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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-248 進化の地域差が現れ始めた


強襲揚陸艦と揚陸艇を使って、シーバリーズ島の上流に掛かる3つの橋の監視を行うのが最初に行うべきことだ。少なくとも、シーバリーズ島のゾンビを駆逐するまでは監視を続けるべきだろう。

次にやるべきことは、周辺住宅地及びシーバリーズ島に潜むゾンビの種別を明らかにしなければなるまい。

揚陸艇を使ってシーバリーズ島を一周しながらゾンビの声を聴けばある程度の推測もできる。同時にジャックを仕掛ければ良いだろう。

橋の両端、住宅街、シーバーズ島の大きな建物近くや交差点に仕掛ければ、集まるゾンビも確認できるし、ゾンビの数を減らすことも可能だ。

時間を空けて3回程行えばかなりゾンビを減らせるに違いない。

 これで作戦地の状況を知ることが出来る。それが分ってから橋の確保とゾンビを駆逐する建物の優先順位を決めれば良いだろう。


「ゾンビ騒動が始まって3年が経過しています。3年前のゾンビと同じであるという考えは改めてください。俺達は『ローマ軍』を相手にしていると思って作戦を練る必要があります。ゾンビが広範囲から仲間を集めることが出来ることを、フォートカーソン基地で知ることが出来ました。いくらゾンビを倒しても隣接するコロラドスプリングス市から移動してするんですから……」


「周辺が閑静な住宅地であっても、安心できんと言うことか。揚陸艇の操船か所は甲板からそれほど高くはない。この艦から定期的にドローンで偵察することで対処したいが?」


「それで十分です。30分ほどの間隔でお願いします。観察の着眼点は橋の上のゾンビの数、ゾンビの移動方向で十分でしょう。

 次に、ジャックを持っているはずですから、シーバリーズ島の動線になる2つの橋の周辺、それにシーバリーズ島の大きな建物近くの交差点あるいは駐車場にジャックを仕掛けて集まるゾンビを観察したいと思います。ジャックは反跳爆弾ですから、通常の爆弾よりもゾンビに対しての効果が高いですよ。目覚まし時計の作動時間は1時間で良いでしょう。ジャックの炸裂時間10分前のゾンビの状況を偵察ドローンを使って映像を記録してください。炸裂後10分で同じ個所の映像記録もお願いします」


「最初にジャックを多用すると?」


「はい。元々ジャックは、目的地周辺のゾンビを集めて纏めて倒すことで俺達の移動を容易にしようと考えた代物です。ジャックの数はどれほどあるんでしょう?」


「通常型と小型を合わせて30個程用意した。今の話では通常型と言うことだろうから、使えるジャックは10個になる」


「小型ジャックの起爆装置を使って迫撃砲弾を炸裂させることは出来ませんか? 3個も使えば通常型に迫れるはずです。最初に10個、状況を見て次の10個を仕掛けます。小型のジャックは屋内でゾンビが密集しているような場所でしか使えません。大きな建物のホールのような場所ですけど、工廟で使ったら精密機械を破損しかねません」


「出来れば無傷で工廟を取り戻したい。となると、小型ジャックの出番は殆どないということになりそうだ」


「とはいえ、ゾンビの数が多ければ使用すべきです。精密機械は代替も可能でしょう。先ずは本来の目的であるシーバリーズ島の奪回を優先すべきかと。監視体制が整った状況で最初のジャックを使用して得た情報を基に、シーバリーズ島の奪回作戦の見直しを行いたいと思います。とはいえ大幅な変更は必要ないでしょう。島内施設の奪回優先順位を見直す程度になると推察します」


「了解だ。エドモンド、直ぐに監視体制を構築してくれ。ピーターはサイカ中尉と共にジャックの設置場所を検討し、終了次第ジャックを使ってくれ。炸裂時間はエドモンドのドローン部隊と調整してくれよ。サイカ中尉はこの場で待機してくれないか? 進行状況によってはアドバイスが欲しいところだ」


 ここは頷いておこう。

 ジャックの設置場所については、オルバン曹長と調整するようお願いすることにした。マリアンさん達もドローンを操縦できるから、手伝えるはずだ。


「ところで、しばらくは何もないと思います。CRRCを貸して頂けないでしょうか? 一度島の周囲を巡ってゾンビの状況を確認したいと思うんですが」


「直ぐに用意させよう。だが、川の上からの監視ではあまり役に立たんのではないか? ヘリも使えるぞ」


 ヘリで見るなら、ドローンの画像で十分に思える。それよりはどんなゾンビがいるのかを確認したいところだ。何か所かで島に接近してヘルメットに装着してある集音器の感度を上げればゾンビの主だった種類が分かるだろう。

                ・

                ・

                ・

 島の8方向からのゾンビの声を聴いてみた結果は、案の定通常型ゾンビだけでは無かった。統率型がかなりいるようだし、戦士型の存在さえ確認できた。統率型や戦士型の声は少し変わって聞こえる。ゾンビの変異が必ずしも同じではないということになるんだろうな。

 ニューヨークではデンバーとそれほど変わらなかったんだが、ここは少し異なっている。コオロギやスズムシの鳴き声に細かなビブラートが付いている感じだ。聞いているだけならそれなりに安らぎを覚える声ではあるんだが、集音装置を通してだけ聞こえる声だからなぁ。

 1時間以上掛かっての作業だから、会議室に戻ってきた時にはジャックの設置が全て終わっていた。

 島内と、対岸の住宅地では30分ほどの時間差を作って炸裂させるとのことだが、最初に炸裂させるのは住宅地に仕掛けた5か所らしい。


「既に目覚まし時計の音は鳴り出しています。1600時に住宅地、1630時に島内のジャックが炸裂します。西の3つの橋の監視は周辺警戒チームが担当しています。ここでその画像も確認できますよ」


「俺の方も収穫がありましたよ。少なくとも4種類のゾンビがいます。統率型がいますから、ハンタードローンが用意されているなら直ぐにでも狩りを始めたいと思っているんですが?」


「ゾンビを集めて、統率するというゾンビか? 本当にいるとは……。ピーター、搭載していたかな?」


「搭載しています。迫撃砲弾も20ケース用意しています。サイカ中尉は直ぐにでも始めたいということですが、我等に教授願えないでしょうか?」


「オルバンに連絡を入れておこう。離着陸場所とコントロール場所を私の通信後にオルバン曹長に連絡してくれ」


 これで統率型のゾンビ狩りは出来そうだな。もっとも屋内に潜んでいるとハンタードローンが使えないんだが、その対処は島に上陸してからでも良いだろう。


 レディさんがオルバンさんに連絡し終わると、直ぐにピーターさんが会議室を出て行った。移動しながらオルバンさんに連絡するのかな? 艦長の副官で少佐だと言っていたけど、結構使い走りをさせられているようだ。


 時刻は16時5分前。既にドローンが飛立って住宅地に仕掛けられたジャックの頭上500mほどの位置で俺達に状況を見せてくれている。


「だいぶ集まっているようだ。100体を越えているんじゃないか?」


「ドローンの位置はそのままでゾンビの姿をもっと拡大できませんか……。ああ、それで十分です」


 艦長の後ろに座っていた兵士が、俺の言葉を聞いて画像を拡大してくれた。これでゾンビの顔が分かる。表情を見るわけではないからね。これぐらいで十分だ。


「戦士型が2体……、集まっている通常型も進化しているな」


「ええ、かなり通常型が進化してますね。戦士型に進化するかと思ってましたが、必ずしも全部がそうなるわけでも無さそうです」


 触手状の腕を持つゾンビが2体。1体は触手が1本だけのようだ。通常型で少し違っていたのは目を持つ個体の割合が増えているのが一目で分かるほどだ。


「また違ったゾンビになったものだな」


「ですね。まるでゴーグルのように見えますが、よく見ると目は2つですよ。俺達より視野が広いのは間違いありませんね。あれなら初期型のように音で周囲の状態を探ることなく行動できるでしょう」


 俺とレディさんが淡々とした口調でゾンビの見た目を批評しているのを聞いて、士官達が顔を見合わせている。何人か席を離れているのは監視情報を集めているのだろう。


「そろそろ、ジャックが炸裂します。ドローンを上空に退避させます」


 その言葉を聞いて、俺達は口を閉じた。

 全員がスクリーンを見守る中、ジャックが爆発する。

 爆炎が晴れたところでドローンが降下し、状況を映しだしてくれた。

 

「集まったゾンビはおよそ100体程、倒したゾンビは30体に満たないようです」


「ジャックの効果はこれぐらいだ。もっと被害を大きくさせるならビッグジャックを使うことになる。頭部破壊以外で倒せない以上、与える被害が少ないのは致し方ない」


 戦士型が1体倒れていた。職種は1本だが、先端形状が気になる。

 先端が丸いのは狙撃型と似ているなぁ。だけど、いくら何でも早いんじゃないか? ニューヨークでようやくお目に書かれたゾンビだからね。


「ちょっと、ポインターを貸して貰えませんか? ……ありがとうございます。ここに倒れているのが戦士型と呼称しているゾンビです。声がした以上いることは間違いなかったんですが、今まで見た戦士型と少し変わっています。ドローンを降下させて、このゾンビの周囲を回りながら全体像を映して貰えませんか?」


「了解した。ちょっと待って欲しい……」


 操縦している人達は甲板辺りにいるのかもしれないな。トランシーバーを使って連絡しているようだ。しばらくすると、画像がさらに大きくなって、ゆっくりと戦士型ゾンビの体を中心に回転し始めた。


「何か分かったのかね?」


「あの触手の先端が気になったんです。デンバー空港で見つけた戦士型は、触手の先端に鋭い棘がいくつも付いてました。ですがあの触手にはそれが在りませんね。今の画像を此処で自由に操作できませんか?」


「可能だ。パソコンに先ほどの画像を落としてみる。操作は通常の画像編集ソフトだから、君にも可能だろう。ところで他の爆発地点の画像も必要かね?」


「どちらもお願いします。島の方も同じやり方で問題はありません」


 パソコンが届いたところで、画像の詳細を確認することにした。結構変わってるんだよなぁ……。


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