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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
229/669

H-229 ゾンビを確保しないといけない


「呆れた! でも、おもしろい考えね。それで分かるのなら、案外装置は簡単に作れそうに思えるわ」


 俺達の話を聞いてオリーさんの感想だ。

 俺達の奇行に気付いて様子を見に来たレーヴァさんも、苦笑いをしているんだよなぁ。


「さすがは科学者と言うことだな。私にはそこまでは出来ないよ」


 そう言ってレディさん頷いているんだけど、レディさんは俺達の話を聞いて溜息を吐いているからなぁ。


「それで何か分かったのかしら?」


「昼よりも音量が上がっています。敏感な人なら服を着ていても分かるかもしれませんね。方向は、南ですよ」


「それで、あそこに群がってるんだな」


 困った奴らだと、レーヴァさんの顔に出ている。まぁ、悪い話ではないと思うんだけどね。


「やはり夜行性と言うことかしら? 夏だから、気温も関係していそうだけど」


「色々と疑問が出てきますね。これは研究所内では分からないことです。やはり現地調査は早めに行った方が良かったかもしれません」


 エディ達は俺を残して、さっさと拠点に戻ってしまった。夜は早く寝るんだけどねぇ。朝起きるのができないんだから困った友人達だ。

 さすがに拠点は1部屋だから、朝になれば誰かが起こしてくれるだろうけどね。


「最初だけで結構収穫があったわ。明日は所長屋軍との調整をお願いするけど……。サミー、いよいよ本格的にドローンを使ってもいいかしら?」


「問題ないでしょう。前回は付近のビルから俺達を監視していたようですから、明日は俺達を監視する存在がいるかどうかを確認します。エディ達に手伝って貰うつもりです」


「確かに必要だな。だが、結構ビルがあちこちに残っているぞ。空いている兵士達にも手伝って貰った方が良さそうだな。だがそれは明日の話だ。夜も遅い。先ずは一眠りすべきだと思うんだけどね」


 レーヴァさんの言葉に頷くと、拠点へと向かってシュラフに包まる。

 軍用マットは結構弾力があるんだけど、下は固い床だからなぁ。夏だけど夜は涼しいぐらいだ。しっかりとチャックを締めて目を閉じた。

                  ・

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                  ・

 翌朝目が覚めたところで、装備を調えシュラフを丸めておく。

 屋上に出て、朝日に向かって頭を下げる俺を、グリーンベレーの隊員達が笑みを浮かべて見ていた。


「日本人は朝日に祈るのか?」


 そんな言葉を俺に掛けて来るんだけど、片手に持ったコーヒーポットを掲げているところを見ると、眠気覚ましに世間話をしたいのかもしれないな。

 片手を上げて彼らに答え、傍に向かう。

 紙コップにコーヒーを注いで渡してくれたから、ポケットから煙草を取り出し1本抜き取り彼らに箱を差し出すと、それぞれ1本ずつ抜き取って嬉しそうに口に咥える。

 ジッポーで火を点けてあげたところで、コーヒーを飲んだ。

 少し肌寒く感じるけど、日が昇るにつれ暑くなるに違いない。


「あのおかしな装置で今日もゾンビの声を聴くのかい?」


「それが仕事ですからねぇ。昨日、新たなゾンビを確認しましたよ。しばらくここで暮らしますから、もう2、3種類は見付けることができるかもしれません」


「デンバーで同じことをやった時には、ゾンビのラッシュにあったと聞いたんだが?」


「階段室の扉を簡易溶接したんですが、それでも破られました。救援ヘリが来る間はグレネード弾と手榴弾で応戦しましたよ」

 

 俺の言葉に2人が顔を見合わせている。

 どんな状況だったのか、あらかじめ教えたと思ったんだけどなぁ。


「ゾンビになると力が2倍というのは本当みたいだな。掴まれたら終わりだとも聞いたぞ」


「そこまで強いとは思えませんね。とはいえ5割増しは確かだと思いますよ。噛みつかれたら諦めるしかないですね。でもその前に、ゾンビの頭部に銃弾を撃ち込めれば助かりますよ」


「いざという時に冷静に成れるかだな。接近戦ならナイフが有効なんだろうが、いくら刺しても倒れないではなぁ。まぁ、その為にも、拳銃を持ってはいるんだが」


「今日は仲間と一緒に、俺達を監視するゾンビを探そうと思ってるんです。ゾンビの中に、ゾンビを従える種がいるから厄介ですよ。どんどんゾンビを集めてきますからね」


「そいつは、どんなゾンビなんだ?」


「そうですねぇ。見た目は普通のゾンビに見えます。あの装置で声を聴くと特定できるんですけど……」


 変わり映えしないのが統率型ゾンビの特徴でもあるんだよなぁ。士官型ともなればあの姿だから直ぐに分かるんだけどね。


「ジッとこちらを見ているようなゾンビがいたら教えてください。俺が確認します」


「姿は同じでも、こちらをジッと見ているようなゾンビだな。となると、ここを見ることができるビルも監視の対象ってことか!」


 一緒に監視をしていたグリーンベレーの隊員と顔を見合わせている。


「それでお願いします。俺がいない場合は、ドローンを動かしている連中に伝えてくれると助かります」


「ああ、任せとけ。次の監視の連中にも伝えておくよ」


 2人に頭を下げて、コーヒーの礼を言うと屋上を降りる。

 そろそろエディ達も起きるだろう。時間は8時少し前だけど、朝食が合われば朝のミーティングだからね。 

 昨夜の話で今日の概要は分かっているんだろうけど、役割分担と調整を行わないといけない。

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                 ・

 「ゾンビの解剖については、所長が自らやって来るわよ。昼過ぎにヘリでリバティ島に来ると言っていたわ」


「護衛はリバティに駐屯している陸軍が担当してくれるそうだ。海軍が所長達の輸送を行ってくれるそうだが、1つ問題が出てきた。ニューヨークの市内からゾンビを倒して運んで来る部隊の調整ができない」


 1体だけ運ぶと言っても、広場に1体だけがうろついているわけではないからなぁ。それにニューヨークのゾンビの数はデンバー市の比ではないからね。


「パイロット以外に2人程乗れるヘリを用意してくれたなら、俺が何とかしますよ。さすがに地上では危険ですけど、屋上ならそれほどゾンビがいるわけでもありませんし、俺なら隠れているゾンビの存在も分かりますからね」


「1人では無理だ。私も行こう。レーヴァ、狙撃の腕のある隊員を貸してくれんか?」


「万が一のバックアップか……。ああ、良いぞ。シーホークなら数人搭乗できるから問題は無さそうだ。1300と言うことで要請しておく。ところでサミーは倒したゾンビをどうやってヘリに搭載するつもりなんだ?」


 両足を縛ってヘリから吊り下げ運ぶつもりだと答えたら、レディさんと顔を見合わせて溜息を吐いている。


「レディ。シュラフカバーの使い方を出掛ける前に教えてやってくれ」


「サミーの部隊は犠牲者を出さなかったからな。ウイル中尉もさすがにそこまでは気付かなかったに違いない。了解だ。それ御程難しいものではない。カバーに入れた上でスリングで何か所か固定すれば、ヘリから下げて運べるだろう」


 まだまだ知らないことがあるんだなぁ。その場で教えて貰えるならありがたいところだ。

 準備はレディさん達に任せておこう。


「私達は、ジャックを使って新種のゾンビを調べるつもり。それで、まだ統率型を倒さないのかしら? かなりの数がいるみたいなんだけど」


「ハンタードローンはなるべく遠くで使ってください。近くで行うとデンバーの二の舞になりそうです」


「了解! それでヤンセン達は?」


「もう直ぐ迎えのヘリが来るだろう。それに乗ってリバティ島に向かい、そこからは沿岸警備艇でマンハッタン島の東西と南を探って欲しい」


「了解だ。たぶん、ゾンビの解剖はリバティ島で行うんだろう? 場合によっては見学させて貰うよ」


 レーヴァさんに、ヤンセンさんが笑みを浮かべて答えている。準備は出来ているのかな?

 俺が使っている集音装置を作ったのは生物学研究所だから、予備を運んでくるってことかな。


「そうそう、デンバーでも俺達を監視していた統率型がいましたね。屋上の監視をしているグリーンベレーの隊員達に、ジッとこちらを見ているゾンビがいないか探して欲しいと頼んでしまいました。越権指示を行ってしまい申し訳ありません」


「それぐらいは構わんよ。監視の重要なポイントを教えてくれたんだからね。それで、もしも見付けたならどうするんだい?」


「グレネード弾を放つ。もっとも300m以内であることが条件ではあるが……」


 レーヴァさんの問いに、オルバンさんが答えてくれた。

 それで良いだろう。俺とオリーさんが頷いた。


「レーヴァの隊員達はM203を使えるのだろう?」


「4人が装備している。私は別途HK69を用意したよ。腕は、200mなら問題は無いが、300mとなると、5割を切りそうだな」


「なら2人ずつの4人で行えば良いだろう。悪くても2個は届くはずだ」


 折り合いが付いたのかな? オルバンさんとレーヴァさんが笑みを浮かべて握手をしている。

 

「階段室の様子はどうなんでしょうか?」


「今のところは上がって来る様子はありません。常時2人が待機していますから、変化があれば直ぐに連絡が来るでしょう」


「後は……、ビルの真下の様子ですね。今でもかなりゾンビがいますけど、近くのビルにグレネードを撃ち込んだなら、また違って来るかもしれません。ラッシュが起きる前にはビル直下の通りのゾンビの数が一気に増えますから、たまに下も見ておいてください」


「了解だ。ラッシュ時には、ありったけの手榴弾を落としてやろう。少しはゾンビの数が減るんじゃないか」


 手榴弾だけでも50個は用意してきたらしいからなぁ。

 俺達だって常に1個は持っているからね。併せて70個以上にはなるはずだ。


「ヘリの音だ! ヤンセンン博士、迎えが来たようだぞ。我等との連絡はこのトランシーバーを使ってくれ。チャンネルは、そのままだ。軍用だから、警備艇のトランスポンダを介してここまでの通信が可能だ」


「……電源はこれだな? 後は、これを押して話せば良いのか……。了解だ。結果を待っていてくれよ。測定前には連絡を入れるよ」


 レディさんから受け取ったトランシーバーをいじっていたけど、何とか理解できたみたいだな。

 屋上の真ん中に降り立ったヘリコプターに2人が乗り込むと、南に向かって飛び立った。

 俺も準備をしておこう。ヤンセンさん達は利バチ日で警備艇に乗り込むそうだから、測定開始は早くても1時間以上後になるはずだ。

 それまでは、昨日と異なる動きがあるかを確認して待っていよう。


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