表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
299/677

H-299 飛行場奪回に4日程掛かりそうだ


 消防署のゾンビを駆逐したところで、レディさんが指揮所に通信を入れる。

 直ぐに、ベノムがハンヴィーを吊るして消防署の前に下りてきた。

 やって来た陸軍の小隊長を呼び寄せて、1個分隊を消防署と管制塔に配置して貰うことにした。

 

「周辺の建物から順次ゾンビを駆逐していきます。奪回後の監視をよろしくお願いします。それと、北東に水族館とホテルがあったんですが、まだかなりのゾンビが潜んでいるようです。ハンヴィー2台で監視をお願いしたいんですが」


「了解しました。小隊指揮所は、この消防署に置きます。連絡チャンネルは計画書通りで良いんですよね?」


「我等はチャンネル90で連絡が付く。現在管制塔で周囲を監視している仲間は、消防署の屋上に配置したい。ドローンでの広域監視を行ってくれるはずだ。知りえた情報は随時そちらにも知らせるぞ」


 互いに敬礼を交わしたところで、次の建物へと向かう。今度は格納庫と事務所が合体したような建物だな。

 半分双発機が格納庫から顔を出している。3年も過ぎているからなぁ。赤錆がだいぶ目立つ。


 途中で、マリ―さん達とすれ違ったので、レディさんが消防署の屋上を指差しながら指示を与えている。

 しっかりとジュリーさんまで頷いているから、広域監視は任せられそうだ。


「またベノムが降りて来たね。あれはサミーのバイクなんじゃないか?」


「飛行場は広いからねぇ。バイクや自動車が無いと時間ばかり掛かってしまいそうだよ」


「その後にやってくるのは、ピックアップトラックを下げてますよ。あれは我々の愛車という事ですね」


 オルバンさんが、まだかなり遠くに見えるベノムを見て教えてくれた。

 結構目が良いんだなぁ。俺には自動車を吊り下げていることだけしか分からないぞ。


 格納庫から20m程の距離で集音器から聞こえる音を確認する。

 6体ほど奥にいるようだ。慎重に位置を確認したところで、すぐ後ろで俺を見守っていたレディさんとオルバンさんにゾンビの位置と数を教える。

 2人がエディ達とワインズさん達に指示を与え、格納庫の左右に突入配置をさせた。

 準備が出来たエディ達がこちらを見たところで、レディさんが腕を上げ……、振り下ろす。

 5人が格納庫に素早く入ると、くぐもった銃声が聞こえて来た。

 トランシーバーから、エディ達の『状況終了!』の連絡が入る。


「頭部破壊を確認してこちらに来てくれ。オルバン、小隊指揮所に連絡だ。格納庫内のゾンビの後始末をお願いしてくれ」


「了解です。最後にシャッターを閉めることも伝えましょう。昼間はともかく、夜間にでも入りこまれたら面倒ですからね」

 

 オルバンさんの連絡が終わったところで、事務所のゾンビを片付ける。

                ・

                ・

                ・

 3つの建物の奪回を終えたところで、少し遅めの昼食を取ることにした。

 レディさんがレトルトを温める間に、指揮所へ状況報告を行ってくれた。

 ビスケットのようなパンと肉団子の入った濃いめのスープを頂きながら、レディさんからの全体の進行状況を聞く。

 今のところは順調のようだな。

 レーヴァさん達も住宅街の1区画を奪回したようだ。あっちはレンジャー部隊2チームに陸戦部隊が2個小隊もいるからなぁ。

 大型ホバークラフトを使って、ストライカーまで輸送したらしい。瓦礫ばかりだろうからハンヴィーでは不足ということなんだろう。


「2区画先にジャックを仕掛けてゾンビを集めているそうだ。それなら温い仕事になるのだろうが、建物内の掃討に苦労しているらしいぞ」


「スタングレネードを大量に使いそうですね。でもそれで安全が確保できるなら、使うべきでしょう」


「ゾンビの声を聞くことは出来ても、数や位置まで分かるまでにはまだまだ時間が掛るという事だろう。サミーが特別なのかもしれんな。もっと大事にする必要があるかもしれん」


 レディさんがそんなことを呟いているから、オルバンさんが今にも吹き出しそうな顔をしてるんだよなぁ。

 エディ達に至っては、すでに声に出して笑っている始末だ。


「それが出来れば、顔に傷も付かないと思いますよ。先ずは自分でやってみる。それが出来ないときには出来そうな人に聞いてみるのがサミーですからねぇ」


「自分の力を過信するようなことがあるならかなり問題のある信条だな。となれば、1つ忠告しないといけないだろう。『迷ったなら、その場から直ぐに逃げろ!』これは、新兵時代に軍曹から教えて貰った言葉だ。今頃になってようやく理解できるようになってきた」


 ちょっと遠い目をして、レディさんが話してくれた。「

『迷ったら、すぐに逃げろ』という言葉に近いことを聞いたことがあるなぁ。

 あれお爺さんからだったかな……。確か『その場で考えるようなことはするな。それは後方で考えるのだ』だった。

 計画通りに行っていても状況は常に変化する。あらかじめ予測できた変化であるなら任務遂行は可能だが、俗に言われる想定外の事象が生じたなら直ぐに任務を中断して後方に戻り対処を考えろという事だった。

 イノシシ狩りでそれを教えて貰ったんだけど、狩りに向かう前に散々予想される事態とその対処についてお爺さんの問いに答えないといけなかったんだよなぁ。

 数にして数十は超えてるんじゃないか? その問いに対してお爺さんが満足するまで対処法を考えて答えないといけなかったんだけど、その問答が終わった後にあの言葉を教えてくれた。

 何事にも想定外があるという事なんだろう。あれほどいろいろと想定される事象をお爺さんが問いかけてくれたんだけどなぁ。

そうして狩りに出たんだけど、やはり想定外に出会ってしまった。

 猟犬が追い出してくれたイノシシを狙っている最中に、まさかもう1頭が横から炉びだしてくるとは思わなかった。あたふたしている俺を見て、直ぐに横から飛び出してきたイノシシを猟銃で倒してくれたんだけど、狙っていたイノシシには逃げられてしまったんだよね。さすがに俺にはどうしようもなかったけど、お爺さんにとっては想定内という事だったんだろう。俺が呆気に取られている様子を見て笑っていたんだよなぁ。


 夕暮れまでに、消防署の隣にある整備工場のゾンビを駆逐する。これで今日だけで5つの建物を奪回できたことになる。

 夕暮れが迫っているから北東にある2つのヘリ専用整備工場は明日になってしまうな。

 消防署に再び集まり、陸軍の連中と一緒に夕食を取ることになった。

 

 日持ちはするんだろうけど、軍用レーションの消費期限はどれぐらいなんだろう?

 この頃、そんな事をたまに思い浮かべるんだけど、不思議と誰もお腹を壊したという話は聞いたことが無いんだよなぁ。

 何時も、不味いと嘆いているけど、俺には美味しく思えるんだけどねぇ。

 でも味に不満を持っているということで、さらに美味しいレーションを開発してくれるかもしれないなんて考えている可能性もありそうだ。


「この調子で行けば、3日で飛行場を奪回できそうですね」


 俺とレディさんが地図を見ながら明日の計画を練っていると、小隊長と副官の軍曹がやってきた。

 隣のテーブルで、エディ達とカードゲームをしていたジュリーさんが、俺達に改めてコーヒーを運んでくれる。

 頭を下げてコーヒーを受け取る俺を、おもしろそうな表情で見てるんだよなぁ。


「明日は、午前中に直ぐ北の2つの建物、その後は南の3つの建物を奪回するつもりだ。出来れば、この建物と北の2つの格納庫も何とかしたいところではあるんだが……」


「やはり4日を考えるべきでしょう。飛行場のフェンスが形だけですから、万が一を常に考慮しないといけません」


「そういうことだ。3日目までにターミナル道路沿いの建物群を奪回して、4日目に北に2列に並んだ建物とコンテナを何とかすれば、柵の中のゾンビを駆逐したことになるだろう。問題は、その後だな……」


「今度は北から南に向かってゾンビを駆逐していきます。最初が一番の何問なんですよ」


 テーブルに広げた地図を見て、少尉が大きく目を見開いた。


「水族館にホテル、それにコンベンションセンターですか! とはいえ、だいぶ砲爆撃を受けているようですが?」


「小口径の大砲ですからねぇ。ホテルは依然として立ってますし、コンベンションセンターもその姿を保っています。まぁ中身はかなり破壊されているとは思いますが、多分当初の数が三分の一に減った程度だと考えています。ジャックに数十体も集まるようなら、千体を越えるゾンビが瓦礫の間に潜んでいるでしょう」


 ゾンビを狩る前に再度マリアンさんが砲撃を加えてくれるだろうが、全滅させることは出来ないからなぁ。ゆっくりとゾンビの声を確認しながら進むしかないんだろう。


「少尉に、我等の援護を依頼することになるかもしれん」


「その指示は事前に受けております。飛行場奪回を終えたなら、サミー中尉の傘下に入ります。飛行場は陸戦部隊と軍艦の有志達1個小隊が整備兵と共にやって来るはずです」


 いよいよコイン機を使うのかな?

 だとすれば、Mk81を搭載できるはずだから、ホテルを灰燼にすることもできそうだ。


「コイン機が使えるなら、爆撃が出来ますよ」


「指揮所に都合を確認してみよう。案外早くに飛行場に持ってくるかもしれんぞ。だが、やはり3日目になるだろうな。あまり急ぐのも問題だろう」


 飛行場を奪回したなら、1日は休養を取りたいところだ。

 その間に、ホテルを破壊してくれるとありがたいんだけどなぁ。

 10階建ての大きなホテルだからね。あの中だけでも数百を超えるゾンビがいたんじゃないかな。


「夜間の監視は少尉にお願いしてよろしいでしょうか?」


「そのつもりです。ゆっくり休んでください。そうそう! ピックアップトラックにバイクとバギー。全て異常の無いことを確認しております」


「助かる。明日は、少し遠いからなぁ。監視は消防署の屋上と管制塔で行っていると思うが、日中は柵に沿ってのパトロールと、ハンヴィー2台を今日と同じ位置で監視を継続して欲しい」


「了解です。1個分隊は何時でも出動できるようにしておきます」


 ハンヴィー1台を用意しておくということだろう。

 陸軍の1個分隊は8人だったとはずだが、ハンヴィーに全員乗れるんだろうか?

 一応荷台はあるからなぁ。あの荷台に数人乗るなら結構きつそうだけどねぇ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ