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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-146 次は2階だ


 中央回廊は、高級ブティックがずらりと並んでいる。

 略奪もあったみたいでショーウインドウが割られているところもあった。

 女性兵士達が我先に押し寄せてきそうだけど、生憎と俺達の欲しいものは無いんだよねぇ……。


「略奪しても、ゾンビになってしまってはお終いだと思うんだけどなぁ」


「だけど目の前に欲しいものがあったなら、飛びつくんじゃないか? 1つか2つぐらいならそのまま走って逃げられるだろうけど、店を見ると根こそぎだからなぁ」


 雑談をしながら回廊を進む。30mほどの奥行きなんだけど、その先は大きな広場になっていた。


「ここが複合ビルの終わりってことかな?」


 直径30mほどの広場なんだけど、真ん中に小さな噴水がある。今でも水を出しているということはユーティリティの供給が続いているということなんだろう。

 3階建ての高さほどのところに空中回廊が空港ビルへと繋がっていた。

左右に通りが伸びているから、通りを進めば立体駐車場に向えるのだろう。


「いるなぁ。こっちには来ないようだけど……。十数体と言うところだな」


「空港ビルの中にもかなりいるよ。ビルのエントランス扉が開いているから、リトルジャックを使えば良いんじゃないかな」


「さて、俺達の役目は此処までだ。撤退するぞ!」


 エディの言葉に頷くと、ゆっくりと後に下がる。後方に注意しながらエントランスに向かって歩き出した。

 エントランスに到着すると、カウンター前にテーブルを置いてウイル小父さんと軍曹達が図面をみている。

 どうやらこのビルの図面らしい。

 軍曹達も手にしているところを見ると、コピーでもしたんだろうか?


「無事に帰ってきたな。それで?」


 ウイル小父さんにエディが状況説明を始めた。軍曹達も真剣な表情で聞いている。


「どうやら、予想通りということかな。回廊の柵を移動する前に事務所のゾンビは始末して欲しい。扉に数字はあくまで参考だ。場合によってはそれ以上と考えた方が良いぞ」


「了解です。それでは……」


 2人の軍曹が敬礼をして部下の元に向かった。

 俺達はどうするんだろう?


「パット達にはこの広場と、空港ビルの偵察をして欲しい。空港ビルのエントランスにゾンビが沢山いるようなら、リトルジャックを使ってくれ。仕掛ける前には中央回廊の連中に教えてやってくれよ」


「了解です。広場の左にも2つ仕掛けてみます。駐車場と繋がっているようですから、それなりに数はいるでしょう」


 パット達は忙しそうだな。

 さて、いよいよ俺達かな?


「2階は、マイク軍曹達に任せるぞ。左右の部屋を改めて欲しい。サミーが扉向こうのゾンビの数と位置を教えてくれる」


「了解だ。奥に部屋がある場合もあるだろうが、その時にはスタングレネードを使うよ。たっぷり持ってきたからな。それに追加もあるだろう」


 全員がベルトに2個下げているんだよなぁ。その上、数人が手榴弾ポーチを膨らませているんだからね。少し大げさに思えてしまうが、安全を第一に考えた装備ということになるんだろう。


 2個分隊を伴って、エディが先行していく。

 北の回廊はエレベーターホールまでの短い回廊なんだけど、右手に階段がある。

 階段にゾンビの姿は無いんだが、集音装置を作動させると……、うん! かなりいるようだな。数は……、2階の階段踊り場付近に少なくとも数体はいるようだ。その先にもかなりのゾンビが動いているな。


「どうだ? 行けそうか」


「この階段の踊り場付近に数体、2階の回廊にかなりの数がいますね」


「階段にはいないんだな?」


「いません。それに、ゾンビは階段が苦手ですから」


 階段を見上げている俺に、マイク軍曹が近づいて状況を確認する。

 俺の言葉に、すぐに部下を2人呼び寄せたのでエディがすかさず先行偵察に名乗りを上げた。


「俺達も行きますよ。サミーと一緒に扉向こうのゾンビをだいぶ始末しています」


「頼もしいな。なら2人のバックアップを頼んだぞ。サプレッサーは付けてあるな? 良し、向かってくれ」


 さて、俺はこの棒で良いだろう。狭い場所ならこれが一番確実だ。

 2人の兵士の直ぐ後ろに俺が付く。

 エディ達はM4カービンを両手に持っているけど、銃身は上げたままだから安心できる。まだセーフティを解除していないだろうけど、誤射されたらそれで終わりだからなぁ。


 ゆっくりと階段を上り、途中の踊り場に出た。

 ここで階段の方向が180度変わるんだが、位置的に2階の階段出口が少し見えた。


「なるほど……、2体いるな。ここから倒すか」


「倒しても、すぐに階段を上らないでくださいよ。回廊にかなりいるようですから」


「了解だ。見えたゾンビを1体ずつ確実に倒していこう。階段付近のゾンビを倒せば、仲間を呼べるからな」


 2人で1体ずつ倒すみたいだな。どちらを倒すかハンドサインでやり取りしていた2人が膝撃ちの姿勢を取る。さすがに俺達と違って構えた時に銃身がぶれないんだよなぁ。感心しながらヘッドホンを耳に当てる。これでかなり耳への負担が減るからね。サプレッサーを付けても、結構銃声は耳に来るんだよなぁ。

 

 パシュ! パシュ!

 2つの銃声が階段に響くと、上でうろついていたゾンビ2体が倒れるのが見えた。


「お見事!」


「この距離だからなぁ。褒められても嬉しくないぞ」


 振り返った兵士の顔に笑みが浮かんでいる。やはり嬉しいんだろうな。

 改めて聞き耳をたてる。


「もう2体近くにいますよ。2体とも左手です。……それ以外は……、少し距離がありますね」


「そこまで分かるのか!」


「おい、今度は左手だぞ。階段の右ぎりぎりに上って行こう」


 ゆっくりと兵士が階段を上り始めた。左手をエディ達が昇っていくのは、万が一に備えてということだろう。


「見えた! もう2段上がれば頭を狙撃できるぞ」


 慎重に階段を上がって先ほどと同じように銃を構える。

 再び銃声が2発。

 

「階段の上がり口付近のゾンビは始末できたようです。次のゾンビは10m以上離れていますよ。右手が一番近いです」


「全く、先行偵察にはもってこいの人物だな。右手は俺達で倒す。左手は頼んだぞ!」


 兵士の言葉にエディ達が頷いた。俺もいつでも使えるように、ワルサーを引き抜いて初弾を装填しておく。

 セーフティはまだ解除しない方が良いだろう。このまま棒を振り回すことにもなりかねないからね。

 後2段上れば顔が出る位置で、回廊のゾンビを確認する。

 小さな鏡で見ているんだよなぁ。やはりあんな鏡を手に入れたほうが良さそうだ。


「右15ⅿに3体だ。これは俺達が始末する。左は確かに離れているが、30ⅿは無さそうだ。エディ達に任せるぞ」


「回廊に出たら、向かい側の壁まで直ぐ移動してください。出口付近にゾンビが倒れています」

「確実に倒せたか分らんということだな。そっちはサミーが確認してくれると助かる。それじゃあ、突入するぞ……3……2……1……ゴー!!」

 

 4人が一基の階段から飛び出して壁に取り着き、左右のゾンビに銃撃を加える。

 連続して十数発の銃声が響いたから、ゾンビがゆっくりと近づいているようだ。

 4人とも慎重に狙いを付けているところを見ると、さらに近づいた時に銃撃するつもりなんだろう。

 さて俺もやることをやっておこう。

 棒でゾンビの頭を動かし、確実に銃弾が頭部に当たっていることを1体ずつ確認していく。

 さすがに現役だけあって、確実に撃ちこんでいる。

 ホルスターにワルサーを戻して、4人と合流した。


「動いてはいるんだが、あそこで止まったようだ。音が連続していないとそこで止まるようだな。軍曹に連絡しておいたから、そろそろやってくるはずだ。それにしても……、かなりの数だなぁ」


 回廊が左右に延びているんだけど、どちらの方向にもゾンビが彷徨っている。これだけいると……、気になって集音装置でゾンビの声を聞いてみた。

 直ぐに溜息を漏らす。統率型は近くにはいないようだ。


 俺達に軽く手を上げて、マイク軍曹達が近づいて来た。

 回廊の左右を眺めて「凄い数だな」と呟いている。


「右も左も同じような数だ。俺は左にするが?」


「なら俺達は右を行くよ。先ずは回廊の掃除で良いんだな?」


「扉は空けてくれるなよ。そっちはサミー達の調査が終わってからだ。右を進めばこの広場に出る。3階に空港ビルに向かう空中回廊があるから、階段の上が気になるところだ。エディ達で見張ってくれ。近づくゾンビは倒してくれよ」


「了解です!」


 エディが元気よく返事をしてたけど、俺達3人だけだからね。近くにある物を使って簡単な柵を作っておいた方が良さそうだな。


 2人の軍曹が拳を合わせて頷くと、それぞれ1個分隊を率いて左右に分かれる。

 俺達は右手になる。

 20ⅿも進まずに前方の兵士が立ち止まると、その場で膝撃ちの姿勢を取る。1人だけではなく数人が一斉に構えたからちょっと驚いてしまった。銃の向きは、左手だな。

 確かにいるようだ。10体以上……小さな広場があるということなのかな?


 前方にもゾンビが見えているんだけど、それより近いということなんだろう。射撃姿勢を取った兵士の邪魔にならぬよう、2人の兵士が右手壁沿いに立って前方のゾンビに狙いを付けている。

 銃声が回廊に響く。

 やはり室内ではサプレッサーを付けても煩いぐらいだ。

 前方のゾンビが近づいて来たようで、少し遅れ2発の銃声が聞こえた。


「銃を使うと動き出すな。サミーがあまり銃を使わんという話を聞いたことがあるが、出来ればそうしたいところだ」


「この数だと、俺でも躊躇しますよ。2、3体なら良いんですけどねぇ。広場のゾンビは俺達で再度確認します。この広場であの回廊を監視すれば良いんですよね」


「頼んだぞ……、あの通りだ。やはり銃声を聞きつけたんだろうな」


 回廊の奥から、ゾンビが1体こちらに向かって歩いてくる。早めに倒したほうが良さそうだな。


「それじゃあ、後を頼むぞ!」


 兵士達が回廊を先に進んでいく。

 俺達は階段担当だから、あまり急がなくても良いだろう。近くにあったしゃれた椅子をエディが運んでいるのは、階段に置いておくつもりなんだろう。

ちょっとした障害だけど、ゾンビは階段を下りるのが下手だからなぁ。躓いて階段を転がり落ちるんじゃないか。

 


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