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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-189 後は弾薬庫から運びだすだけ


「それにしても、便利な道具だな。バクス、誰かにあの装置を被せるわけにはいかないだろうか?」


「私も考えてはみたんです。サミー殿にヘルメットを借りてゾンビの声を聴いてみたのですが……。長くて3分というところでしょう。あれを聞き続けさせるとなれば部下への虐待で軍法会議が待っているとしか思えません」


 最初の建屋内のゾンビ掃討を終え、一服している俺達の所にバクスさん達ブラボーチームがやってきた。

掃討の済んだ建物内の保管物を確認するらしい。見た限りでは、何かの交換部品みたいなものばかりだったんだけどねぇ……。


「私達のチームにサミー殿のような人物が加わってくれると、これからの作戦が上手く行くのでしょうが……」


 俺を見て2人が溜息を吐いている。

 一応海兵隊だからね。陸軍に転属にはならないと思うんだけどなぁ。


「フォート・カーソン基地から脱出してきた兵士の中に、日系人兵士が何人かいたようです。彼らにゾンビの声を聴かせたところ、何人かそれを虫の声だと言った者がいるそうですし、その中に別の虫の音が混じっていることが分かった人物もいたそうです。ナナが今頃は彼らを柵近くに連れて行って実際にどの程度聞き取れるのか確認していると思いますよ」


 俺の話を興味津々に2人が聴いていたんだよなぁ。話が終わった途端に互いに顔を見合わせてニヤリと笑みを浮かべて頷いている。


「バクス……。何とかなるんじゃないか?」


「本部に要求を出しておきましょう。それ以外には、内々で我等の部隊内でも確認しておく必要がありそうです。日系人が数人おりますからね。これを少佐殿に教えることで、我等の要求を……」


 バクスさんの言葉は最後の方が良く聞き取れなかったんだよなぁ。

 2人で悪巧みというところだろうが、確かにそんな人物が1人はいれば途端にゾンビの掃討の難易度が変わるに違いない。


「さて、次はあの建屋だな……」


 タバコを携帯灰皿に入れると、オスカーさんの後に付いていく。

 やはりレンジャー隊員だけあって、建屋内に入ってしまえばゾンビを狩るのは造作もないようだ。

 突入時が一番危険なんだけど、常にスタングレネードを使うわけにもいかないからなぁ。


2つ目の建屋のゾンビを掃討したところで、建物影に入り昼食を取る。

 作戦中だからカロリーバーとコーヒーの簡単な食事だけど、お腹が空いては戦闘にも支障が出るらしい。

 俺も持ってはいるんだけど、定数よりも少し多めに入っているらくアルファチームの分を分けてくれた。


「残りはあの建屋だな。やはりサミー准尉が欲しくなるよ」


「生憎と海兵隊ですから……。ですが本部の指示には従いますよ」


「案外これからも一緒の作戦がありそうだ。デンバー中心部で遭遇した怪物の映像は見せて貰ったよ。あんなのは映画の中だけだと思っていたんだがなぁ」


「姿はあんなでしたけど、7.62mmで倒せました。次に遭遇した時には5.56mmで試そうと思っています」


「自分達の安全はしっかりと確認して行うんだぞ。7.62mmで倒せるなら問題は無いはずだ。私の部隊もチームに1人はMk14を装備しているからね」


 ウイル小父さん達も同じような事を言っていたな。

 分隊狙撃銃ということらしいのだが、スナイパーという人達はまた別の部隊に属しているような気がするんだよなぁ。


 弾薬庫周辺建屋からゾンビを掃討して、集合場所である格納庫の事務室に戻ってきた時にはだいぶ日が傾いていた。

 とは言っても夕暮れまでにはまだ間がある。

 ニック達の様子を見に屋上に上ってみると、数人の男女が屋上で双眼鏡を手にしていた。


「サミーか! ここに来たということはゾンビの掃討が済んだということだな」


「一応完了です。どうですか? 俺達の存在に気付いた様子は……」


「姿は見えんな。そのヘルメットでも確認してくれないか。この間の陸軍基地の例もある」


「了解です!」 返事をしたところで、東西南北から聞こえてくるゾンビの声を聴いてみた。

直ぐに集音装置のスイッチを入れて確認してみたのだが、かなり音が小さいな。屋上を一巡りして分かったのは、北東と南東方向がやや大きく聞こえるぐらいだ。

 だけどどうにかコオロギの鳴き声だと分かるぐらいなんだから距離はかなり離れているんじゃないかな。


 レディさんのところの戻ると、コーヒーを用意して待っていてくれた。

 状況を伝えると、エディを呼んで皆にも伝えるように指示を出している。


「なにも無いと、かえって不安になるものだ。自分達が見ている結果とは全く別な手段でもゾンビが近くにはいないと分かれば安心できるだろう」


「とはいえ、周辺監視は必要でしょうね。いつの間にかゾンビに囲まれていたというような事態は避けたいところです」


「2度程、大きな銃声が聞こえてきたから少しは動きがあるのかと思ってはいたんだが、距離が離れていたということか」


「連続した音ならゾンビも動くんでしょうけど、よほど大きな音を立てるか連続音を出さない限りは無視しているようにも思えます。陸軍基地で囮をした時にはエディから貰った爆竹が役立ちましたよ」


「ハハハ……。確かに連続した銃声と言えるだろうな。アジア系の雑貨屋を見た時には探しておいた方が良さそうだ。サミーもあまり近付かん方が良いぞ。今回は弾薬を調達するのが目的なのだからな」


「了解です。大きな建物内のゾンビ掃討は終わったんですが、まだ弾薬は見つかってないようです」


「あの援兵豪は確認していないのだろう? 後方に換気用のダクトもある。あれが弾薬貯蔵庫だろうな」


 レディさんが腕を伸ばして教えてくれたのは、屋根まで土が被せてある倉庫だ。ペンデルトンも地下貯蔵庫だったところを見ると、弾薬は地下施設に貯蔵するのが主流なのかもしれないな。


 夕暮れが近付いて来たところで、夕食を取る。

 レーションを温め、コーヒーを沸かせば夕食が頂ける。

 山小屋ならメイ小母さんの美味しい料理が頂けるんだけど、しばらくはお預けだな。


「大型倉庫は、ミサイルの交換部品が殆どでした。我等に利用できるものではありません。銃器類の消耗品が2箱見つかりました。これは共通品ですから我等も利用できるでしょう。夕食後は半地下壕の倉庫を調べてみます」


「早目に弾薬を見付けたいものだ。それによっては明日呼ぶオスプレイの数を増やすこともあり得るからな」


「そうなると運搬用の台車が欲しいですね。案外倉庫内にあるかもしれませんから用意しておきましょう。レディ殿のバギーには牽引用の金具が付いておりましたな?」


「ボールではなくシャックルだが、それで十分か?」


「梱包単位は50㎏前後でしょう。大砲の砲弾を運ぶわけではありませんからね」


「エディ達を使ってくれ。サミーは監視要員として屋上に配置したい」


「ありがとうございます」


 バクスさんが笑みを浮かべてレディさんに礼を言っている。それほど距離があるわけではないんだが、弾薬箱は結構重いからなぁ。

 台車で運べるならそれに越したことはない。


夕食後はレンジャー部隊が二手に分かれて、掩蔽壕の倉庫を調査しに向かった。

レディさんのバギーをエディ達が運転して行ったけど、どこかにぶつけないか心配だな。やはり俺が運転した方が良かったんじゃないか?


「ここでのんびりと監視ですか……」


「のんびりして貰っても困るのだが、現状ではそうなるだろうな。4方向を30分おきに監視すれば問題はあるまい。ゾンビが近付けばサミーにも分かるだろう」


「便利に使われてるのね。でも、その能力は今の状況では誰もが欲しがりそうね」


「おかげでこんな柄にもない階級を頂いてしまいました。ますます便利に使われそうです」


 俺の言葉は面白かったのかパイロット達2人が大笑いをしてるんだよなぁ。

 話を聞いてみると、どうやら夫婦らしい。

 夫婦で同じ機体に乗っているんだから羨ましい限りだ。


「来年にはジュニアが誕生するのだ。この状況下で2人目なんだからなぁ」


 困った奴だという感じで、レディさんがコーヒーを飲んでいる。

 まぁ、出來てしまったからには、責任をもって育てれば良いだろう。だけど学校が無くなってしまったからなぁ。

 七海さん達が教えるんだろうか?


「本当? まだ少年だと思ってたんだけど」


「今年20歳だ。とりあえず育児放棄はしないだろう」


「私達も、そろそろ作ろうかしら? でも、住むところが無いのよねぇ」


「グランビーならたくさん家がありますよ。でも済む前に少し綺麗にしないといけないでしょうけど」


「あの町か……。確かに大都会よりは良いかもしれないな。それに一番大事なことだが、あの町は安心だ」


 そうやって少しずつ町の住民が増えて行くに違いない。

 グランドジャンクションの途中にも小さな町がいくつかあったし、グランドジャンクションなら果樹園栽培も出来るからね。

 グランドジャンクションのゾンビ掃討も順調みたいだから、今年はグランドジャンクション名物の葡萄やリンゴが食べられるかな?


「ん! 着信だ……。『レディだ。何かあったのか? ……ふむふむ、それなら都合が良いな。格納庫のシャッターは開いているぞ。ドンドン運んでくれ』」


 見つけたのかな?

 レディさんが俺達に顔を向けた。


「やはり掩蔽壕で見つけたようだ。推定量は30tほどらしいな。デンバー空港に連絡して増援を送って欲しいそうだ。さすがに全部持ち去ることも出来まい。


 レディさんが一服しながらデンバー空港のウイル小父さんに通信をしている。

 小型だけど送信出力は50Wほどあるらしい。数分ほど通信していたが、どうやら終わったらしく俺達に笑みを浮かべた顔を向けてくる。


「2機を送るそうだ。1個分隊と手押し車を乗せて来るらしいぞ」


「2日程掛かるかと思いましたけど、さっさと運んで終わりにするつもりのようですね」


「気になるのは弾薬の種別だ。さすがに空軍だけが弾種を変えるとは思えんが、今一番欲しいのは5.56mmNATO弾と9mmパラベラム。それに60mmの迫撃砲弾だ」


 確かにに一番使っているだろうな。

 俺としては357マグナム弾も欲しいところだけどね。

 

「運んできましたよ。あれだと木箱2つですね」


「木箱1つで35kgはあるからなぁ。木箱1つにM2A1弾薬箱が3個入っているはずだ」


 あの木箱1つで、5.56mmが2500発程入っているんだからなぁ。

 結構重いようだけど2人で荷下ろしが出来るんだろうか。ちょっと心配になってきた。


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