てたのが以外で仕方がないんだよなぁ」


「車1台を分解して、再組立てした画像を送ったんだ。それを評価してくれたんだろうな。クリスは数学が出来ないと無理だと言っていたんだけどね」

 

 機械工学にもいろんな種類があるだろうからなぁ。自動車整備だって工学の範疇に入るのだろう。


「俺は地学を得られたよ。パット達は植物学や栄養学だな。それ以外に衛生兵の資格を得たみたいだ。レディさんとオリーさんが頑張ってくれたんじゃないかな」


 ウイル小父さんの話では、小隊に1人以上は衛生兵が必要らしい。それでも足りないくらいだと嘆いていたんだよなぁ。

 ライルお爺さんは「いざという時に必ずいないのが衛生兵だ」と言っていたけど、そんな事態が度々あったのだろうか?

 ゾンビ相手での戦いでは、今のところそれほど死傷者が出ていない。だがゾンビが投射武器を持った以上、これからの死傷者は増える一方に違いない。

 ゾンビから距離を置いて戦う方法が、今後とも有効とは限らないだろうな。


「だけど怪我をしないことが一番だ。クリスの事だから圧迫包帯を巻いたら血流が止まりかねないからな」


 確かにありそうで、怖くなる。

 エディの言う通り、怪我を避けるのが一番だろう。その為にも普段の訓練をさぼらないようにしないとね。


「それで、フクスのどんな改良をしてるんだい? 結構使えると思っていたんだけどなぁ」


「俺達の部隊はフクス2両で変わりないけど、1号車を指揮とドローン操縦に、2号車はドローンの離発着で変わらないが、機能を強化している。汎用ドローンの強化型を貰ったからね。行動半径が10kmになったし、炸薬を5割程大きくしたジャックを運搬できるよ。出来れば2倍にしたいところだけど、そうなるとどローンへの搭載に時間が掛ってしまうからなぁ。人力での作業性を考慮してくれたみたいだ。それに面白い兵器が搭載されたぞ」


 笑みを浮かべて教えてくれたのは、オットーさん達に依頼したロケット弾が形になったらしい。

 射程が200m~300mだから、考える連中だって気乗りしなかったに違いない。

 ハイドラ並みの炸薬量を持つロケット弾12個が2秒間に投射される姿を見て、発射試験を見学していた部隊から引き合いも来ているらしい。

 短距離に特化した制圧兵器はラッシュに有効だと判断したんだろうけど、その後の対応まで考えないとたちまち囲まれてしまうかもしれない。

 使用時には強行突破するのか撤退するのかを、明確にしてほしいところだな。


「俺達の使っているフクスは強化型だから搭載荷重が6tらしい。それでフクスの側面にランチャーを1つずつ搭載したよ。1両で発射されるロケット弾の数は24本。2両で48本だ。さすがにレーヴァさん達のストライカーにはランチャーは1つだけのようだけどね」


 再装填には時間が掛るから、使えるのは1度切りだ。

 それでも100発近いロケット弾が放たれたなら、奥行きのあまりないラッシュであるなら強行突破が可能だろう。


「しっかりとセーフティを掛けておいてくれよ。極端に射程の短いロケットだからなぁ。誤動作したなら味方に当たりそうだ」


「オットーさんもそれを考慮したんだろうね。セーフティは2重になっているよ。その内の1つは、事前にロケットランチャー自体で操作しないといけないんだ。直ぐに撃てないという事になるんだけど、安全であることは確かだね」


 そこまで考えてくれるんだからなぁ。やはり頼りになる人物に違いない。

 できればエディを鍛えて欲しいところだけど、そうなると俺達と一緒に明るい牧場経営が出来なくなりかねない。


「細かな改良はたくさんあるけど、それも何とかなりそうだ。サミーはゆっくりとマリアンさん達の会議に参加してくれ。手伝って欲しいところではあるんだけど、工兵部隊の連中が協力してくれているんだ」


 俺もレンチを持って、エンジンの分解整備をしたかったんだけどなぁ。

 だが本職の工兵部隊がいるなら、エディ達も安心できるだろう。俺みたいに部品が余ることもないだろうな。


 ふと腕時計を眺めると、会議の予定時間まで30分ほどだ。

 テーブルを離れて、奥のコーヒーコーナーに向かう。

 コーヒーを飲みながらタバコを1本。見知った人物に軽く手を上げて挨拶をする。

 結構見知った人が増えているな。

 それだけ部隊になじんでいるという事になるのかな。

 しばらくぶりで仲間と談笑を楽しんでいると、時間が直ぐに過ぎていく。

 明日はフクスを整備しているエディ達の様子を見てみるか、少しは手伝えることがあるかもしれないからね。

 エディ達に軽く手を振って、食堂を出る。

 次は会議なんだよなぁ。短時間で終わることはないだろうなぁ……。


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