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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-022 仲間が増えれば歓迎会だ


 ゾンビへの攻撃を急遽取りやめて、町の入り口まで倒れているゾンビを退かす作業をすることになった。

 予定は未定の典型のような気がするけど、安全に越したことは無い。

 日が傾く前にどうにか作業を終えて、山荘に戻ることになった。

 保護した2人についてはオリーさん達が直ぐに山小屋へと連れて行った。空いていたキャンピングトレーラーに搭載していた荷物を退かして、2人が住めるようにするとウイル小父さんが教えてくれた。

 保護した女の子も、同年代の子供もいることだから直ぐに仲良くなれるんじゃないかな。


「これからも、保護する人達が出て来るでしょうね」


「そうだと良いんだが……。今回はレアケースかもしれないぞ。食料と燃料が無ければ冬は越せなかっただろうからなぁ」


「だが、彼女達は騒ぎが治まってから食料を集めたらしい。おかげで旦那が犠牲になったらしいが、旦那の働きがあったから2人は生き延びられたに違いない」


 バリーさん達の話を聞くと涙が浮かんでくる。さぞかし旦那さんは無念だったに違いない。だがその行為は家族への献身ということになるんだろうな。

 そんな人ばかりであれば良いんだが、町は暴徒によってかなり略奪されたようだからなぁ。ゾンビだけじゃなくて暴徒まで暴れまわったらしいから、大きな町程被害が大きいらしい。その上に核や高性能の爆弾、更にはナパーム弾での焼却。果たして生き残っている人間はいるんだろうか?


「グランドレイクは時間さえかければゾンビを掃討できるだろう。問題はグランビイだろうな」


「2倍ほど規模があるとなれば、住んでいる住民も3千人近いってことか?」


「さすがに銃弾が足りないぞ。そういえば、サミー達も銃弾を運んだと言ってたな?」


「ええ、アウトドアショップに銃がありましたから、銃弾ケースに6個分ほど運んできました」


 数えたことは無かったけど、結構鉄製の箱に入ると感心してたんだよなぁ。1つに200発としても1200発ってとこかな?

 ライルお爺さんは1t程搭載できる牽引車を引いて来たと言っていたから、当然銃弾もその中に入っていたはずだ。ウイル小父さんだって、大きな木箱を2つも積んでいたからね。

 1つの木箱に銃弾ケースが6つ入っていると言っていたから、かなりの量になるのは間違いない。


「ショットガンでも1発で確実にゾンビを倒せるわけではありませんからね。やはりゾンビの数に倍する銃弾は必要でしょう」


「だよなぁ……。それを考えると、呆然としてしまうよ」


 ビリーさんが溜息交じりに呟いた。

 俺としては銃弾もそうだけど、人数を増やしたいところだ。

 


 17時前に山小屋前の広場に到着すると、皆が出迎えてくれた。

 俺達の出迎にしては様子がおかしいと思っていたら、新たな仲間になった親子の歓迎という事らしい。

 テントの食堂内で歓迎会になるようだから、俺達にも笑みが浮かぶ。

 そういえば、2人が見えないな? まだトレーラーの中にいるのだろうか。


「あの2人? メイ小母さんがシャワーに連れて行ったみたい。今までは体を拭くぐらいしかできなかったらしいわよ」


 俺とニックがまだ出てこないみたいだと話していると、クリスが教えてくれた。


「山小屋は準備が出来ていたからなぁ。そんな準備が無い状態で閉じこもって暮らすとなれば色々と苦労したんだろうな」


「ここなら安心できるよ。もっとも先はかなり不透明だけどね」


「仲間が増えたんだ。まだまだ増えるんじゃないかな。それを考えれば悲観することは無いと思うな」


 傍にやって来たエディが俺達の肩を叩く。

 楽天家だからこんな時には助かるな。俺とニックだと悲観するばかりだからね。


 食堂のテントに椅子を持ち寄って、皆で助け出した親子の歓迎会を開く。

 特別な料理が出るのかと期待していたら、ケーキが最後に出てきた。ワインを何時もより多めに注いで貰ったから、バリーさん達も笑みを浮かべている。

 俺達をウイル小父さんが紹介した後で、助け出した親子が席を立って簡単な自己紹介をしてくれた。

 お姉さんに見えてしまうんだけど結婚してるから小母さんなんだよなぁ。小母さんと呼んだら怒られそうだから名前を教えて貰うのはありがたい。

 小母さんがナンシーさんで、女の子がエマちゃん5歳ということだ。正式名も教えて貰ったけど、俺達には愛称で十分だ


「ゾンビを町の端から倒して行けば良いと思っていたが、まだまだ取り残されて救出を待っている人達がいるかもしれん。その辺りをもう1度考えてからグランドレイクの掃討を始めるつもりだ」


「その方が間違いない。とはいえ声を出すとゾンビが寄って来るからなぁ。かなり面倒なことは確かだが、俺達しかできないからな」


 隣のテーブルに座っていたウイル小父さん達の話声が聞こえて来る。

 面倒というよりも、かなり危険な行為に思えてしまう。何とか上手く助けを待っている人を探す方法を考えないといけないだろうな。


「ところでサミーは何をしてるんだ?」


 エディが俺の手元を見て問い掛けてきた。


「これか? ……もう直ぐできるぞ。ここを広げて、フゥとすれば……」


「驚いたな! それって折り紙ってやつだろう? キャンディーの包み紙で鳥が作れるんだ」

 

 出来上がった折鶴を見てエディが目を丸くしている。

 ニックには教えたんだけど、不器用なんだよなぁ。エディは俺が折るのを始めて見たのかな?


 丁度、各テーブルを回って挨拶をしていたナンシーさん親子が俺達のテーブルに来たので、エマちゃんの手に折鶴を乗せてあげた。

 目を丸くして驚いている。俺と手の上の折鶴を何度も目で行き来させていたけど、「あげるよ!」と言ったら、笑みを浮かべてナンシーさんに折鶴を見せている。


「あら! 凄い物を頂いたわね。お礼は言ったの?」


「お兄ちゃんありがとう!」


 俺の腰に抱き着いてお礼を言ってくれたから、頭を撫でてあげる。ブラウンの髪がさらさらだ。シャワー室で髪も洗ったんだろうな。


「当然、私達にも作ってくれるんでしょう?」


 パット達がキャンディーの包み紙俺の前に出したけど、自分で作ろうなんて考えないのかな?

 それにナナなら折れるんじゃないか?


「生憎と……」


 ナナが小さな声で呟いている。日本人が全員折れる訳ではないからね。

 2人が去ったところで3つの折鶴を折ることになってしまった。


「日本人は器用だと聞いたことがあるが、こんな事をして指先を訓練してたってことか」


「これができればということではないよ。お祖母ちゃんが教えてくれたんだ。母さんは折れないからね。だからナナが折れないのも分かるんだよなぁ」


 他にも折れるんだろう? ということでいくつ折ってみたけど、皆が感心するばかりなんだよなぁ。

 ふくら雀を負った時は、メイ小母さんがヒョイと摘まんで持ち去ってしまった。

 小母さん達でワイワイその姿を見て騒いでいる。

 まぁ、たまには童心に帰りたいのかもしれないな。

                ・

                ・

                ・

 翌朝。目覚まし時計で目が覚めた。ニックとエディはまだ夢の中だ。音を停めて、先に身支度を済ませると顔を洗ってリビングに向かう。

 ライルお爺さんと一緒に座っていると、キャシイお祖母さんがマグカップに注いだコーヒーを渡してくれた。

 お婆さんがライルお爺さんの隣に腰を下ろすと、昨夜の折鶴について話し掛けてくる。


「日本には面白い文化があるんですね。良くも1枚の紙であのような形が作れると感心しました」


「昔、お祖母ちゃん教えて貰ったんです。色々と教えて貰ったんですが、生憎と忘れっぽい方でして……」


 苦笑いを浮かべながら頭を掻いた。

 そんな俺の話を、笑みを浮かべて頷いている。


「伝統文化はそうやって繋がるんですねぇ……。私達にもあったのでしょうが、生憎と放浪の中で失われてしまったようです」


 残念そうに呟いているけど、今度の騒動でいろんなものが失われてしまいそうだ。

 残念だけど、どうしようもないな。


 お婆さんが席を離れたところでタバコを取り出す。

 ライルさんもパイプを取り出して火を点けた。


「今日は、面倒な話になりそうじゃわい。どうやって取り残されている者達を見付けるか、まったく見当がつかん」


「そのことですが……」


 昨夜寝ながら考えた事をライルお爺さんに話してみた。

 案外簡単なんだよね。

 とはいえ用意しないといけないものがあることも確かだ。


「目立つ場所に旗を立てて、拡声器で呼ぶだと? それではゾンビ共が押し寄せてくると思うんじゃが?」


「目立つ場所ということで高い場所になります。屋根の上が一番ですよ。さすがにゾンビは屋根に上れませんからね。安心して呼び続けられます。それに集まって来るなら、頭上から銃撃も出来ますからゾンビを減らすことも可能でしょう。至近距離での射撃なら無駄玉を減らすことができると思うんですが」


「なるほどのう……。ウイルたちに良い案が無い時には、その案を出してみよう。ワシは上手くいくように思えるからな」


 そんな話をしていると、皆が集まってきた。ニック達は……、あくびをしながら入ってきたな。今朝もパットに起こされたんじゃないか?


 朝食が終わると、山小屋に入る道の警備に出掛ける。

 来ないとは思うけど、小母さん達に任せるのもねぇ……。

 焚火を作ってくだらない話をするのはいつもの事だ。たまに道をみれば良いし、焚火の場所は道を塞ぐ柵から距離がある。


「18歳なら結婚できるぞ!」


「さすがにこの状況では問題だと思うけどなぁ」


「なら婚約なら良いんじゃないかな? パットもそれを望んでいるみたいなんだ」


 ニックとパットがそんな関係になるとなれば……、当然エディとクリスも続くんだろうな。

 俺とナナが残ってしまうけど、今まで通りに付き合えるんだろうか?


「サミーもナナと一緒になれば良いだよ。ナナが日本に帰れるのはずっと先だろうし、それに日本がどうなっているのか全く分からないからなぁ」


 アメリカでさえ、こんな状態だ。日本は銃を所持することができないからね。警察と自衛隊任せになったとするなら、結果は自ずと見えているな。

 一度当たってみようかな? 返り討ちにあいそうだけど……。


「パット達にも協力して貰うつもりだ。安心して待っていれば良いよ」


「俺から伝えるんじゃないのか?」


「お前にそれができれば、俺達は苦労しないよ」


 ニックの言葉にエディまでが笑い出す始末だ。俺達で遊んでいるわけではないと思うんだけど、俺ってそんなに奥手に見えるのかな?


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