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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-176 デンバー市の中心部に行ってみよう


 デンバー空港の戻った翌日。

 目が覚めたのは、8時過ぎだった。やはり疲れていたんだろう。

 オリーさんと七海さんは、まだ夢の中だ。一足先にベッドを抜け出し戦闘服に着替えていると2人が目を覚ましたようだ。


「ラウンジでコーラを飲んでるよ。まだ残っていたらだけどね」


「あら! 8時を過ぎているのね。急いで起きないと……」


 2人が着替えを始めたところで部屋を抜け出す。

 ラウンジのソファーに座って、デンバー空港を眺める。

 大きな空港なんだけど、離着陸する飛行機が1機も無いのが寂しいところだ。

 ウイル小父さんが空港ビルのゾンビを倒し始めたと言っていたけど、ビルがまた大きいからなぁ。

 レストランを含めて食事がとれる場所が100以上あるらしい。


 果たして今年中に終わるんだろうか? 何とか空港ビルだけでも終わらせたいところではあるんだけどね。

 

「相変わらず、サミーは早起きだなぁ」


 聞き覚えのある声に後ろを振り向くと、ニックが立っていた。


「今日は、雨が降りそうだね。……どうしたんだ?」


「パットにベッドから蹴り落された……」


 横腹を撫でながらソファーに腰を下ろすニックに、気の毒そうな目を向ける。

 でも、美人と同棲出来てるんだし、来年には父親になれるんだからそれぐらいは諦めるべきだと思うんだけどねぇ。

 それにニックも寝相が悪いからなぁ。他人を非難できるようには思えない。

 

 テーブルに乗っているコーラを見て、笑みを浮かべている。


「自動販売機が生きてるんだ。これを使ってくれよ」


 1ドル札を渡すと笑みを浮かべて受け取ってくれた。

 昔なら木にも市内で毎日飲んでいたからなぁ。ニックも懐かしく思ったに違いない。

 直ぐにコーラを買い込んでくると、ソファーに座り直して飲み始めた。


「もう飲めないと思っていたよ。ここにあるということは、バックヤードのどこかにあるってことだね。まだまだ探索が足りてないんだよなぁ」


「今日はのんびりということだったけど」


「さすがに俺だって、休みたい時はあるよ。ここでのんびりと空港を眺めて過ごしたいね」


 一服を楽しんでいると、七海さんやパットがやってきた。

 その後ろで大きな欠伸をしているのはエディ達だ。今日は目覚まし時計で起きることが出来たのかな?


「さて、朝食に行こう! レストランを食堂にしたらしいからね。ここで働く人も増えるんじゃないかな」


 給料が出ないからボランティアということになるんだよなぁ。

 俺達も貰ってはいないけど、衣食住が約束されているようなものだから、特に気にはしてないけどね。

 とは言っても、さっき自動販売機で使ったドル札はコンビニのレジから頂いた物なんだよなぁ。

 ある意味窃盗犯になる気がするけど、この状況下ではドル札をいくら持っていても意味が無いからね。

 とは言っても、将来的には新たな貨幣経済を作ることになるんだろう。

 新札を作るんだろうか? それとも硬貨になるのかな……。


 しゃれたレストランなんだけど、通路側の窓ガラスが無くなっている。

 ビルの中だから特に問題は無いようだけど、冬前には塞がないと凍えながら食事をすることになりそうだ


「オリー! こっちだ!!」


 外側の窓際からレディさんが手を振っている。

 一緒に食事をしているのはマリアンさん達だな。カウンターで朝食を受け取ってレディさんのテーブルに向かう。

 さすがに全員が座れるわけではないから、エディ達は隣のワインズさんが座っているテーブルに着いた。


「全く、困った奴だな。いったいどんなメールを誰に送ったんだ?」


「ゾンビの状況確認をデンバー深部で行いたいと所長に送ったんだけど?」


「統合作戦本部から特命で指示が降りて来たぞ。オリー博士への協力依頼だ。デンバー深部への到達手段はベノムを使うことになるのだが……」


 とりあえず朝食を頂きながらレディさんの話を聞くことにした。

 さすがに軍の上位組織には逆らえないということなんだろう。先に大統領令のデンバー空港奪回も重要だから、それと矛盾しない形で行うことになるようだ。


「我等はベノムと呼んでいるが、UH-1と言う汎用ヘリコプターだ。分解梱包した2機をオスプレイで運んで来たらしい。デンバー空港がつかえるようになったなら、デンバー市内のゾンビ掃討に使うことを考えていたんだろう」


「今度はヘリボーンと言うことですか?」


「いや、ヘリを着陸させる。デンバー市の中心より東に2kmほど離れた場所にメディカルセンターがある。そのヘリポートなら着陸できるだろうし、爆心地までドローンを飛ばすこともできるだろう」


「全員で行けそうですね?」


 エディが嬉しそうに顔を輝かせて、隣の席から身を乗り出して確認している。


「全員と言うわけにもいかないんだ。サミー達6人と私とオリーの8人で行く。マリアン達はオルバン軍曹の指示で動いて欲しい。

偵察は二泊三日の予定だ。昼食後に出掛けるぞ。ウイル殿は難しい顔をしていたが、『3日であるなら……』と許可してくれた。航空写真がこれになる。ヘリポート周辺にゾンビの姿はないが、サミーと私が先行してヘリボーンを行う。周囲の安全を確認したところでヘリを着陸させる」


 エアボーンから比べればマシに思えるな。

 それにタンデム降下するわけではないからね。


「ドローンは2台は欲しいですね。それとジャックは必要ですよ」


「たぶん統率型もいるだろう。ついでに倒す分には問題ない。だがジャックは2台が良いところだ。それにリトルジャックを数台追加と言うところだな。オルバン軍曹、申し訳ないが搭載する資材の確認をお願いしたい」


「了解です。とはいえベノムは人員輸送が主目的です。我等を下ろした後にさらにもう1機分の荷を運んで貰うことになるかもしれません」


「だろうなぁ……。それは私の方から、ヘリの運用部隊に連絡をしておこう。それでは1130時に1階のエントランスに集合とするぞ」


 レディさんの話を聞いている内に朝食が終わってしまった。

 時刻は9時を少し過ぎたあたりだ。集合時間までには2時間以上あるが、早めに装備を調えておこうか。


「サミーは、今度もイエローボーイで臨むのか?」


「そのつもりだ。何といっても良く当たってくれるからね。それに屋上に3日だろう? ゾンビが大挙して襲って来る可能性もない筈だ」


「確かにゾンビの掃討を行うわけではないんだよなぁ。俺達はM4カービンで行くけど、予備の銃弾は銃弾ケース1箱で十分かもしれないね」


 ニック達と話をしていると、レディさん達がテーブルを離れて行った。

 七海さん達も部屋に戻るみたいだから、俺達も送れないようにしよう。


 部屋に戻って、装備を調える。

 小型化された集音装置が付いているし、ヘルメットのバイザーを下ろすと特定の音源の発声元を表示できる優れものだ。

 雑貨屋で昔見付けたサングラスを掛けると、熟練の兵士に見えるに違いない。


 七海さんは俺と似た装備だけど、オリーさんの場合は戦闘服にサスペンダーの付いた装備ベルトだけになる。さすがにベレッタのホルスターとマガジンケースが付いているけど、それ以外は小さなバッグが腰についているだけになる。

ポケットが膨らんでいるのは、ショットガンの銃弾が入っているからなんだろうな。

 2人とも重そうなダッフルバッグを持っていくようだから、俺のナップザックを七海さんに持って貰いダッフルバッグを両肩に下げて持っていくことにした。


「ありがとう。結構重いのよねぇ」


「これぐらいは、構いませんよ。でも、サンプルの採取セットや保管容器はいらない気がするんですけど?」


「万が一と言うこともあるじゃない。『こんなこともあろうかと……』と言って必要な機材を取り出すのが科学者としての嗜みなの」


 日本アニメに感化され過ぎたんじゃないか?

 とは言っても、聞き入れては貰えないようだから、このまま運ぶことになるんだろうな。


 1階のエントランスの降りると、いつものソファーセットに腰を下ろす。集合時間の1時間前だから、他の連中はまだ来ていないようだ。

 カウンターの女性兵士にコーヒーを頼むと、紙コップに入ったコーヒーを渡された。

 コーヒーでも飲みながら、一服して待っていよう。


「カメラは用意してあるんですか?」


「ちゃんと持って来たわ。小型だけど、20倍までズームができるわよ。三脚も入っているから、手振れしないで写せるし、録画機能もあるのよ」


「メモリーも数個持ってきました。ドローンの画像は後で色々と参考になりますからね」


 七海さんの言葉に、オリーさんが頷いている。

 心配したほど互いに反発する事が無いんだよなぁ。これからの将来を考えると、少し安心できそうだ。


 30分前に、レディさんが完全装備で現れた。

 結構色々と身に着けているし、ヘルメットにはスターライトスコープまで付いている。

 ちょっと大きめ目の帆布製のバッグを下げているけど、何が入っているのかな?


「他の連中はまだのようだな。ところで、核爆発の衝撃波で破壊されていないギリギリの場所にある建物なのだが、それでオリー達は満足できるのか?」


「さすがに地上に降り立つほど、向こう見ずではないつもりよ。そこで観測出来れば、とりあえずは十分に思えるの。進化したメデューサを確認できなくても、それは現状のゾンビ対策にフィードバックすることが出来るのよ」


 何も無ければ単なる神の気まぐれとして考えても良いだろうけど、俺はそうも思えないんだよなぁ。

 さらに進化したメデューサを見ることが出来るんじゃないかと思っているぐらいだからね。


「私達をメディカルセンターに下ろした後は、プラットホームの片隅にベノムを待機させてくれるようだ。それでも救援要請から到着するまでには15分程度掛かるだろう。その間の防衛は我等だけになる。

 ヘリボーンで降下した後は、素早くヘリポート周辺の安全を確認することはもちろんだが、その後は屋上に至る通路を全て確認する必要があるだろう。私とサミーが先行し、その後をオルバンとエディ達でもう1度確認する。場合によっては扉を溶接しても良いと、ウイル殿が携帯溶接機を2個渡してくれたぞ」


「何かあってからでは遅いですからね。了解です!」


「念の為に線量率計を用意した。元々デンバーは世界標準よりも放射線量が高いんだ。0.5マイクロシーベルト程になるんだが、2倍程度なら3日程の滞在ならさほど影響を受けるということもないだろう。

 ヘリボーン後に直ぐに測定してみるつもりだ。2倍を超えていたなら、さらに離れた場所を探すことになるだろう」


 3年が過ぎているからねぇ……。風雨で除染されたようなものだ。

 それに原子炉と異なり、核爆発は長半減期の核種が少ないと親父から聞いたことがある。

 取り越し苦労に思えなくもないが、それだけレディさんは慎重だということになるのかな。


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