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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-254 ゾンビラッシュの兆し


 シーバリーズ島の攻略を開始して5日目。島の北部の一角の占拠で来たところで、残った陸戦部隊1個小隊が到着した。

 俺達とシールズが建物を1つずつ奪回する後方で、通りやまだ奪回できない建物を監視してくれているから心強い限りだ。

 相変わらずエヴリン軍曹の分隊は、俺達と行動を共にしてくれる。倒したゾンビの始末は別の部隊が担当してくれているようだけど、何かあった時には直ぐに援護してくれるところにいてくれるだけでも頼もしく思える。


「……なんだと! 了解だ。状況に変化があれば直ぐに知らせて欲しい。この建物は3階建てだからなぁ。終わるのは日暮れ近くになりそうだ」


 急に入ってきた連絡に、レディさんが驚くと同時に苦い表情を変えていない。

 何かあったということなのだろう。

 次の部屋に向かわず、エディ達に回廊の監視を頼むと俺とオルバンさんを手招きしている。

 2階の回廊の真ん中で状況を聴くというのも初めてだな。


「……なるほど、ゾンビの集結が始まったということですか」


「続々と集まっているらしい。現在の数は2千前後らしいが、前回の掃討失敗を考慮すれば5千近い数まで膨らむかもしれん」


「集合場所は?」


 俺の言葉にレディさんが、バッグから地図を取り出して広げた。

 指差した場所は、ここから南にあるネイバル・シップヤードの西の通り。もう1つは島中央部にあるスポーツジムの駐車場だった。


「2方向からの攻撃ですか……。さらに西と東に分かれる可能性もありますね」


「島の北にある住宅街にも動きがあるようだ。どうやら包囲殲滅を仕掛けてくるようだな」


 そんな話をするレディさんの表情には全く悲壮感が無いんだよなぁ。どちらかと言えば苦笑いを浮かべているし、オルバンさんも慌てる様子は全くない。


「ゾンビの集合が事前に分かるのだから、かえってゾンビの数を減らすことが出来そうだ。駐車場の方は問題は無いんだが……」


 すぐ右を走る通りの先にある大きな建物がネイバル・シップヤードになるらしい。その西にある小さな空き地にゾンビが群がっているとなると、先頭ヘリでの攻撃は周辺施設に被害を与えかねないということらしい。

 

「なら、ハンタードローンを使えば良いでしょう。エアバースト弾を落とせますし、周辺施設への被害もそれほどでないのではないかと」


「60mm迫撃砲弾と言うことか! あれから改良されているとの事だから、単発での投下ができるかもしれん。マリアン! ……ちょっと来てくれ!!」


 マリアンさんを呼び寄せて、ハンタードローンの仕様を確認すると、やはり単発モードでの投下も可能らしい。投下用ホルダーも改良されて、今では81mm迫撃砲弾も使用できるとのことだ。


「纏めて一か所に落とすんじゃなくて、道なりに落とせば良いんでしょう? 多分近くに統率型もいるんじゃないかしら。そっちはどうするの?」


思わずレディさんと顔を見合わせてしまった。

 確かにいるだろう。そうなると先ずは統率型を爆殺した方が良さそうだ。


「60mm迫撃砲弾をセットして待機してくれ。そして……ジュリー! こっちに来てくれ」


 先ずは偵察と言うことかな?

 ジュリーさんに汎用ドローンで先行偵察をお願いしたところで、残った部屋のゾンビを片付ける。

 3階となる屋根裏部屋に集音装置を向けても声は聴こえないし、跳ね上げ式のハシゴは天井に上がったままだ。開口部も閉じているし、そのすぐ下にハシゴが横になっているから屋根裏部屋からゾンビが降りてくる可能性はないだろう。

 屋根裏部屋の確認は明日にしても大丈夫そうだ。


 皆でエントランスの降りていくと、マリアンさん達が端に寄せたテーブルの上に着剤を広げているところだった。

バッテリーとパソコンに20インチディスプレイ。ジュリーさん達の持つドローン操作用端末と信号ケーブルを繋げば、ジュリーさん達のヘッドディスプレイに映る映像をモニターで確認できる。


 偵察か所は、この建物に一番近いネイバル・シップヤード右端の小さな広場だ。ゾンビの集合状況と、統率型、それに戦士型を見付けたいとジュリーさんにお願いする。


「オルバンさん! ドローンの準備をお願いします」


「ちょっと待ってくれよ。ワインズ手伝ってくれ。たぶんハンタードローンも飛ばすだろうからそっちの準備も急ぐぞ!」


 ジュリーさんの依頼に、ワインズさん達が出掛けて行った。エディ達が援護に行くと大声で叫ぶとその後に続いて外へと出て行く。

 さて、これで状況が見えてくるだろう。

 俺達が動き出すことをレディさんに連絡して貰う。エントランスのテーブルにミニターを置いて、その前にソファーを持ちだして座ることにした。


 エディ達が戻ってくると、俺の隣に座って一服を始める。レディさんまで、近くにあった椅子を持ってモニタ―の見える位置に座ると俺に顔を向ける。


「陸戦部隊のエリック中尉が来るそうだ。やはり状況が知りたいらしいぞ。ジェイス少尉は対応策が決まったなら連絡して欲しいとのことだ。通りに阻止線を築いたと言っていたぞ」


「それも必要でしょうね。とは言っても、柵を作れるようなものは……」


「自動車があるだろうが! ワインズさん手伝ってくれませんか?」


「私の部隊から1班を使ってください。ヘンリー、行ってくれない!」


「了解しました。直ぐに向かいます!」


 再びエディ達がエントランスを後に後にする。

 力自慢が揃っているからなぁ。通りに並べるだけでも、柵として役立ってくれるだろう。

 相変わらず行動的だと感心していると、玄関からエリック中尉が副官を伴ってやってきた。

 

 ゾンビの集合が始まったことを告げると、直ぐに攻撃ヘリの要請を言い出した。


「東はそれでも良いんですけど、西はあまりにもネイバル・シップヤードに近いんです。出来れば設備を破壊せずに済む方法を考えていたんですが……」


「そんな上手い方法があるのかい?」


 近くのテーブルに中尉を誘って地図を広げる。


「この辺りに集合を始めているようです。ゾンビラッシュは、統率型ゾンビが行っていることは知っていますね? ハンタードローンで爆殺しようと考えているんですが」


「統率型がいなくなれば散逸するということかい? それでだめなら……」


「その時はハンタードローンで迫撃砲弾を落とします。攻撃ヘリのハイドラや30mmチェーンガンでは狭い場所を攻撃するのは難しいかと」


 しばらく考えているのは、設備と人命を天秤にかけているに違いない。

 出来れば俺も攻撃ヘリを要請したいところだが、これだけ人口が減った世界では大型精密機械の価値はかなりのものだろう。


「了解だ。だが、効果が無ければ直ぐに攻撃ヘリに任せたいが?」


「それで行きましょう。人命が一番です」


 俺の即答に、中尉が笑みを浮かべてくれた。人命を軽視する人物と思っていたのかな?

 それは大きな誤解だ。


「ここで指揮を執るが構わないかな?」


 エリック中尉の言葉に頷いた。ここならドローンの映像も見ることが出来るし、エディ達が通りに障害を作っているからね。あの障害を越えても玄関の扉を机で抑え付ければエントランスになだれ込まれることは無いだろう。


「上空からの画像が見られるよ!」


 ジュリーさんの言葉に、俺達はモニターを眺める。

 なるほどかなり集まっているなぁ。2千体と言うところかな?


「まだまだヤードから出て来るな。それで、統率型は紛れているのか?」


 直ぐに画像がモノクロになった。唯一の色は赤い輝点なんだが……、4つもあるぞ!


「マリアンさん! 出番ですよ!!」


「了解! 2発ずつ落とすぞ」



「玄関先に迫撃砲弾を用意しておきましょう。2度の爆撃で4体倒せるとも思えません」


 後ろからオルバンさんが提案してくれた。「よろしくお願いします!」と応えると、ワインズさん達をともなって玄関を出て行く。


「統率型ゾンビの統率数は千体を越える。1体でも残せば、ゾンビラッシュを防げまい」


「その時は、銃撃戦になりかねませんね。ゾンビラッシュを考慮した陣形を作った方が良いのかもしれません。正面の窓の上にも窓がありますから、机を足場にして上からも攻撃できるようにしておきましょう」


 机を2段に重ねると丁度良い感じだな。上の窓からはグレネード弾を放てば良さそうだ。

 下の窓は銃撃用にしても、段列を作っておけば途切れなく銃撃が可能だろう。

 出来れば屋根の上にも1個分隊を配置したいところだ。


「3階は屋根裏部屋だ。跳ね上げ式のハシゴだから、屋根裏にゾンビがいたとしても降りてはこれまい。2階の西側2部屋にも1個分隊ずつ配置しておくべきだろう」


「なるほど、立体的な防衛線を作るということですか。半数にはグレネードランチャーを装備させたいですね」


 数秒間隔でグレネード弾が10発以上放たれるなら、エディ達が並べた自動車の列からこちらにゾンビが来る可能性はかなり少ないんじゃないか?

 問題があるとするならグレネード弾の数なんだが……。


「ランチャーを装備した兵士なら3発は持っていますよ。弾薬箱で4箱を持参しましたから1人6発以上は放てるでしょう」


「その上に手榴弾ですか……。とはいえ、過信しないで対処しましょう」


「爆撃したぞ! 3体を葬ったようだ。次も攻撃するのか?」


「お願いします。ジュリーさん、もう少し高度を上げてくれませんか!」


 モニターには炸裂の跡が倒れているゾンビで分かるぐらいだ。数十体は倒したはずだが、やはり数の脅威は恐るべきものがあるな。

 エントランス内を兵士達が慌ただしく動いている。迎撃態勢を整えるのはもうしばらく掛かりそうだな。


「橋の連中は避難しているのだろうか?」


「近くの建屋に移動しましたよ。ハンヴィーのグレネードランチャーを遠隔操作できますから、橋を目指すゾンビをエアバースト弾で叩けます」


 橋に向かうには、この建物の横を通らなければならないからゾンビの群れに攻撃を加えることも可能だ。


「ゾンビによる橋の占拠は一時的なものなるでしょう。それに、このゾンビラッシュを凌げればシーバリーズ島の奪回が見えてきます」


「島のゾンビの大半が参加すると!」


「全て倒せるとは思えませんが、屋内に潜むゾンビがかなり出てきているはずです。終結に時間が掛かっているのは、ゾンビが階段を苦手としているからでしょう」


 モニター画面を見ると、大きな工場からまだまだゾンビが出て来るんだよなぁ。

 既に3体の統率型を倒しているから、少しはばらけるかと思っていたんだがそうでもないようだ。

 建物の中に潜む統率型がいるということなんだろう。

 都市のゾンビを駆逐する上で、建物や地下に潜む統率型を倒す手段を考える必要がありそうだ。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 更新早いのは良いんだけどとにかく誤字が気になる。物語に入ろうとしても現実に戻されると言うか。もう読んでてしんどいのでこのまま誤字だらけなら読むのをやめます。
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