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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-048 トロッコは西に進む


 グレンウッドスプリングスを通り過ぎたのが15時過ぎ。やはり少し遅れている感じがするな。グランドジャンクションまでは、100km以上あるようだから、到着するのは夕暮れ時になってしまうだろう。


「やはり、途中で野宿することになりそうじゃ。見通しの良い場所を探して、トロッコを停めるぞ。明日の昼前にグランドジャンクションの様子を探って、帰投する。サミー、山小屋に、そう連絡してくれんか?」


 トロッコを停めてコーヒーブレークを取っている時に、ライルお爺さんが済まなそうな顔をして俺達に話してくれた。

 もちろん俺達に反対の意思など無い。元々2日では終わらないだろうと思っていたからね。


「一夜を明かすなら、グランドジャンクションの手前30kmほどにあるこの屈曲部が良さそうですよ。川の北側は線路だけですし、高速道路は川の南です。ライトで線路の前後を照らせばゾンビの接近を知ることも容易でしょう」


「ここか! 朝食後に1時間半も走らせればグランドジャンクションだな。だけど、結構線路の分岐があるように思えるんだが……」


「駅の構内はそんなもんじゃろうな。ポイントを切換えねばならない時には、金テコで直せば良いじゃろう。先ずは町を抜けるまでは探りたいところじゃな」


 それでも昼前には帰ることになるだろう。今度はエディ達が乗っていたトロッコがトロッコ4台を引くことになる。


 一服を終えたところで、ライルお爺さんが先頭のエンジン付きのトロッコに乗り込んだ。

 ニックは屋根上から見張るのを止めたみたいだな。

 たまにパットの指示で、屋根の上からデジカメを使って集落を撮影しているみたいだ。


「今日の旅は、もう少しで終わりそうね。夕食はレーションだと聞いたけど?」


「何が出て来るか楽しみね。結構量があると聞いたけど」


「育ち盛りが3人いるんだから、残ることは無いでしょうね。でもナナはたまには日本食を食べたいんじゃない?」


「食べたいと思った事もあるけど……。今となっては贅沢な望みになってしまったわ」


「それなら、帰ったら赤飯をご馳走するよ。友人が送ってくれたんだけど、自衛隊の野戦食だと言ってたよ」


 赤飯と聞いて、ナナが笑みを浮かべている。

 だけど、自衛隊の人から聞いた話では色々と問題もあったらしい。


 北海道でトンネル事故があった時に、山崩れを伴っていたから自衛隊に応援出動が下された時の話らしいが、事故で犠牲になった人達が運び出される状況下での昼食が赤飯の缶詰だったらしい。

 頑張ってスコップや鶴嘴で救助を行っている自衛隊の人達が、お腹を満たすために大きな赤飯の缶詰を食べることは当然に思えるんだが、そこにマスコミがいるとなると問題になる。

「犠牲者が出ているのに、自衛隊は良くも赤飯を食えるものだ!」と言うことになりかねないので、寒い季節であるのにも関わらず、隠れて冷たい食事を取ったらしい。

 そんなマスコミ連中は何を食べていたんだと言いたくなる話だが、日本の自衛隊は上手く行って当たり前、少しでも瑕疵が見つかればマスコミの吊し上げに会うからなぁ。

 赤飯ならモチ米だし、腹持ちは良いはずだ。良くも缶詰に出来たと感心してしまう。自衛隊の予算が限られているから、現場で食べられる携帯食料の種類は限られてるのだろう。

 逆に予算を増やしてあげようと記事を書くようなマスコミなら良いんだろうけどね。


「どうしたの? 急に黙ってしまって……」


「ああ、実は……」


 かつての自衛隊の話を聞かせてあげると、パット達は目を丸くしていた。

 そんなパット達を見て、ライルお爺さんが口を開く。


「その原因はワシ等にもあるんじゃろうな。かつて日本とワシ等は戦った。その戦は今では学校でそれほど教えてはいないようじゃが、海兵隊では当時の記録映画を何度も見せられるんじゃよ。サミーやナナを見ると、穏やかな人柄に見えるじゃろう。日本人は個人的に付き合うなら最高の民族じゃ。だが、それが集まると……」


 個と集団ではまるで異なるのが日本人の特徴らしい。花を巡る蝶が、集団になると軍隊アリに変貌するとお爺さんは言っているんだよなぁ。そこまで酷くは無いと思うんだけどねぇ。


「それを何とかしようと、日本の憲法作りに加担したのがアメリカだ。戦争放棄を憲法に入れた上で、軍を解体したんじゃからのう。朝鮮戦争で無理やり自国防衛のための軍隊である自衛隊を作ったのは良いんじゃが、それも日本人が作ったのではなくアメリカが作らせた次第じゃ。それに朝鮮戦争に国策で参加した日本人たちも大勢おるんじゃぞ。戦死者もかなりの数じゃが、それを追悼するようなことは政治家やマスコミ連中には都合が悪いようじゃな」


「日本人は兵士を虐げていると?」


「太平洋戦争で懲りたんじゃろうな。一般人の犠牲者を出し過ぎた。次に日本が敵国になった時は……、と考えると眠れなくなるぞ。完全に民間人を狙ってくるはずじゃ。だがワシ等はそれを非難することは出来んじゃろうな。民間人を狙っての広島であり長崎じゃ。自国兵士の死傷者を少なくするためだと言われたら、何と答える?」


 ライルお爺さんは海兵隊だったからだろうな。日本人の恐ろしさを上官達から散々聞かせれたに違いない。

 今では、牙を抜かれたトラも同然だ。

 大国に寄りそう事でしか国家の存続が出来なくなってしまったんだからね。

 すでに日本は無くなってしまったんだろうか? 今でも日本の島々は残っているはずだが、そこで暮らす住民がいなくなってしまったんじゃないかな。


「まあ、そんな国に生まれて育ったのが、俺とナナです。2人で集団を作るような事も出来ませんから、安心してください。と言っても、アメリカの独立戦争当時は、首狩り族と一緒で、敵の首を取るのが名誉と言われていましたからね。でも野蛮人ではありませんよ。日本の神社仏閣建築は千年以上の歴史もありますし、源氏物語は千年以上前の女性が書いた小説です」


「だから理解できないのよねぇ。中国の漢字も使ってるでしょう? それにいまだに理解できないのはヨーロッパと接触した当時、有数の金の算出国であった日本が植民地にならなかった理由なの」


「ああ、それは簡単な話じゃな。鉄砲が日本に知られてから10年後には、ヨーロッパ諸国の鉄砲の数より日本の鉄砲の数が多かったからじゃ。当時の最新兵器が数年で日本に広まっておる。それを作れる技術が日本にあったということになる。おもしろい話が、もう1つあるぞ。火薬の原料の1つである硝石は日本では産出できなかったんじゃ。日本はそれをバイオ技術で作り上げた。昔から技術に特化した民族じゃったらしいぞ」


「それはあり得ない話よ。あの時代から300年ほど経ってようやく合成できたんでしょう?」


「出来たんじゃな。化学合成ではなく、微生物を使ったようじゃ。まさしくバイオ技術と言うことになるじゃろう」


 パット達が呆れた表情で俺を見ているけど、俺達はそんな先人の知恵は無いぞ。


「今は昔と違ってそんなことは無いと思うよ。俺だって帰化したいと思っているからね」


 ナナも俺の言葉に頷いているのは、もう日本に帰ることは無理だと考えているんだろうな。


「まぁ、アメリカは様々な民族がいることは確かだ。エディ達も今まで通りの付き合いをすれば良いじゃろう。ワシ等海兵隊は、かつて日本軍と血で血を洗う戦いをしているからのう。戦が終われば良い友人じゃよ」


 ライルお爺さん達には子供がいないらしい。おかげでウイル小父さんが俺達を店に連れて行くと、いつも可愛がってくれるんだよなぁ。

 今夜の話も、何時かは子供達に聞かせてやりたいと思っていた話に違いない。

 何時までも良い友人であれ……。主義主張が異なれば分かれることもあるだろうが、かつて同じトロッコに乗り同じ夕食を食べたことは忘れないに違いない。


 夜も深まってきたから、交代で見張りをしながら眠ることにした。

 ライルお爺さん達はゆっくりと寝かせてあげよう。俺達3人の共通の思いだ。

 エディ、俺、ニックの順で見張りを行う。ガールフレンドが一緒だから退屈はしないだろう。

 俺の場合はガールフレンドまでに至っていないんだけど、互いに気になる存在と言うところかな。


「サミーさんの本名は『雑賀』と聞きましたが、あの雑賀衆と関りがあるのでしょうか?」


「信長に滅ぼされた末裔ってことになるのかな? 爺ちゃんの実家にはその時代の火縄銃が飾ってあったよ。おかげで紋が3本脚のカラスなんだ。七海さんの紋所は晴明桔梗じゃないのかい?」


「良く分かりましたね。そんな紋があるの? と高校の友人が驚いてました」


 土御門が苗字ならそうだろうな。

 変わった苗字に興味があったから、その由来を色々と調べた事もあったんだよなぁ。苗字では友人達にだいぶからかわれたことがある。

 案外、七海さんもそうかもしれない。


「こっちに来て一度、家紋入りの扇子を見せたことがあるんです。『ユダヤ教の信者なの?』と言われました」


「ダビデの星と似ているからねぇ。千年以上前からの由緒ある紋だと言えば良いよ。西洋の紋章も簡略化した図案だから、中には似ているものがあってもおかしくはないさ」


 日本人が殆どいなくなったとしたなら、俺達2人の持つ家紋だけが残るんだろうな。

 それも寂びしい限りだが、現在でも日本との通信は途絶しているみたいだ。

 山小屋に戻ったら、短波で呼び掛けてみようかな? 正式な通信ではなくともアマチュア無線を使って世界に呼び掛けている人がいないとも限らない。


 雑貨屋から頂いてきたチョコレートを2人食べる。

 小さな箱だから直ぐに無くなってしまったけど、甘いものは女性にとっては正義らしいからね。

 口の中で溶けるチョコの味を七海さんも楽しんでいるみたいだな。


「さて、そろそろ起こすとしようか! だいぶ空も白んできたからね」


「今日はいよいよグランドジャンクションですね。大きいとは聞いてますけど……」


「数万人らしい。デンバーに比べればかなり小さいけど、ゾンビ対策として爆撃を受けてるんじゃないかな。さすがに核までは落として無いと思うけど」


 50万人を超える都市でさえ、40か所以上あるんじゃないかな。

 さすがに自国領に核を沢山落とすことは無いだろう。

 それ以外の都市なら、大型爆弾やナパーム弾による攻撃に違いない。出来れば爆弾の方がありがたいんだけどね。

 ナパーム弾なら火災を引き起こすだろうから、お店を巡っての物資の調達ができそうにないんだよなぁ。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] アカは何処にでも入り込む。 防衛省の周りにも中にも。 文部省にもね。 いつになったら本当の歴史を知る事が出来るのやら。
[一言] 赤飯はお祝いの食事という認識が強いですからねえ。補給担当もちょっとは考えて、せめておこわにでもすればよかったのに…… 事務方が考えなしだと現場の人たちが割を喰ってしまいますね。
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