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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-689 デンバーに戻れるぞ


 シルバーフォックスの試験運用としてウイドビー島北部の海軍航空基地の地下施設に潜むゾンビの掃討が行われた。

作戦終了をエメルダさんが宣言したのは、俺達が管制指揮事務所建家近くにヘリボーンを行ってから8日目の事だった。

 想定訓練を行ってはいたんだが、いざ実戦という事になると色々と課題が出て来るなぁ。

 強襲揚陸艦の会議室に、士官達が集まり作戦のPDCAを確認する。

 色々と想定外のことが起こったが、これは次の作戦の想定に入るに違いない。作戦を積み重ねるごとにいろんな想定が入るだろうから、作戦の立案には苦労するだろうなぁ。

 だけどそれによって現場の混乱が起こらないことが一番に思える。


「ゾンビの生態については、生物学研究所から派遣された研究員の方でまとめてくれるとのことだから、私達は次の作戦に生かす教訓をここで共有したいわ。作戦自体は成功と言って良いでしょうね。地下施設だけでなく、少なくともこの海軍飛行場を取り戻せたということで統合作戦本部は喜んでくれたわよ」


「結果は出しましたが、やはり地下施設のゾンビを掃討するには、我等だけの戦力では今後全滅しかねません。これから一番必要になる物は、トンネル内のゾンビの群れを止める手段の構築です……」


 ゾンビが10体程度なら、ベンチを手前に転がすだけでも足止めできるんだが……。

 数十ともなればそれだけでは済まなくなる。まして100体を越えるともなれば今回使用した急造の電動カートの前面に取り付けた柵でどうにかだろう。

 更に数が増してトンネル内で小規模なラッシュが起きたなら、ゾンビの数の圧力で電動カートの柵が破られかねない。


「今回は最大でも100体を少し超えた程度だったわね。電動カートに柵を設けただけでは対処できそうにないという事かしら?」


「更に頑丈に、かつ重くする必要があるかと。それと今回は柵にポリカーボネイトの盾を取り着けましたが、最初から銃眼付きの板にした方が良さそうです。グレネードランチャーは銃眼を使うとなればM203よりHK69の方が取り回しが容易かと……」


 ついでにクレイモアを前面に付けておきたいな。場合によっては自爆装置も考えるべきかもしれない。

 ジョルジュさんはラッシュを経験したことがあるのかな。かなり悲壮な表情で訴えているんだよねぇ。


「私からは、電動カートの曳くカーゴの1つを通信設備専用に作りたいですね。簡易テーブルセットを搭載しておけば、移動現場指揮所が出来ます」


「汎用ドローン、できればデュラハンの制御も移動指揮所で行いたいところです。ドローン制御者への指示を中継で依頼するとなると、ワンテンポ遅れることになりますから」


 移動指揮所の機能を高めて1つのカーゴに集約するという事かな。確かにその方が使い易いだろう。となると、バッテリーやジャックを搭載した資材運搬用カーゴと合わせて考えた方が良いだろうな。

 士官からの提案をメモにして、その提案を降下的に行うための私案を書き込んでいく。

 この場で話さずとも、後でエメルダさんに見せれば十分だろう。ある意味過剰案だからね。採用するか否かはエメルダさんの判断で十分に思える。


「色々とあるわねぇ……。サイカ大尉はこれで私達から離れてしまうのだけど、これだけは絶対必要だと感じたことがあれば聞かせて頂戴」


「ある意味、この部隊の客人でしたが、一緒に戦えたことを誇りに思えます。さすがは陸軍であり海兵隊であると感じた次第です。俺から伝えたいことは皆さんの話を聞きながらメモに追加しました。採用の可否はエメルダ中佐にお任せします。装備を整えることは必要ですが、あまり過剰となるようでは部隊の迅速な動きが出来かねます。最後に1つ。デュラハンにはガス分析のセンサーが付いています。トンネル内の掃討時には必ずデュラハンを先行させて、酸素濃度それに有害な二酸化炭素や硫化水素等の濃度を確認してください。先ほどデュラハンを現場で操作したいとの話がありましたが、俺も賛成です。そうすることで、現場指揮所が一番早くトンネル内の状況を知ることが出来ますから……」


「今回は偶然上手くいったのかもしれないわね。資材庫の海側搬入口が開いていたのが幸いしたのかもしれないわ。…となると、デュラハンだけというわけにもいかないでしょうね。別に専用ドローンを作ることも考えたいわ」


 ガス濃度は高さ方向も関係するからなぁ。

 歩いていて異常が無くとも、解けた靴紐を直そうとして屈んだところで倒れたという話もあるぐらいだ。

 空気ボンベを使った呼吸装置も1個分隊に装備出来るぐらいの数は用意すべきだろう。低酸素にはゾンビは強いからなぁ。やはり人間同士での戦とは全く異なるという事を常に自覚する必要がありそうだ。


「やはりゾンビと一番戦った実績がある人物だけのことはあるわね。このまま私達の部隊にいて欲しいんだけど、相手があのマリアン少将ではねぇ……」

 

 溜息を吐いているんだよねぇ……。かなり問題あると陸軍の末端にまで伝わっているようだ。


「ジョルジュ中尉達がいれば安心して地下を任せられますよ。それに俺には統率力がまるでありませんから」


「でも大尉なんでしょう? 海兵隊の武装偵察部隊を率いて、ゾンビ相手の活躍は軍のファイルに報告書と映像があったわよ。さすがにグリズリーとの白兵戦の映像は無かったんだけど……、本当に無いのかしら?」


「あれはロッキーの森でテントの柱を探している最中でしたからね。軍の活動ではなく私生活での話ですから。それに俺達の部隊の逸話は全て俺単独ではありませんよ。一時的に軍を離れている俺の副官はマリアンさんの娘さんです」


「少将は海軍だったはずよ」


「長男は海軍中佐です。副官の話ではお祖父さんに育てられたようなものだと言ってましたね」


「お爺さんが海兵隊だったわけね……。そんな話はたくさんあるわ。私も両親は空軍なんだから」


 案外祖父母に育てられたという人は多いようだな。両親が軍の関係者であるなら家にはあまり帰れないだろうからなぁ。それで祖父母に預けられるのだろう。


「マリアン少将の娘が副官では更に分が悪いわね。諦めることになりそうだけど、相談には乗って欲しいわ」


「本部で個人の通信コードそれにメールアドレスが分かるはずです。可能な限り相談には応じたいと思います」


 俺の最後の言葉に笑みを浮かべて頷いてくれた。

 海兵隊を追い出されたら、エメルダさんが拾ってくれるかもしれないな。ここは新たな人脈が出来たことを喜んでおこう。


 俺達の作戦終了後の確認が終わると、俺達を見ていた監察部隊の代表者が簡単な賛辞を送ってくれた。

 予想以上に作戦を遂行出来たという事らしい。案外元の部隊に戻ったなら同じような部隊を作るかもしれないな。

 さすがにトンネル内に入ることはないだろうけど、隠されたトンネルを見つけてくれるだけでもありがたい話だ。


「ところで直ぐに次の任地に向かうのですか?」


「本部としては直ぐに派遣したいようだけど、今回の反省結果を基に訓練を再度行うべきでしょうね。それに兵器の改良もしたいから、本格的な部隊運用は4月からにしたいわ」


 しっかりとジョルジュさん達の意見を取り入れるようだ。

 そうなると一旦はドーバー基地に戻るのかな?

 俺はドーバーからデンバーに戻れば良いか……。


「でも、もう少し頑張って欲しいわ。作戦は全て終了で良いんだけど、基地周辺の別荘や住宅の掃討が一部残っているの。3日もあれば全て終わるでしょうから、それを持ってこの基地を海軍に返還しましょう。サイカ大尉の役目は今日で終了よ。海軍の飛行機でデンバーに向いなさい。色々とありがとう。でも、私達で対処が難しいと判断したら、また手伝って頂戴!」


「もちろんです。統合作戦本部に依頼してください。可能な限り馳せ参じます」


 出動の判断は本部長にして貰おう。

 俺ではマリアンさんを御しきれないからね。憎まれたくないし……。


「それでは、皆さん、お世話になりました。最後に1つ『ゾンビは人間ではない』これを常に念頭に置いてください。相手の動きが想像を超えることが度々です。人の形をしていても全く違う生物ですから」


「難しいところもあるんだよなぁ。特に婦女子の姿をしていたら尚更だ。大尉が良くそこまで割り切れるものだと感心しているぐらいだからねぇ」


「ゾンビ映画やゾンビゲームばかりでしたからね。たまにゲーム感覚になってしまう時があるぐらいです。それで得た知見が先程の言葉ですよ。婦女子の姿をしていても、確実に頭部破壊をお願いします」


 とはいっても簡単に割り切れるものでもなさそうだ。

 俺達のように、沢山のゾンビ映画を見せるべきかもしれないな。その上でゾンビゲームをしたなら、ヘッドショットの有効性が理解できるに違いない。


「ドーバーに帰ったなら、手に入る限りのゾンビ映画を皆に見せましょう。それで躊躇なく銃を使えるなら、訓練をするよりも遥かに有効です」


「もう1つ映画館を作るよう具申してみるわ。他の部隊指揮官からも、案外その話を聞くことがあるのよね。さすがにゲームは容易出来兼ねると思うけど、一応当たってみるわ」


 マッチョな兵士が小さなコントローラーを握りしめてゲームにのめり込んでいる姿が容易に想像できるんだよなぁ。

 そんな姿の元をたどって俺に辿り付くようなことはないだろうな?

 またレディさんから大目玉を食らいかねないからなぁ……。

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                ・

 翌朝は久しぶりの青空だった。

 朝食を終えて、エメルダさん自らが淹れてくれたコーヒーを味わいながら、飛行機の準備が終わるのを待つ。

 飛行機だけでなく滑走路の除雪もあるみたいだから、案外出発は昼近くになりそうだ。

 どんな飛行機なのか聞いてみたら、ホンダジェットらしい。デンバーまでの距離は1800kmとのことだから、巡航速度が時速700kmとすれば2時間半程度だろう。昼に出発したとしても、夕食は山小屋で頂けるだろう。


 週発準備が整ったところで、席を立ちエメルダ中佐に敬礼をする。

 少しは様になってきたかな。エメルダさんの答礼は格好良いんだよなぁ。

 感心している俺に近付いて、軽くハグして頬にキスしてくれた。

 後で確認しておこう。キスマークを残したままで山小屋に戻ったなら、どんないじめにあうか分からないからなぁ。


「お世話になりました!」


「また会いましょう!」


 短い言葉を交わして、外に出る。

 既にカミラさんがハンヴィーに乗って待っていてくれたようだ。軽く頭を下げて後部座席に乗り込む。


「色々と大変でしたでしょう? でも助かりました。中佐はだいぶ心配していたんです」


「ジョルジュさん達はかなり慎重だよ。十分にエメルダさんを支えてくれるに違いない」


 滑走路の端で待機していたホンダジェットに乗り込むと、近くで出発を最後までカミラさんが見守ってくれた。

 滑走路を離れて、上空に向って急角度で高度を上げる。

 パイロットの話では、かなり乱暴に操縦しても機体が追従してくれるそうなんだけど、俺が乗っている時には普通に操縦して欲しいところだ。


「デンバー空港への到着は1600時になるでしょう。ゆっくりとコーヒーを飲んでいてください。喫煙も構わないですけど着陸前30分からは禁止です」


「ありがとう。この飛行ルートは初めてなんだけど、この高度だからなぁ。下を眺めても何も分からないよ」


「さすが高度は落とせませんよ。でも事前に行っていただけたならレシプロ機を用意出来たんですけどねぇ」


 俺の話が面白かったにかな? 笑みを浮かべてコクピットに戻って行った。

 


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― 新着の感想 ―
「海兵隊を追い出されたら、エメルダさんが拾ってくれるかもしれないな」 追い出されても多分取り合いになるだろうし、ロッキーの山が待っているから何も困ることはないと思う。
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