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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
680/737

H-680 昇降台を見付けた


 西に向かって伸びるトンネルを皆がジッと見つめている。小型ドローンが落としてくれた蛍光ライトの緑色の光にゾンビの動く姿が見えるんだが、距離は150m以上離れているようだ。

 近くに迫るようならキャンピングカートに設置したライトを点灯するだろう。それまではこちらに近付かない限り発砲しない方が良いだろうな。


 左からグレネード弾の炸裂が続けざまに聞こえてきた。

 始まったみたいだな。

 グレネード弾の炸裂に気が付いたんだろう。西に見えていたゾンビがこちらに移動を始めた。

 数は多くないな……。


「軍曹! 狙撃できるか?」


「あの距離で外したなら、滑走路を10周させますよ。……おい、距離100で狙撃だ。頭部破壊だぞ!」


 近くの兵士に伝えると、兵士が笑みを浮かべて頷いている。

 どうやら3人で狙撃するようだ。目標を割り振って、M14を構えている。

 暗視装置が付いた光学照準器が付いている。

 さて、上手く倒せるかな……。


 銃声が重なると、蛍光ライトの淡い光の中でゾンビが倒れるのが見えた。

 続いてもう1度狙撃が始まる。


「良し! 全て頭部に直撃だ。あれなら二度と動くことはないだろう」


 軍曹の呟きは、南に向かった部隊の2度目のグレネード弾の炸裂音に消されてしまった。

 数は多くないから、念のためと言う事だろう。

 直ぐにサプレッサーを付けた拳銃の音が聞こえてくる。

 

「またやってきましたよ! 今度は数が多そうです」


「なら、リトルジャックを作動させよう。それでも近付くなら銃撃で……」


 集音装置から盛んに統率型ゾンビの声が聞こえてくる。かなり集まっているのかもしれないが、ラッシュの兆候である断続する声ではない。

 広くゾンビを集めるのではなく、近くにいるゾンビだけを集めているのかもしれないな。


 マーリンを肩から外して両手に持つ。

 まだセーフティは掛けたままだ。俺が撃つのは至近距離で十分だろう。


「ブザーが鳴りだしましたね。下がっていくゾンビもいるようです」


「それでも結構近付いてきているみたいだ。同じように狙撃で対処しよう」


「了解です! まだM203は出番なしだぞ。使うのはジャックが炸裂してからだ!」


 グレネード弾を装填していた兵士に注意している。

 ここでグレネード弾を使ったなら、せっかく鳴り始めたジャックのブザーが破壊されかねないからなぁ。


 散発的な銃声がトンネルに響くと、その度毎にゾンビが倒れるのが見える。

 しっかりと狙って射撃をしているようだが、頭部破壊の確認を行わないわけにもいくまい。

 これはこれ、それはそれだからなぁ。


「そうですか! ……了解しました。伝えます!」


 後ろからバーネスト准尉の声が聞こえた。どうやらトランシーバーで誰かと話をしていたようだ。話が終わったのだろう。彼が俺の肩を叩く。


「どうした?」


「南の支線の掃討が済んだそうです。それで、現場を確認して欲しいとのことでした。マスケット少尉も現場確認に出向くとのことです」


 それなら俺も行った方が良さそうだな。彼に「了解」と伝えると、分隊の指揮を執っていた軍曹に支線に向かうと伝える。


「了解です。炸裂後にこっちに向かってくるようなら、グレネード弾で足止めしますよ。数十体も残らんでしょうから、それで片付くと思います」


「楽観はしないでくださいよ。数が多ければスタングレネードも併用してください!」


 それ位は心得ているという事なんだろう。笑みを浮かべて頷いてくれた。さて、行ってみるか。現場確認ならシバタさんがいるから問題は無いと思うんだけどなぁ……。


 足早に南に向かう支線を歩いていると、後方からマスケット少尉が追いついてきた。彼1人なのは、副官を北に向かうトンネルに設けた柵に残してきたからだろう。


「大尉も向かうのですか? 現場確認をして欲しいという連絡でしたが」


「そうなんです。シバタさんがいれば、ゾンビを全て倒したかどうか判断できるはずなんですが……」


 あるいはまた違った状況が出てきたという事なんだろうか?

 それは現場を見れば直ぐに分かることだ。直ぐに支線の先に、1個分隊の兵士が倒したゾンビを片隅に片付けている姿が見えてきた。

 キャンピングカートは役立つなぁ。ゾンビを引っ掛けて動かしている棒はカートに積み込んできたんだろう。

 棒は結構役立つと教えたから、先端に短い突起をつけた棒を上手く使ってゾンビを動かしているようだ。


 俺達の姿を確認したのだろう。軍曹が手招きしている。

 先ずは軍曹から話を聞いてみるか。

 マスケットさんと軍曹の傍に近寄ると、すぐに軍曹が床と近くの金属製のボックスの存在を知らせてくれた。

 

「これなんですが、どう見ても昇降床ですよねぇ」


「そうだな。1辺が2.5mはありそうだ。壁にレールはガイドレールに違いない。あのレールに沿って上下させるという事なんだろう」


 壁に沿って垂直にレールが4本伸びている。両端のレールは線路のレールと同じだな。だがその間にある2本のレールにはのこぎり状の溝が彫られている。この溝に沿って歯車で昇降装置が上下動するという事かな?


「間違いなく、トンネルの出入り口という事になるんでしょうね。上にある駐機場所は蓋の役目をするのでしょう。とはいえ簡単な蓋ではなさそうです。動かすには移動式クレーンを使うのでしょう」


 電動で蓋が開くとは思えないからなぁ。そんな構造にしたなら案外上空から目立つことになりかねない。


「エメルダさんに知らせてください。さすがにこのまま動くとは思えませんが、発電機を使ってこれを動かせるかもしれませんよ。それならトンネル内のゾンビ掃討が捗りそうです」


「ですね……。了解しました。大尉の方は、引き続き掃討をお願いします。北の方も少し動きが出てきましたが、たまに狙撃をすることで現状は対処出来ています」


 トンネルの南と北では、統率するゾンビが連携をまだ取っていないという事になるのだろう。

 俺達にとって都合が良いことは間違いない。

 思わず笑みが浮かんでしまったから、少尉がちょっと首を傾げているんだよなぁ。

 

「軍曹達は、ここを片付け終えたところで一休みしてください。その後で次の支線のゾンビを倒してもらいます」


「了解です。大尉殿もお気を付けて……」


 軍曹の言葉が終わらない内に、大きな炸裂音が聞こえて来た。

 直ぐに集音装置を動かしてヘッドホンでゾンビの声を確認する。

 リトルジャックが炸裂したからなぁ。ゾンビの動きが変化するはずだ。


 後を頼むと言い残して、支線を後にする。マスケットさんはそのままトンネルの北に向かって歩いていく。俺は西に向かう柵に足を進めたけど、柵の後方でコーヒーを飲んでいる兵士がいるところを見ると、危機的状況にはなっていないようだな。

 

「戻ったよ。それで状況は?」


「ドローンで確認中です……。まだだいぶ集まっていますが、同じ場所にいるようですね」


 モニターを見る限りではそうなんだけど、その理由が共食いだからなぁ。

 まぁ、しばらく変化は無さそうに思える。


「戦士型の声が前より大きくなっています。広場に近付いているという事なんでしょう。まだ位置を特定できないんですよねぇ」


 集音装置からの情報を軍曹に伝えると、慌て広場の方向を眺めている。

 ドローンで確認できないところを見ると、広場からは結構距離があるのだろう。さすがにここからでは見えないだろうな。


「あのゾンビの群れを倒しませんと、次の支線の確保が出来ませんよ」


「それは軍曹達に任せるよ。まだ最初の支線の部隊が戻らないからね。彼らが此処にやってきてから行動しよう」


 それまではここに近付くゾンビを狙撃すれば十分だ。

 俺がタバコを取り出すと、軍曹もポケットから煙草を取り出して火を点けている。

 忙中閑あり……。どんな時でも、ちょっとした休息は必要だ。それで鋭気を養うことが出来るし士気を落とさずに済む。

                 ・

                 ・

                 ・

 2つ目の支線の先にある広場を確保したところで、本日の掃討を終えることにした。

 ま支線が2つもあるから少し柵を強化して1個分隊をこの場に待機させる。北に延びるトンネルにも1個分隊を配置しておけば夜間のゾンビの動きにも対処できるだろうし、万が一の自体が生じたなら、管制指揮所で休息を取る分隊を派遣すれば十分だろう。


 そんな体制が出来たところで、トンネルから地上に戻りエメルダさんが詰める指揮所に顔を出す。

 副官のカミラさんが淹れてくれたコーヒーを飲みながら状況の確認と明日以降の対応を話し合うことになるのだが、俺達以外にも工兵部隊の連中まで席に着いていた。

 

「ご苦労様。作戦は順調と言って良いでしょう。住宅地に続くトンネルへの注水はすでに膝程の高さまでになっているわ。エドソン少尉の話では、3日は掛かるらしいけど大きな問題は無さそうね」


「全く問題が無いわけではありませんぞ。こちらに2度程ゾンビが集まってきましたからね。警備部隊が銃撃で対応してくれましたが、あれほど重ねたガラクタの山が動くとは思いませんでした」


「でも、ガラクタから飛び出してきたゾンビはいなかったでしょう? 住宅街の方はゾンビが溢れ出したそうよ。艦砲射撃だけでは対処できずに、アパッチまで動員したみたいね」


 後で映像を見せて貰おう。今の話ではそれなりにゾンビがいたという事になるからね。やはりトンネルへの注水は、迎撃態勢をしっかりと作らないといけないようだ。


「ジョルジュの方も、北の地下施設への出入り口が見つかったみたいね。……これね! エリソン少尉、これを動かすことは可能かしら?」


「明日にでも部下を派遣しましょう。見た感じでは電動駆動に見えますから、移動式発電機を運んで貰います。昇降台の定格荷重が明確ではありませんが、ガイドレールや駆動用のギヤを見る限り、1t以上の能力があると考えます」


 その言葉に俺達が笑みを浮かべるのも無理はないだろう。

 北に延びるトンネルの長さはかなりあるみたいだからなぁ。電動式のカーゴを使って兵士達を運べそうだ。それにゾンビを一時的に阻止する柵だって材料が運べれば頑丈に作ることが出来るだろう。


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