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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-017 頼れる仲間が増えた


 凸凹道を進むと国道34号に出る。

 グランドレイクに向かう国道を塞ぐように、道の真ん中にピックアップトラックを停めた。

 止める前に、何度か前進とバックを繰り返して車の向きをグランビイの町方向に向ける。

 これで、俺達が先導して山小屋に案内することができる。


 トラックの荷台でコーヒーを飲みながら、トランシーバーからの連絡を待つ。

 時計を見ると、15分も経っていないんだよなぁ。たまに周囲を眺めても、ゾンビの姿は見えないから、やはりこの辺り間まで来るゾンビはいないということなんだろう。

 

 30分が過ぎたけど、まだ現れない。

 トランシーバーは沈黙したままだ。電源ランプは点いているから、もう少し掛かるのかな?

 一服を始めて直ぐの事だった。トランシーバーからクリスの声が聞こえてきた。


『こちらクリス。エディ、聞こえる?』


『こちらエディ、ちゃんと聞こえてるよ。まだ来ないみたいだよ。ちょっと退屈してたとこだ』


『グランビイでゾンビの群れをやり過ごしたらしいわ。それで遅れてるみたい。もう直ぐそこに来るはずよ』


『了解。夕食を期待してるよ!』


 通信を終えると、俺達は顔を見合わせる。

 ちょっと心配だったが、問題は無いらしい。

 直ぐに南から車の音が近付いてきたから、俺達は笑みを浮かべた。


 エディが荷台を飛び降り、マグライトを点灯して待ち構える。ニックは運転席に移動してエンジンを掛け、俺は荷台に乗ったまま銃を何時でも取れるように手元に引き寄せる。

 

 先頭の車が見えたところで、エディがライトを持った腕を伸ばして大きく円を描く。

やって来た車列が止まり、直ぐに銃を担いだ2人の兵士がおりてきた。

ハマーで先導してきたようだな。さすがに屋根にターレットを付けて機関銃は乗せていないけど、タンクの付いたトレーラ―を牽引している。それほど大きくは無いから、1.5㎥というところだろう。


「君達が、案内人かい? 俺達はウエルテンから、SWの拠点に向かうところなんだが?」


「案内しますよ。直ぐ先です。山小屋に入る前に、全員の体を確認させてください。もちろん女性は、女性に確認して貰います」


「そうだな。確かに必要な事だろう。了解だ」


「それでは、俺達の後に付いて来て下さい」


 エディがトラックの荷台に乗り込んで、運転席の屋根を叩く。

 ゆっくりとトラックが凸凹道を走り始めた。


 山小屋の前はちょっとした広場になっている。待機していたウイル小父さんが先導車に近づいて、中の兵士と話をしている。

話の終わりに、ウイル小父さんが広場の一角を指差すと兵士が頷いていた。後続の車が曳いてきたキャンピングトレーラーを置く場所を教えたんだろう。

 8台の車がトレーラ―を順番に並べていくと、その反対側に車を止めた。乗ってきた人達も車を降りて、状況を見守っている。

 小さなテントが2つあるのは、簡単な身体検査をするためだろう。

 オリーさん達が女性を先に確認を始めるみたいだな。


「済まんな。何しろ少し齧られただけでもゾンビになると聞いたからな。仲間を信用しないように思えるだろうが、これだけは許して欲しい」


「問題ない。俺達の仲間の家族も、それで2家族全滅している。家族なら問題ないと言っていたが、やはり確認はすべきだった……」


 道路を塞ぐ柵の近くで焚火を囲んでいると、ウイル小父さんと同じ年代の男性が聞こえてきた。

 皆苦労しているようだ。やはりゾンビは一気に拡散していったんだろう。

 キャンピングトレーラーの移動を終えた男性達が焚火に集まって来る。タバコを取り出して勧めると、嬉しそうに受け取ってくれた。


「済まんな。切らしてたんだ。予備があるなら何箱か譲ってくれるとありがたいんだが」


「夕食後に、1カートン渡しますよ。ラッキーストライクで良いですか?」


 俺の問いに嬉しそうに頷いている。

 嗜好品は切らすと辛いと聞いたことがあるからなぁ。まだまだたくさんあるし、ニック達にも訳を話して少し出して貰おう。


 ようやく女性達が終わったようだ。次は男性達が1人ずつテントに入りウイル小父さんの確認を受ける。

 最後の1人が終わる頃には、西は夕焼け空だった。

 結構冷えて来るからね。急いで山小屋のリビングに向かう。


 大勢がリビングに座り込んでいる。

 やはり中央の焚火の周りは人気があるようだ。俺達は火の入った薪ストーブのベンチに座って夕食を待つことにした。

 新しく来た人達の中から女性達が立ち上がり、台所の方へと向かって行く。

 お手伝いということなんだろう。パット達よりは安心できそうな年代の人達ばかりだ。


 やがて、トレイに乗せた料理が運ばれてくる。

 真ん中に山盛りにして皆で頂くということにはならないみたいだ。

 深皿に入ったシチューと握り拳2つほどの大きさのパン、それに小さな皿に乗った果物は缶詰だな。飲み物はカップ半分のワインだ。パットや女性達、それに子供にはオレンジジュ―スが出るみたいだな。


「しばらくレーションばかりだったからありがたい。俺達に食事を出しても問題は無いのか?」


「グランドレイクの町で集めた食料だけで次の冬も越せるほどだ。何ら問題ない。ところでウエルテンの様子は? グランビイを通っただろうからグランビイについても教えてくれ。そうだな。食事が追わったら、あの薪ストーブで良いだろう。ビールを用意して置くよ」


 ウイル小父さんの最後言葉を聞いて笑みをこぼしている。

 悪い人では無さそうだな。

 新しい仲間をみると、俺達より歳上の人達が圧倒的に多い。子供が数人いるけど、一番大きくてもジュニアスクールだな。


 早めに食べ終えると、ライルお爺さんがいつも座るベンチの後ろに、リビング端に置いてあったベンチを運んで座り込んだ。何時も俺達が座るベンチはウエルテンから来た人達が据わるだろうからね。人数を考えるともう1つベンチを運んだ方が良いかもしれないな。皆がやって来る前に運んでおこう。


 メイ小母さんが手招きしてたから、行ってみるとビール缶が入ったバスケットを渡された。

 一緒に来たニックにはコーヒーの入ったポットとカップを渡している。女性は女性同士で語らうのかな? それなら俺達は、薪ストーブのところで良いはずだ。

 既に集まってる人達もいるな。

 ウイル小父さんにバスケットを渡すと、小父さんが皆に配っている。

 バスケットの横の方にタバコの箱があったのはメイ小母さんの気配りなんだろう。

同じように小父さんが配っている。


「先ずは自己紹介だ。俺はウイル、元海兵隊軍曹だ。隣がライル、同じく海兵隊だがイラクを経験した人物だ。後ろの3人が、俺の息子のニック、ニックの友人のエディ、それに偶々俺の家にホームステイしていた日本人のサミーだ。あの混乱の中、郊外のキャンプからガールフレンドを伴って俺の家まで帰ってきたぐらいだ。結構頼りになるぞ」


「それも凄いな。こっちは元警官が俺と隣だな。俺がバリーで隣は息子さんと同じニックになる。後ろの4人が元陸軍のエンリケ、偶々実家に帰っていた陸軍機甲部隊所属のベントンにケント、それにテリーになる。全員が嫁さんや子供が一緒なんだが、子供達が足手まといになるのを心配している始末だ」


「さすがに掃討戦には連れて行けまい。婆さんや世話好きな嫁さんに任せることになるだろうな。さすがに嫁さんは軍の経験は無いんだろう?」


「軍ではないが、俺の嫁とエンリケの嫁は元警官だ」


「婆さんは元イスラエル兵じゃ。さすがに走れんじゃろうから車の番でもさせようと思っておる」


 ライルお爺さんの話を聞いて俺達は顔を見合わせた。かなり実戦を経験してきたに違いない。いったいどこでライルお爺さん達は知り合ったんだろう?


「ニック達も銃の使い方は教えてある。サミ―にも持たせてはあるんだが、かなり下手だ。日本は一般人が銃を持てないからなぁ。だが、頼りにはなるぞ。バリーもエンリケもマーシャルアーツ位は心得ているだろう。明日にでもサミーを相手にしてみろ。自信を無くすぞ」


「素手でゾンビを相手にすると!」


「さすがにそこまで無茶はさせない。サミーの武器は棒やホッケーのスティックだ。頭を叩けば一撃だと言ってたよ。実際、食料の調達では結構助かったからな」


「それで苦労したのは確かだ。銃を使えば、たちまち周囲からワラワラ沸いて来るからな。そうか……、それなら音をたてないで始末できるな」


 何度か銃で相手をしたらしい。銃弾の消費の割には倒せなかったと言っていたから、頭を狙ってということはしなかったんだろうな。

 ウイル小父さんとバリーさんの話は夜遅くまで続いた。

 5人ずつの3つのグループを作り、2つのグループで物資の調達とその援護を行い、1つのグループはこの場所の防衛を行うということだ。3つのグループをローテ―ションしていけば不満も起こらないだろう。

 俺達はどのグループになるのかな? 明日にでも決められるだろうから楽しみにしていよう。


 話が終わる前に一度部屋に戻って、タバコを1カートン持ってきた。約束だからね。バリーさんに渡すと笑みを浮かべて受け取ってくれた。


「町へ調達に向かえば、直ぐに手に入るだろう。それでは3日後に、先ずはグランドレイクからだ」


「俺達はウイルの指揮下に入るよ。上手く使ってくれ」


 2人が握手をしたところで、バリーさん達は山小屋を後にした。

 さて俺達も、部屋に行こう。明日は色々とやることがありそうだ。


 翌日は5月に入る。

 日差しがだんだんと強くなるんだよなぁ。顔を洗ってリビング向かうと、いつもの俺達だけだった。

 気になったので通り掛かったナナに聞いてみると、一度に皆が食事を取れないからということだった。


「2回に分けるの?」


「2回というより2つに分けるというのが正しいわ。キャンピングトレーラー近くにテントを2つ作ると言ってたわよ。今朝は簡単に済ませるみたい」


 様子を見ようと山小屋を出ると、先にニック達も来ていたみたいだ。

 一緒になって邪魔にならないように状況を見守っていると、たちまち大きなテントが2つ立った。

 横は4.5mほどあるし、奥行きは6mを越えていそうだ。4人掛けのテーブルセットなら8個は入るだろう。町から運んで来るのかな? とりあえずは地面にシートを敷いて食べるしかないな。

 少し小さめのテントから突き出た煙突から煙が出ている。中で調理をしているのだろう。

 料理の味は少し違うかもしれないが、材料は同じでないといけないだろうな。


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