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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-171 航空機の騒音でゾンビが動き出した


「驚きましたよ。サミー准尉が部隊の指揮官だったんですね」


「俺だって驚いてる1人ですよ。さすがにそれでは問題だと思ったんでしょうね。レディさんを副官にしてくれましたから、実質はレディさんにお任せです。もう1人オルバン軍曹がいるんですけど、もう1部隊を率いてデンバー空港のゾンビ掃討に参加しています」


「確かに急だったからなぁ。本来ならデンバー空港が利用できるようになってからだと聞いていたんだ」


「さすがに人命には変えられませんからね。でも主導は陸軍と言うことでしたから、俺達が参加するに留まったんです」


「相変わらず、派閥争いはあるってことか……。それでも、少しずつ垣根は低くはなってるようだ」


 軍曹2人、俺だけでコーヒーを飲みながらの一服だ。

 さすがに働いている兵士達がいる以上、眠ることは出来ないだろう。

 ひと段落したなら、仮眠を取らせて貰おう。


 それにしてもミニミまで用意してきたというんだからなぁ。

 100m程まで接近されたなら横なぎに出来る気もするけど、銃弾が5.56mmだし、200発の弾倉が付いてるけど連続射撃は無理らしい。

 銃身加熱は色々と問題があるようだな。第一次世界大戦時代には水冷の機関銃があったらしいけど、時代が進むにつれて廃れてしまったらしい。

 拠点防御には優れていると思うんだけどねぇ……。


 2時を回ったところで、道路に邪魔物の設置が終わったらしい。

 明日は早そうだと言うことで、2時間ほどの仮眠をとることにした。


 翌日。頭を叩かれて起こされた。

 目を開けると、七海さんが微笑んでいる。だいぶ明るいなぁ。

時計を見ると5時過ぎだ。これは寝坊した感じだぞ。


「オスプレイがすでに3度降りてきましたよ。あの騒音で良く起きないものだと、レディさん達が感心してました」


「案外、朝は弱いんだよね。それでゾンビは?」


「動きはあるんですが、移動はしていません。このまま推移してくれると良いんですけどね」


 さすがにそれはないだろう。だけど、すでに3便が離着陸していたとはねぇ。

 身なりを整えて、イエローボーイを背に担ぐ。

 レディさん達の所に顔を出すと、集まっていた連中が苦笑いを浮かべるんだよなぁ。

 とりあえず、「おはよう」と言って腰を下ろすと、レディさんがコーヒーの入ったシェラカップを渡してくれた。


「まだ変化は無い。これがいつまで続くかが問題だな」


 考えることは同じらしい。眠気覚ましにコーヒーを飲んだら、思わず首が横に向いていく。

 とんでも無く苦いんだよなぁ……。

 バッグから角砂糖の包みを取り出して3個放り込むとセラカップを回すようにして溶けるのを待つことにした。

七海さんが渡してくれたカロリーバーのような携帯食を食べながら、少し飲みやすくなったコーヒーを頂く。


「他の方面も変化がないということでしょうか?」


「そんな感じ……。北はドローンでの攻撃を開始したわ。私達も東と南を交互に攻撃素養と言う話をしていたの」


「先ずは様子見ですね。それで良いと思いますよ。なるべく統率型は早く倒した方が良いですからね」


「ならナナと陸軍で始めて貰おう。陸軍で用意したドローンで東を叩き、ナナは西と南を交互に叩いてくれ」


 オリーさんの端末で状況は分かるんだが、やはり目で見ないとなぁ。

 この辺りに高い建物はないけど、飛行場自体が高台だからピックアップトラックの上に上れば双眼鏡で状況を見ることは可能だろう。


「4便目がやってきたぞ!」


 東に腕を伸ばしてカーソン軍曹が教えてくれた。

 ゆっくりと高度を落としながら、こっちに近づいて来る。

 やがて轟音を立てて俺達の真上を通りすぎると短距離で飛行場に降り立った。

 飛行場の端まで進んで向きを変えている。

 管制塔のある建屋から避難する住民が出たきたんだが、2個分隊程度だからね。

 脱出する人数が多いから、大尉も気が気ではないんじゃないかな。


「グランビーへ一時避難すると聞いたんだが、安全なんだろな?」


「町のゾンビは全て倒しましたよ。3千人程が住んでいた町ですから、できたようなものですけどね。グランビーに続く道は全て自警団が封鎖しています。長距離移動はトロッコなんですけど、最初は手作りのトロッコでしたから結構面白かったですよ」


「ロッキーの避暑地の1つだな。冬は厳しいが夏は暮らしやすい場所だ。強いて言えば農業ができると良いのだが、あまり良い収穫ではないらしい」


「標高が高いからだろう。そんな場所ならトウモロコシとジャガイモぐらいしか育たんだろうな」


 軍を止めて開拓を始めるのかな?

 どこを開拓しても、誰も文句は言わないだろう。自給自足はゾンビを掃討するよりも優先されるべきだろう。


頭上をオスプレイが避難民を乗せて飛び立っていく。

上昇しながら右手に大きく進路を変えているようだ。遠くには次のオスプレイが近付いて来るのが見える。

 時計を見ると着陸してから10分も経っていない。

 避難民の誘導が上手く行っているに違いない。とはいえ、基地から避難する人数の2割にも達していないからなぁ。

 まだまだ楽観はできないだろう。

                ・

                ・

                ・

「動きだしたわ……。北が先に動くと思ったんだけど、西だった」


「統率型をだいぶ倒しましたからね。通常ゾンビであれば音に反応しますから。どちらかと言えば動くのが遅いぐらいです」


「でもこの動きではねぇ……。私達が何もしなくとも、ここにやって来るまで1時間は掛かりそうよ」


「他の方角のゾンビはどうなのだ?」


「まだ動かないみたい。でも統率型ゾンビの輝点が瞬いているわ」


 レディさんの問いにオリーさんが答えた言葉に、思わず目を見開いた。


「始まりますよ。輝点は統率型ゾンビの声ですからね。それが瞬いているというのは他の統率型ゾンビと連絡を取り合っていると考えられます。大尉とレンジャーの少尉に連絡しておいた方が良いでしょう」


「そういうことか。なら私から連絡しておこう。東はどうするんだ?」


「迫撃砲に兵員を配置しておけば十分です。攻撃開始は全体が動き出してから、それまではドローンで統率型ゾンビを狩り続ければ十分です」


「了解だ。軍曹達にも、そう伝えておくぞ!」


 いよいよか……。

 すでに8便が飛立っていったんだよなぁ。それでも160人だからね。陸軍兵士およそ1個中隊に一般人が250名。ピストン輸送はまだまだ続きそうだ。


「連絡したぞ。すでに北は動き出したらしい。道幅一杯になって前進してくるとのことだった」


「なら、迫撃砲の良い目標ですね。エアバースト弾なら、かなりの打撃が期待できます。それに上手く統率型を倒せたなら群れの分散が始まります。オリーさん、北側の映像を出せませんか?」


「ちょっと待ってね……。これね。確かに道路沿いを南下しているわ」


「北からのゾンビの流れは確認できますか?」


「……そういうこと。さすがね。……サミーの推測通り、移動していないわ」


「どういうことだ? 私にも説明して欲しいのだが?」


 俺達の会話を聞いて、レディさんが首を捻りながら問いかけてくる。

 連絡を受けて、状況確認にやってきた2人軍曹も頷いているんだよなぁ。


「母数が定まったの。これからは倒すだけ基地を囲んでいたゾンビが減っていくわ」


「なるほど。それは良いことを聞いた。なら、後はひたすら倒して行けば良いと言うことだ」


「そういう事。頑張れば報われる体制になったということね」


 4人で納得しているんだけど、そう簡単ではないんだよなぁ。

 ゾンビに比べればあまりにも寡兵だ。

 ゾンビの動きが荒地で鈍いことぐらいが俺達にとって都合の良い頃なんだが、道路と言うゾンビが普通に歩ける場所があるからねぇ。

 それも大型トレーラーが悠々とすれ違えるぐらいの道幅がある。

 簡単な柵を作ってはいるんだが、どれだけ役に立つかは、これから試されることになる。


 突然、迫撃砲の砲撃音が聞こえてきた。少し遅れて数発が連続発射される。

 荷台に飛び乗って東を双眼鏡で眺めると、臨時ゲート付近で大渋滞を起こしているゾンビの中に炸裂炎が見える。

 慣れてるなぁ……。あれだけで、かなり倒せたんじゃないか。


「始まったか……。それでは!」


 軍曹達が足早に自分の部隊へと向かっていく。


「七海さん。まだ迫撃砲弾はあるんですか?」


「後、2回攻撃できますよ。狙う場所がありますか?」


「南の群れがかなり広がっているようです。あの中の統率型を倒してください」


「了解です!」


 上手く行けば脱落するゾンビが増えるだろう。


「ドローンの搭載する迫撃砲弾は60mmでしたよね?」


 増援に来てくれた兵士が確認するように問い掛けて来た。


「必要なら、運んできますよ。まだ時間はありそうですから」


「頼んだ!」


 ちょっと嬉しくなる知らせだ。

 60mmより80mmと言うことで、迫撃砲を選んでいたんだろう。

 ハンタードローンの迫撃砲弾は60mmだから、集めたとしてもそれほど使用していなかったに違いない。


 ピックアップトラックを走らせて行ったけど、どれぐらい時間が掛かるんだろう?

 出来れば南の統率型は全て倒したいところなんだけどなぁ……。


 バイクからグレネードランチャーとグレネード弾がたっぷり入ったショルダーバッグを取り外し、俺達の守備位置に戻る。

 双眼鏡で状況を見ていたレディさんが、双眼鏡を置いてタバコに火を点ける。

 だいぶ臨時ゲートでゾンビが苦労しているようだ。

 とは言っても、少しずつゾンビがゲートを通過しているんだが、あれではねぇ……。十数人で狙撃すれば、その位置を越えられないほどの少人数だ。


「適当に伐採した木を横にしただけなんですけど……。邪魔な物を排除するということが出来ないんでしょうか?」


「そこまでの知恵がまだないんだろうね。おかげで助かっていることも確かだよ。だけど、少しずつゲートから出てくるゾンビが増えているようにも見えるんだよなぁ。こっちの迫撃砲は何時でも撃てるのかい?」


「ゲートから西に向かって300mほどの場所に十字路が見えますよね。あの十字路に狙いを定めています。十字路から飛行場への道を登るゾンビはグレネードランチャーでし止め、それを突破したゾンビはM4カービンで狙撃です」


「了解。3段構えと言うことだ。あの道を進めば南からのゾンビの群れと合体しそうだけど、まだ南はもたついているんだよなぁ」


 連携が取れていないことが俺達にとっては一番ありがたい。だいぶ統率型を倒しているから、その成果も出てきたのかもしれないな。

南は何とかなりそうだが、北はどうなんだろう?

 連絡が無いということは、それほどの激戦かもしくはまだ最初の位置を余裕で確保できているということになるんだろう。

 また南方からオスプレイが飛行場に着陸しようと、高度を落としながら接近してくる。

 これは何便目なんだろう?

 いいかげん、数えるのを止めてしたからなぁ。一般人の避難はまだまだ続くんだろうけどねぇ……。



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