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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-018 掃討班を3つ作る


 ゾンビを相手に戦える男性の数は俺達5人にバリーさん達6人の11人だ。元警官や軍人の嫁さんが4人いるから、やはり手伝って貰おうと合計15人を3つのグループに分ける。

 ウイルさんの考えで、1班はウイルさんにライルお爺さんとエディ、それにメイ小母さんとキャシイお婆さんが加わる。御老人がいるということでオリーさんとクリスも一緒だけど、荷台から銃を撃つぐらいは出来るだろう。

 第2班はバリーさんが率いる。バリーさんの奥さんとベントンさんとテリーさん、それに俺とナナになる。

 第3班はエンリケさんが率いる。エンリケさんの奥さんにニックさんとケリーさん。それにニックとパットが一緒だ。

 ニック同士で握手をしているところを見ると、案外上手くやっていけそうだな。


「それぞれのガールフレンドにトランシーバーを渡しておけば良いだろう。山小屋との連絡も同じトランシーバーで可能だ」


「人選はこれで良いだろうが、2班で行動とするなら、片方はバックアップで良いのかな?」


「そのつもりだ。無理は厳禁。先ずは車を下りずに出てきたゾンビを狩る。これを使えばすぐに集まるからな」


 ウイル小父さんが取り出したのは、目覚まし時計だ。

 かなり煩い奴だな。

 出てきたゾンビを銃で撃てば、銃声でさらに集まるはずだ。


「使うのはM16ライフルで良いだろう。ミニミもあるが、ここで使うのはなぁ」


「ああ、銃弾を捨てるようなものだ。少年達も同じ銃を使わせるのか?」


「別の銃を使わせる。牽制ぐらいに考えてくれれば十分だ。まぁ20mぐらいに近づけばこいつらにも当てられるだろうがなぁ」


 そういうことかと、エンリケさんが俺達に視線を向けてくる。

 銃で撃つより殴った方が簡単に思えるけど、相手の数が多いってことだろうな。

 

「ハマーは燃料を捨てに行くようなものだ。6人ならピックアップトラック1台で十分だ。バックアップにもう1台付いて行くから、故障したとしても全員戻ってこれる。だが、荷台に上がられると面倒だし、場合によってはゾンビを跳ね飛ばすこともあるだろう。改造したいが手伝ってくれるか?」


「備えあれば……、と言う奴だな。もちろんだ。だが全員は必要ないだろう?」


「残った連中には、国道までの道を整備して貰うよ。さすがに凸凹は問題だ」


 ジッと隠れているなら、役立つんだけどね。

 かなり荷台が揺れるからなぁ。へこんだ場所に土を入れるだけでも少しはマシになるだろう。


トンネルの入り口を開いて、ピックアップトラックの改造を始めたウイル小父さん達を横目に見ながら、一輪車にスコップを数丁乗せて凸凹道へと向かう。

 全員拳銃を持ってはいるけど、念の為ということでバリーさんとエンリケさんの奥さんがM16を持って周辺の監視をしてくれるそうだ。

 さすがにサプレッサーを忘れていないみたいだな。でも数体ならばスコップで殴れば十分じゃないかな。


 路肩の土を削って、へこんだ道を埋める。出ている場所もスコップで削っておこう。

 皆でやれば、1日も掛からないんじゃないかな。

 頑張って作業をしていると、パット達がバスケットを下げてやってきた。まだ1時間も経っていないように思えるけど、とりあえずは休憩を取る。


「あまり進んでないのね?」


「始めたばかりだよ。昼過ぎには終わると思うんだ」


 パットの呟きに、ニックが弁明しているから、エンリケさん夫婦が噴き出す寸前になっている。

 若い連中は、どんな時でも変わりないぐらいに思っているんじゃないかな。


「ハイスクールかな? こんなことが無ければそろそろ大学なんだろうが」


「そうなんです。最後のハイスクールになる筈だったんですけど……」


「でも、彼と一緒ならそれでよかったんじゃない? あの騒ぎで合流できたというのが凄いわよ」


「郊外のキャンプに参加してたんです……」


 俺達の冒険話をクリス達が披露すると、さすがにちょっと驚いているようだ。


「モールスを打てるのか……。無線愛好家と言う事かい?」


「どちらかというと、将来の投資ですね。そろそろ帰化しようとしてましたから。狙いは海兵隊だったんです」


「ほう……。審査に落ちたなら陸軍があるからな。通信兵は現場から需要が高いんだ。ましてモールスを使えるなら専門講習も短期間で済むぞ」


 実際は工学希望なんだけどなぁ。

 でも、嬉しそうに勧誘してくれるのを見ると、日本人だという差別を感じずに済みそうだ。


 パット達が戻ると、再び工事を再開する。

 さすがに汗が出るな。終わったら早めにシャワーを浴びよう。


 12時少し前に、トランシーバーを持っていたエンリケさん奥さんが昼食を取るようにとの連絡を受けた。

 その場で体を伸ばし、午前中の作業を終えることにする。


 昼食は、庭にシートを敷いてサンドイッチを頂く。こんな場所ならおにぎりが欲しいところだけど、生憎と米が無いんだよね。

 町で見つけたなら持ち帰ってこよう。案外レストランのバックヤードにありそうな気がするんだよなぁ。


 何とか道を整備して、その日が終わる。

 いよいよ、ゾンビを町から駆逐するのかと思ったら、明日はメイ小母さん達の要望で、温室を作ることになってしまった。

 生鮮野菜は必要と言う事だろう。去年町から運んできたビニルハウスの材料で大きなものを作るらしい。

 丸太で箱型に柱を組んでビニルを張ればなんとかなりそうだ。少しぐらい雪が降っても潰されないものという条件があるようだけど、さすがにビニルでその要求を満たすのはどうなんだろう?

 翌日、早速始めたんだが、屋根はビニルで三重に葺くことになった。形を作る斜めの柱材も俺の腕程あるから、簡単につぶれることは無いだろうし、中で薪ストーブを焚くらしいから、積もった雪は解けてしまうに違いない。

 温室の中を簡単に耕して、家庭菜園用の肥料と土をたっぷりと混ぜ込んだ。

 パット達も一緒になって種を撒いたらしいけど、いったい何が育つんだろうな?

 パット達に聞いても笑って教えてくれないから、後でメイ小母さんにそっと教えて貰おう。


「色々と本筋ではない仕事があったが、いよいよ明日からゾンビの駆逐を始めるぞ」


「そうだな。俺達も銃弾を運んで来たが、ウイル達も運んできたんだろう?」


「ああ、たっぷりとあるぞ。ニック達も合流する時に、かなりの量を渡してくれた。グランドレイクはもちろん、グランビイからゾンビを駆逐してもたっぷりと残るはずだ。狙う場所は分かってるよな?」


「頭だろう? 体は何発受けてもダメだからな。さすがに手足が千切れれば、少しは脅威が減るがそれで動きを止めることは出来ない」


「女性達はもちろんだが、エディとサミーも頼むぞ」


「ああ、任せとけ。それに、荷台から落ちなければ安心だ。荷台の縁を高くしたからな」


 ピックアップトラックの荷台枠の上に丸太を2本並べてで枠を高くしてある。乗り降りが少し不便だけど、基本は荷台の上からの射撃だから問題は無いんじゃないかな。

 フロントバンパーの外側に鉄パイプで頑丈なバンパーを新たに設けたから、通せんぼをするゾンビは跳ね飛ばせそうだ。


「結構頑丈にしたが、何度かゾンビと戦えば改造点も見つかるだろう。とりあえずはこれで行こう。トラックはもう1台出しておいてくれ。万が一の時には3班に応援依頼を出す」



「残った嫁さん達にも一応銃の扱いは教えてあるが、残った班に依頼を出す前に引き上げたいな」


 バリーさんの言葉に、ウイルさん達も頷いている。

 確かにその通りなんだよなぁ。グランドレイクから始めるつもりだから、俺達が出掛けた後は、グランドレイク方面からゾンビがやってくることは無いはずだ。

 だけど、グランビイ方面から来るとしたら、ここに残った班が頼りだからね。


「柵も少しは強化したし、2つの班がここを出たなら直ぐに移動柵を動かして出入り口を閉ざすつもりだ。1班いれば、早々遅れは取らんだろう。クレイモアを道なりに設置してるし、1人2個の手榴弾も持っているぐらいだからな」


「ああ、その通りだが、油断は禁物だ。他の拠点も反撃を開始しているようだが、結果はあまり良くないらしいぞ」


 モリイ達が残したデコーダーの記録を夕食後に見たウイル小父さんの表情が暗かったからなぁ。上手く行ってないということなんだろう。

 その原因も調べる必要があるけど、先ずは効果的なゾンビの倒し方を探ることからになってしまう。

 一応、頭に銃弾を撃ち込むか、頭蓋骨を破壊するほど殴ればゾンビはそれまでなんだけどね。

 距離が遠いと銃弾を頭に命中させるのは難しいし、ゾンビの頭を殴るには直ぐ傍まで行かないといけないからなぁ。


バリーさん達と合流して3日目の朝。いよいよ俺達はゾンビの掃討を始めることにした。

 バリーさんが運転するピックアップトラックの荷台に乗るのは、俺とベントンさんにテリーさん。車内には運転手のバリーさん、助手席の奥さんに後部座席で連絡係を担当するナナだ。荷台に繋がる窓を開けてくれたから、車内との会話も問題はない。

 ライルお爺さん手作りの低いベンチを荷台の前方に動かないように取り付けてくれたから、その上にシートを丸めて座ることにした。側面の枠も高くなったから、荷台から落ちることは無いだろう。

 ベントンさん達は俺のような装備ベルトを使わずにポケットがたくさんついたベストを着ている。そのベストに必要な代物は収納できるし、拳銃弾ぐらいなら貫通しないと教えてくれた。


「結構重いのが難点だが、これなら腹を食われることは無いぞ。サミーだって捨てたもんじゃないぞ。サスペンダー付きだからベルトがずり落ちないだろうし、そのポーチにも結構物が入るだろう?」


「ベトナム時代のコピー品みたいです。色々と下げらるのが良いですね。でも、銃弾を沢山持てないのがちょっと……」


 ライルお爺さんが渡してくれたのはショットガンだからなぁ。

 軍用だと言ってたけど、銃床が長くないけど結構な重さだ。チューブマガジンに5発入ると教えてくれたけど、現在は4発装填してある。それほど撃つチャンスは無いんじゃないかな。


「ダブルオーなら期待できそうだ。それでも30発はポーチに入ってるんだろう?」


「そうです。その他に2箱渡されました」


 ベントンさん達は22口径のライフル弾が28発入ったマガジンを6つベストの専用ポケットに入れている。その他にM16にもマガジンが入っているんだから200発程の銃弾を携行しているんだよなぁ。

 さらにベンチの下にある弾薬ケースに、同じ数だけのマガジンを入れてあるらしい。

 過剰じゃないかと考えてしまうけど、連射すると直ぐに銃弾が無くなると教えてくれた。


「ウイルさん達が出発したわ。私達も出掛けるよ!」


「了解! 今日の主役は1班だからなぁ。まぁ、周囲を俺達は見張っていれば良いはずだ」


「ゾンビを見付けたら発砲して良いんだよな?」


「その為にサプレッサーを付けているんだ。だが、サミーは我慢しとけ。それは音がでかいからな」


 荷台で一服しながらそんな話をしていると、俺達を乗せたピックアップトラックが動き出した。

 残った3班の連中が手を振ってくれるから、俺達も荷台で手を振る。

 積極的にゾンビを倒すのは初めてだけど、上手くいってほしいな。


※※※ 注記 ※※※

 

クレイモア

 指向性対人地雷。

 前方に向かって多数の鉄球を打ち出す対人地雷。ワイヤートラップでも使用できるが、遠隔操作も可能。被害半径50mほど。


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