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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-268 掃討途中の緊急連絡


 大きな格納庫は西側の飛行場に開口部を設け、その横幅は150mを越える程だ。奥行も30mを越えるから、奥に向かって2機は駐機できるんじゃないかな?

 飛行場に放置された機体が何機かあるけど、格納庫の中にもかなりありそうだな。

 聞こえてくるゾンビの声には戦士型が混じっている。

 数は数体というところだろうけど、あのロケット弾のような投射武器を使われたら厄介なことになりそうだ。


「どんな感じだ?」


 格納庫まで20mほどの距離に近づいたところで俺達は足を止めた。

 格納庫の北西端にあたる場所だから、開いているシャッター越しにゾンビが見えるかと思っていたんだが、どうやら奥にいるみたいだな。


「いますね。数十を越えています。戦士型が数体……。通常型は中を動いていますが、戦士型は近くに2体……、中央より奥に残りが2、3体というところです」


「入る前に数を減らしたいところだな。おびき出して叩きたいところだ」


「なら、これを使いますか? オリーさんが探してくれたんです」


 バッグから爆竹を取り出して見なに見せると、途端にオルバンさんが笑みを浮かべた。

 

「私も3つ手に入れましたよ。なるほど、これを外で鳴らせば出て来るでしょうね」


「さすがに正面から迎撃は出来ん。格納庫の側面位置から射撃したいが……。格納庫内のゾンビは100体には満たないんだな?」


 再確認するようにレディさんが問い掛けてくる。


「そうです。でも戦士型がいますから、優先順位は戦士型としたいですね」


「なら……。マリーとジュリーは戦士型を狙ってくれ。出て来たなら物騒なロケットを放つ前に倒してくれよ。それとだ。全員半面マスクを着装した方が良さそうだ」


 装備ベルトに下げたポーチからマスクを取り出して装着する。ちょっと息苦しくなるな。これを付けたまま長距離走はやりたくないところだ。


「出来たか? それでは迎撃態勢を取る。私が左で、右端はオルバンに頼む。オルバンの隣がマリー達だ。一番狙撃し易いだろう。射撃姿勢は膝撃ちでいく。サミー、爆竹に火を付けたら私の横に走って来るんだぞ。でないと射線に入ってしまうからな」


「了解です。シャッター傍を走ってきます。それでは、良いですか?」


 皆に声を掛けて、頷いたのを確認すると足音を立てないように格納庫の閉じたシャッター傍を歩いていく。

シャッターが開かれた数m手前で足を止めると、爆竹を取り出して導火線に火を点け開いたシャッタ―の外側に投げる。

後は一目散にレディさんに向かって駆け出した。後ろで爆竹が景気の良い音を立て始める。


 レディさんの隣を通り越したところで足を止めると銃を構える。

 既にくぐもった発砲音が聞こえてきたからなぁ。

 レディさんの左手に入った時には、先程爆竹を投げた開かれたシャッターから数mほどの距離にゾンビが倒れていた。


「また出て来たぞ! 慎重に狙うんだ!!」

 

 一度に飛び出してくるのかと思ったら、数体程のゾンビがふらふらと飛行場に向かって出てきた。

 俺が狙いを定めるより先に、倒されていくんだよなぁ。

 俺の射撃練習が足りないんだろうか? 

 直ぐに、俺のカービン銃が役立つ時がやってきた。

 結構南に長い建物だからね。俺達が北端にいるから、南端付近の開口部から出てくるゾンビを倒すには何発か銃弾を放つことになるようだ。

 そんな時に近くの開口部からゾンビが出てきた。

 すかさず2発撃ち込んでゾンビを倒す。


「出て来たぞ!」


 レディさんの声が聞こえた。改めて声を出したぐらいだから戦士型ということなんだろう。


「中々腕が良いな。ジュリーは狙撃兵として訓練を積ませるべきかもしれん」


 どれが戦士型か分からなかったけど、確実に倒されたようだ。

 五月雨式に格納庫から出てくるのも考えてしまうな。

 これだと結構時間が掛かってしまいそうだ。まぁ、今のところは安全に処理出来てはいるんだが……。


 時間にして15分程過ぎただろうか。

 ゾンビが外に出てこなくなった。

 レディさんが小型双眼鏡で、倒したゾンビを確認しているのは、数と種類を確認しているのだろう。


「32体だな。戦士型が3体だ。まだ中にはたくさんいるのか?」


「20体以上は確実です。戦士型が2体、南奥にいますよ」


「今度は中に入るしかなさそうだな……」


「まだ、持っていますから、もう1度爆竹を使ってみましょう。それで出てこないようなら、突入するしかありません。出来れば戦士型は此処で倒しておきたいですね」


 レディさんが俺の提案に頷くと、オルバンさんを手招きした。

 直ぐにやってきたオルバンさんに、再度爆竹を使うことを告げる。


「中々良い作戦でしたね。それでも、まだいるんですから、私も賛成です。ジュリーの腕はかなりのものですよ」


「全くだ。狙撃手としての訓練をさせるべきだろう。500mの狙撃ができるなら、かなりの戦力になる」


 レディさんの言葉に、同感です! とオルバンさんが言葉を繋げる。

 さて、オルバンさんが元の位置に戻り始めたから俺も行動に移そう。


 2度目の爆竹でさらに格納庫にいたゾンビを倒すことが出来た。

 集音装置で確認できるゾンビは通常型が4体と戦士型が1体だけだ。南端の奥に潜んでいる戦士型が厄介になるが、これは俺とレディさんでし止めよう。

 オルバンさんがエディ達を率いて、格納庫の北端から南へと掃討していくとのことだ。


「私達は此処から格納庫に入らず南に向かう。南端のシャッタ―が開いているから、そこから戦士型を倒せるかもしれない。格納庫に足を踏み入れる時には連絡する」


「了解です。誤射はしたくありませんからね。私が一番右手で、射撃方向を確認していきます」


 エディ達は、直ぐ近くの開かれたシャッターから入って行った。

 直ぐにサプレッサーを付けたことによるくぐもった銃声が聞こえてきたところを見ると、結構近くにいたみたいだな。

 中を彼らに任せて、俺達は格納庫から少し離れて南端を目指し足早に歩く。


 あけ放たれたシャッターの前の立たず、隣の閉められたシャッターの陰に立ち格納庫の中を覗く。

 集音装置から聞こえるセミの声の方向に顔を向けると……、居た!


「レディさん。ヘリの後ろにいます。見えますか?」


「あれだな……。他には、通常型が2体見えるが?」


「通常型は2体だけですね。他は、中央付近にいるようです。ここから射撃をしようと思うんですが?」


「なら、私は通常型を倒す。上手くやってくれよ」


 俺のM4カービンは少しバレルが短く12インチだ。エディ達より2.5インチ短いんだけど、200m距離ならそれほど着弾点が乱れることもない。

 だけど、ジュリーさんのM4カービンは18インチなんだよね。

 やはりバレルは長い方が良いということらしいんだけど、俺にはその相違があまり分からないんだよなぁ。

 バレルが長ければ、それだけ重量が増すから安定するんだろうか?

 とはいえ、今回のような100m未満の銃撃なら、俺の持つ銃で十分だ。3倍スコープ付きだからね。ドットサイトも良いんだけど、やはり望遠レンズが付くと良く当たる気がするからなぁ。


 ゆっくりと銃を構えて、戦士型ゾンビの動きを見る。

 頭部破壊以外では倒せないから厄介な存在だ。ヘリの後ろで動く戦士型の頭部を捕えようとした時だった。

 突然俺に気が付いたのか、触手を俺に向けた。急いでシャッターの陰に隠れると、俺の顔すれすれに何かが通り過ぎる。

 改めて戦士型を見ると、触手の先が短くなっていた。

 俺目掛けて撃ったのか!

 はやる心を無理やり押さえつけて、レティクルに頭部を捉えトリガーを引いた。

 戦士型の倒れる姿を照準器で確認し、恐る恐る開け放たれた格納庫に足を踏み入れる。

 既に、通常型は倒されている。

 レディさんの射撃音が聞こえないぐらい集中していたのかな。


「やったか?」


「倒しました。あれが飛んできました。毒が飛び散らなくとも当たったら致命傷でした」


 飛行場へと続くコンクリート面の上にゾンビの放ったロケットの残骸が落ちていた。

 距離は50mにも満たないところを見ると、案外射程は短そうだ。


 集音装置で格納庫内を探る。

 エディ達も、上手くゾンビを倒してくれたようだ、俺達に手を振って近付いて来る。

 だけど……。


「レディさん、まだいるみたいです。この格納庫は東側に付属建屋がありましたよね」


「ああ、あったな。たぶん部品倉庫ということだろう。奥に扉が見える。あの中にもいるということか?」


「はい。近場と少し離れた北側です。探ってきましょう!」


 そう言って足を踏み出そうとした時だった。


「待て! 緊急連絡だ。オルバン、こっちに来てくれ!!」

 

 大声でオルバンさんに声を掛ける。

 イヤホンを片耳に入れていたレディさんだが、緊急連絡というのは穏やかじゃないな」


「こちら武装偵察部隊。了解だ! 急いで完成塔に撤収する。以上!!」


 グリーンベレーに事故でも起こったのだろうか? 

 皆でレディさんに視線を向けていると、俺達にレディさんが顔を向けた。

 

「ゾンビラッシュが始まりそうだ。出来ればラッシュ前に叩きたいところだが、近くに燃料タンクがあるらしい。『その場で迎撃せよ』との指示だが、さすがに此処では無理だろう。管制塔に立て籠るぞ!」

 

 まだ掃討途中なんだが、皆で管制棟に走ることになってしまった。

 俺達が走って来るのを見たのだろう。

 兵士が扉を開けて、俺達を手招きしている。

 そのまま事務所に走り込むと、後ろで扉を閉めて机で麻恵付ける音が聞こえた。


「とんだ事態になりましたね」


「全くだ。だが軍曹達が一緒だから心強い限りだ」


 ランセンさんが俺達の所にやって来ると、近くのテーブルに案内してくれた。

 椅子に座らずにテーブルの上に広げられた地図をランセンさんが銃剣を引き抜き切っ先で地図の一角を示してくれた。


「この辺りに集まっているようです。位置を挟んで2つのタンクがありますから、中の燃料を無駄にしたくないようです」


「これでは、爆撃は無理だろう。この建屋の北の誘導路の端辺りまでやって来てくれたなら銃撃も出来るし、グレネードランチャーも使えそうだな」


「管制棟にもやって来るでしょうか?」


「来ない方がおかしく思える。ゾンビの力は結構あるぞ。しっかりと扉を押えておけば簡単には入って来れまい。それに、管制塔周辺は建物が少ないからな。私達が銃撃する距離なら、ハイドラでの攻撃も可能だろう」


 さて、迎撃の準備を始めるか。

 机を積み上げ、窓からの射点を確保する。扉が破壊された時に役立つよう、扉の後方にも机を積み上げる。

 一段落したところで、コーヒーを飲む。

 レディさんは状況確認をしているようだ。マガジンは新しいものに交換してあるし、サブのワルサーのマガジン内の銃弾を確認したぐらいだからなぁ。


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