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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-035 キャシーお婆さん手作りのガンベルト


 途中で目覚まし時計を回収して、再びピックアップトラックは北に向かって進む。

 別荘街を抜けると、1kmほどの距離を置いてグランドレイクの町が見えてきた。

 最初にゾンビ掃討を行ったのは、町から少し入った場所だからその手前ということになる。

 それでもまっすぐ伸びた国道の先に、ゾンビが倒れているのが見えるんだよなぁ。


 先行するバリーさんの車が国道傍の民家の駐車場に入って行った。

 駐車場といっても砂利を引いただけの広場だが、自動車なら数台を止められるほどの広さがある。

 西向きのエントランスの扉は閉じられたままだ。果たして中にゾンビがいるんだろうか?


「周辺監視を始めるぞ。爺さんはエンジンを止めずにトラックの中にいてくれ。俺が民家の右手だ。サミーは国道を頼む。残った2人はサミーの補助と左手を頼む」


 俺とライルお爺さんを除いて、3人はM16にサプレッサーを取り付けた得物だ。すでにサプレッサーを取り付けたイエローボーイを手に似だから飛び降りると、国道の傍に立って左右の監視を始める。

 道路の向こうは藪だけど背丈が低いからやって来るゾンビなら直ぐに分かるだろう。

 前方だけでなく、たまに後ろを見るんだけど今のところは倒れて動かないゾンビだけのようだ。


 30分ほど経って振り返った時には、エディが屋根の煙突に旗を結わえているところだった。道路に面したベランダから脚立を使って上ったみたいだな。屋根から落ちたとしても奥行きのあるベランダだから、地面にまでは落ちないだろう。あれなら旗を振れそうだ。

 ジッと国道を見ているけど、まったくゾンビの姿が見えないんだよなぁ。普段は何処にいるのかと、いまさらながらに考えてしまう。


 1時間ほど経過した頃、後ろから鋭い口笛が聞こえてきた。振り返ると手招きしているウイル小父さんの姿が見えた。

 ベランダにニック達が机や椅子を持ち出しているのが見えるけど、あれで銃座を作るのかな?


「終わったようだ。階段も中間付近を2段きり落としたらしいから、安心できるだろう。目覚まし時計を仕掛けに行くぞ!」


 それなら急いで乗らないと……。

 荷台に上がる俺を見て、ウイル小父さんもトラックに乗り込んだ。

 同じような看板があれば良いんだけどね。

 

 ゆっくりと国道を町に向かって走らせていくと、行先案内の看板が見えた。距離的にも500mは離れていないようだから丁度良いんじゃないかな。

 トラックの屋根に上って、2つの目覚まし時計を紐で吊るす。

 設定は明日の10時だな。目覚まし時計モードに設定がされていることを確認したところで、トラックをUターンさせる。

 車内からウイル小父さんがバリーさんにトランシーバーで準備が終わったことを伝えると、『後は任せろ!』とバリーさんの声が聞こえる。

 バリーさん達が上った家の駐車場に戻って、ウイル小父さんがトラックを降りた。バリーさん達が乗ってきたトラックに乗り込み、手を振るニック達に俺も手を振って健闘を祈ることにした。

 グランビイ湖が直ぐ左手に見える場所まで戻ったところで、バリーさん達とトランシーバーのテストを行う。

 問題なく通信ができたから、次は山小屋に戻ってもう1度確認だ。

 上を見れば上天気も良いところだ。かなり日差しが強いから、サングラスを掛ける。


「西の山が今日は見えんのう。雨が降るかもしれんぞ」


「ニック達は大丈夫でしょうか?」


「屋根があるから濡れることはないじゃろう。目覚まし時計もビニル袋に入れてあるからのう。雨に当たっても問題はあるまい」


 そうは言ってもねぇ……。気になるところだな。

 

 国道を左にそれて山小屋への道に入る。

 柵を越えると、移動柵を小母さん達が閉じてくれた。パット達も混じっているのは、昼間はパット達が監視を担当するのだろう。

 そのまま広場を過ぎて、駐車場にしているトンネルの前にトラックを止める。


「サミー、ちょっと手伝ってくれ。ライル爺さんが一雨振ると言ってるからなぁ。シートで荷物を覆っておきたい」


「そうですね。途中で休憩している時に、俺も聞きました。この畳んであるシートで被えば良いんですね?」


「俺も手伝うよ!」とテリーさんが手助けしてくれたから、それほど苦労せずにトラックの荷台を覆うことができた。元々ピックアップトラックの荷台は盾に長くないからね。横幅はあるんだが、奥行きは1.5mほどだ。


 パット達はどうするのかな? と思って焚火の方に目を向けると、小型のワゴン車が停まっていた。

 最初は無かったはずなんだが、この間出掛けた時に見付けて運んできたのかな?

 どう見てもデリバリー用のワゴン車そのものだから、後部の荷台は結構広いに違いない。冬はどうするんだろう? さすがに車内には、ストーブを持ち込めないと思うんだけどね。


 作業が終わったところで山小屋に向かい、リビングの薪ストーブ傍のベンチに腰を下ろした。

 窓が開いているから、良い風が入って来るな。

 日差しが強いけど、日本のように蒸し暑くはない。別荘が沢山あるのも頷けるところだ。

 事故が無かったなら、来月から始まる夏休みはさぞかし湖が賑やかだったに違いない。


「ご苦労様。ライルはまだトラックにいるんでしょう?」


「たぶんそうだと思います。無事に戻ってきましたよ。雨が降るかもしれないと言ってましたから、濡れては困る物を下ろしているのかもしれません。そうだ! 忘れてました。ガンベルトを譲っていただいてありがとうございます」


「良いのよ。あれは店番の暇つぶしに作ったようなものなの。図案の刻印に苦労したのよ。でも、取り出してみるまで忘れていたんだから、歳は取りたくないわね」


 キャシーお婆さんが持って来てくれたマグカップのコーヒーを頂く。

 薄味で砂糖たっぷり……。これがコーヒーだ!


「売りものじゃ無かったんですか?」


「今時欲しがる人はいないでしょうね。それに、マニアならちゃんとした人に作って貰うと思うわ」


 かなり良い出来に思えるんだけどなぁ。

 西部劇に出てくるガンベルトに似ているけど、銃弾が剥き出しではなく、6発ずつ臼側のカバーが付いている。見せるベルトではなく、実用的なガンベルトという感じだ。


「それで、どうかしら? イエローボーイで38SPは有効なの」


「100m以内なら問題ありません。さすがに貫通はしないですけどね」


 銃弾が脳内に留まるんだから、脳を完全に破壊できるに違いない。距離があると頭骸骨で弾かれるみたいだが、そんなに距離を取れば、俺の腕ではそもそも当たらないからなぁ。

 近づいたところで、もう1発。そんな感じで倒したゾンビが何体かあったからね。


「なら、強装弾を作って貰おうかしら?」


「そんな時は357マグナムで十分に思えますけど」


 俺の言葉に笑みを浮かべて首を振っている。


「9mmパラベラムよ。1割ほど装薬量を上げたものがあるの。ライルに作って貰ったら、少し分けてあげるわ」


 9mmパラベラム?

 そういえば、これを使えと渡されたワルサーは9mmパラベラムだったな。強装弾も使えるとは言っていたけど、それって拳銃弾用ではないんじゃないか?


 俺とお婆さんの会話は、メイ小母さんがお婆さんに食事に準備を告げることで終わってしまった。

 代わりにウイル小父さんとライルお爺さんがリビングに入ってきた。ウイル小父さんが時計を気にしながら俺達と世間話をしていると、お爺さんに断って席を立った。

 通信機を置いてあるデスクに向かったのを見ると、バリーさん達の様子を確認するのかな。

 通信が始まったらしく話声が聞こえてきた。詳しい話は、テーブルに昼食が並びだしたから食事をしながらと言うことになるんだろう。


「かなり集まっているらしい。ニック達は階段の上でゾンビを倒しているそうだ」


「階段の途中を2段外しておるようじゃからな。それ以上に上がれるとは思えんが」


「上もテーブルやロッカーを置いて塞いでいるからなぁ。ニック達も安心してゾンビを倒してるに違いない。だが、奴らに7.62mmは早すぎたかもしれん。小口径のライフルがあれば良いんだが」


「そうなると、サミーのウインチェスターになってしまうぞ。ハンター連中があちこちに別荘を作っておるから、場合によっては45SP用のウインチェスターを見付けることができるかもしれんな」


「アライグマ用か? あまり期待は出来んな」


 場合によってはあるってことかな? だけど45SPの銃弾の方が少ないと思うんだけどなぁ。

 とはいえ、ニック達も頑張っているみたいだな。

 部屋の中なら拳銃でも良さそうだ。次に俺達が同じような事をする時には、あのワルサーを試してみよう。


 ウイル小父さんの話では、やはり呼びかけに答える生存者はいないようだ。

 だけど、これは俺達の決め事だからね。夕方までは続けるらしい。


 特にすることもないので、午後は柵の見張りを手伝うことにした。

 日本人を始めてみた小母さんもいるんだよね。色々と質問攻めにあってしまったけど、定年に答えていると時間の経つのが早いんだよなぁ。


「誰も銃を持っていないのに、治安が保てるというのが信じられないわ」


「第二次世界大戦前には持っている人もいたようです。アメリカの占領下で武器の所持が禁じられたと教えられました。でも犯罪はそれなりにあるんですよ。殺人事件もありますが、さすがに発生件数は2桁になることは稀ですね」


 日本人が銃を持ったら、どうなっていたんだろうな?

 さすがにアメリカよりは事件の発生件数は少ないだろうけど、間違いなく上がるんじゃないかな。


夕暮れが近付くと、小母さん達に代わってパット達がやって来た。

 小母さん達は夕食作りと言うことになるんだろう。パット達にウイル小父さんから聞いたニック達の様子を教えてあげると、まるで自分の事のように何度も頷いている。


「それなら、安心ね。好きなくとも2人で50体は倒して欲しいところだわ」


「家の中に入ってきたゾンビだけだから、それほど倒せないんじゃないかな?」


「音でおびき寄せられるんでしょう? あの2人だから、それほど機転が利くとは思えないけど」


「床板を踏み鳴らすぐらいじゃダメなのかしら? それで入ってこないなら工夫するしかないわね」


 なるほど……。入ってこないなら、入ってくるようにするってことか。

 俺も少し考えてみよう。次は俺達の番だからね。それに、次は町に入ってから行うことになる。集まる数も多いとは思うんだが、家の中に入るゾンビが必ずしも多いとは限らないからからなぁ。

 それと、もう1つ気が付いたぞ。

 なぜゾンビは音を立てなくなると、その場を去るんだろうか?

 集まった以上その場に留まり続けると思うんだが、不思議と数が減るんだよなぁ。まぁ、残っているゾンビがいないわけではないんだが、8割近くはいなくなるんじゃないか?

 その理由も知りたいところだ。どこかに集まっていると思うんだけど、ではなぜにそこに集まるのかというのも分からないんだよね。



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