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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-214 嬉しいからと言って飲み過ぎるのは良くない


 7月4日9時丁度。8時30分から始まったラジオ放送の最後は、大統領によるオペレーション・ノーススター発動を告げる言葉で締めくくられた。

 デンバー空港でラジオを聞いていた俺達がその言葉で歓声を上げたから、その後の司教による兵士達への励ましの言葉を聞いていた人はいなかったんじゃないかな?

 ワインやバーボンのボトルの封が切られ、俺達は互いに肩を叩き合い酒を酌み交わす。

 ラジオ放送がいつ終わったのか誰も知らないという大騒ぎだったけど、俺達にとっては既にノーススターの一環であるオペレーション・ロックフォートを継続しているんだよなぁ。一応事前にウイル小父さんが説明しているんだけどね。


「全く、子供でもあるまいし……」


「それだけ、嬉しいんでしょう。ついにアメリカがゾンビを駆逐するために動いたんですからね。俺達も動いてはいましたけど、やはりアメリカの中枢を目指したフリーダムはそれだけインパクトがあるということでしょう」


 パットの言葉にニックが小さく頷いてはいるんだけど、やはり呆れているようだな。


「だよなぁ。俺達もその内に出掛けることになるんだろう? アメリカ中を動けるんだから、武装偵察部隊は俺に合ってる気がするんだよなぁ」


 エディがそう言って、ニックの肩を叩く。

 顔を赤くして頷いているニックは、ワインではなくバーボンを飲んでいるみたいだ。

 パットが呆れた顔でみているのは、体に悪いと言うことで葡萄ジュースを飲んでいるから、酔っぱらいはしょうがないという感じなのかな?


「今日は、橋頭保の確保ぐらいだから、ゾンビとの戦闘はブレーブス部隊に限られそうだな」


「進軍前に攻撃機がたっぷりと爆弾を投下するだろうし、上陸用舟艇から81mm迫撃砲を撃ち込むらしいよ。それほど大きな町では無さそうだから、建築物を全て破壊してしまうんじゃないかな」


「サンディエゴと一緒ということか! あれは155mm榴弾砲を使ったらしいけど……」


「原子力空母の甲板に並べると言っていたよ。だけど浅い海岸では付けないからね」


 俺の言葉に、どうやら理解できたみたいだな。

 うんうんと2人が顔を見合わせて頷いている。


「要するに今日は、セレモニーと言うことか。ゾンビがひしめいていた町部隊が足を踏み入れることに意味があるってことだな」


「実際は、明日からってことだね。たぶん国道や高速道路沿いに進むんだろうな。乗り捨ててある車が多そうだから、進軍速度は期待できないかもしれないな」


「それに途中の建物は全て確認しないと不味いだろうな。そういう意味では、中央を進むパイレーツ部隊が案外一番進むことになりそうだ」


 その辺りはどうなんだろう? まだ飛行船が使えるとは思えないけど、早めに上空から取りこぼしたゾンビを見付けないといけないんじゃないかな。

 そんな心配はフリーダムの連中が考えれば良いだろう。俺達には俺達の役目があるんだからね。

 とは言っても、今日は皆で酒を酌み交わして体を休めることには賛成だ。


 その夜。周辺の監視をしていた兵士達も宴会に入ってきたから、比較的酒を飲んでいない俺達がデンバー市へと続く高速道路の監視を仰せつかってしまった。

 監視場所は、空港の南西にあるインターチェンジの手前にある鉄道の高架橋上だ。前に使っていたハンヴィー改良型の気動車に2両のトロッコを轢かせて、複線の片側に停めて監視を行っているようだ。

 エディ達が運転できるから、俺達13人で出掛けることになった。

 

「小型のキャンピングトレーラーをトロッコに搭載したのね」


「中は……トイレにガスレンジ、それと少し広めのベンチシートだけだな。監視はこのトレーラーの屋根で行えば良さそうだ」


 食料や銃弾の予備はトレーラーの棚にあったから、100体程度ならこれで阻止できそうだ。

 偵察用ドローンも置いてあったから、直ぐに出掛けることにした。


 監視点まで2kmも無いから直ぐに到着した。エディが残念そうな顔をしているのは、久しぶりの運転が直ぐに終わってしまったからだろう。


 真夜中だから、遠方をスターライトスコープで監視し、近距離は須田井設置してある照明灯西にあるジャンクション方向を監視する。

 1時間おきに音声映像装置を使って4方向を確認すれば、とりあえずゾンビの接近を確認することは可能だろう。

 トレーラーの屋根に設けられた3m四方ほどの見張り台にエディ達と昇って、夜風に吹かれながら濃いコーヒーを飲む。


「全く、困ったことだよなぁ。今夜辺りゾンビが群れで襲って来たなら、せっかく取り返せそうなデンバー空港を失ってしまいそうだ」


「空港を失うだけなら良いけど、俺達もゾンビになってしまいそうだよ。まぁ、やって来ることは無いと思うけど、見張りはしっかり行おうぜ」


 エディの言葉に俺とニックが小さく頷く。

 七海さん達だっているんだからね。その時には最後まで戦うことにしよう。


 マリアンさん達はかなり酔っていたからなぁ。先に一眠りして貰ったんだが、場合によっては俺達が朝まで見張ることになりそうだ。

 いつの間にか酔いも覚めてしまった。夜風と緊張がある凝る分解を早めてくれたのかもしれない。


「ニック! 寝てないでしょうね?」


 トレーラーの扉が開いて、パットが俺達に声を掛けてくる。


「寝てないよ! 酔いも覚めてしまったよ。今夜は星が綺麗だね。流れ星を2つ見付けたよ」


「今のところ、ドローンでも異常は無いわ。もう少ししたら、コーヒーを入れてあげるわね」


 俺達が寝ていると思ったのかな?

 そこまで危機感が足りないと思われたくはないんだけどなぁ。

 

 20分ほど過ぎたところで、コーヒーができたと七海さんが知らせてくれた。

 3人で周囲を確認したところで見張り台を降りると、無蓋トロッコにベンチに座ってコーヒーを頂く。


「やはりマリアンさん達は酔い潰れてしまったみたいだなぁ」


「今夜は寝かせてあげましょう。明日も半数は二日酔いだと思うわ。その間頑張って貰わないと」


 クリスの言葉に皆が頷く。

 本当に困った人達だよなぁ。だけど、それだけゾンビに対しての一大反攻作戦が開始されたことが嬉しかったに違いない。


「デンバー空港のゾンビを全て倒すには、まだまだ時間が掛かるのかしら?」


「ウイル小父さんの話では、ほとんど倒したらしいよ。今はデンバー空港に入りこもうとするゾンビを事前に狩るための態勢作りをしているみたいだね。それに空港を維持するのはかなり面倒みたいなんだ。空軍から管制官がやって来るみたいだし、空港維持のためのエンジニア達も必要らしい」


 ふ~ン、と言う目でニックの話を聞いているんだけど、確かに空港では大勢の人達が働いていたはずだ。

 全て軍が所掌するとしても、これだけ大きな空港だからなぁ。警備だけでも1個中隊規模になるんじゃないか?

 だけど、ウイル小父さんとしてはその比率をデンバーのゾンビ駆逐に使いたいところだろう。

 少なくとも1個小隊規模で市内のゾンビを駆逐していかないと、どんどん進化したゾンビに変わってしまいそうだ。

 今ならジャックやハイドラを使った攻撃で倒すこともできるけど、今後はどうなるか全く予想が付かないからなぁ。


「それにしても、何時の間にか道路から車が無くなったなぁ」


「ああ、それは陸軍の人達が撤去作業をしてるからだよ。この先のインターチェンジを西に向かって州間高速70号とのインターチェンジ、そこから70号を東に向かい次にインターチェンジを北に向かうと、この先のインターチェンジの南に繋がるからね。車が無くなれば、ストライカーでM777を運べると言っていた」


「有効射程は24kmもあるらしいぞ。何門か運んでくれば、デンバーの中心部近くまで砲撃できると陸軍の連中が教えてくれたよ」


 結構威力のある大砲だからなぁ。そうなると、ますます砲弾を調達する必要が出てきそうだ。


「問題は何処から、どうやって調達するかだ。さすがに空軍はM777を持ってはいないだろうから、フォート・カーソン基地ということになるんだろうなぁ」


「前回は逃げ帰ったんだよなぁ。あれからどうなったのかな? 物資の調達も出来そうだからウイル小父さんに上空からの偵察を進言しても良さそうだね」


「そんなことをしたら、直ぐに出掛けるんじゃないかな? レンジャーの軍曹も、あの基地を気にしていたからね」


 さすがに、エアボーンはしないだろう。

 今度はエディ達も一緒に行けるんじゃないかな。


「私達も一緒に出掛けることになるのかしら?」


 パットが心配そうな顔をして問い掛けて来たから、笑みを浮かべて首を振った。


「さすがにそれはないと思うな。そんな指示を出したらメイ小母さんが怒りだすのは間違いないよ。パット達3人は御留守番だね」


「お腹の子ってこと?」


「そういうこと。今まで頑張ってきたんだから、のんびりしてればいいよ。本来なら空港内を散歩でもしてれば良いんだろうけど、今でも1日に何回かドローでの偵察を行っているんだろう?」


 エディの言葉に七海さん達が頷いた。

 ドローンの操縦を教えた後には、ハンタードローンや汎用ドローンを使った爆撃やゾンビの見つけ方まで教えているらしい。しかも、ストライカー装甲車を改造した気動車を使っての実地訓練まで2度程行ったと言うんだからなぁ。

 2体の統率型ゾンビを倒したらしいから、新たなドローン操縦者も頑張っているみたいだな。


「デンバー空港が使えるから、双発機でデンバー市内を爆撃しているみたいだけど効果は今一らしいよ。長く掛かりそうだから、クリス達が心配しなくても大丈夫さ」


 確かに長く掛かるだろうな。それを考えるとニューヨークの攻略は数年近く掛かりそうだ。


「本当なら、私達もニューヨークに行きたかったけど……。マリアンさん達に任せるしかなさそうね」


「だいぶ上手くなったよなぁ。だけど、ちょっと過激だぞ」


「あれはハンタードローンではなく、汎用ドローンを改造したのよ。105mm榴弾砲の砲弾を落とせると言ってたわ」


 信管の違いを知っているからだろうな。着発信管なら急降下爆撃も可能だろう。60mm迫撃砲弾を使うと、ある程度の高さを必要とするらしい。信管内にタービン発電機があるらしいからね。信管を作動させるための電気を発生させる落下距離がどうしても必要になる。


 コーヒーを飲み終えると、再び見張り台に上っての監視が始まる。

 そろそろ夜が明けるんじゃないかな。

 とりあえず何事も無かったことを、朝日に感謝しないとなぁ……。


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