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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-028 イエローボーイを頂いた


 夕食を持って来てくれたのは、ナナだった。コーンスープにハムサンド、オレンジジュースが付いていた。

 食事を乗せたトレイを前において、一人でモシャモシャと食べるのを皆が笑みを浮かべて見てるんだよなぁ。

 

「作戦は理解した。同じことを国道沿いに行いながら生存者の捜索とゾンビの掃討を行うということだな」


「さすがに、グランドレイクの町のゾンビを全て相当するということにはならないだろうが、街外れまで行ったら、国道の東西で何度か同じ事をすれば、町の中は安全になるだろう。先ずは安全圏を広げることが大事に思える」


「他の拠点はどうなってるんだろうな? 特に政府の動きが気になるところでもあるんだが……」


「俺達の活動は、ミシガンの拠点を経由して東岸にまで報告が届いているし、政府というか国防部からの指示もUSD経由で問題なく届いていることは確かだ。アメリカはだいぶ小さくなってしまったが、元々はイギリスからの移民が最初らしいぞ。それを考えればゾンビから国土を取り戻すのも無理ではないだろう。困難であることは確かだが、それは俺達が頑張れば済むことだ」


「補給が問題だな。銃弾はアメリカ社会なら探せば見つかるだろうが、食料はそうもいかん。嫁さん連中が畑を作っているが、どれほど収穫できるか……」


 ジャガイモとトウモロコシだからね。野菜は温室で作っているから、たまに新鮮な野菜が皿に乗るんだよなぁ。


「雑貨屋にはまだまだあるはずだ。一般住宅にもストックがあるに違いない。アライグマに荒らされる前に手に入れたいところだな」


 軍のレーションやフリーズドライの食料がかなり倉庫に積み上げられてはいるんだが、それを過信しないようにとの事だろう。

 今のところ、ここに来た当初に調達した食料で賄うことができているようだ。


「先ずはグランドレイクだな。町の安全がある程度確保できたなら、他の拠点から生存者達がやって来るに違いない」


「USD傘下の、町の拠点はほぼ壊滅か……。やはりゾンビの数に飲み込まれたんだろうな。ここは元々小さな町だからこれだけの人数でもなんとかなるだろう。だが、グランビイはかなり厄介だぞ」


 安全圏を広げるということであるなら、確かに次はグランビイの町になるが、あそこは3千人を超える町だ。グランドレイクの町のようにはいかないのかもしれないな。


「まあ、それはグランドレイクが終わってからじっくりと考えよう。グランドレイクのゾンビを掃討していく中で、良い考えが浮かぶかもしれないからな」


 ウイル小父さん達の話が一段落したんだろう。後ろ手に取り出したワインの蓋を開け、皆のカップにワインを注いでいる。俺のカップにも半分ほど注いでくれた。


「サミーは猟をしたことがあるのか?」


「ウイル小父さんに連れられて、何度か参加しましたよ。鹿を撃とうとしたことはあるんですが……、当たりませんでした」


「最初から150m先の鹿を狙うとは思わなかったぞ。初心者なら、ギリギリまで近づいて撃つんだがな」


 ライルお爺さんの言葉に、皆が笑ってるんだよなぁ。それって、冗談ともいえる話になるのかな?


「それで、練習はさせたんだろう?」


「50m先の1mの的のどこかには当たる腕だったぞ」


「そんな腕で、最初から150m先を狙ったのか!」


 やはり笑い者になってしまった。照準器の倍率が高かったせいもあるんだろうが、照準器の視野の中ではかなり大きく見えたんだよなぁ。レクティルの十字線にしっかりととらえたはずなんだけど……。


「現在はM1カービンで100m以内のゾンビを倒せるまでになったんだから、あまり笑っても気の毒じゃ。とはいえ、カービン銃の銃弾が問題じゃな。サミーにウインチェスターをやろう。嫁さんと同じ銃だし、ドットサイトもついてるからな。100mは十分に狙えるはずじゃ。ワシの自慢の品じゃぞ」


 357マグナム弾が撃てるんだからね。ライルお爺さんに笑みを浮かべて頷くと、笑顔を返してくれた。

 

「ゾンビ相手に俺達の戦のやり方がどこまで通用するかまるで分らん。案外、若い連中の方が上手くやれるかもしれんな。銃を使わずにホッケーのスティックで頭を叩きわっていたらしい」


「銃弾を撃っても、スティックで叩いても結果は同じってやつか。銃弾を使わないだけマシかもしれんな。それに音をあまり立てないから仲間が集まってくることもない」


「沢山いたら、そんなことは出来ませんよ。2、3体なら後ろから近づいてポカリで終わりです」


 俺の話に頷いているところをみると、どこかでスティックを調達しようなんて考えているのかもしれない。

 案外、サプレッサー付きの拳銃とスティックを持てば、屋内の探索が容易に行えるかもしれないな。

 とは言っても、一人では無理だろう。バディを組んだ方が安全だからね。


「明日は人選でもめそうだな。サミー達の話を聞いて、皆がやる気を出していたぞ」


「士気が高いのは多いに結構だ。国防省の連中はかなり参っているようだからな」


「大きな勝利よりは、小さな勝利の積み重ねってやつだろう。核を使ったと聞いて驚いたからなぁ」


「核だけじゃない。大都市攻撃に気化爆弾や焼夷弾も使ったらしいからなぁ。もっとも、そうでもしなければ都市部のゾンビ掃討は不可能だと思うよ」


「全くだ。サミー達が考えた方法は使えないだろうな。また別の方法を考えんと……」

 

 アメリカ全体の事は、もっと上の人達に考えて貰うべきだろうな。とりあえずはグランドレイク、その後はグランビイの町からゾンビを掃討するのが当座の目的だ。

 ワインを飲みほしたところで解散になった。

 ライルお爺さんからちょっと待つように言われたので、そのまま残ったコーヒーを飲みながらタバコを楽しむ。

 少し消費量が多くなった感じもするんだよなぁ。しばらくはタバコを作ることなど出来ないだろうから、セーブしないと……。


 しばらくすると、ライルお爺さんが、ウインチェスターと弾薬箱を持って現れた。

 俺にポイっと銃を放り投げて、俺の横に弾薬箱を置く。

 銃は放り投げる物じゃないと思うんだけどなぁ……。


「この間借りたウインチェスターより重いですね? これって、手作りなんですか?」


「そうじゃ。オクタゴンバレルは鍛造品じゃからのう。機構部も全て鍛造じゃぞ。イエローボーイに色を似せてカバーは酸化チタンを使っとる。型式は後期型じゃが、38SP弾と357マグナムのどちらでも使えるぞ。100m以内のゾンビの頭を狙うなら38SPでも十分じゃろう。これが銃弾じゃ。サミーのサイドアームはパイソンじゃから、銃弾の互換も取れるぞ」


「ありがとうございます。でも……、これをお爺さんのお店で買ったら、かなりの値段なんでしょうね?」


 俺の言葉が面白かったのか、大きな笑い声をあげる。


「確かにかなりの値を付けるじゃろうな。ワシの形見だと思って使ってくれれば十分じゃよ。もっともまだまだ長生きするつもりじゃがな。ワハハハ……」


 俺の持つ武器は全てお爺さんのところの武器なんだよなぁ。ちょっと良心が痛くなるけど、ありがたく頂いておこう。


「エディとニックにも考えんといかんな……。婆さんと相談してみるか」


 パイプを取り出しながら、そんな呟きを漏らしている。

 それにしても、良い物を貰った。本来のサイトの位置にドットサイトが付いている。M1カービンについていたものと同じだから、同じように使えば当たるに違いない。発光ダイオードで光るドットに電源は小さな電池だから、予備も容易しておかないといけないだろうな。雑貨屋で調達してきた電池が沢山あったから、あの中にこれに合うものがあるか探してみよう。


 再度ライルお爺さんに礼を言って部屋に戻ったんだが、相変わらずエディ達は寝てるんだよなぁ。

 起こさないように、ベッドに上がると毛布に包まった。

                ・

                ・

                ・

 翌朝。目を覚ましてベッドを下りると、エディ達の姿が見えない。

 さすがに今日は早起きだな。時計を見ると、まだ8時には30分以上時間がある。

 身支度と洗面を済ませてリビングに向かうと、俺がどうやら最後のようだ。


 「ようやく起きたみたいだな。俺達は3時間近く前に起きたんだぞ」


 「俺は20時頃に一度起きたからね。2人ともぐっすり寝てたよ」


 「起こしてくれれば良かったのに……。おかげでお腹がペコペコだ」


 あれだけ寝てたら、腹もすくだろうな。

 まだ時間がありそうだから、外に出て一服してこよう。

 俺が外に出ると、少し遅れてニック達も出てきた。

 いつものように東に聳える戴きに軽く手を合わせて、頭を下げる。

 後は湖に面した広場の片隅においてあるベンチに腰を下ろして、タバコを取り出すだけだ。

 

 ベンチに向かうと、すでに2人ともタバコを咥えて湖を眺めている。

 波が無い穏やかな湖面はまるで鏡のようだな。


「本当に、山に向かって祈るんだな。母さんが感心してたよ。サミーは信じる神が違うけど、信じる心を持っていると言っていたぞ」

 

「それで、サミーはプロテスタントに改宗しようとは思っていないのかい? 帰化するなら、その国の宗教に馴染むことも必要に思えるんだが……」


「俺の宗教観はちょっと特殊だからなぁ。キリスト教徒になっても、今と変わらないんじゃないか? それにどんな宗教も否定しないんだから、相手に迷惑をかける事も無いと思ってるんだけどなぁ」


「多神教の強みってやつか……。唯一神なら、他の神を否定するからなぁ。こんな状況下で宗教対立なんて起こったら余計に混乱するだけかもな」


「だけどサミーから聞いた宗教の教えも中々面白かったぞ。今度もう1度聞かせてくれよ。復活というのが俺達の考えるものと違ってるんだが、復活できないということもあり得るらしい。その辺りの判断が面白かったんだよなぁ」


 六道輪廻と解脱の話だったかな。

 また3人で屋上に待機するようなことがあれば、ゆっくりと教えてあげよう。

 ふと気配を感じて、後ろを見るとパットが俺達に手を振っている。

 朝食に時間が来たみたいだ。

 3人で話すのもおもしろいけど、とりあえずはお腹をみたさないとな。


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