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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-210 ハリソン大統領


 アメリカ48代大統領ハリソン閣下は民主党とのことだった。民主党と共和党があるらしいけど、俺にはその違いがあまり理解できないんだよなぁ。とりあえず世話になっているウイル小父さんやライルお爺さんが民主党らしいから、俺も民主党を応援しておけば問題は無さそうだ。


「それにしても君がオーロラのダディだったとはねぇ……。オーロラにダディと呼ばれたかったんだがなぁ」


「ショットガンまで用意しているんですよ。執務室でいつも磨いているんですから、最初見た時には国務長官が驚いて私のところに走ってきたんですの」


 それは自宅で行って欲しいなぁ。いくらなんでも大統領執務室ではねぇ。

 呆れた表情を見せると、気恥ずかしいのかワハハハと笑い声をあげて誤魔化しているんだよなぁ。


「子育てが大変だったなら、何時でも頼ってくれたまえ。なんなら養女でも良いんだが……、3男は今年14歳だからなぁ」


「マイケルに将来の妻にするよう勧めるんですよ。オーロラだって、あまり年が離れた男性ではねぇ……」


 大統領夫人が呆れた顔で見てるんだけど、ちょっと期待している感じもするんだよなぁ。

 俺としては、ここで約束することなく将来オーロラが連れて来た相手を尊重してあげるつもりではあるが、その前に伝統に従ってショットガンを撃ってやろう。


 食事は質素なものだけど、大統領と大統領夫人の話は聞いていても気持ちが良いし、俺達の話もうんうんと頷きながら聞いてくれる。

 どんな人間とも親しくコミュニケーションが取れるんだから、さすがとしか言いようがないな。


「妻から、カナダの大陸間鉄道の話を聞いた時には、思わず聞き返してしまったよ。確かに私だって知っていることではあるんだが、肝心な時に思い出せないというのでは、知識が偏っているとしか言いようがないね。あの頃は、目の前の事しか考えることしかできなかったに違いない。直ぐにカナダとイギリス連合国に打診したら、向こうも喜んでくれたよ。今回のオペレーション・フリーダムが動き出したのはまさに、妻からのあの一言からだと言って良いだろう。だが妻はどちらかと言うと文系の人間だ。その考えがどこから来たのかと聞いてみると、生物研究所のオリー博士から伝えて欲しいと頼まれたそうだ。直ぐに今度はオリー博士に詳細を聞いてみたら、サミー准尉の頼みだということだった。皆も私の考えとは思ってはいないだろうが、私からその案が出た時には統合作戦本部が大騒ぎだったよ。あれを爆弾発言と言うのだろうな。大統領として一番の思い出になりそうだ」


「言葉使いができていないことを最初にお詫びします。俺としては使えるものは全て使うことでゾンビをアメリカから早期に駆逐したいところです。その為には、アメリかの西と東を効率的に繋ぐにはどうしたらよいかと考えた結果なんですが、一介の兵士の意見を統合作戦本部に伝えるのは中々できる事ではありません。ある意味個人的な理由で大統領閣下を動かしてしまい申し訳なく思っております」


「全く、気にすることは無いよ。とはいえ統合作戦本部も薄々は気付いているに違いない。今後は君の意見を聞く耳を持つかもしれないよ」


「昨日と今日の午後まで、統合作戦本部の重鎮達と意見を交わす機会を得ることができました。アメリカ中で現在行われている作戦、これから行う作戦、さらに今後予定される作戦名を考えたのは閣下ではありませんか?」


「昨夜遅くに本部長が訪ねてきた。私も、そんなに多くの作戦が同時に行われるようになるとは思わなかったよ。だが、どれもが互いの作戦に関わっている。これもサミー君が考えたんじゃないのかい?」


「水を向けましたが、選んだのは統合作戦本部です。さすがはアメリカを守護する軍を統括する本部であると感心いたしました」


「そういえば、本部長が民兵募集を行いたいと言っていたよ。フリーダム実施時の駆逐漏れを完全になくすためだと言っていたが、今までそんな話が無かったことを考えるとこれも君のアイデアかな?」


「1体でも後方に残した状態で入植を開始したなら、再び悪夢の再来になります」


「そういうことか……。20歳以上50歳までの男女で射撃経験のあるもの、と条件を付けたいがこれで十分かね?」


「出来ればかつての仕事を書き込ませてください。エンジニアと農業それに畜産関係者をなるべく温存してください」


「国の復旧と言うことか……。なるほど、私より常に先を見据えているようだ。クロードも君のような素質があれば良いのだが……、直ぐに海軍に志願してしまったからなぁ」


「軍の経験は政治活動に有利になるでしょう。功績を焦ることなく努めれば十分に評価されると思います」


「フフフ……。ハリソンと同じことを言うのね。将来はクロードをお願いしたいわ」


「海兵隊と海軍は昔から仲が良いと聞いています。その内に合う機会があると良いんですが」


「てっきりフリーダムに参加すると思っていたんだが、急に待機任務を言い渡されて腐っていたよ。私への忖度とも異なるようだけど、参加させて欲しいと本部長に言うのも大人げないしねぇ」


 思わずレディさんと顔を見合わせてしまったのは、仕方のないことだろう。

 当初参加を予定していたにも関わらず待機命令を言い渡されてのはオイルストライクへの参加ということになりそうだ。


「失礼ですが、クロードさんの階級は?」


「少佐なんだ。部下を前に不満を漏らすようなことは無いだろうと思ってはいるんだが……」


「たぶんクロード少佐を評価しての待機指示だと思います。今日、本部長との会談をした時にかつての駆逐艦を改造していると聞きました」


 俺の話を聞いて急に眼を輝かせている。


「それは機密漏洩に当たるんじゃないのかな?」


「国家の秘密を閣下は知る立場にあると思いますが?」


 互いに視線を合わせると笑みを浮かべて頷き合う。


「そういうことか。まったく困った息子だよ。今度顔を合わせる時に、楽しみに待つよう伝えておこう」


「殿方だけで分かり合うのは、問題に思えるのですが?」


 笑みを浮かべながら夫人が大統領に苦言を言っている。言葉使いが丁寧だな。クリス達なら、「私達に分かるように説明しなさい!」と言うに違いない。


「どうやら、南に向かう作戦に参加と言うことになるんだろうね。艦隊の規模はかなり大きくなるとは聞いているよ。フリーダムの成功のカギを握る艦隊になるらしい」


「北の作戦を支援するために南に向かうのですか?」


「私も最初は同じことを訊ねたよ。その答えが燃料と弾薬の調達と言うことだった。この時期に私を訪ねて来たところを見ると、それにもサイカ准尉の思惑が絡んでいるんじゃないのかい?」


「オプションの1つとして提言したのは確かですが、それを作戦にまで仕上げたのは統合作戦本部と海軍です。俺の提言はノーフォーク基地でしたからね」


「統合作戦本部はさらに南を考えたわけだね。頭の固い連中ばかりかと思っていたのだが、国家存亡にかかわる事態では柔軟な思考を行えるということか。それなら、私は残された人達の今後の生活に向けた対策に全力を傾けることができそうだ」


 それも、信頼できる人材に任せるべきなんだろうけどね。

 大統領は、執務室で全体の状況経緯を見守り、その進捗をコントロールすれば良いんじゃないかな。

 あまり現場に考えを向けるようでは、大局を見失いかねない、


「まだしばらくは食料自給率に頭を悩ませられそうだよ。種を撒いても直ぐにパンができるわけではないし、畜産もそうだからなぁ。大平原地帯に生産が集中していたのは痛かったな」


「それでも、この辺りでも農業や畜産が行われていたはずです。少しずつ規模を拡大するしか対処方法はないと思います。とはいえ、入植者向けに農業や畜産を教えることも大切でしょう。まったくの素人が開拓することになることもあり得ると思います。さらに農業機械の修理及び製作も今後必要になるでしょう。コルホーズは生産性が良くなかったと聞きます。中国も同様の悩みがあったようですから、大規模農場の集団経営は避けるべきかと」


「苦言だねぇ……。実は、それを考えていたんだよ。素人対策としては集団経営で農業や畜産のノウハウを学べると考えていたんだが、そのまま推移すると共産主義の農業と同じことになるということか……。共同経営ではなく、会社組織にすべきかもしれないな」


「当然、その先もお考えになっていると思いますが?」


「隠し立ては出来ないね。……考えているよ。かつての銀行経営者や経済学者達と何度か話をしている。現在アメリカと言う国は、原始的な社会主義経済と言うことになるらしい。これを貨幣経済が成り立つ世界に変えていかねばならない。かつてのドルは使用できないからね。今は貧富の差が殆どない状況だ。貨幣経済の発展で、貧富の差が生まれるらしいができればその差を少なくするチャンスでもあると自覚しているよ」


 貧富の差は収入の格差でもある。その差が大きくならないような社会を構築できれば良いんだけどねぇ……。


「閣下なら、できると確信します!」


「ありがとう。君にそういって貰えると自信が沸くよ」


「……忘れていました。指輪を頂きありがとうございます」


 俺が頭を下げると、レディさんも一緒に頭を下げる。


「ハハハ……、あまり気にしないでくれ。まだまだ権威主義が残っているからね。君達の今後を考えると持たせた方が良いと本部長の提言に頷いただけだ」


「とは言っても、これには意味があります」


「この騒動が一段落したら、軍も統合せねばなるまい。ゾンビが人間同士の争いに終止符を打ったということかもしれないな」


 既に仮想敵国は存在しないだろう。苦し紛れに核を打ち合うことも無かったようだ。このまま数十年が過ぎたなら核弾頭は使えなくなるだろうし、新たに核弾頭を作るだけの技術が残っているかも怪しい限りだ。

 ゾンビのおかげで途絶えた技術は案外多いかもしれないな。

 現時点で継承ができている技術について調査することも必要だろう。

 原油を各種の中間素材、さらに燃料にまで加工するコンビナートは、施設を奪回したとしても動かすことは出来るんだろうか?

 軍は技術者の集団でもある。軍の後方支援部隊の持つ技術についても調査した方が良いかもしれないな。


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[気になる点] アメリカの油田がどこにあるのかは知りませんが、油田地帯でもゾンビを排除しないと、原油の採掘もできないのでしょうね?
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