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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-296 足りないなら調達するしかないな


 10時に最初に設置した10個のジャックが炸裂したようだ。

 直ぐにドローンが炸裂後の様子を撮影に出かけたから、じっくりと様子を見せて貰おう。

 副官が中身の無くなったカップにコーヒーを注いでくれたから、タバコに火を点けて最初の映像を眺める。

 

 倒れているのは通常型のゾンビばかりだな。

 戦士型がいるのかと思っていたが、そうでもない。拡大して顔を映して貰ったんだが、虹色の複眼を持っているゾンビは21体中3体だけだった。

 まだまだゾンビは音で周囲を見ているということになるんだろうが、今後は目を持つゾンビが少しずつ増えて来るに違いない。


「3日前も同じ場所に仕掛けたのよね。映像に違いはあるかしら?」


「倒れている数の大きな変化はありませんが、炸裂前の映像は明らかに相違しています」


 モニターを2画面にして、今日の映像と3日前の映像を映し出してくれた。

 明らかに違いが出ている。少なくとも3割方減っているんじゃないかな。

 砲爆撃を続けていたらしいから、その効果もあるのだろう。

 やはり数には数が必要なんだろうな。ここで分かるぐらいなんだから、ヒューストンやニューヨークの攻略にはそれこそ万単位の爆弾を降らせることになりそうだ。

 ……溜息しか出てこない。

 やはり兵站を維持できるかどうかで俺達の将来が決まりそうだ。


「厄介なゾンビはいないようですね。これなら、明日の飛行場攻略は何とかなると思います」


「念の為に、明日の8時に飛行場の東と西の住宅街、それに北東にある水族館にジャックを仕掛けるわ。今日の10時に集まったゾンビよりも明日の方が多い場合は、1日延期して砲爆撃を行うわよ」


「それなら安心できます。それにしても、飛行場の北東部がかなり破壊されていて驚いたんですが、水族館だったんですね」


「かなりゾンビがいたわよ。砲撃して、その後に焼夷弾を何度か落としたんだけど、まだまだいるんじゃないかしら? 先ほどのジャックの炸裂前の状況が……、これだものね」


 改めて水族館跡地に仕掛けたジャックの、炸裂前の状況をモニターに映し出してくれた。

 なるほど、確かに他と比べると多いな。それでも200体には達しないようだから、15時にはさらに少なくなるに違いない。あまり変わらない時には再度砲撃して貰うことになりそうだ。


「ここに大きなホテルがあったのよ。砲撃ではあの程度の破壊に留まっているのよねぇ。

トマホークを撃ち込むには近すぎるというのが問題だわ」


「そんなことがあって、統合作戦本部に新たな砲艦をお願いしてるんですから困った大佐殿です」


「難しいとは思えないんだけど、案外渋ってるのよねぇ」


 どんな艦を頼んだのか聞いてみたら、陸軍の持つ最大口径の榴弾砲を搭載した艦を要求したらしい。

 砲弾だけで重さが90kgになるらしい。最大飛距離が30kmと言うんだから、沿岸から内陸の奥まで砲弾を飛ばすことができそうだ。

 とはいえ、継続発射能力は1時間に20発ということだから3分間隔ということになるんだろう。

 だけど、発射時の反動を受け止めるだけの強度を持つ船があるんだろうか?

 統合作戦本部の人達も今頃は頭を抱えているんだろうな。


「手に入れば、こんな時には役立ちそうですね」


「そうでしょう! やはり重巡を1隻ぐらいは残しておくべきだったのよ。アイオワはハワイにあるから、役立ちそうもないわね。


 あれって、動くの? 思わず首を傾げてしまった。

 副官の話では、何度か近代化改修が行われたのだとか。

 主砲の砲弾は、数十発程しか残っていないし、新たに作るのは難しいらしい。

 それに何といっても、燃費が悪いらしい。


「さすがに戦艦が必要だとは思わないけど、8インチ砲ぐらいは欲しいわ。船首に2連装砲塔を背負式に設けてブリッジ後方にはヘリの地発着台を設ければ今後の戦いで有効に使えるんじゃないかしら?」


「かつての大国、アメリカでは無くなってしまっています。さすがに2連装砲塔は無理でしょう。陸軍の8インチ砲を搭載するとしても、左右の調整範囲は狭くなると思いますよ」


「それぐらいは操船で何とかしたいところだけど、15度は欲しいわね」


 どんな回答が返って来るのか楽しみだな。

 対艦巨砲主義は航空機の運用で廃れたと聞いているけど、大型爆弾を落とせる航空機は空母での運用だからなぁ。

 マリアンさんの艦隊は強襲揚陸艦だから、ハリアーもしくはF35Bを搭載しているはずなんだが、どちらも燃費の良くない機体らしいからなぁ。全て汎用ヘリと攻撃ヘリに交換してきたらしい。

 ハリアーなら、大型爆弾のMk84まで搭載できるんだけどね。1t爆弾なら、3発も落とせば跡形もなくホテルを破壊できるんじゃないかな。


「双発セスナを改造して、Mk81を1発搭載できるようにしてるんだけど、飛行場を奪回出来ないと使えないのよねぇ」


 Mk81は250kg爆弾だから、内部の炸薬量は90㎏近くあるだろう。

 なるほど、そこで8インチ砲の話に繋がるのか。


「少なくとも、ヒューストンで終わることは無いでしょう。『オイルストライク』はメキシコ湾沿いの油田と精油施設、その積出港の確保ですからね」


「でしょう。私も同じ考えよ。ヒューストン攻略は、新たな兵器体系を作ることにも繋がると思うの」


「たぶん他の作戦を行っているところでも似た話は出ていると思います。次に統合作戦本部に集まる時には、そんな兵器について意見交換を行うべきかと」


 笑みを浮かべてマリアンさんが頷いているけど、問題は内陸部からゾンビをいかにして駆逐するかということになる。

 今のところは、ゾンビ達の放つ超音波を聞くことでゾンビの存在を知ることができるけど、それはゾンビが音で周囲を確認していたからだ。

 進化したゾンビが複眼を持つようになると、果たしてゾンビの放つ超音波は今後も聞くことができるのだろうか?

 音意外に、ゾンビを容易に検知できるようにならないと、内陸部の奪回は困難に思えてくる。

                ・

                ・

                ・

 雑談をしながら、一緒に昼食を頂く。次は15時にジャックが炸裂する。

 まだ2時間程余裕があるから、モニターでヒューストンへの攻撃の様子を見ることにした。

 ある意味、嫌がらせに思えてしまう攻撃だ。

 インディペンデンス型沿岸戦闘艦の艦砲を撤去して、そこにM101榴弾砲を搭載したんだからなぁ。

 どうにか反動を受けられるとのことだけど、レーダー射撃が出来ないから砲門に付けられた照準器を使っての砲撃らしい。

 数発撃てば、ブリッジの見張り台で着弾地点が見えるだろうし、10kmも先に砲弾を落とそうという時には、ドローンによる観測射撃が行われるとのことだ。


 モニターでは2艦が交互に砲弾を放っているようだ。

 連続射撃には程遠い感じだな。時計を見てみると10分間隔ほどの間隔で105mm砲弾が放たれていく。


「ブルネット湾から、どうにかヒューストンの中心部まで届くみたいなんだけど、湾の両岸に石油艦船施設が密集してるの。何とか施設から1区画離して瓦礫に変えたいと思っておるんだけど、結構広いのよねぇ」


「やはり飛行場が必要ですか……」


「コイン機で爆撃ができるわ。ガソリンには事欠かないはずだから、派手に攻撃できそうよ」


「爆弾が足りなくなります。無誘導爆弾をあまり使うと次には使えなくなりますよ」


 副官の言葉に、マリアンさんがガックリと肩を落としている。

 確かに広大な住宅地に落とすには問題がありそうだな。落とすとしたなら、ヒューストンの中心近くのビルということになるんだろうが、それでも数はかなりありそうだ。


「フロリダ半島から、運んでくるしかなさそうね。まだあったはずよ」


「それなら、此処も候補に上げられそうですよ」


 副官さんに、ヒューストン近傍の地図をモニターに映して貰うと、その一角をレーザーポインターで示した。


「バークス・テイル! 確かに、爆弾が沢山ありそうね」


「核は止めといてくださいね。戦略爆撃部隊の基地ですから、爆弾はたくさんあると思いましが砲弾は無いと思いますよ」


「十分だわ。Mk81なら、貰っても良いんじゃないかしら。運び終えたから統合作戦本部には報告しましょう」


 メキシコ湾から北に400kmほどの場所だけど、オスプレイなら容易に往復できる距離だ。


「でも距離があるわねぇ。オスプレイなら問題は無さそうだけど、搭載重量を考えると悩むところね」


「キングスタリオンで一気に運ぶ気ですか! 確か、航続距離は800kmと聞きましたけど」


「掩蔽壕と滑走路が離れすぎているわ。さすがに滑走路を使えないから垂直降嫁と言うことになるんでしょうけど、オスプレイは荷物を積み過ぎるとSTOLになってしまうの。500m程の滑走路が必要になるわ。それに、搭載量を考えるとキングスタリオンを使うのが一番だと思うんだけど……。増槽を使えるかしら?」


「確認して見ます。でも、これは飛行場の奪回後でよろしいんでしょうね? さすがに並行しての作戦は無理があります」


「それで良いわ。精油施設の奪回に覇爆弾がいくらあっても足りないもの。レーヴァには住宅街の掃討時に目覚し時計を探すよう別命まで与える始末なのよ」


「そろそろ足りなくなってきたそうですよ。でも、後50個は作れると今朝方確認しました」


 目覚まし時計が一番使い易いけど、ベルだって良いんだよね。デンバーではMk82にラジオを付けているぐらいだからなぁ。


「それにしても準備が良いわね。やはり足りなくなると分かっていたのかしら?」


「使うたびに減りますからね。次にどこから手に入れるかを先に調べていたんです。デンバーやソルトレイクについても同じことが言えますが、近くに大きな陸軍と空軍基地がありますから、ある程度は何とかなるいでしょう。それに、ソルトレイクには空軍基地もあります」


「常に調達先を考えるという事かしら? 兵站が確立していない以上、私達も考えないといけないわね。いつも統合作戦本部を頼りにすることは出来ないでしょう。となると……、もう1つ、大きな基地があるわよ」


 マリアンさんがポインターで示したのは、メキシコ国境近くの基地だった。


「コープス・クリスティ基地ですか! 


「そうよ。拡大してみて……。ほら、この岬の突端にあるはどう見ても掩蔽壕よねぇ。飛行場に双発のレシプロ機が沢山あるから、前から狙っていたんだけど……」


「良いですね。ゾンビの数次第ですが、数機なら戴けそうです」


「先ずはこっちからにしない? それでも銃砲弾が足りなければ、バークス・テイルから頂きましょう」


 まるで海賊だな。

 とはいえ貴重な資材だからね。悪くなる前に有効利用させて貰おう。


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