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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-003 やはりゾンビそのものだ


 夕暮れが近付いてきた。

 軍隊の2番手が夕焼けに照らされて西に向かって進んでいく。

 今度はかなりの人数だ。兵員輸送車だけでなく、平べったいジープのような車や、大型のトラック、それに荷台に赤十字のマークを付けたトラックまで西に向かっている。


「どうやら上手く食い止められないみたいだな。ここから20kmほど先なんだろう?」


「その辺りだ。今度は大勢だから何とかなるんじゃないか? それより通信はまだ無理?」


「全くダメだ。ラジオもニックの親父さんのモールス通信だけだし、内容に変化はないよ」


 1時間毎に確認しているんだけど、電池残量も気になるところだ。今後は2時間おきということで皆の了承を得る。


「電気はまだ通じているんでしょう。明かりを点けてはダメかしら?」


「付けない方が良いだろうな。とは言っても、ここに籠っている連中の中には点ける奴もいるに違いないけどね」


「あえて危ないことはしないってことか! 俺も賛成するよ。トイレに行く時にはマグライトを貸すよ」


「私も持っているわ。皆も持っているんでしょう?」


 クリスの言葉に、皆が頷く。キャンプということだから持ってきたに違いないが、こういう時には好都合だ。


「ゾンビ相手なら、拳銃が一番だな」


「ショットガンの方が確実だよ。頭を吹っ飛ばせば終わりだからね。だけど、まったく武器が無いのは困った話だね」


「下手に持っていたら、兵士に銃殺されかねない。今はまだ持っていない方が安心だ。ここを出る時までに考えよう」


 ニックと俺の会話に、エディがダメ出しをしてくれた。

 銃が道に落ちていたら良いんだけどなぁ。さすがにアメリカだからそれもありそうだけど、そんな事を期待するようでも問題だろう。


小さな菓子パンとコーヒーが夕食だ。あまり腹は空いてないけど、食べておかないとこれから何があるか分からないからなぁ。


「見て! 見て! 人が歩いている!!」


 カーテンの隙間から外を見ていたパットが、俺達に振り返って教えてくれた。

 ずっと見ていたから、時間を確認してメモに残しているようだ。

 交替しながら通りを見ると、数人ずつ纏まった感じで西から歩いてくるようだ。足がふらついているところを見ると、ずっと歩き通しだったのかもしれないな。

 中には白衣を着た人物までいる。やはり事故は急激に広がったに違いない。


「彼らがゾンビなのかしら?」


「いや、あれは避難民だろう。軍隊が移動していってから1時間も経ってないからね。彼らがゾンビなら既に倒されているに違いない……。ちょっと待ってくれ! 何か変だぞ。一斉に駆け出した……」


「それより、あれは銃声だぞ!窓から離れるんだ!!」


 エディンの言葉に俺達は窓から離れて、机を横倒しにすると素早くその後ろに身を寄せあった。

 確かに遠くからダダダ……と音がする。あれは自動小銃ってことなんだろう。撃っているのは兵士達だろうが、銃弾がこちらに向かってこないところを見ると目標は西ってことになるのかな?

 ニックがパットから手鏡を受け取り、窓からそっと外を窺っている。

 何も言わないところを見ると、まだこの近くで戦闘は始まっていないようだ。


「とんでもないことになったな。ゾンビはゲームの世界だけじゃなかったのか?」


「ゾンビに近い現象ってことなんだろうね。どんな連中が研究していたか分からないけど、人の迷惑なるようなものを作って欲しくなかったな」


 だんだんと銃声が近付いて来る。

 やはりゾンビの前には、生きている人間は無力だということになるんだろうか?

 

「ゾンビって、銃で倒すの?」


 ナナの素朴な疑問に、俺達が一斉に顔を向ける。

 確かゲームではそうだったよなぁ。


「あれだけ銃撃を与えてるってことだろう? ゲームと違うってことじゃないのか?」


「確かに……。だけど死んだ人間がゾンビになるんだろう? 心臓を破壊すれば良いってことなんじゃないのか?」


「バ~カ! 既に死んでいるんだから、心臓が動いているってことは無いと思うぞ。それに銃撃を受ければ当然出血するはずだからね。万が一にも動いていたなら大量出血で動けなくなるはずだ」


「となると、やはり脳を破壊するってことになるのか? それ以外なら、首チョンパだな」


「どうやって動いているのか分からないっていうのがねぇ……。でも、頭部の破壊は有効だと思うな。少なくとも目や耳、それに匂いの感覚器官は頭部にあるんだからね」


 案外軍隊が手こずっているのは、頭部ではなく胸や腹を狙っているからかもしれないな。

 頭と体なら投影面積比が数倍は異なる。100mほど離れたら、頭ではなく体を狙うのが基本になるんだろう。


銃声が直ぐ傍までやって来た。

 ニックが先ほどと同じく、手鏡を使って通りを見ている。


「夜になったが、見えるのか?」


「街灯はまだ点いているよ。兵隊達が乱射しながら後退してくる。もう直ぐ、ゾンビを拝めるぞ!」


 どんな姿なんだろう?

 それにしても、狂ったように銃を乱射しているなぁ。あれだけ撃ったら、頭に当たる時だってあるんじゃないか。


「見えた! 確かにゾンビとしか言いようがないな。皆も見た方が良い。それから話し合おう」


 既に銃声が東に去っていく。たまにこの宿舎にも銃弾が飛んでくるけど、鏡を使って様子を見るだけなら当たることは無いだろう。


 エディがゾンビを見た後で、俺に手鏡が渡される。

 壁に背を預けて、手鏡をそっと窓から外の通りにかざす……。ふらふらと動く人影が見えた。

 あれがゾンビか! 確かにゲームの動きと似ていなくもない。それより現実のゾンビの方が動きが遅い気がするな。

 銃弾を受けてぼろぼろになった衣服が足元まで垂れ下がっているのは不気味さを通り越しているなぁ。寝たら夢に出てきそうだ。

 それに、ゾンビの口元が黒く見えるのは血なんだろう。

 齧ったか、食べたのかは分からないが、食べても消化出来るとも思えないんだけどなぁ……。


 そのまま姿勢を低くして皆のところに戻ると、手鏡をクリスに渡す。

 俺に頷いたクリスが同じように外を見た途端手鏡をその場に落としてしまった。かなり衝撃的な姿だからだろうな。

 直ぐに戻って来てパットに手鏡を渡している。

 最後にナナがゾンビを確認したところで、誰ともなく部屋の片隅に集まる。


「確かにゾンビだ。間違いない。だいぶ銃弾を受けているけど、あれで動けるとなれば軍隊もお手上げってことだろうな」


「でも、頭部に損傷を受けたゾンビはいなかったよ。やはりゲームと同じで、クリティカルヒットは頭部への一撃ということかな」


「簡単に言うけど、そんなに当たらないよ。俺が黒丸に当てられるのは20m未満だからね」


 自慢そうにニックが言ってるけど、俺はそれより酷かったからなぁ。

 そうなると銃を手に入れれば良いという事にもならなくなりそうだ。


「このままバレナム市に向かうのかしら?」


「進路的にはそうなるな。事故があってから10時間で30kmを進んでいる感じだ。俺達が歩くよりも少し遅いってところだろうね。走れば逃げられそうだ」


 ゾンビの群れを前に、パニックにならなければ良いんだけど……。

 あの姿を見たら、だんだん自信がなくなってきたぞ。

               ・

               ・

               ・

 ふと目が覚めた。

 どうやら寝ていたらしい。他の連中はまだ寝ているみたいだな。このまま寝かせてあげよう。

 外はどうなってるんだろう?

 カーテンの隙間から外を見ると、通りがゾンビで溢れている。私服だけでなく、兵士の姿も見える。噛まれたってことなんだろうな。よろよろと通りを東に向かって行くから、市はこれからとんでもないことになりそうだ。

 既に避難しているとは思うんだが……。親父達はどうしてるんだろう?

 元々が核関連の仕事に就いていたはずだから、バイオハザードに巻き込まれたとしても頑丈な建物内から出ない限り安全に思える。


「どうだ?」


「エディ、起きたのか? 相変わらずだよ。夕べよりもひどい状況だ。ニックの親父さんの言う通り、2日はここでじっとしていた方が良さそうだ」


「他の参加者達はどうしてるんだろうな? 朝食時には分かると思うんだけど」


 エディが外をちらりと見て、直ぐに俺の傍にやってきた。

 先行きは甚だ心もとないが、俺達はまだ生きているし仲間もいる。諦めるのはまだずっと先の話だ。


 7時半に皆を起こして食堂に向かったのだが、扉を開けて驚いた。

 食事は用意されていないし、誰もいない。


「来るのは早かったってことじゃないよね?」


「たぶん、昨夜の内に逃げ出したんじゃないか? 電気はまだ来ているようだから冷蔵庫を見てみるか」


 朝食は、パット達が作ってくれたトーストにバナナが1本。それにコーヒーだった。

 朝食を終えると、昼食用だと言ってパット達がサンドイッチを作り始める。

 俺達は1階の戸締りに向かうことにした。門は閉まっているようだけど、皆が逃げ出したなら裏門は開いているだろう。今のところは塀の内側に入ってこないようだが、時間の問題にも思えるからね。


「やはり開いているな。きちんと閉めておいてくれれば良かったんだが」


「文句を言っても始まらないよ。裏口の扉はロックしたから、これで入ってこれないだろう。後は正面のエントランスを確認して、1階を一回りしてみるか」


 扉を閉じても、窓はガラス窓だからなぁ。長身のエディが外に立てば胸位に届く感じだ。せめて頭が出るぐらいの高さが欲しかったが、ゾンビ対策ですというのでは予算は下りないに違いない。


 エントランスの扉をロックしたところで、1階の部屋を見て回ったら倉庫にホッケーのスティックが立て掛けてあった。

 何もないよりは良いだろうと、全員分を持っていく。


「これで頭を叩くってことか?」


「バットの方が良いように思うんだけどなぁ。だけど、あれは外の倉庫にあるんじゃないかな」


 ついでに懐中電灯も貰って来た。

 後は使えそうな物は見当たらない。食堂で包丁でも貰っていくか。モップの絵の先に付ければ槍になりそうだからね。


 食堂に得物を持っていくと、パット達が昼食には多すぎるサンドイッチをバケットに入れているところだった。


「沢山作ったから、今夜まで持ちそうよ。あのポットにコーヒーがあるわ」


「ありがとう。俺達はこれだ。ここを去る時にもっていこう。相手が1体なら皆で殴ればなんとかなりそうだ」


 ホッケーのスティックをパット達に見せたら、呆れた顔をしてるんだよなぁ。

 何もないよりはましだと思うんだけどねぇ。

とりあえず、皆でコーヒーを飲んで一息入れる。

 西からのゾンビの群れはまだ尽きそうもない。今日の昼で1日目が終わる。

 ウイル小父さんからの指示は2日待てとの事だから、明日まで様子を見るしかなさそうだ。


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