表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
259/675

H-259 メイポート基地周辺の状況


 メイポート基地はセント・ジョンズ川の河口にある。川の南岸を大きく浚渫してちょっとした湾を作っているんだけど、その湾で艦船の補給を行うらしい。

 眼下に見えてきたメイポート基地の直ぐ沖には、強襲揚陸艦とフェリーが停泊していた。

 砲撃が行われているから、どうにか間に合った感じだな。

 

 US-2がゆっくりと高度を落とし始めた。

 川に着水するのだろう。川幅が200mを越えているけど、何隻か川にも軍艦が停泊して砲撃を行っているようだ。

 飛行艇の高度がどんどん落ちて、軽いショックと共に着水した。あまり水上を滑走しないから便利に使えそうだ。

 

 コクピットから出てきたお姉さんがキャビンの扉を開けると、川面に浮かんでいたブイに近付ける為ためヘッドセットでパイロットに指示を出している。

手元に近づいたところで、長い鍵付きの竿でブイを引き寄せた。

 どうやらブイにUS-2を結び付けるみたいだ。

 お姉さんの作業を見ていると、此方に近づいて来るゾディアックボートがある。

 出迎えの船かな?

 3隻でやってきたから全員搭乗できそうだ。


「マリアン大佐がお待ちしています。サミー中尉とクレディ少尉を先にお連れします!」


「了解した。オルバン残りを頼んだぞ。少し遅れるだろうが、強襲揚陸艦で明日の準備を行うはずだ」


「了解です。不具合が生じたら、091チャンネルで連絡します」


 チャンネルチェックをしたのかな?

 空いているなら問題ないだろうけど、後程正式なチャンネルを割り当てて貰わないといけないだろう。

 レディさんが、キャビンから下ろしたハシゴを伝ってボートに乗り込んだ。直ぐに後に続いて乗り込むとボートが河口に向かって進んでいく。

 そういえば強襲揚陸艦は、浜辺に近い場所で砲撃していたな。


「砲撃は、だいぶ間が空いているな?」


「4門のM777を1時間に4発のペースで放っています。住宅地はそれほど大きくはありませんからね。明日への牽制と言うことでしょう。15時で砲撃を中断し、ジャックを仕掛けます」


「ジャックに集まるゾンビの姿を撮影してくれませんか。ジャックの炸裂後もお願いします」


「ゾンビの種類を確認するのですね? ブザーの作動時間は30分間ですが、作動して20分後に、音声映像装置を使用して周辺を撮影する手筈が出来てますよ」


 確認するのは、通常型に統率型、それに戦士型の3種と教えてくれた。

 土木作業ならそれで十分かもしれないな。林に潜むゾンビもいるだろうから、工事個所周囲は入念に調査しておいた方が良さそうだ。

 

 やがて前方に強襲揚陸艦が見えてきた。海側を大きく回り込んで船尾に向かうと、大きな開口部が開いている。

 俺達を乗せたボートはその開口部へと入っていく。

 体育館を2つ並べたほどの奥行きがあるんだよなぁ。舷側の桟橋にボートが止められると、直ぐに梯子が下ろされる。

 ハシゴを登って、案内の士官の後について居住区へと向かった。

 

 陸軍が使っている区画を抜けて船員区画に入ると、天井の低い通路をしばらく歩いて目的の会議室に到着した。


「海兵隊武装偵察部隊№9のサミー中尉を案内してまいりました」


 扉を開くなり、士官が敬礼して報告する。


「ありがとう。隊員達の案内もよろしくね。明日は上陸することになるから、彼らの装備に不足があるなら支給してあげなさい」


「了解です!」


 士官が踵を返して、俺達の横を通り過ぎて行った。

 さて、今度は俺達だな。


「武装偵察部隊のサミー中尉とクレディ少尉です。少し遅れましたが、シーバリーズ島の奪回を終えたことで大目に見て頂けるとありがたいです」


「そう……。オプションが1つ終わったのね。これで私達がメイポートを奪回すれば、海軍はまだまだ戦えるわ。ご苦労様でした。座って頂戴。明日の話もあるし、少し聞きたいこともあるの」


 とりあえず用意された席に座ったんだが、マリアン大佐の前だとは思わなかったな。

 従兵が運んでくれたコーヒーを果たして飲んで良いのか迷っていると、隣に座ったレディさんが優雅な手つきで飲み始めた。

 海兵隊は行儀が悪い、なんて言われはしないかとヒヤヒヤしてくる。


「シールズが2チーム、陸戦兵を1個小隊失ったと聞いたんだけど?」


「通常ゾンビが群れて来るぐらいに考えていたのかもしれません。貴重な戦力を失ったようです」


「やはり戦士型と言うことかしら?」


「毒針を放ってくる戦士型を確認しています。ニューヨークでも毒針を放つゾンビはいたのですが、シーバリーズ島の戦士型の放つ毒針は弾速が遅いようです。5mmほどのプラスチック板を貫通することはありませんでした。ニューヨークで出会った戦士型であれば間違いなく貫通するはずです」


「ライフルではなく拳銃を持ったゾンビと思えば良いんでしょうね。でも毒針が問題ね」


「生物学研究所で作った解毒薬が使えました。陸戦兵の1人が毒針を受けたのですが一命をとりとめております」


 俺の言葉にマリアンさんが笑みを浮かべる。

 解毒剤をある程度受け取っているのだろう。分隊に3本程度渡しておけば安心できるからね。


「そうなると一番危険な存在は戦士型になるのかしら?」


「彼らを束ねる存在である統率型の方が危険です。今まで統率型は通常ゾンビの中に紛れていましたが、今回隠れた統率型の存在を確認しました。隠れていても周囲に状況を他のゾンビの目を通してみることが出来るのですから厄介です」


「ハンタードローンが役立たなくなっているということかしら?」


「まだまだ現役で使えますよ。統率型を倒すだけでなく簡易爆撃機としても使えますからね」


「1500時で砲撃を中断し、ジャックを仕掛けるわ。場所は……」


 汎用ドローンを3機用意したらしい。基地の真ん中と住宅街、それにジャクソンビルから東に延びる橋の近くだ。

 各2か所に1時間ほどの時間差を設けるということだが、最大の興味は基地内に潜むゾンビの種類だな。

 戦士型の進化がどんな形になっているか確認しておかないと犠牲者が出てしまいそうだ。


「状況分析はこの部屋で行うわ。2人ともしばらくこの場にいて頂戴」


「確認ですが、堀というか水路の掘削工事は明日からということですよね?」


「計画ではそうよ。でも、状況次第ね。シーバリーズのような事態は避けたいし、メイポートは本作戦のオプションでしかないわ」


 オイルストライクの目的はヒューストンの原油精製施設及び積出港の奪回だからね。資源はそちらに使いたいのだろうが、ゾンビの進化が予想以上に速いからなぁ。

 出し惜しみをせずに、メイポートを奪回しないといけないだろう。

 

 会議室の船首側の壁に3面のモニターが設置されている。真ん中が一番大きいな。80インチぐらいありそうだ。その両側に50インチ程のモニターがある。

 両側に映し出された画像は、ジャクソンビルから伸びる高速道路の橋と砂浜の林だな。林の奥に煙が上がっているから、この強襲揚陸艦からの砲撃の様子を映しているんだろう。

 中央の画像はドローンからの画像のようだ。基地の上空をゆっくりと移動しながらゾンビの姿を捉えている。


「熱心に見ているけど、何か気付いたの?」


「基地内を徘徊しているゾンビの数が多いと感心して見ていました。この画像を映し出しているドローンには音声映像装置は実装されているのでしょうか? もし実装されているなら、統率型と戦士型の存在を確認したいのですが?」


 マリアンさんが隣の副官に顔を向けて頷くと、副官が直ぐにトランシーバーで指示を与えている。


「ゾンビの数が多い場所で確認するとのことです。もし、統率型を見つけたなら、ハンタードローンを使うよう指示を出しました」


「結構……。サミーもそれで良いかしら?」


 頭を下げて、感謝を伝えておこう。

 俺の名をサミーと呼ぶんだからな。この場は改まった場所なんだろうけどね。

 まぁ、サイカ中尉と呼ばれると、誰の事かと思う時もあるから俺にはありがたいけど。


 基地内の十字路にかなりのゾンビがうろついている。

 その上空でドローンが停止すると、画像が変わった。

 先ずは統率型のようだな。通常型ゾンビに紛れて数体が確認できる。建物がぼんやりと赤く色付いているのは、建屋内にもいるということなんだろう。

 300m四方で数体いるとなると、ゾンビラッシュは覚悟した方が良さそうだ。

 続いて画像が切り替わる。

 画像の右上に戦士型と表示されている。先ほどは気付かなかったが、これなら見る側も間違った認識を持たないだろう。


「いるわね……。この辺りを通常画面で拡大して欲しいんだけど」


 マリアンさんの指示を受けて副官が再びトランシーバーで指示を伝えると、すぐに通常画面に戻って画像が拡大された。


「どうかしら?」


「デンバー空港にいた戦士型と類似してますね。少なくとも投射武器を持ってはいないようですが、その代わりに鉄パイプを持っているようですから、白兵戦は要注意です」


「レーヴァ中尉、そういうことらしいわよ。やはりヘッドショットが基本ということになるみたいね」


「射撃訓練は十分に行いました。兵士がパニックに陥ることが無いよう掃討することに徹します」


 レーヴァ中尉の話をうんうんと頷いて聞いている。

 レディさんの恋人らしいからなぁ。あまり危ない橋を渡らないようにしてほしいところだ。


「さて、ハンタードローンでの統率狩りを進めて頂戴。ジャックを仕掛けた場所以外にもたくさんいるみたいだから」


「了解しました。ジャックの設置は1500時より開始しております。柵鉄予定時刻は第1団が1620時、第2団が1640時です。ハンタードローン2機を使って基地内の統率狩りを開始させます」


 副官が状況を説明すると、トランシーバーで指示を出している。

 さて、しばらくはモニターを見てれば良いのかな?

 タバコを吸っている士官がいたから、俺もタバコを取り出した。温くなったコーヒーを飲みながら、統率狩りの様子を見物しよう。


「ジャックの炸裂までに少し時間があるわね。上陸予定地点付近のゾンビの様子はどうかしら?」


「ドローンによる偵察では統率型2体を確認しましたが、砲撃後には確認が出来ておりません。砲撃で倒せたものと推測します。2つの住宅街がありますが北の住宅街のゾンビの数は100体ほど、南は300体を越えていますが500体には届きません。距離がある程度ありますから、ゾンビラッシュの発生は小規模になると推測します」


「上陸とその後の工事開始はそれほど影響を受けないと考えて良いみたいね。とはいえ、防衛体制はゾンビラッシュを見込んでいるわよね?」


「抜かりはありませんMk19グレネードランチャーを装備したハンヴィーを3両最初に上陸させる予定です」


 工事の防衛部隊だけで2個小隊と言うことだから、工兵達も安心できるだろう。

 それに油圧シャベルを5台運んできたらしいからね。昔と違って工兵の仕事も機械化が進んでいるみたいだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ