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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-281 子ども達の名前が決まった


 晴れて俺達3人が父親になった翌朝。

 目が覚めた時には、ここは何処だ? という思いが最初に起こった。

 どうやら部屋に戻らずに焚火近くで毛布をかぶって寝ていたみたいだ。いつの間に寝たのだろう。まるで覚えていないんだよなぁ。

 それに、この毛布は何処から持って来たんだ?


「あら! 起きたのね。もう直ぐコーヒーができるわよ」


「おはようございます。いつの間にかここに寝ていたようですが……。そうだ! 七海さんを見てこないと!」


「オリーが付いてますから任せておきなさい。サミーには何も出来ないでしょう? 『頑張ったね!』と声を掛けてあげたんだから、今日はオリーさんが下に降りて来てからにした方が良いわよ」


 メイ小母さんのアドバイスに感謝して、外に出てみる。

 昨日は雪模様だったんだけど、今朝は珍しく晴れてるなぁ。

 だけど太陽の位置がだいぶ高い気がするな。時計を見ると既に10時を回っている。

 遅ればせながら、太陽と東の峰に手を合わせ無事に娘が生まれたことを感謝した。

 太陽が出ているから、いつものような身を切る寒さではないんだよなぁ。

 雪の反射で眩しい世界を見ながら、タバコに火を点ける。

 見張り番の2人が俺を手招きしているから、一緒に焚火に当たらせて貰うことにした。

 椅子代わりの木箱に腰を下ろすと、小さなカップにコーヒーを淹れて勧めてくれた。


「昨日は大変だったらしいな。今朝早くに、ウイル殿達がスノーモービルで先生達を送って行ったよ」


「教えて頂き感謝します。さっきまで寝てたものですから……」


「だいぶ話題になったのよ。3人同時ですものね」


 昨夜の当番はテリーさん達夫婦だ。

 山小屋に来た時には恋人同士だったけど、今では夫婦だからなぁ。来春はリーザさんが出産予定らしいけど、ひょっとしてデージーさんもなのかな?

 ますます山小屋が賑わうことだろう。

 となると、山小屋の増築も本格的に考えないといけなくなりそうだ。


 コーヒーのお礼を言って山小屋に戻ってくると、エディ達が毛布に包まって焚火に当たっている。

 もう直ぐ皆が集まってきそうだから、毛布は片付けた方が良いと思うんだけどなぁ。

 そう思っていた傍から、メイ小母さんが台所から現れてニック達を叱っている。

 渋々毛布を畳んでいるけど、まだまだ俺達は大人とは言えない世代なんだろうね。子供を育てることで父親になり大人になっていくらしいからね。

 エディの隣の腰を下ろして、名前をどうするんだと聞いてみた。


「クリスのお婆さんに名を貰うことにしたよ。ジュニアハイスクール時代に亡くなったんだが、だいぶ可愛がってくれたらしい。『エメルダ』になるんだ」


「俺の方は、パットが任せると言ってくれたんだけど……」


 まだ決めていないということかな?

 

「親父に頼んだら、『ニックで品切れだ』って言われたし、母さんだと変わった名前を付けかねないからなぁ。サミー、かっこよくて勇ましい名前で何か思い浮かばないか?」


 思わぬ問い掛けに、自分の胸を指差したのは仕方ないことだろう。エディが苦笑いを浮かべているのは、同じことをエディにも問い掛けたんだろうな。


「そうだなぁ……。過去の歴史や伝説で偉大な人物と称される名前ってことになるんだろうな。俺がそう思うのは……。『アーサー』、『カイセル』、『イスカンダル』、『テムジン』それに『レオニダス』あたりかなぁ」


「大王ばかりじゃないか! だけどテムジンって有名なのか?」


「世界最大の帝国を作ったジンギスカンの幼名なんだ。もしも七海さんが男の子を産んだ時に考えていた名前の1つだよ」


 エディの問いに答えると、2人がふ~んと考え込んでいる。


「イスカンダルも聞いたことが無いぞ?」


「英語で読めばアレクサンダーになるぞ。だがペルシャ語ではイスカンダルだな」


 今度は感心した顔で俺を見てくれるんだよなぁ・


「サミーの無駄知識は、ありがたいね。テムジンはサミーが付けたかったということだから、さすがに使えないね。となると、アーサーもしくはアレクサンダー辺りが使えそうだ。俺の姓のエドソンとも合いそうだからね。感謝するよ!」


 そのどちらかにするってことか? 案外適当に思えるんだけどなぁ。


「俺はアレクサンダーを押すぞ。アーサーは実在していないという話もあるし、嫁さんと仲が悪かったとも聞いたことがあるからなぁ」


「そうだね。そうなると……、アレクサンダー・エドソンとなるのか。愛称はアークかな」


 うんうんとニックが何度も頷いている。

 これで決まりってことか? 一応、両親に確認しておいた方が良いと思うんだけどなぁ。


 そんな俺達にメイ小母さんがコーヒーとホットドッグを運んで来てくれた。中途半端な時間に起きたからこれでも食べていなさいということなんだろう。

 扉が開いてウイル小父さん達が入ってきたのは、ティピーで一服をし終えたということかな?


「どうやら起きたようだな。まったく嬉しい話だ。これでアメリカ人が3人増えたってことだからなぁ。それで名前を決めたのか?」


 ライルお爺さんと一緒に、焚火のドカリと腰を下ろしたウイル小父さんが俺達に問い掛けて来た。


「俺のところは、クリスのお婆さんの名前にしました。エメルダになります」


「俺はアレクサンダーにしようかと思ってるんだ。まだパットの了承を得てはいないんだけどね」


「サミーの娘の名前は婆さんとじっくりと相談したぞ。「シオン」じゃな。婆さん達に伝わる約束の地の名と同じらしい。たまに教会で聴く名でもあるなぁ」


「それでいて、日本人の名としても使えるというんだからなぁ。案外、婆さん達と日本人の祖先は繋がりがあるかもしれんぞ」


 そんな学説もあるらしいけどね。でもシオンか……。愛称は何になるんだろう?


「ニックにしては上手く名を付けたわね。どうしても考え付かない時は、『ポアロ』もしくは『ホームズ』にしようかと思ってたんだけど……」


 ウイル小父さん達にマグカップのコーヒーを渡しながら、メイ小母さんが話してくれたんだが、ニックが恐れていたのはこれだったのか。

 早めに考え付いて良かったと思っているに違いない。ニックがホッとした表情をしているからね。


「さすがに洗礼式は春で良いじゃろう。シオンはワシ等が連れて行くぞ」


「これを機会に、サミーも宗派を変えるということも出来るんだが、宗教に自由は保障されているからなぁ。カルトのような他人に害を与えることがない以上、このままでいくということだな」


「そうします。でもキリストは信じますよ」


 信じないと、クリスマスケーキが食べられないからね。

 俺にとってはそれが一番大事なところだ。

               ・

               ・

               ・

 七海さん達が5日後には、リビングに下りてこられるようになった。

 さすがに赤ちゃんを抱いて階段を下りては来られないから、メイ小母さんやオリーさんが抱いて下りて来る。

 焚火の傍ではなく、窓際の薪ストーブのベンチにオリーを抱いたキャシーお婆さんと一緒に座って談笑しているんだよなぁ。

 部屋に閉じ籠っているよりは、気がまぎれるに違いない。

 たまにレディさんや橘さん達まで混じって赤ちゃんを抱いているんだが、レディさんにはレーヴァさんがいるんだから、早めに一緒になれば良いと思ってしまうんだよなぁ。


 そんな妻達を見て、俺達3人はマリーさん達と一緒になってクリスマスツリーの飾りつけの最中だ。

 本来は12月前に行うらしいのだが、色々とあったからなぁ。

 今年、ツリーの天辺の星を取り付けたのはワインズさんだった。名誉的な物があるらしいから、しっかりと星の向きまで確認しながら行っている。


「やはり、これが無いと12月という気がしないんだよなぁ」


「後は、鹿狩りってことかな? サミーはウサギを頼まれてるんだろう?」


「キャシーお婆さんのウサギのシチューは絶品だからねぇ。それにマリーさん達が同行してくれるんだ。帽子にするからと5匹を要求されてるんだよなぁ」


 焚火を囲んで、3人で狩りの話をしているとレディさんとウイル小父さんが俺達の話に加わってきた。


「さすがにこの季節なら熊は出てこないだろうが……。本当に弓で狩りをするつもりなのか?」


「何度か試して、ダメならウインチェスターを使いますよ。でも、練習では結構当てることができましたからね。銃声が出ませんから二の矢も使えます。鹿は無理でしょうけどウサギなら何とか狩れると思いますよ」


「全く……、100m先の黒点に12本全てを当てる等誰も思っていなかったぞ。特殊部隊が使用する爆裂矢を要求しておいた。サミーなら上手く使えるに違いない」


「あれか! 戦車は無理だが軽装甲車なら破壊できるぞ。だが……、俺達にはM203があるからなぁ。微妙なところだな」


 M4カービンのバレル下部に取り付けられるグレネードランチャーだからなぁ。エディ達も、それを使ってゾンビの群れを狩っているぐらいだ。

 

「銃弾の製造が間に合わない時には、案外弓を使うことにもなりかねん。サミーが弓の名手であるなら、それは部隊の利になるからな。明日の狩りは頑張ってくれよ」


 なんか褒められていない気もするんだけど、ここは「任せてください!」と胸を張ることにしよう。

 そんな俺に笑みを浮かべてレディさんが頷いてくれたんだが……、レディさんが珍しくイヤリングを付けているんだよなぁ。

 キラキラ光っているけど、宝石では無さそうだ。


「レディさんのイヤリング姿は初めて見ました。似合ってますよ」


「これか?」


 笑みを浮かべて指先でつまんでいる。それを見たウイル小父さんが苦笑いを浮かべているんだよなぁ。

 兵士の装備には必要ないと考えているんだろう。


「サミーのおかげだ。感謝しているぞ。ちなみに、その頬を抉った爪はナナのイヤリングになった。親指はオリーに渡ったし、これは第2指だな。残り4つはオーロラとシオンのネックレスだ。そうそう、これはサミーの分だ。足の爪だが、繋げて首飾りにしてある。ネイティブの連中と合う時に付けて行けば一目置かれるに違いない」


 爪に穴を空けて組紐を通してたネックレスだが、色ガラスや水晶が途中に入ってるんだよなぁ。これを常に付けるのは考えてしまうけど、改まった席では役立つということになるのかな?

 その内に保護したネイティブの人達も来るだろうから、始めて会う時に使ってみるか。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 母子共に無事! おめでたい話はいいですね! [一言] これからも子供たちが増えて賑やかになるんでしょうね。サミーたち、おめでとうございます! そのうちオーロラちゃんがお姉さんとして三人の手…
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