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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-038 新たな仲間がやって来た


「明日はトラックの整備をするぞ。今度は町中だから、場合によっては生存者が見つかるかもしれん」


 そんな事を言ってウイル小父さんが張り切っていたけど、2日後の作戦の結果は生存者の痕跡無し、しかも現れたゾンビの数は尋常ではなかった。

 ニック達を見習って、俺達が使ったのはドラッグストアの2階だった。

 1階の店の裏側と2階を住居として使っていたことから、2階に上がる階段は1つだけだったのだが、1階のリビングの片隅にあった階段は三分の一がゾンビに埋まってしまうぐらいだったからなぁ。

 途中からライルお爺さんに援護を頼んだぐらいだ。


 そんな形で、生存者探しを行っていたのだが、5月の下旬にはグランドレイクの町の北側に出ることができた。

 2度程、街中で同じことを行ったのだが、2回目の時には集まってきたゾンビは10体にも満たない数だった。

 どうやら、グランドレイクのゾンビを掃討できたということになるのかな?


 朝食後に、皆を広場に集めてウイル小父さんが状況説明を始めた。

 俺達はコーヒーや紅茶を飲みながら、ウイル小父さんの話を聞く。


「とりあえずはグランドレイクの町のゾンビをほとんど掃討できたと思う。まだ残っているかもしれんが数は少ない。状況を俺達の協会に連絡したところ、軍の方から別途連絡があった。俺達の快挙を喜んでくれたぞ!」


 確かに快挙には違いない。皆で拍手をして互いの肩を叩き合う。


「当然次はグランビイの町になる。だが、町の規模が2倍ほどあるからなぁ。それに当時は夏の終わりも良いところだった。避暑客も大勢いたに違いない。そこで増援を要請したんだが……、どうやら来てくれるらしい。陸軍の工兵が1個分隊と海兵隊が1個小隊、それに俺達の仲間が12家族の約100人だ。銃弾や食料も一緒だ。仲間が増えれば少しは楽になれるかもしれんぞ」


 確かに嬉しい知らせだけど、この広場にそんなに住めないんじゃないかな?

 そんな心配を口にすると、新たな住民はグランドレイクの町の住居を利用して住むそうだ。しばらくは海兵隊の人達も一緒に暮らすらしいから安心して暮らせるだろう。

 グランドレイクに住むことで、国道34号の北を警戒する意味もあるらしい。

 再びゾンビがやってこないとも限らないからね。それは必要な措置ともいえる。

 嬉しいことに、海兵隊が小型の水上機を飛ばしてくるらしい。

 偵察用の飛行機なんだろうけど、グランビイ湖なら十分に離発着が可能だと判断したようだな。


「北西にはソルトレイクがあるし、直ぐ東はデンバーだ。政府の連中はその情報を詳しく知りたいに違いない」


 どちらも核を落としたようだから、住民の生存は絶望的かもしれないな。

 それに距離が離れすぎているから、俺達が直接関与することは無いだろう。

 先ずはグランビイの町のゾンビ掃討が当分の課題ということかな。


 海兵隊か来るなら、現役組はそっちに編入されるかと思っていたんだが、どうやらそうではないらしい。

 陸軍、海軍それに海兵隊では戦の仕方がまるで異なるらしい。すでにチームワークが取れている状態らしいから、余分な苦労を背負いたくないのかもしれないな。

 それでも、グランビイ町のゾンビ掃討には俺達の手伝いも必要としているらしい。掃討の仕方を教えることになるのかな? それとも別動隊ぐらいに考えているのかもしれないな。


「6月の上旬にはやって来るとのことだ。とりあえずは、アメリカは残ったらしいな。だいぶ人口は減って、現状では600万人との事だ。政府としてはワシントン西の半島に避難できた住民を守ることで精いっぱいだ。そんなところに、俺達のグランドレイク町の解放の知らせを受けたんだから、かなり喜んでいるに違いない。ゾンビ掃討の拠点としてグランビイの町を作り変えたいのかもしれんな」


「連中が来たなら、打ち合わせは必要じゃろう。来るまでは武器や車両の整備をしていれば十分じゃ」


 ライルお爺さんがウイル小父さんの話に付け加えてくれた。

 武器の整備は帰ってからきちんとやっているからね。

 そうなると、10日位は暇になるのかな?

 ニック達を誘って釣りでもしてみるか。釣りの道具は、ボート乗り場にあった物を全て運んで来たからね。

                ・

                ・

                ・

 数匹の釣果を見せ合って、腕自慢をしていたある日の事。

 後方で俺達の様子を見ていたパット達が、急に立ち上がって空を眺め始めた。

 かすかにエンジン音が聞こえて来る。飛行機が飛んできたに違いない。

 100人近い人数だとしたら、かなり大きな飛行機になりそうだけど滑走路なんてここには無いからね。道路に下りるのは大型機では無理に思える。


「あれだな! 大きいのが2機に小型の奴が6機だ。小型機はフロート付きだから湖に下りることができそうだぞ。行ってみよう!」


 エディの声を待つことなく俺達はすでに道具を仕舞いこんでいる。

 直ぐに広場に向かうと、山小屋からウイル小父さんがトランシーバーを持って、外に出てくるところだった。


『了解だ! 桟橋はグランビイ湖の北にある。モーターボート用だが、それで良いかな? 降下地点は町中に広い空き地があるぞ。仲間を向かわせてどちらも発煙筒を焚こう。それで十分か? ……了解だ。直ぐに支度をする』 

「バリー、エンリケ! ちょっと来てくれ」


 やはり広場で空を見ていた2人が、直ぐにウイル小父さんのところに向かった。

 話の内容だと、2組が迎えに行くということになる。俺達にもチャンスはあるに違いない。 

 直ぐに部屋に戻ると、装備ベルトに換えて、イエローボーイを手に再び広場に戻ってきた。


「ちゃんと装備をしてきたな。バリーの班はグランビイの北にある桟橋に向かってくれ。俺達は降下してくる連中を迎えに行く。誘導はトランシーバーのチャンネル7で繋がる。自分達の居場所を発煙筒で知らせてやってくれ」


「了解だ。チャンネル7だな。途中で連絡を入れてみる。エディ、出掛けるぞ!」


 バリーさんが、エディ達を車に乗せて走りだした。俺達も急がないと……。

 荷台に乗ったところで、車の屋根を叩いて準備が出来た事を知らせると、直ぐにトラックが走りだす。

 トランシーバーで連絡を取り合っているところを見ると、運転はエンリケさんなのかな?


 結構速度を上げて走ったけど、グランドレイクの町中に入るとゾンビが道路に倒れているんだよなぁ。なるべく轢かないように走っているようだけど、何体かは轢いてしまったようだ。かなり大きくバウンドするから直ぐに分かる。

 到着した場所は、大きな荒地だった。それほど下草が無いんだが、将来の住宅地予定地なんだろう。

 どう考えても300m四方はありそうな場所だ。

 大きな輸送機がこちらに向かって来ると、ウイル小父さんの指示でエンリケさんが発煙筒を焚いた。

 周囲の監視は俺とライルお爺さん、それにテリーさん達2人の4人だ。東西南北をそれぞれ担当して、ゾンビの接近を監視する。今のところは全く姿を現さない。やはり掃討が完了しているということなんだろうか?


段々とエンジン音が大きくなり、かなり速度を絞って俺達の上空を飛びながらいくつもの荷物を投下してきた。

 直ぐにパラシュートが開いて荷物は地上に落ちる。机ほどもある荷物が20個以上あるんじゃないかな。あれを回収するのは海兵隊の仕事になるらしい。


 次の輸送機が俺達の上空に飛んでくる。

 今度は人間が次々と飛び降りてきた。降下兵と言うことになるのかな?

 300mほどの高さでパラシュートが開き、俺達の方に向かって巧みにパラシュートを操って移動してくる。

転がるような着地をすると、直ぐにパラシュートを回収してバッグに詰め込んでいるけど、回収してまた使うのかな?


 降下兵を吐き出した輸送機が大きく旋回して再び戻ってきた。

 パラシュートで数個に荷を投下すると、高度を上げて東に去っていく。

 次々と着地した場所から立ち上がった兵士達が一か所に集まり始めた。その中から2人の兵士が俺達に向かって歩いてくる。

 それにしても色々と装備しているなぁ。あれで重くないんだろうか?


「元海兵隊軍曹ウイル殿ですか?」


 綺麗な敬礼を俺達にした士官が問いかけてきた。


「俺がそうだ。海兵隊は降下訓練もするようになったのか?」


 答礼を済ませたウイル小父さんが問いかける。高いところは嫌いだからなぁ。パラシュートを使うようなら海兵隊への入隊を考えないといけない。


「たぶんこれが最初で最後でしょう。輸送機の中から叩き出されましたからね。パラシュートは自動で開くと教えられましたが、たぶん皆その前に開傘紐を引いたと思いますよ。持ってきたのは当座の食料に銃弾です。町のゾンビを掃討してあると聞きましたが、一般家屋の使用は可能でしょうか?」


「完全とは言い難いが、今では銃声がしても集まってこない。なるべく1か所に宿泊した方が良いだろう。それに当直は必要だ」


「かなり安心できそうですね。上空から見た時にはだいぶゾンビが倒れていましたから心配でした」


 とりあえずここで待機して貰い、装備の回収と移動は少し後になりそうだな。開けた場所だから、ここで野宿しても問題は無いだろう。


 そんな話をしていると、バリーさんが数人の兵士を乗せてやってきた。

 バリーさんの方も上手く行ったみたいだな。


「一度俺達の拠点に来てほしい。車を渡したいし、状況を説明しておきたいんだが……」


「よろしくお願いします。……マイケル! 2時間ほど留守にする。周囲の警戒をしながら積み荷の確認をしてくれ!」


「了解しました。異常があれば直ぐに連絡済ます!」


 並んだ兵士の1人がそう言うと、早速部隊の中から監視兵を選び出し四方に配置を行っている。

 この辺りは現役兵士だな。直ぐに準戦闘態勢に入れるんだからね。


「さて、乗ってくれ。荷台になるが、それは許して欲しい」


「歩くよりは良いですよ。うん? 君は……」


「日本人です。ウイルさんのお宅にホームステイしてたんですが……」

「巻き込まれた……、と言うことだな。だが良くこれまで頑張って来れたな。日本人は銃を使えないと思っていたんだが?」


「腕はかなり落ちますよ。でも生きる為にはゾンビは倒すしかありませんからね」


 俺の肩をポン! と叩いて頷いてくれた。

 納得したということなんだろうけど、どのように納得したか知りたいところだな。

 バリーさんの運転するトラックの後を追うように俺達を乗せたトラックが走りだす。

 一気に人数が倍を超えてしまった。

 グランビイの町の掃討は案外早く終わるかもしれないな。


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