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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-059 小さな飛行場だからなぁ


 ジュースにタバコは合わないな。

 やはりコーヒーが一番だろう。

 海兵隊の兵士達と世間話をしていると、10人ほどの兵士が俺達のところに集まって来る。

 やはり俺達が珍しいってことなんだろうな。


「これぐらいで良いだろう。サミー、見せてやってくれないか?」


「演武ですか? 1つ問題がありまして、俺1人では何もできないんです。出来れば誰か相手をして頂けるとありがたいんですが」


「ん? 空手やマーシャルアーツは1人でもできるのだが」


「どちらも攻撃武術ですよね。合気道はちょっと異なるんです。攻撃をすることも出来ますけど、どちらかと言うと相手の力を利用するんで……」


 さて、どうしたものかとレディさんが悩み始めると、1人の兵士が俺に視線を向けて立ち上がった。


「それなら俺が相手で良いんじゃないかな。軍曹殿も『どうにか1人前だ!』と言ってくれたからね」


「よろしくお願いします。それと危険ですから、あの草原で良いですか?」


「確かに下はコンクリートだからなぁ。了解だ!」


 直ぐに全員が立ち上がる。

 まったく娯楽に飢えてるんじゃないか?

 何が始まるのかと、遠くからこっちにやって来る兵士達もいるんだよなぁ。


 空き地は良い具合に草が茂っているし、小石も出ていない。

 これなら背中を打ち付けても怪我をすることは無いだろう。

 装備ベルトを外し、Gジャンを脱ぐ。下はTシャツ1枚なんだけど、相手の兵士も俺に合わせてくれた。

 腕が太いからTシャツの袖を切っているんだよなぁ。軽く力コブを作って見せてくれたのは自分の肉体に自信があるに違いない。


「オットーだ。階級は気にしないでほしいな」


「サミーと呼ばれています。本名はこの国の人達には言いずらいらしいので。それと1つお願いがあります。本気で打ち込んでください。決して恨むことはありません。それで怪我をするようなら、それまでの事です」


「了解だ。俺もその方がやり易い。だがこれは試合だからな。喧嘩ではないぞ!」


「もちろんです!」


 先ずは握手をする。握力も半端じゃないな。思わず顔をしかめてしまった。

 オットーさんが笑みを浮かべているから、普段から鍛えているのかな?

 互いに一歩後ろに下がったところで、改めて対峙する。

 構えはウイル小父さんと同じだ。マーシャルアーツの基本と言うことになるんだろう。ちょっと変えるだけで変化を持たせることができると思うんだけど、兵士は基本に忠実と言うことになるんだろうか?


 右足を半歩前に出して、左足は横に置き足を延ばす。つま先に体重を掛けるようにして銃身を少し前に持っていく。背筋は伸ばして肩を下げ両手は刀を持つように八双の構えを取る。小指の付け根に自然と力が入る。

 このまま手刀を打ち込むことだってできるのだが、それは止めておこう……。

 

 腕に力がまるで入っていないからだろうか? 

 オットーさんが首を傾げているんだよなぁ。自然体だから、このままずっとオットーさんの前に立つことだってできるんだが、オットーさんの場合はそうでもないようだ。

 筋肉がみるみる固くなっていくのが分かるんだよね。かなり力をため込んでる感じだな。


「行くぞ!」

 

 ビュン! と音を立てて右拳がこれの肩を狙ってきた。顎を砕くのはさすがに後に問題になると思ったんだろうけど、そのまま受けたら鎖骨が粉々になってしまうだろう。

 右足を軸にしてオットーさんの腹に体を押し付けながら左手で伸び切った右腕の手首を掴みながら親指で手首の裏を圧迫する。

 そのまま左手を下に下ろしながら肩でオットーさんを撥ねれば……。

 ドン! と音を立てて草原にオットーさんが投げ飛ばされた。


 これで気が済んでくれれば良いんだけど……。右手をオットーさんに差し出すと、力強く握り返してくれた。

 立ち上がりながらも笑みを浮かべて俺に頷いてくれたから、しこりは残っていないようだ。


「いやぁ、驚いたぞ。気がつたら宙を舞っていたからなぁ」


「オットーさんの打ち込みのせいですよ。オットーさんが自分で体を投げたようなものです。中途半端だとこの体ですから、オットーさんの体重で潰されてました」


「それで、強気で来いと言ってたんだな? 生意気な奴だと思っていたが、俺は乗せられたってことか!」


 そう言って俺を後ろから抱えながら、頭を小突いて来るんだからなぁ。

 結構痛いから、そろそろ放して欲しいところだ。


「俺を下せるんだから、バートなら簡単だったに違いない。済まんな。こちらこそよろしく頼むよ」


 改めて握手を求めてきたから、応じたんだけど……。右手が骨折するかと思ったぞ。

 俺の痛がる様子を見て、また大笑いを上げているところを見ると、悪気はなさそうなんだけどねぇ……。


「本来ならビールでも奢りたいところだが、コーヒーで我慢してくれ」


「ありがとうございます!」


 ここはありがたく頭を下げておこう。

 パラソルのあるテーブルに戻って皆でコーヒーを味わう。

 ここでも俺の武道が話題になってしまったけど、海兵隊の人達はすでにマーシャルアーツの達人たち揃いだから、いまさらという気がするんだよなぁ。


「海兵隊に入りたいだって! アメリカに住んでるんだから、帰化なんて気にしなくて良いぞ。そんな記録などすでにどっかに言ってしまったはずだからな。住人もかなり減っているし、軍の連中は志願兵を募っているが応じる者は少ないらしい。サミーは貴重な存在だからなぁ。帰化申請は昨年の内に終わっているんじゃないか?」


 それって、帰化申請所の許可を捏造するってことじゃないのか?

 後で判明したら重罪に問われそうに思えるんだけどなぁ。


「本人の希望と海兵隊の元下士官、現役士官の推薦があれば、訓練も短縮できそうだな」


「あれはきつかったからなぁ……。疲れるとあの鬼軍曹が頭の中に浮かんでくるんだ。余計に眠れなく鳴るんだよなぁ」


 そんな思いで場無しで皆に笑い声が起きる。笑いながら頷いているんだから、やっぱり訓練教官は昔から鬼と呼ばれる存在の軍曹が代々引き継いでいるんだろう。


「そんなに顔を青くするな。たかが3か月の我慢だからな」


 レディさんの言葉に再び笑い声が上がる。

 レディさんも、そんな訓練を経て海兵隊兵士になったんだろうか? 何とかその訓練を逃れる手立てをウイル小父さんに考えて貰おう。


 一服しながら世間話をしていると、トランシーバーからウイル小父さんの声が聞こえてきた。

 時計を見ると、もう直ぐ13時だな。


『そろそろやって来るそうだ。荒地の端に移動して発煙筒の準備をしてくれ』


『了解しました。今飛行場にいますから、直ぐに移動します!』


「いよいよやって来るのか! C-130をこの飛行場に下ろすってんだからなぁ。見物には違いない。……賭けはどっちが有理なんだ?」


「今のところ、脱輪の方ですね。彼らが勝てば、ビール缶半分というところです」


 上手く下りられるかどうか賭けをしてるのか!

 まぁ娯楽も無いからね。大金が動くわけでもないようだから小隊長達も笑って許してくれるんだろうな。


 さて、俺達も出掛けよう。まだエンジンをンは聞こえないけど、慌てて脱輪などしたなら笑い者だからなぁ。

                 ・

                 ・

                 ・

 西の方からエンジン音が近付いてきた。

 パット達が双眼鏡で見ているけど、まだわからないようだな。峰が高いから、かなり高度を取っていても稜線すれすれで飛行してくるんじゃないかな。


「あれだ!」


 エディの声に皆が、エディの伸ばした腕の先を見る。

 腕を伸ばさなくとも、西を見れば直ぐにその巨体が見えた。

 地上100mほどの高さでこちらに近づいてくるんだけど、かなり迫力があるなぁ。


『聞こえるか! もう1機が後方を飛んでいる。そっちはサミー達のところに荷を投下するだけだ。発煙筒を焚いてくれ。火が消えたなら直ぐに追加するんだぞ!』


『了解です。直ぐに発煙筒を焚きます!』 


「行って来るぞ!」


 通信を終えて、エディに顔を向けると直ぐにその場から駆け出して行った。

 数本バッグに入れてあると言っていたから大丈夫だろうな。

 俺も、マイカーから発煙筒を外して1本入れてあるんだけどね。


 広場の真ん中で屈んでエディが何かしているのは、小さな穴を掘っているんだろう。

 直ぐに作業を終えると、発煙筒を焚いてその穴に入れる。赤い煙が噴き出したのを見てエディがその場を離れた。

 2機目の輸送機はすでに双眼鏡を使わなくて身見える距離に近づいている。

 発煙筒の煙を見て、方向の修正をしながらどんどん近付いてくる。


 広場を過ぎ去る前に10個ほどの荷を投下したんだけど、パラシュートが3つも付いてるんだよなぁ。重量物ってことなんだろうか?

 エディが急いでこっちに走ってくるのは、積荷に当たるんじゃないかと心配しての事だろう。やがて積み荷が草原に落ちると、ちょっとした振動が伝わってきた。


「全部広場の中だね。風がそれほどでもないから遠くに流されなかったみたいだ」


「かなり大きいな。例の新しいトロッコかな?」


「ヘリコプターを運んで来ると聞いてたから、それかもしれないよ」


 とりあえずウイル小父さんに連絡を送る。

 広場に前部落ちたなら、後は軍に任せれば良いと言ってくれた。

 そうなると……。


「行ってみよう!」


 考えることは同じだな。果たして輸送機が飛行場にちゃんと降りられたかどうか。

 煙は見えていないから着陸に失敗はしていないと思うんだけど……。


 ジュースをご馳走して貰った。パラソル付きのテーブルに人が集まっている。

 ちょっと顔を出して俺達への用事が無ければ、輸送機を見に行くことにしていたんだけど……。ウイル小父さんにそこに座れと言われてしまった。

 どこから持って来たのか、前よりもベンチや椅子がたくさん置いてある。

 ウイル小父さんの後ろにあったベンチに座っていると、直ぐにウイル小父さんが俺達を紹介してくれた。


「後ろの3人は俺の息子のニックに友人のエディ。それと日本から俺の家にホームステイしていたサミーだ。さらにその後ろがガールフレンドのパットにクリス、それとクリスの家にホームステイしていたナナになる」


「彼らがグランドジャンクション攻略のアイデアを出してくれたと……。中々良い息子さん達ですな。自己紹介しておかねばなるまい。私が中隊長を任じられたエイムス大尉、隣が中隊付き副官でもあるルーマン曹長。第3小隊のエルトン少尉、支援分隊のカーク軍曹だ」


 大尉に名を呼ばれた兵士が俺達に敬礼をしてくれるから、こっちも頭を下げることにした。本来なら敬礼をしたいところだけどね。


「色々と運んでは来たが、先ずは拠点を作りたい。3日程したらウイル殿の山小屋を尋ねたいのだが?」


「上手いコーヒーを御作って待っていよう。事前連絡はお願いしたいところだ」


 2人が握手をしているところを見ると、俺達が来る前に調整を終えていたのかな?

 

「それにしても練習用のヘリをほしがるとはなぁ。確かに輸送機で運搬できるのだが……」


「グランビイの町からどのようにゾンビを駆逐したかはジョナ少尉が説明してくれるだろう。だが、グランドジャンクションはその手が使えない程ゾンビがいるんだ。デンバーも似たようなものだな。核を投下したらしいが、トロッコでの偵察では爆心地がどこか分からなかったそうだ」


「デンバーは大きな都市だ。たぶん中心部と言う事なのだろうが、中心部は何処かと言われると、人によっては変わるだろうからなぁ」


 一番の繁華街と言うのが俺の答えになるんだけど、それも案外曖昧な答えだな。

 被害半径は数km程らしいが、上空で爆発したならクレーターも残っていないはずだ。被害が大きくて、残存放射線量が高い場所と言うことになるんだろうな。


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