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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-051 今度はデンバーだ


「これほどとは……」


 海兵隊の小隊長が絶句して画像を見ている。

 やはりグランドジャンクションの画像は衝撃的だったようだ。


「再度の爆撃を実行したとしても半減できそうにない。やはり地上から順次掃討するほか無さそうだ」


 その言葉が、一通り画像を見たジョナさんの本音に違い無い。


「そのことだが、俺のところの若い連中が面白いアイデアを出してきた。聞いてくれんか?」


「ああ、どんなアイデアでも構わん。実行可能であるなら、本部の揚陸艦に打診してみる」


小隊長の言葉に、ウイル小父さんが俺に顔を向けて頷いた。 

 説明して見ろと言うことだな。


「日本人のマサミツと言う留学生です。サミーと呼んでください。俺のアイデアですが、先程の画像と言うか、線路をトロッコで向かっただけでは途中の町の様子があまり分からなかったことも確かです。

 それで、もう少し詳しく調査するために、ホバリングができるドローンを用意して頂けたらと考えています。それだけでも線路から2kmほどであるならかなり詳しく状況を知ることができるでしょう。さらにグランドジャンクションの飛行場を利用するのであれば、小型のヘリコプターが欲しいところです。

ウイル小父さんの話では、レシプロエンジンを使った小型の練習用ヘリコプターがあると聞きました。それなら線路から数km離れた空港の状況も分かるでしょうし、仕掛け爆弾を投下してゾンビを集めて爆破することができると思います」


 うんうんと頷きながら、俺の話を真剣な眼差しで聞いてくれた。

 最後に大きな溜息を吐くと、俺に顔を向ける。


「更なる状況調査と言うことだな。それは俺も賛成だ。軍用のドローンならもう少し距離を伸ばせそうだが、さすがに数Kmは無理だな。練習用のヘリは2人乗りだが、それより一回り大きくとも良さそうだ。4人乗りになる。それでもレシプロエンジンだから燃料消費はそれほどでもない。ドラム缶1本ぐらいガソリンを用意すれば、500ポンド爆弾ぐらいなら落とせそうだ」


「考えてみてくれるか。だが、可能なのは威力偵察だけになるだろう。グランドジャンクションを奪回するなら少なくとも1個小隊規模でグランビイの掃討まがいの事をせねばならん。そうなるとその輸送が現在のトロッコで可能かどうかになって来る」


「あのトロッコで運べる荷物の荷重を調べてくれないか。トロッコを間に繋いで、ダミーの重しを乗せれば十分だろう。それともう1つ、ヘリを運ぶには10mほどの長さが欲しい。それも試してほしい」


 色々とあるんだな。

 トロッコの試験は俺達でもできそうだ。後でウイル小父さんに立候補してみよう。


「最初は,途方に暮れるばかりだったが、状況さえつかめれば対処方法考えられるだろう。サミー、ありがとう。感謝するよ」


 笑みを浮かべて感謝されたから、思わず頭を掻いて小さく頷いた。

 ウイル小父さんも笑みを浮かべている。後は現役の海兵隊に任せられると思っているに違いない。

 線路前方に群がる黒山のようなゾンビを見たら、士気も萎えたに違いない。

 だけど数名を空から移動できるならグランビイの町で行ったようなゾンビ掃討が出来そうな気もするな。


 翌日からライル小父さんや工兵の人達と一緒になって、エンジン付きトロッコがどれほどの荷物を搭載して走れるかを試すことにした。

 並行してウイル小父さんと工兵の人達が、トロッコの荷台を延長する方法を試行錯誤で試している。

 果たしてどんな結果になるのか、たまに俺達にコーヒーを運んでくれる七海さん達もおもしろそうに眺めて行くんだよなぁ……。


 1週間ほど過ぎたところで、結果が見えてきた。

 小隊長達が集まり、試験の結果と海兵隊の計画、俺達の協力について会議が行われる。


「積載荷重は10t程度ってことか?」


「15tまで試してみたんじゃが、エンジンが唸るばかりじゃったからなぁ。走り出しても速度は出せんし、停めるにも苦労する。やはり10t未満、できれば7t程度に収めたいところじゃな。それで、ウイルの方は目途がたったのか?」


「トロッコを2台使えば問題解決だ。2台のトロッコを10mほど離して、その上に架台を乗せる。枠は鉄骨だ。上に板を貼れば2t程度乗せても平気らしい。問題は前後のトロッコと課題の接合部だな。少し大きな直径のベアリングを取り付けることになると工兵の連中が言っていたぞ。出来ないことは無いと言っていたから、任せることにした」


 先ずはライルお爺さんとウイル小父さんの話で始まったんだが、海兵隊の上層部もグランドジャンクションのゾンビ掃討に付いてはかなり好意的らしい。

 直ぐに小型ヘリコプターの輸送準備に取り掛かっているみたいだ。

 小隊長の話では、小型ヘリコプターの重さは1tも無いらしい。長さも10m未満と言っていたから、十分に搭載できそうだな。

            

「現状のトロッコでも1個小隊を移動できるという事なら、グランビイを起点に東西のゾンビを掃討していきたいですね。ヘリコプターの届くまでは、生存者の救助活動を西に向かって私共が進めて行きましょう。ウイル殿には、もう1台のエンジン付きトロッコを使ってデンバーにどの程度近付けるか確認して頂けませんか?」


「デンバーには核を投下しているぞ。さすがに爆心地には近付けんが、ゾンビの数と様子を探れば良いってことか」


「デンバーの西に飛行場があれば良かったんですが、全て東ですからね。線路を使ってどこまで接近できるかを調べて頂けたら幸いです」


「1つ大きな課題があるんじゃが……」


 ライルお爺さんが話してくれたのは、途中に長いトンネルがあるらしい。ロッキー山脈を東西に貫いたトンネルだという事らしいが、トンネルの中では短波のトランシーバーは使えないだろうからね。

 それにトンネル内にゾンビがひしめいている可能性もありそうだ。


「乗り捨てられた車からライトを外して取り付けることになるじゃろうな。バッテリーも強化しないといけないじゃろう。それと、機関車の前にトロッコを接続して前方への攻撃を可能にしておかねばなるまい」


 まるで装甲列車じゃないか! 

 とりあえず引き受けるみたいだから、明日からライルお爺さん達の手伝いを始めよう。今度も一緒に連れて行ってもらえるかもしれないからね。


 皆が帰った後で、テーブルに残った俺達はコーヒーを飲みながらウイル小父さんの言葉を待つことにした。


「まぁ、西も大変だろう。俺達で東を引き受けたいが、そうなるとトロッコの改造はどうするんだ?」


「周囲を鉄パイプで補強して板張りをすればよかろう。銃眼とライトを付ければ、200m先ぐらいは見通せそうじゃ。トロッコに近づけば銃眼から狙撃も出来るぞ。機関車にはブレーキは付いとるが、数十mは惰性で進むじゃろう。これは試験して見ればわかるはずじゃ。

 線路はデンバーの駅まで続いてはおるが、グランドジャンクションと一緒で中心部までは到達できまい。ある程度ゾンビが多くなったところで帰投することになるじゃろうな」


 機関車の前に一台、後ろに1台という編成になるらしい。3台なら案外速度が出そうだな。

 地図を見ると、グランビイからトンネルのあるウインター・パークリゾートまで約40km、長さ10kmほどのトンネルを抜けると、デンバーの中心部まで70kmもない。

 約100kmほどの距離だから時速30kmで走れば4時間未満ということになる。実際には中心部に到達することは困難だから、トンネルを抜けてどこまで進めるかを見定めるということになるんだろうな。


「これだと日帰りが出来そうに思えるけど?」


 ニックの言葉にライル小父さんが大きく頷いた。


「なにも無ければ可能じゃろう。だが途中はグランドジャンクションに至る渓谷よりも深い谷沿いじゃからなぁ。連絡が途切れてしまいそうじゃわい」


「何かあれば、歩いて帰ることにもなりかねん。こんどばかりはパット達を連れてはいけんぞ」


 ひょっとして、ウイル小父さん達だけで行こうなんて考えているんじゃないのか?

 これはエディにしっかり説得して貰おう。それに高齢のライル小父さんは山小屋に残しておくべきだろう。万が一の時には歩いて帰ることになるんだからね。

 乗り捨ててあったシーソートロッコがグランビイの駅に置いてあったから、あれをエンジンで動かせるようにすれば、機関車が故障しても戻ってこられるんじゃないかな。

 クランク機構は面倒だけど、ライルお爺さんなら作れそうだ。


 翌日。朝食後に火の付いていない薪ストーブ傍のベンチに座ってコーヒーを楽しんでいるお爺さんに、簡単な絵を描いて見せたんだが……。


「面白い事を考えたものじゃ。これならグランビイに帰ってくることも容易じゃろう。面倒なのはエンジンじゃな。さすがに車のエンジンでは大きすぎる。バイクを探して来い。250cc程度が良かろう」


「エディ達と探して来ます!」


 笑みを浮かべて頷いた。

 協力すれば、ライルお爺さんのことだ。きっと連れて行ってくれるに違いない。

 

 エディを探すと、ウイル小父さん達とピックアップトラックのボンネットを開けてエンジンを整備していた。

 直ぐにバイクを見付けに向かうと話したら、首を横に振るんだからなぁ。


「そりゃあ、サミーが車の運転が下手なのは良く分かるけど、それでバイクと言うのもなぁ。ナナががっかりするんじゃないか?」


「そっちじゃないんだ。バイクのエンジンを使ってシーソートロッコを動かそうと思ってね。ライルお爺さんに相談したら、バイクを調達して来いと言われたよ。それと、車の運転もだいぶ上達してると思うんだけどなぁ。路肩に突っ込まなくなったし、道路に放置してある車にぶつけることが少なくなったぞ」


 俺の話を聞いて、ウイル小父さんまでニックと顔を見合わせて首を振っている。

 まだまだ先は長いと思っているのかな?


「なんだ。それならOKだ。ニックも一緒に行かないか?」


「ああ、お前達で行ってこい。だが、拳銃は持っていくんだぞ。一応ゾンビの掃討を終えてはいるが万全とまでは言えないからな」


 ひょっとして、修理していると思ったんだがエディ達に簡単な整備を教えていたのかな?

 ウイル小父さんの言葉を聞いて、2人が頷く。

 先ずは装備を調えてと言うことになるんだろう。

 油で汚れた手を洗ったところで自分達の部屋に向かう。

 拳銃だけで良いとは言っていたけど、一応スコップの柄を繋いだ棒も持っていこう。ニック達もホッケーのスティックを持っていくみたいだからね。


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